いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
皆さんあけましておめでとうございます!
しょうくんだよ!です!お待ちになられた方、大変お待たせしました!
No.98 家庭訪問
『ヒーロービルボードチャートJP!!
事件解決数、社会貢献度、国民の支持率など、諸々を集計し、毎年2回発表される現役ヒーロー番付!!まず最初!不動のNo.1がまさかの!!日本のみならずヒーローの本場アメリカでも騒然!オールマイトの本当の姿!!体力の限界!!事実上のヒーロー活動引退を表明!!そしてNo.4ベストジーニスト!一命は取り留めたものの、長期の活動休止!!更にNo.32ヒーロー!!人気が根強いプッシーキャッツが1人、ラグドール!拉致後、〝個性〟を使用出来なくなるという変調から活動を見合わせ!一夜にして多くのヒーロー達が大打撃を受けた〝神野の悪夢〟!!これからどうなる日本、そしてヒーローよ!以上、今日のクイックニュースでした!続いてはお天気、木原さーん……』
そこで、プツンと画面が真っ黒になる。それと同時に「あ」と火野は声を上げてリモコンを持ったアンクに声を掛けた。事情聴取を終えて帰宅した火野は、拉致された身なのでしばらくは外出を禁止されていたのだ。
「ちょっとアンク、まだ見たかったのに」
「フン、どうでも良いだろ。ヒーロー共が何人引退しようが、俺が知りたい情報を1つも出さない。ニュースってのは人間がその場に起きた情報の『上部』だけを提供するもんだろ?肝心な情報は公にしない…見ていても癪に触るだけだ」
「なら、直接確かめたらどうだ?」
そう言ってリモコンをソファーに放り投げ、その横に豪快に寝そべるアンクに、セルメダルを手の中で触るウヴァが声を掛けると、アンクは鼻を鳴らして口を開いた。
「馬鹿が、何処に居るかも分からん連中にどう確かめろって言うんだ?映司も外出出来ない以上、ネットで調べるしか手は無いだろ」
「…なら、ヤミーを使って……」
「絶対ダメ。ウヴァ、約束しただろ?ヤミーなんて出したら、騒ぎになるのは目に見えてるんだから。捕まりたくないだろ?」
「ム……」
提案を拒否されまくるウヴァは篭ってしまい窓の外へと視線を逸らす。すると、何を思ったのかアンクはソファーから立ち上がり、窓の扉を開けた。
「何処行くんだ?」
「野暮用だ。ちょっと思いついた事があってな」
「おいおい、俺達外出禁止だぞ?」
「フン、それは
吐き捨てるように言い終え、アンクは2階の窓から飛び降り姿を消した。
「自分が〝個性〟って名目を棚に使うなんて上手い事するなぁ……っておい!?お前が勝手に動いたら〝個性〟無断使用で俺が捕まるじゃんか!?」
飛び降りたアンクに窓から言う火野は、その〝個性〟の言葉にハッとし、自分にツッコみを入れながら声を上げるが、もうアンクの姿は何処にも無く、溜息を吐きながら窓を閉める。
「ウヴァ、お前らグリードって皆んなあんな感じなの?」
「あんな奴と一緒にするな。…だが、こんな狭い空間に閉じ籠るのはセルメダルを消費している時くらいしか無い。俺達グリードは常に欲望を求めるべく行動しているからな」
「へぇ、そうなんだ…アンクも偶に1人で行動しているのはその為なのかな…」
「さあな…まァ、お前の体を借りれて普段味わえない欲望が手に入るようになってから、俺もあいつも前より欲望を欲する事は無くなっているのも事実だ」
「今のところウヴァは良いんだけど、アンクはアイスばかり食べるからしょっちゅうお腹下すんだよな」
「あいす…そんなに美味いのか?」
「冷たくて美味しいけど、ウヴァにも気に入られたら流石に俺が困るな」
火野はそう言って苦笑する。ウヴァにも体を貸す権利を与えたのだが、彼は物を見る、景色を眺めるのが気に入ったらしく、そこまで負担は感じない。そのおかげで本人も言っての通り、欲望自体が叶えられているという形でこうして落ち着いているのも事実だった。だが、前から一緒に居るアンク。彼はアイスが何よりも好物なアンクは毎日棒のアイスを飽きる事なく食べ続けている。態勢は付いたものの、それでも食べる量が多いのでアンクに体を貸し終えた後は腹痛を訴えるのもしばしばだ。
「…映司、確か今日何かあるんだったな?」
「え?あぁ、うん。昼過ぎくらいに先生達が来るんだよ。郵送された紙、ウヴァにも見せただろ?」
ふと、ウヴァは思い出したのか火野に聞くと、火野は机の上に置かれているプリントに目を配った。突然学校側から送られてきた資料。そのプリントの表紙には、〝雄英高校全寮制導入検討のお知らせ〟と書かれていたのだった。
☆★☆★☆★☆
同時刻、耳郎家。
「んーーー……ロックじゃないよねぇ……。
大事に至らなかったとは言え、1人娘が被害に遭った後でしれっと全寮制にしますって…」
「お父さんの仰る事はごもっともです。我々も知らず知らず芽生えていた慢心・怠慢を見逃し、やれる事を考えております。どうか今一度、任せては頂けないでしょうか」
「………」
趣味が大見えの楽器が沢山並べられたリビングで、無愛想な態度をとるのは耳郎の父、耳郎響徳。隣に座って緊張気味なのか黙っていたのは母親の耳郎美香。
そして響徳が嫌がる理由は明白だった。
襲撃から一時は逃れたものの、大事な娘を学校側に預けて下さいなどと言われたら親としても黙ってはいない。同時に、オールマイトが引退してしまった学校に安心など極めて少ない。そう思って響徳の態度を見た相澤は頭を深々と下げ申し出た。
「必ず響香さんを立派なヒーローに育て上げて見せますので…」
「あー先生いいスよ頭下げなくて!プリント郵送された時点でもう結論出たんで」
すると、器用にイヤホンジャックでリビングのドアを開いた耳郎が申し訳なさそうに声をかける。両手は飲み物を乗せたトレーを持っており、それをオールマイトと相澤の前へ置きながら口を開いた。
「このオッさんオールマイトの戦い見て『こんなロックな人に教えてもらえるなんてウチの娘本気ブライアンザサンだぞ!』って泣いたらしいスもん」
「ばっ!?響香やめろ!折角厳格な父親を通そうとしてんのに!!」
「うっさいなオッさん」
「2人共やめてよ、ラウドバンクじゃないんだから」
折角の威厳が台無しにされて文句を垂れる響徳だが耳郎は流すように言う。その隣で小声気味で美香は止めようとするが2人の親子喧嘩は止まらなかった。そしてそれをキョトンとした表情で相澤は固まっていると、響徳は溜息を吐きながら相澤に声を掛けた。
「いや…その…すまない。ちょっと調子にのってしまいました…。娘の件ですが、私達は言っての通り断る理由なんてございません。ですから、相澤先生、オールマイト先生、娘をロックでビッグなヒーローに育てて上げて下さい!」
「お、お願いします…」
「あ…はい、こちらこそ……」
両方から頭を下げられ、ワンテンポ遅れた相澤は戸惑いながらもそれを了承すると、響徳は直ぐに顔を上げて相澤に声を掛けた。
「ところで先生。最近ウチの娘なんですが…そのまァ、何か変わった事ないですか?」
「変わった事?」
「えぇ…なんかこう…娘が思い詰めたりと言いますか、ここ最近女の子らしいと言いますか……」
「オッさん!?ちょっ、先生!何でも、何でもないですから!!」
響徳の言葉に首を傾げる相澤の横で、耳郎はハッとし、真っ赤にしながら響徳の顔にイヤホンジャックを突き刺して爆音を届けたのだった。
☆★☆★☆★☆
耳郎家の両親から許可を貰い、次の訪問へと車で移動中、相澤はオールマイトに声をかけた。
「もっと非難されるものと覚悟していました。………一杯…奢ります」
「ハハハ、よせやい、らしくない。私飲めないしさ、それに次のお宅は…そう上手く行かないと思うぞ」
普段の性格から考えてそう言う相澤にオールマイトは励ましながらも忠告していた。そして次の訪問先へと到着し、その家の表札を眺める。
☆★☆★
「あっはい。よろしくお願いします」
相澤とオールマイトはその自宅にお邪魔して今回の内容を説明すると、母親である爆豪光己はあっさりと承諾すると同時に隣に座っている爆豪の頭をスパァンと叩く。
「バッバァ!叩くんじゃねぇよブッ飛ばすぞコラ!!」
「うっさい!!元はと言えばアンタが弱っちいからとっ捕まってご迷惑かけたんでしょ!!」
思春期なのか性格なのか、負けずと反抗を見せる爆豪だが光己は問答無用でもう一度頭を叩き怒鳴りつける。見た目はかなりの美人だがその性格と言動は息子の爆豪と同等かそれ以上の気迫を見せつけられる彼女にオールマイトと相澤は固まっていた。そしてそれを宥めようと父親である爆豪勝がおどおどしながら声を掛ける。
「2人共…や、やめろよォ。先生方が…驚いてるだろォ…」
「うっせんだよクソオヤジ!てめェは黙ってろ!!」
「うっせぇのは勝己でしょ!あんたも喋るなら、ハキハキ喋りなさいよ!」
「んん〜…」
「(何、この闇深い家庭)」
母親と息子とは裏腹な弱気な性格の勝。そんな3人のやり取りを見ていたオールマイトはこの家族に深く関わるのをよそうと悟っていた。
「あの…本当によろしいのでしょうか」
「ん!?ああ、寮でしょ?むしろ有難いよ!」
絶えず爆豪の頭を叩く光己に、相澤は声を掛けると、その手を止めて光己は喋りだした。
「勝己は、なまじ何でも出来ちゃうし能力も恵まれちまってさ、他所様からチヤホヤされてここまで来ちまった。薄っぺらいとこばっか褒められて……。だから、会見での言葉が嬉しかったんだよね。『ああ、この学校は勝己を見てくれてる』って。一時は不安でどうなるかと思ったけど、こうして五体満足で帰ってきてるワケだしさ」
1人の親として、息子の顔が無事に見れたのはこんなにも喜ばしい。そんな想いが込められているのか、睨む爆豪の頭にはそっと撫でるように光己の手が置かれているが、その手に力が入り、爆豪の頭はグンと下げられた。
「しばらく風当たりは強いかもしんないけど、私は信頼して任せるよ、な」
「うん」
「こんなどうしようもない奴だけど、みっちりしごいて良いヒーローにしてやって下さい」
光己と勝は顔を見合わせ同時に教師達に向かって頭を深々と下げた。誘拐されて信用されないのが普通だが、この2人は信頼し任せると言った。その姿に相澤は思わず気が抜けた表情をしていると、オールマイトがこっそり膝を叩いた。
「一杯奢ろうか?」
☆★☆★☆★
「さて次はーー……、緑谷ん家が近いですね」
「ああ、それなんだが相澤君…」
「オールマイト」
「ん?」
爆豪の家庭訪問を終え、相澤はスマホを取り出し、付近に住んでいる緑谷の家へと向かおうとした時、爆豪が玄関から現れオールマイトに声を掛ける。
「デクは、あんたにとって何なんだよ」
真っ直ぐ見つめた表情。それはあの神野区の悪夢の時に、オールマイトがカメラに向けて言った言葉を聞いて、緑谷が涙を流していた。それを隣で見ていた爆豪は何処か心が引っかかっているように見えた。気になった爆豪はオールマイトに聞くが、オールマイトは数秒固まりその口を開く。
「……生徒だよ。君と同様に前途あるヒーローの卵だ」
すまない、爆豪少年。ここだけは晒せないんだ。
オールマイトは出来る限り、詮索されないような表情を作り、そう言う。
「勝己コラ!あんた外に出るなってケーサツに…」
玄関の方から光己の怒鳴り声が聞こえる。これ以上はまずいと思ったのか爆豪は「そっか」と体を半回転させて自宅に戻ろうとした。
「あんたが言いたくねえなら、いいわ。ありがとよ」
「勝己!!」
「わーってるよ!」
怒鳴る光己に煩わしそうな返事をし、爆豪は玄関を開けて家の中へ入って行く。その顔は何処か寂し気な様子だったのをオールマイトは、黙って見送っていた。
☆★☆★☆★
「…本当に大丈夫ですか」
「ああ!すまん相澤君。今日中に回らないといけないんだろ?この調子だとディナータイムに差し掛かっちゃうぜ。ここは私が行くから君は他の方がいいんじゃない…かな!?」
「…分かりました。終わり次第迎えに行きますので、緑谷はよろしくお願いします」
相澤は言うとオールマイトは軽く会釈を返した。車は発進し、相澤は次に行く自宅、火野の資料を目視する。すると、深く息を吐いて口を開いた。
「まぁ、……今に始まった事じゃないな」
☆★☆★☆★☆
「先生どうぞ、つまらない物ですが」
「いえ、お気遣い無く…」
テーブルの上に置かれた紅茶とモンブランケーキ。泉比奈に軽く会釈した相澤は目の前に座っている火野とウヴァを見て口を開いた。
「…火野、アンクは留守か?」
「あ〜その…どこかに行っちゃったみたいで」
「
「す、すみません……」
バツの悪そうな表情で謝る火野を相澤は息を吐きながら「いや…」と小さく首を振り、その口を動かす。
「今回は責めに来た訳じゃ無い。大目に見てやる。…泉さん、今日は時間を作って頂きありがとうございます」
「いえいえッ、私が映司君の保護者代わりなので、当然の事です」
火野の両親が海外で働いているのは織り込み済みな上で相澤は泉比奈に一言御礼を言う。泉はお構い無くみたいな表情で気を遣わせているが、この後も恐らく仕事があるのだろう。相澤は手短に済ませようと本題に入った。
「今回の家庭訪問は、事前に郵送された内容の雄英生徒、全寮制についてですが…」
「あ、はい…私は構いません」
あっさりと了承した泉だが、「ですが…」と後付けに口を開いた。
「映司君…映司君は、本当に大丈夫なのでしょうか」
「比奈ちゃん?」
「…大丈夫です。我々教師が責任持って…」
「そうじゃないんです」
学校に預けるのが不安なのだろうか、相澤は言うと、泉は割入ってキョトンとしている火野の顔を見つめて喋り出した。
「映司君は本当に凄い〝個性〟を持っていますが、日に日にそれは恐ろしい力ではないかと不安なんです。体育祭の時も突然アンクって言う人格が現れて、今度は不良みたいな奴が出て来て…正直私困惑しています」
「…おい、それは俺の事か?」
「貴方以外に誰が居るんですか」
不良と言われウヴァは自分に指を指すと睨み付けるように泉は言い、そのまま相澤に向かって口を動かした。
「合宿で火野君が攫われた時、私は心配で震えていました。その後に起きた神野区の事件…。映司君は〝個性〟が暴走してしまったのですよね…?無事に帰って来てくれたのは嬉しいです。でも私、恐くてしょうがないんです。立派なヒーローになってくれるのは凄く誇らしい事です…。ですが、あのオールマイトのようにボロボロになってしまうのが恐くて…」
「比奈ちゃん…」
「……」
今にも泣いてしまいそうな表情をする泉に火野は目を見開き俯く。血の繋がった者では無いとは言え、海外で働く両親の代わりに育ててくれた人だ。泉は本当の家族のように火野を見守り続けてくれていたのだ。今更その真意に気付き、蔑ろにし続けた火野は申し訳ない気持ちで胸が張り裂けそうになる。
「映司君はまだ学生です…。自分の事は後回しにして他人を優先にしてしまうお人好しなんです…。先生、本当に貴方方の学校は生徒を立派で、
「…それは、映司君次第です」
きっぱりと言われた言葉。事実ではあるが、その言い方は信用を損なう発言。泉は目を見開き、呆れた様子で「じゃあ…」と口にした瞬間。相澤は「ただ…」と上乗せし、席を立ち上がって口を動かした。
「それを支えるのが学校…雄英教師の勤めです。映司君の〝個性〟は危険を抱えた〝個性〟ですが…担任として、大人として、責任を持って守り、見届けて行きます。今の雄英には不安を抱いてもおかしくはありません。その状態で我々教師、そして生徒達は変わろうとしています。なので…火野映司君と言う
相澤は言い終わると同時に深く頭を下げる。その姿勢は教師としての立場、1人の男としての真意。その姿に泉は愕然と目を見開き、ふぅ…と大きく息を吐いた。
「……映司君」
「うん…」
「絶対、無茶な事はしないでね?」
「……わかった。約束する」
火野に向けられた泉の眼差しは、今にも泣きそうな眼をしていたが、その奥には信じているような瞳が写されていた。火野はその想いを受け止め、重々承知して頷くと、泉は相澤に向けて「頭を上げてください」と言った。
「先生、どうか…映司君をよろしくお願いします」
「…はい。ありがとうございます……」
☆★☆★☆★☆★
一方、アンクは翼を広げて空を飛行し、とある高層ビルに到着する。最上階の部屋の窓が開いており、無断で中へと入るとバースデーケーキを作っている男性の背中が視界に入る。
「これはこれは、高度なテクニックで侵入してくるとはね。側から見れば泥棒に近い行動だが…?それもグリードの習慣の一種なのかね?」
「別にいいだろ」
アンクの存在に気づいたのか、男性もとい鴻上は動きを止めずにホイップクリームをスポンジケーキに搾り出し、デコレーションを続ける。アンクは鼻を鳴らしながら続けて口を開いた。
「お前らの会社はサポートアイテムを作る会社だったな?作って欲しいもんがある」
「ほう、何かね?」
「情報を探れる
アンクのその言葉に鴻上はピタリと動きを止める。そしてニヤリと頬を上げると勢いよく振り返り「詳しく聞こう!」と声を上げて言ったのだった。
No.99 入れ寮
更に向こうへ!Plus Ultra!!