いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
真実と虚と決着
高評価!!こんな作品にありがとうございます!!これからも頑張りますのでよろしくお願いします!!
数分前…
アンクとウヴァの共闘により、暴走したオーズを止めて火野は無事に救出する事が出来た。その後の取引に応じて、新しく仲間に加わったグリードのウヴァを連れて火野は、緑谷達と合流すべく、神野区の駅前へと向かっていた。
「本当に駅前で合ってんだろな?」
(絶対とは限らないけど、緑谷君なら人の多い場所に避難する筈だから…)
「面倒だなぁ、携帯で連絡すれば早い話だろ」
(仕方ないだろ、林間合宿の時にスマホ置いて来ちゃったんだから)
「おいアンク、映司とコソコソ何話してやがる?」
「お前は関係の無い話だ。黙ってついて来ればいい」
まともに歩けない火野の体にアンクが憑依し、火野アンクは精神の中の火野と会話しながら神野区を走っており、後ろをついてくる人間態のウヴァも同行していた。すると、向かっている先に人集りが見える。市民の人々は、大きなビルに映る大画面のスクリーンをぽかんとした表情で見入っていた。その光景を火野アンクは邪魔だと思いながらも人混みを潜り抜けようとした直後。
「え…?」
「お……」
「なんだ、あの
市民がボヤくその一言に、火野アンクはハッとし、立ち止まる。「どうした?」とウヴァは声を掛けながらも、大画面に映っているその人物を見て、疑問を抱きながら口を開いた。
「何だ?さっきの場所の映像か……?……
(…ッ!!?アンク………!あれ……!?)
「あぁ……見てる……」
そこに映っていたのはボロボロになって、今にも倒れそうなオールマイトの
☆★☆★☆★☆
一方で、緑谷達のいる駅前もまた、大画面に映し出されていた映像のオールマイトを認識している最中、報道のリポーターさえも、その姿を見て困惑しながらも、実況をすべく口を動かした。
『えっと…何が…え…?皆さん見えますでしょうか?オールマイトが…しぼんでしまっています……』
人々の希望、平和の象徴と謳われていたNo1ヒーローのその実態に、世間が事態を把握出来ずぽかんとする。ただ1人、緑谷はその姿を見て愕然とし、冷や汗が止まらず、顔が真っ青に変わっていた。
「そんな……ひみ…つ……」
平和の象徴の正体がこんな痩せこけて頼りない姿なんて予想打にしない。それはオールマイト本人が公表しないでくれと頼んでいたからだ。悪に屈しない強靭な肉体で、人々の前に立っていたその
「頬はこけ、目は窪み!!貧相なトップヒーローだ。恥じるなよ、
正体を暴かせ、世間に知らしめたオール・フォー・ワンは愉快そうに声を張り上げる。だが、そんな
「………そっか」
「たとえ己の身体が朽ち衰えようとも…その姿を晒されようとも…私の心は依然平和の象徴!!一欠片として奪えるものじゃあない!!」
身体がボロボロであろうと、その心は死んではいない。悪に屈しないとはこの事を言うのだろう。その状態でも尚、立ち向かおうと意思を見せるオールマイトに、オール・フォー・ワンは驚き、大袈裟に賞賛した。
「素晴らしい!参ったよ。強情で聞かん坊な事を忘れてた。じゃあこれも君の心には支障ないかな…」
人口呼吸器の音が聞こえる中、オール・フォー・ワンは言うと、人差し指をスッと出して口を開いた。
「あのね……死柄木弔は志村菜奈の孫だよ」
さらりと口に出したその一言。だがその一言はオールマイトにとって驚愕の言葉だったのか、時が止まったかのように目を大きく見開き、その動作は固まっていた。
「君の嫌がる事をずぅっと考えてた。君と弔が会う機会をつくった。君は弔を下したね。何も知らず、勝ち誇った笑顔で…」
「ウソを……」
「いやいや事実さ。わかってるだろ?僕のやりそうな事だ。あれ…おかしいなオールマイト、笑顔はどうした?」
受け止めきれない事実に頭が追いつかず、否定しようとするオールマイト。だが、オール・フォー・ワンは両手の親指で爛れた頬をくいくいと上げる素振りを見せた途端、オールマイトはハッとする。
その仕草は、オールマイトの師匠、先代の志村奈々の癖でもある仕草だった。
人を助けるってつまり、その人が恐い思いをしたってことだ。命だけじゃなく、心も助けてこそ真のヒーローだと私は思う…。
どれだけ恐くても、「自分は大丈夫だ」っつって笑うんだ。
世の中、笑ってる奴が一番強いからなーー…
「き……さ、ま……!」
志村奈々の言葉が頭を過ぎる。挑発に乗るなとグラントリノに言われたばかりだが、その冷静な判断は大きく揺さぶられ、掻き消された。絶望と、罪悪感がオールマイトに押し寄せるように襲い掛かる。
「やはり…楽しいな!一欠片でも奪えただろうか」
「〜〜ぉおおおーーー…!!」
無邪気に、そして愉快そうに嘲笑うオール・フォー・ワン。師匠の孫を害していたことにオールマイトは打ち震えていた。すると、身を挺して守った瓦礫に挟まれていた女性が涙を流しながら、そのか細い声で口を開いたのだった。
「負けないで……オールマイト、お願い…救けて」
ヒーローとして、何度もその声を聞き、人々を救い出して来た。そしてその思いは伝達するかのように、生中継を見ていた画面越しの人々もまた、1人、また1人と口を動かしていく。
「オールマイト…!」
「あんたが勝てなきゃ…あんなの誰が勝つんだよ…!」
「姿が変わってもオールマイトはオールマイトでしょ!?」
「いつだって何とかしてきてくれたじゃんか!」
「オールマイト!頑張れ!!」
「まっ、負けるなあオールマイト!!」
「頑張れえええ!!」
駅前で集まっていた人々は徐々に声を張り上げ、声援をその辺り一帯に轟かす。打ち震える緑谷達も困惑しながら、側にいた爆豪と共に、ボロボロになった背中に向かって叫んだ。
「勝って!!」
「勝てや!!」
「「オールマイトォ!!」」
他の市民達に負けずと必死に叫ぶ2人。勿論それは、画面先に居るオールマイトには届かない声援だ。しかし、それは届かないと知っていても、平和の象徴を突き動かす動力源となっていた。力など等に出し切っていた筈のオールマイトのか細い右腕が一気に膨張する。
「お嬢さん、もちろんさ」
穏やかで優しいその声が女性を元気づけ、更にはオール・フォー・ワンを若干怖気付かせていた。
「ああ…!多いよ…ヒーローは…!守るものが多いんだよ、オール・フォー・ワン!!」
焦りと絶望が消え去ったように、オールマイトの顔は負傷していながらも笑顔を取り戻す。
「だから、負けないんだよ」
大規模な攻撃を何度も相殺し、限界など等に超えた筈の状態。その筈なのに、右腕だけがマッスルフォームという歪な姿が、今の彼を物語っているとも言えた。
「渾身。それが最後の一振りだね、オールマイト」
ふわりと、オール・フォー・ワンは空中へと浮かび、徐々に上昇していくと同時に口を動かした。
「手負いのヒーローが最も恐ろしい。腸を撒き散らし迫ってくる君の顔、今でもたまに夢に見る。二・三振りは見といた方がいいな」
兆しとも言えるその姿に、オール・フォー・ワンは言いながら右腕を大きく膨張させる。距離をとって圧縮させた空気砲を放とうとした次の瞬間。突然横から巨大な炎がオール・フォー・ワン目掛けて迫って来た。気付いた巨悪は、その圧縮させた腕を薙ぎ払うように放出し、その炎を相殺する。ハッとしたオールマイトは振り返った。
「何だ貴様…その姿は何だオールマイトォ!!!」
そこに立っていたのは哀れな姿のオールマイトに怒鳴り声を上げるのはエンデヴァーだった。後ろにはエッジショット、バースも並びに立っているが、オールマイトの姿にかける言葉が出せず、愕然と立ち尽くしていた。
「全て
どうやら送り込んだ脳無達を一掃し、こちらに加勢しに来たのだろう。賞賛するオール・フォー・ワンだが、それを無視して、エンデヴァーは目の前に立っているトゥルーフォームのNo.1に向かって「
「何だその情けない背中はァ!!!」
絶望と憎しみが目標でもあり執念でもあった平和の象徴のその姿に、人生全てを懸け、必死に越えようとしてきた男が目の前で無様を晒しているのが耐えられなかったエンデヴァーは激昂し、叫んだ。
「応援に来ただけなら、観客らしく大人しくしててくれ」
激励と見受けた巨悪は、呆れたような素振りで言い、エンデヴァー達に向けて膨張した右腕を突き出す。すると、エッジショットが細く鋭く捻った身体でオール・フォー・ワン目掛けて突っ込んで行くが、巨悪はそれを容易に首を逸らして避けた。
「抜かせ破壊者。俺達は救けに来たんだ」
エッジショットは言うと、その隙にと加勢に来たバース、その他に素早く飛び出したシンリンカムイがシンリンカムイは倒れているMt.レディ、ギャングオルカ、ベストジーニストを伸ばした木の腕で巻きつけ拾い上げる。
「頑張ったんだな…!!Mt.レディ」
ボロボロになって意識を失っているMt.レディにそう言うシンリンカムイ。更に、オールマイトの背後の瓦礫が、ガラ…と音がする。そこには体を柔らかくした虎がラグドールを片手で抱えながらも、埋もれていた女性の救護に回っていた。
「我々…には、これくらいしか出来ぬ…あなたの背負うものを少しでも…」
「虎…!」
自身もボロボロの身体なのに、救命を優先するその行動に感服するオールマイトだが、構わず虎は続けて口を開いた。
「あの邪悪な輩を…止めてくれオールマイト…!!皆…あなたの勝利を願っている…!!どんな姿でも、あなたは皆のNo.1ヒーローなのだ!」
必死に伝えるその言葉にオールマイトは大きく目を見開いていると、グラントリノを見つけ駆け付けていたバースが便乗して口を動かした。
「虎の言う通りですよ、オールマイトさん」
「!」
「大丈夫ですか、爺さん」
「俺は大丈夫だ…」
バースの存在に気付き、オールマイトは振り返ると、怪我をしたグラントリノの安否を確認し、再度バースはオールマイトに声を掛けた。
「今、中継を通して全国の市民があなたを見てます。勝ってくれるよう祈り、そして願ってるんです!オールマイトさん、絶対倒して下さいよ!」
国中が今願っている言葉を、どんな姿であろうと、目の前にいる平和の象徴を信じて代弁するバース。
その熱意は、神野区の繁華街にいた火野も同じだった。No.1ヒーローの勝利を信じて叫んでいた。
「負けるな、オールマイトぉ!!」
必死に叫ぶが、それは決してオールマイトに届かない。が、その思いはきっと伝わっている。1人1人の声援がオールマイトの背中を押しているよう木霊していくのだった。
「煩わしい」
刹那、その一言と同時にオール・フォー・ワンから衝撃波が放たれ、その場にいた者は吹き飛ばされる。
「精神の話はよして、現実の話をしよう」
かろうじて衝撃から耐えたオールマイトに向かって巨悪は言うと、その右腕に異変が起き、バキバキと骨が軋むような音と共にその形を変えていった。
「『筋骨
〝個性〟を重ねて、言い終わる頃には、その右腕は歪で、不気味、腕とは決して言えないような形へと膨張していた。空中からオールマイトに向かって飛び出したと同時にオール・フォー・ワンはオールマイトと手合わせをして確信を得ていた。彼の中にはもうワン・フォー・オールはない。今オールマイトが使っているのは余韻、あるいは残りカス。譲渡した後の残り火だと。そしてその火は、使う度に力を失い弱まっている。もはや吹かずとも徐々に消えていく弱々しい光だと。更にもう一つ、巨悪の中で確信があった。
「緑谷出久。譲渡先は彼だろう?」
先程、爆豪を救けに来た少年が発動した〝個性〟にオール・フォー・ワンは気付いていた。その名前を聞いて一瞬顔が曇るオールマイトを見て巨悪は接近しながらも続けて口を動かした。
「資格も無しに来てしまって…、まるで制御できてないじゃないか。存分に悔いて死ぬといいよオールマイト。先生としても、君の負けだ」
そう言ったと同時に、オール・フォー・ワンは歪な右腕を大きく振りかぶる。オールマイトもマッスルフォームと化した右腕を構え、両者の拳が激突し、大規模な衝撃が轟音と共に巻き起こる。
「(〝衝撃反転〟。君の放った力は全て君に返ってーーー…)」
拳がぶつかる最中、オール・フォー・ワンは続けて〝個性〟を付与し、反転した力がオールマイトの右腕へと返していた。その衝撃でオールマイトの右腕の至る所から流血し、バキバキと骨が折れる音が鳴ると同時に血飛沫が飛び散る中、「そうだよ…!」とオールマイトは口を開いた。
「!?」
「先生として…、叱らなきゃ……いかんのだよ!私が、叱らなきゃいかんのだよ!!!」
体から限界で蒸気が立ち上ろうとも、平和の象徴として引き下がる事は許されない。教え子達を放って負ける事も決して許されない。
「成る程、醜い…」
吹かずとも消えゆく弱々しい残り火。それでも抗っていた。役目を全うするまで絶えぬよう、必死でオールマイトは血反吐をしながらも抗っている。そして思っていた。象徴としてだけではない。
先代の師がしてくれたように、緑谷の師として、オールマイトは育てる為に、ここで命を賭すわけにはいかなかったのだ。
「そこまで醜く抗っていたとは……誤算だった」
〝SMASH!!!!〟
ボソッと呟くように悪態吐くオール・フォー・ワンはオールマイトの動作に驚いていた。衝撃反転をしてボロボロになった右腕のワン・フォー・オールの力を、なんと左腕に移動させ、膨れ上がった腕でオール・フォー・ワン目掛けてその一撃を放った。グラントリノがオールマイトに言った事を学習し、虚を付いた。即ち右腕は囮に使ったのだ。
諸に顔面に直撃した拳。巨悪のマスクは完全に破壊される、だが。
「らしくない小細工だ、誰の影響かな。浅い」
持ち堪えたオール・フォー・ワンは左腕を膨張させ、反撃をしようと構える。
「そりゃア…!!」
「!」
今の一撃が全て。もう残す手は無い。そう思っていた巨悪はオールマイトの一言とその大振りの構えを見て驚愕する。何故なら彼の目はまだ死んではいなかった。ボロボロになった右腕に再びワン・フォー・オールの力を加え、筋骨隆々となった右腕を構える。
「腰が、入ってなかったからな!!!」
蒸気が立ち上り、流血は血飛沫のように飛び散る。が、そんな事は今はどうでもいい。大きく足を地面へと踏み込み、オールマイトは全身の力を右腕へと集め、振りかぶる。
これが最期の一撃。
最期の力。
何人もの人が、その力を次へと託してきたんだよ。皆の為になりますようにと…一つの希望となりますようにと。次はお前の番だ。
頑張ろうな、俊典ーーー…
「おおおおおおおお!!!」
志村奈々の言葉がまるで走馬灯のように頭を過ぎる。オールマイトは歯を食い縛り、拳に全ての力、思いを載せて叫んだ。
さらばだ、オール・フォー・ワン。
さらばだ、ワン・フォー・オール
「
最期の、全身全霊を掛けた渾身の一撃。防御をとることのできなかったオール・フォー・ワンはソレを諸に食らい、叩き込まれ、轟音と衝撃と共に、地面へと捩じ込まれるように倒れたのだった。
No.97 全ての決着と始まり
更に向こうへ!Plus Ultra!!