いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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勝利と今後と決断

高評価続けてありがとうございます!!
今後もこの作品を暖かい目で見て下さいぃ!!


No.97 全ての決着と始まり

 

渾身の一撃を放ち、凄まじい衝撃と風圧でその一帯が乱気流のような風が巻き起こった。報道のヘリは飛ばされまいと必死に操縦を保させ、辺りにいた者は物や瓦礫にしがみついていた。そして、土煙が晴れ、大きく凹んだ地面の中からボロボロになったトゥルーフォームのオールマイトの姿は確認される。その目の前で横たわるのは気を失った巨悪ことオール・フォー・ワン。緊張が走る中、オールマイトは最後の力を振り絞るようにと、震えながら血塗れとなった左腕を掲げ、ズムッとマッスルフォームへとその身を変えた。

 

 

 

「「「「「オールマイトォ!!」」」」」

 

 

瞬間、報道を通して中継を見ていた全国の人々は歓喜、喜びの涙を溢れんばかりと流し、彼の名を叫んだ。

 

(ヴィラン)はー…動かず!!勝利!!オールマイト!!勝利の!!スタンディングです!!!』

 

感動を見せつける勇敢な姿に、報道のスタッフも涙を流しながらも中継し、勝利の喜びを噛み締める。その姿を見せる中、オールマイトはよろりと蹌踉けそうになっていたのを見て、エッジショットは思わず口を開いた。

 

「な…!今は無理せずに…」

 

「させて……やってくれ」

 

すると、腰を下ろしたバースの肩を借りたグラントリノがそれを止める。

 

「……もういつ倒れてもおかしくないってのに……エッジショットさん、今は見届けてやりましょう」

 

「…あぁ、……仕事中だ」

 

ドライバーからセルメダルを抜き取り、メダルは粒子となって消えると同時に変身が解かれる伊達は、拳を高々と突き上げるオールマイトの姿に、察した伊達はそう言うと、グラントリノもまた、頷いて見届けていた。そしてグラントリノは全てを察していた。

市民の歓声が鳴り響く中、猛々しく立つその姿は、

平和の象徴としての

No.1ヒーローとしての

最後の仕事だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

「この下!2人います!!あっちにも!」

 

「了解!急げ!」

 

その数分後、大規模な戦闘が行われた神野区に影響が出た崩壊したその街に、『蛇』の〝個性〟を得意とするウワバミを筆頭に生き埋めとなった市民を救助していた。何名か重症者が見つかり、警察達が保護して救急隊が確保していた地帯へと運び込まれて行く。

 

「お願いします!かなり酷い出血です!」

 

「い…てぇ……」

 

「この出血はヤバい!早くタンカーに乗せて下さい!」

 

運び込まれた人の出血を見て慌てる救急隊の1人はそう指示を出していると、そこへ駆けつけた伊達が「見せてみろ!」と声を掛け、その患者をジッと見つめた。

 

「胴体が圧迫されて肋骨が折れてるな。数本が肺に刺さってる…!救助用のヘリが来るまで応急処置するぞ!」

 

「わ、分かるんですか!?」

 

「ちょっとした〝個性〟でな。元より、俺は医者だったからよ。直ぐに始める!俺の言ったものを持ってきてくれ!」

 

伊達に言われて「は、はい!」と返事をする救急隊の1人。伊達は「大丈夫だからな、絶対助ける」と重症者に声を掛けながら上着を脱いでいた。

 

 

 

伊達明

 

個性『レントゲン』

 

眼球からエックス線を目的の対象に照射し、その視界にはレントゲンで写されたような映像が見えるぞ!正確な病気などは認識不可能だが、そこは元医者の知識を含めてしまえば、何が悪いのか大体はお見通しになる!

 

 

 

『オールマイトの交戦中もヒーローによる救助活動が続けられておりましたが、死傷者はかなりの数になると予想されます…!!元凶となった(ヴィラン)は……』

 

ヒーロー、警察達が救助を行っている頃、報道のリポーターが現状を伝えようと実況する中、全身を拘束されたオール・フォー・ワンが移動牢(メイデン)の中へと連れ込まれるのを目撃し、「あ、今!!」とリポーターは口を開いた。

 

『元凶と思われる(ヴィラン)移動牢(メイデン)に入れられようとしています!オールマイトらの厳戒体制の中、

今…!』

 

何人もの特殊部隊が警戒を怠らずに巨悪を護送しようとしている最中、血を吐きながらその実況を見ていたオールマイトがスッとカメラに向けて指を指した。

 

 

「次は、君だ」

 

 

短く発信されたメッセージ。それは一見、まだ見ぬ犯罪者への警鐘、平和の象徴の折れない姿。大画面を見ていた市民の人々はそれを視覚して喜んで歓声を称えている中、緑谷は気付いて涙を流していた。彼にとっては真逆のメッセージ。

 

 

『私はもう、出し切ってしまった』と。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

翌日。

巨悪事、オール・フォー・ワンは事の重大な大きさから、特例中の特例として、刑の判定を待たず特殊拘置所へ入れられた。

 

「ーーーここは?」

 

「黙っていろ!!見ればわかるだろう!!死刑すら生温い程の罪人が行き着く場所だ!!」

 

車椅子に乗せられ、特殊な素材で全身に巻かれた布に身を包み、更には拘束具で縛られ呼吸器を着用したオール・フォー・ワンは尋ねると、見れば分かる事を聞いてきたのか監獄の看守が怒鳴りつけるようにその場所を言う。

 

「ああ…監獄なのか…()()()()()()()。ここは…、センサーが多すぎて」

 

「………?何を言っている。貴様……()が視えてないとでも言うのか?」

 

言われてから場所を把握した彼に、看守は疑問を抱くと、巨悪は車椅子で押されながらその理由を説明した。

 

「衣ずれの音や空気のわずかな振動に加え、『赤外線』という〝個性〟で微かながらに()()して6年間過ごしてきた。『音・振動』で動作を…、『感知』で感情の動きや空間把握を補助しているんだ。ここはセンサーだらけで感知が意味を成さない…悪いね」

 

その言葉を聞いて、看守は冷や汗を流し、目の前にいる元巨悪に戦慄する。そんな状態で、あのNo.1ヒーローと対等、それ以上に闘っていたのかと。

悍ましいその人物を看守が運ぶ中、オール・フォー・ワンはニヤリと不気味にニヤけていた。

 

「(負けたよオールマイト。実に醜い足掻きだった。…しかし君は間違えたよ。戦いの果て、弟子に寄り添う道を君は望んだ。君は()()()を見誤った。死に時を失った。先生というのは弟子を1人立ちさせる為にいる。頼りにしてきた師が手の届かぬ場所へ去り、彼は憎悪を募らせる。彼は真に先頭を歩んでいく。仲間を増やす術を学んでいる。

大丈夫だ死柄木弔。経験も、憎悪も、悔恨も、頼れる仲間を率いて全てを糧としろ。

次は、君だ)」

 

あの場から逃した死柄木への言葉。その思いは伝えなくとも、弟子である彼には十分に伝わっていた。その執念が、次なる強大な巨悪になると。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

神野区の悪夢。その事件から一夜明け、世間は騒然としていた。テレビをつけてもその事件の話題が引っ切り無しで、日常を生活する人々の手にはその話題が大きく載せられていた新聞、スマホのニュース等が写されている。そんな中、国会の警視庁である場所での各部署の責任者が6人程座っている大きな卓上で緊急会議が行われており、資料を手にし、真ん中に立つ司会者が議題を始めるべく口を開いた。

 

「捕えた脳無はいずれもこれまでと同様、人間的な反応がなく新たな情報は得られそうにありません。保管されていたという倉庫は消し飛ばされており、彼らの製造方法についても追って調査を進めるしかありません」

 

「そもそもその倉庫というのもフェイクじゃねえのか?生体実験なぞ行える環境じゃねえし場も安易すぎる。バーからも連中の個人情報はあがってねえんだろ?」

 

年代で上官とも思われる人物が掌に顔を乗せて資料を見るなりそう尋ねると、司会者は「現在調査中です」と述べ、尋ねた上官は「……んー……」と俯き唸り声を軽く上げる。

 

「大元は捕えたものの…死柄木をはじめとした実行犯らは丸々捕り逃がした…。とびきり甘く採点したとして…、痛み分けといったところか」

 

「馬鹿野郎、平和の象徴と引き換えだぞ。オールマイトの弱体化が世間に晒され、もう今までの〝絶対に倒れない平和の象徴〟はいない。国民にとっても、(ヴィラン)にとってもな」

 

「たった1人にもたれかかってきたツケだァな…」

 

そう、No.1と謳われ、平和の象徴と掲げられたヒーローはもう存在しない。国を支えられてもらった分、それに縋り過ぎたが故の結果が今回の議題。その代償は余りにも大きく、失ってしまった。

 

「馬鹿も集まりゃここまで出来ると…全員が知った。俺は恐れているよ。最初期のプロファイリングじゃ子どもの癇癪とまで言われていた主犯格、死柄木弔の犯行計画は、数を重ねるごとに回りくどく、世間への影響を見据えたものになっている。…死柄木は成長している。そして、オールマイトが崩れ以前にも増して抑圧がなくなろうとしている状況。連合は失敗する度に力をつけていく。こうも都合良く、勢力拡大の余地が残っていくものかね?」

 

「…こうなる事も、向こうの手の内だと?」

 

「結果論じゃないのか?」

 

「わからん。ただ一つ確実に言えるのは…奴等は必ず捕えなきゃならん。我々警察も(ヴィラン)受け取り係などと言われている場合じゃない」

 

上官は息を吐くと椅子に持たれ込み、上を見上げると「改革が必要だ」と最後呟いたのだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

その一方、大きな総合病院で入院している病室に一通りの捜査を終えた塚内警部と、同じく入院中だったグラントリノが顔を出し、オールマイトの見舞い見、事情調査をしていた。ベッドに座り込んでいるオールマイトは包帯で巻かれた手を見つめながら口を動かした。

 

「私の中の残り火は消えた、〝平和の象徴〟は死にました。…しかしまだやらねばならぬ事があります」

 

「死柄木弔。志村の孫……か」

 

「奴の発言だろ?根拠が薄くはないか?2人共その先代の家族とは交流がなかったのか?」

 

オールマイトの意思にグラントリノが察すると、塚内は疑問を抱く。巨悪は人を内側、即ち相手の心から崩す話術を得意とし、その発言が嘘の発言かもしれないと考えていた。が、志村奈々と共に活動していたグラントリノが応えた。

 

「ああ…、志村は夫を殺されていてな。我が子をヒーロー世界から遠ざけるべく里子に出している。俺は俊典には『私にもしもの事があってもあの子には関わらないでほしい』と…」

 

「故人との約束が逆に…か。……やるせないな」

 

志村奈々の決断が死柄木の道を踏み外してしまった。塚内は表情を曇らせながら言うと、オールマイトが拳を握り締めながら口を開く。

 

「お師匠がせめて平穏にと決別した血縁…!私は死柄木を見つけなければ…!見つけて彼を…」

 

「だめだ。見つけてどうする?お前はもう奴を(ヴィラン)として見れてない。必ず迷う。素性がどうであれ奴は犯罪者だ。死柄木の捜索はこれから俺と塚内で行っていく」

 

見つけて彼を救けようと考えていたのだろうが、例え恩師の孫であろうと死柄木は立派な犯罪者。今のオールマイトが探した所で、その甘い考えはよく知っており、躊躇するのも目に見えている。グラントリノが断ると塚内も無言で頷き、グラントリノは続けて顔を曇らせているオールマイトに声を掛けた。

 

「お前は雄英に残ってすべき事を全うしろ。平和の象徴ではいられなくなったとしても、オールマイトはまだ生きてるんだ」

 

「ですね。……さて、僕はそろそろ署に戻るよ」

 

頷いた塚内は椅子からゆっくりと立ち上がる。

 

「爆豪と火野か?」

 

「爆豪君はおそらく家に帰宅しているよ。軽い怪我で済んでいるからね。…問題は…」

 

「火野少年……」

 

グラントリノが聞くと塚内はジャケットを取りながら応え、その言い分にオールマイトが俯きながら言う。

 

「あぁ、派生で生まれたアンクに続いて2人目の派生が誕生してる。今は問題無いとは思うけど念の為ね。…それに、火野君には新しい〝個性〟が目覚めた」

 

「暴走形態ってヤツか……随分と難儀な〝個性〟を宿したもんだ…。本当にあの少年は一体何もんなんだ」

 

「それも調査中だね。(ヴィラン)の脇真音姉弟もそうだし、彼の〝個性〟は特殊過ぎる」

 

グリードを2体もその体に宿し、単独で行動。そして言わずもがな、オーズの〝個性〟は多くの動物の力を使い分ける。前代未聞の力故に、その調査の問題は山積みとなっている。グラントリノは息を吐くと、オールマイトに声を掛けた。

 

「俊典、あの小僧達も含めて今のお前がするべき事はわかっとるな?今はしっかり休めて、今後の活動を見直せよ」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

悪夢の事件からその後、緑谷達は轟、八百万、耳郎と合流し、偶然にもその場所に火野とアンク、そしてウヴァも集まっていた。互いに言いたい事は沢山あっただろうが、爆豪と火野は人質の身だったので直ぐに警察が到着し、そのままま同行されて行った。そして、半日以上かけて、緑谷達は家路を辿った。

 

「では」

 

「ありがとうな、みんな」

 

「お三方、()()()()帰って下さいね!?」

 

「うん、本当にありがとう」

 

「じゃあ…また学校で」

 

「ん……、じゃあね」

 

駅で別れの挨拶を告げ、それぞれは去って行く。耳郎も彼らの背中を見送った後、振り返り一歩踏み出そうとするが、その足は立ち止まる。何も言わずに、ただ心配そうな表情で来た道を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

その夕方、警察署、待合室にて。

 

 

「……〜ッッ!!」

 

「う、ウヴァっ。あと少しだから落ち着こうよっ」

 

「はぁ!?落ち着いていられるか!何時間尋問されたと思ってるんだ!?半分デマカセな言い訳されてる挙句に犯罪者扱いの()()()って処遇みたいな事を言われて気が立ってんだよ俺は!」

 

()()だ。…フン、これだから脳筋は。逮捕されなかっただけ有り難く思っとけ。ま、俺はそのまま牢獄にぶち込まれてくれた方が都合が良かったがな?」

 

「なんだと!!?」

 

「もぉ、やめろってアンク!」

 

あの後、警察と同行した火野達は(ヴィラン)に人質にされた時の事情聴取をされたと同時に、その(ヴィラン)に加担したウヴァは犯罪者扱いとしてそのまま逮捕されそうになったのだが、火野の起点を活かして事情を説明し、何とか逮捕までには至らなかったのだが、(ヴィラン)の詳細を掴もうと警察達はウヴァに対して尋問を半日以上行われてしまったらしい。その尋問に過去の話を持ち掛けては混乱すると火野に言い訳をお願いされたのだが、それでもウヴァにとっては拘束されたようなもので、耐え難い苦痛だったのだろうか、こうして待合室で沸騰する怒りを椅子を蹴り飛ばす形でぶつけている。

今までは自由の身だった故、人間に拘束されるのが相当嫌な体験だったのだろう。

 

「まあでも、これで(ヴィラン)に加担したらどうなるか身に染みただろ?」

 

「フン!言われなくてもたっっぷりとな!」

 

「そんな自信気に言わなくても…」

 

変に威張るウヴァに顔を顰める火野。すると、待合室野ドアがノックする音が聞こえ、扉が開かれると、馴染みのある人物が入って来た。

 

「やあ、火野君、アンク君。それとウヴァ君かな?随分待たせたね」

 

「塚内さん!」

 

「お前とはしょっちゅう会うな」

 

「そうかもね。でも君の自由行動は感心しないな。火野君は救け出せたのは良いけど」

 

現れたのは塚内で驚く火野。続けてアンクが言うと塚内は苦笑をしながら注意するが「なら結果オーライだ」と反省のはの字を見せずアンクは腕を組む。塚内は再び苦笑をしながら頬を掻くと視線をその場に居た3人に向けて口を開いた。

 

「さて、ウヴァ君の処遇についてだが、今後火野君の管理の元から離れないのならアンク君と同様、火野君の〝個性〟として大目に見てくれると上が判断してくれたそうだ。だけど、仮にもし1人で行動して、(ヴィラン)に肩入れな行為をするようなら、次は捕まえなきゃいけない。肝に命じて置くように」

 

「フン、人間に言われなくてもそのつもりだ」

 

「ウヴァ!」

 

「…ムゥ、わかった……」

 

こちらも反省の素振りを見せないウヴァに、火野は声を張り上げるとウヴァはバツの悪そうな表情で頷き承諾する。塚内は「よし」と頷くと、続けて火野に声を掛けた。

 

「あともう一つ、火野君。君の新しい力についてだけど…」

 

「あ…それってあの紫のメダルの事ですか…?」

 

「うん、事情は聞いたよ。聞いた限り、かなり危ない力なんだってね?そこでなんだけど、そのメダルはこちらでしばらく預かーー」

 

「無理だな」

 

塚内は提案を申し込もうとすると、アンクが間入れずそれを断る。

 

「…それは何故だいアンク君?」

 

「俺もどう言った仕組みかは知らないが、あのコアメダルは他のコアメダルとは違うモノだ。映司が承諾したところで、肝心のメダルは映司の中から出てきやしない。例え身体を解剖して引っぺがしても元の場所に戻るだろうな」

 

「それは、そのメダルに意思でもあると言うのかい?」

 

「まァ………そんなところだ」

 

塚内の質問にアンクは何か言いたげにしたが、火野の視線を察して受け流すように振る舞った。

これもアンクの聞いた話で、コアメダルは欲望をもつ力がエネルギーの源、だが紫のメダルはその反対で〝無〟の力で存在するメダルらしく、前世の火野は事情があって空白になり、そこに付け込んで入り込んでしまったらしい。だがこの世界の火野には立派な目標があり、決して無欲では無い。何故火野の中に再び現れたのかは、流石のアンクにも分からないみたいだ。

 

「ふむ…困ったな。仮にもしまた暴走してしまえば、被害を出すだけでは済まないかもしれない」

 

「っ…だ、大丈夫ですよ!他のメダルよりは癖が強いけど、きっと使いこなせれると思いますから!」

 

「その()()()の間に暴走してしまったら?」

 

「!?………」

 

いくら自身の力と言えど、全く持って()()()の力を発揮してそう簡単に使いこなせるのは難しい。増してや人に危害を加えかねない紫のメダル。その過ちを犯してからでは遅いと塚内は目で訴え、火野は返す言葉も無く黙り込んでしまう。

 

「……フン、要はそのメダルを使わせなきゃ良い話だろ?」

 

ふと、ウヴァが口を動かす。キョトンとする火野にアンクも喋り出した。

 

「馬鹿が、アレは映司が戦闘をすれば勝手に出てくる。手の付けられない身勝手な暴走をどうやって使わせないつもりだ?お前も散々見て来ただろ?」

 

「ぬゥ…」

 

アンクの言い分に何も言えなくなり唸り声を漏らすウヴァ。どうしたものかとその場に居た者は考え込んでいると、再びドアのノックする音が聞こえ、その扉はガチャリと開かれた。

 

 

「私が!来た!!ゲッホッッ!?」

 

 

「「オールマイト!?」」

 

筋骨隆々な体はいつも安心感を覚えるその巨体、オールマイトが笑顔で顔を出すが、瞬時にトゥルーフォームへと戻ると同時に血を吐き出す。

 

「あぁそうか、もう退院しても良いって言われてたね」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、私は大丈夫さ。もう力は使い切ってしまったがね」

 

そういえばと塚内が言うと、血を拭うオールマイトを気にかけて火野は声をかけるが、オールマイトは掌を見せて心配させまいと振る舞う。

 

「火野少年、あの時はすまなかった…」

 

「い、いえ…元はと言えば俺が捕まったのが悪いんですから…」

 

「どっかの虫ケラのせいでな」

 

「おい」

 

頭を下げるオールマイトにたじろぐ火野。捕まった張本人を横にしてボソッと言うアンクにウヴァは眉をピクリと上げる。

 

「塚内君、火野少年はもう家に返せるのかい?」

 

「それなんだが、彼の新しい〝個性〟を今後どうするか今取り込み中でね…」

 

「そうか………」

 

察したオールマイトは顔を曇らせるが、それも数秒で彼の表情は前向きとなり、塚内に向かって口を開いた。

 

「なら、その〝個性〟を使いこなせれば問題ないのではないか?」

 

「え?」

 

「…ハッ、良くそう簡単に言えたもんだな。アレは他のメダルとは違う。使えば使う程、映司の体は侵食されて、その時には……」

 

「だからこそ、私がいる」

 

「…!知ったような口を…!」

 

「あ、アンク!」

 

紫のメダルの脅威は誰にも、火野にも()()教えていない。何とかなると言うようなオールマイトの素振りにアンクは顔を顰めらせ、詰め寄ろうとするが火野はそれを制す。するとオールマイトはグッと拳を握り締め、口を開いた。

 

「君も知っていると思うが、私はもうワン・フォー・オールの力を全て出し切ってしまった。もうマッスルフォームも先程の通り碌に維持する事も出来ない。これからは雄英教師として、君達を全力でサポートをするつもりだ。その力がアンク少年の言う通り、恐れられた力ならば、使う事すら脅威だろう……だが、緑谷少年が私の〝個性〟を受け継ぎ、己のものにしようとしているならば、君もその力を受け入れられると私は思うんだ…」

 

「あの力を…俺のものに……?」

 

「あぁ、今はまだ使わない方がいいかもしれない。だが時間を掛けてゆっくりと体に馴染ませていけば…きっといつかは、誰かの救いを手助け出来る正義の〝個性〟として使いこなせると、私は信じている」

 

「…フン、また暴走したらどうする?」

 

「その時は私が全力で止める。…だが、今の私では恐らく力不足だろう……」

 

エゴだけを並べるオールマイトにアンクは嫌味を垂れると、彼はそう言って一旦区切り、「その時は」とアンク、そしてウヴァの前に立ち、深々と頭を下げた。

 

「お、オールマイト!?」

 

「んな!」

 

「!?」

 

No.1ともあろう者が、簡単に頭を下げるその行動に火野、アンク、ウヴァは目を見開き驚愕する。

 

「恥など等に捨てた。私はもう君達の前に立つ男では無い。なら、君達を陰で支える男となっての申し出だ。私が駄目な時は、あの時のように、彼を救ってくれないだろうか。アンク少年、ウヴァ少年」

 

「「………」」

 

「オールマイト…」

 

その姿を見て、火野は俯くと、コクリと頷き、アンク達に声を掛けた。

 

「俺からもお願いだ、アンク、ウヴァ。」

 

「映司…」

 

「………」

 

火野も同様に深々と頭を下げる。2人から頭を下げられたアンクは舌打ちをしながら頭を掻くと呆れたように口を動かした。

 

「どうなっても知らないぞ…!おい塚内。こいつが暴走したら俺が止める。それとなるべく使わせないようにしてやる。それなら文句無いな?」

 

「アンク君…」

 

「オールマイト、お前も使えない無様になり下がったのなら、せいぜいこの馬鹿を暴走させないように見張っとけ」

 

「アンク少年…ありがとう…」

 

苛立ちを掻き消すように淡々と2人にそう言い、アンクはその申し出を了承する。火野は顔を上げて「ありが…」と言おうとした直後、アンクは火野の頬を手で鷲掴みし、口を動かした。

 

「アイス1年分だ」

 

「ふぇ?」

 

「俺が直々に手伝ってやるんだ。それ相応の対価は払ってもらわないと釣り合わないんだよ」

 

人差し指を火野に突き出し、断言することアンク。その相変わらずの等価交換に、火野はアンクの手を払いながら安心したような表情で「ありがとう」と礼を言う。そして、何も言わなかったウヴァも続いて言うように口を開いた。

 

「…俺にも映司とは取引した身だ。面倒だが、その契約に応じてやらん事もない」

 

「ハッ、自分の身を弁えろ。お前は強制だ、()()()が」

 

「ム!?」

 

了承するウヴァだが、その上からの物言いにアンクがツッコむとウヴァは目を見開き何も言い返せずにいた。その光景に火野は苦笑をしていると、塚内は咳払いをし、3人を見つめた。

 

「やれやれ、まさか君が頭を下げるとはね。よし、火野君の件は君達に任せる。万が一、暴走して人に危害を加えるようならその時は覚悟しておいてくれよ?」

 

「塚内さん…ありがとうございます!」

 

「ありがとう、塚内君」

 

「気にするな。君も今後の人生をしっかり励んでくれよ」

 

平和の象徴ではない彼に、残された選択肢は限られている。だからこそ、友である彼に未来を託した。新しい有精卵が、立派なヒーローになる事を。

 




次回!第9.5章 〜学生寮〜

No.98 家庭訪問

更に向こうへ!Plus Ultra!!


火野「ウヴァも仲間になった事だし本当心強いよ!」

ウヴァ「フン、任せろ。俺がついていれば、どんな奴が来ようと根絶やしに出来る」

アンク「調子に乗りやがって虫ケラが…」

火野「あ、でもそうなると皆んなに紹介しないとな…。なぁウヴァ、紹介する時が来たらちゃんと挨拶しろよ?」

ウヴァ「挨拶だと?くだらん、そんなもの必要無い」

火野「ダメだって!これからは一緒に生活するんだから絶対にしなきゃダメだ」

ウヴァ「ムぅ…」

火野「どうせなら少しギャグをかませば、フレンドリーに接してくれるかも!頼むよウヴァ」

ウヴァ「ギャグ…だと……!?わ、わかった…」
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