皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
あくまでも本編にはそこまで関係のない過去編としてお楽しみください
─────数年前。
一匹の『竜』がいた。
本来の美しい琥珀色とは程遠い血錆のような赤褐色の鱗に覆われた身体はぶ厚く刺々しく、何より大き過ぎる。
その巨体は翼を閉じていても一般的な家屋に匹敵し、伸ばされた尾を含めればはその倍以上だ。
竜種。
それはこの世界における最強の生物種であり、同時に災厄の象徴でもある。その類系であるこの竜も例外ではない。
『竜』と言ってもその体型は東洋に伝えられる竜というよりも英雄譚に語られる四足を持った竜種たるドラゴンから翼を奪ったかのような異形だ。
だが、その眼光と威圧感がただの亜竜ではないことを証明している。歴戦、そんな言葉すら生温い戦場を渡り歩いてきた者だけが持ち得る凄みがその双瞳には宿っていた。
『竜』の種族名は『インファント・ドラゴン』、四メートルを超す体長に150センチにも迫る背丈を誇る上層において唯一の竜種にして最大最強のモンスター。
11階層と12階層に稀に出現し、度々下級冒険者のパーティーを壊滅させていることを無視すれば遭遇することが幸運とさえ言われる稀少モンスター。
だが、その『竜』は他の個体とは全てが違う。
ただでさえ、上層では最大級のサイズが更に膨れ上がり、体高はニメートルを超え、全長は六メートルにも至っている。
鍛え上げた金属板を並べたかのような鱗はそんな外見以上の硬度を持ち、歴戦を物語る大小様々な傷痕が刻まれている。くすんだ色合いの赤銅色の皮膚は古傷による無数の裂創や火傷で彩られていた。
そんな生来の鎧に守られた肉体は身の詰まった風船のように肥大化しており、その頭部は竜というより蛇に近い形状をしていた。
巨大な口腔からは鋭い牙が何本も生え揃い、そこから滴るのは濃厚な鉄錆臭を帯びた血液の混じった唾液だ。
そして、金属で編まれたかのような極太の尾によるテールアタックは相手が上級冒険者だとしてもその肉体を四散させうるほどの脅威となるだろう。
もはや、完全なる別種─────否、単独固有種とでもいうべき進化を果たした『竜』は一般には『強化種』、そう呼ばれる個体であった。
「·············ふぅ、ふぅ」
そして、その『竜』を前にして、肩で息をしながらも辛うじて剣を構えているのは一人の少年だった。
幼さを残した顔立ちと未成熟な身体から年の頃はおそらくは12程度に見えるだろう。
しかし、その表情にはあどけなさなど微塵もなく、全身を汗に濡らしながら、それでもなお瞳の奥には強い意志を灯らせていた。
駆け出しの冒険者が着る格安のプレートメイルを纏い、手には無骨な片手剣を握っている。
それらの装備も今やボロボロとなっており、他ならぬ少年の血に染まっている。
腰元にはポーチを着けているが中身の大半は空になっており、近くになげうたれたバックパックも同様だ。
少年の足元に散らばるのは半ばから刀身の砕けた剣やひしゃげた盾。それは逃げた冒険者たちが恐慌のまま捨てていったものであり、少年が拾い上げふんだんに使い捨ててきたものの成れの果てであった。
唯一残った剣を頼りに立つ少年の全身の傷からは未だに出血が続き、立っているだけでやっとという有様であることは明らかだ。
本来ならば既に意識を失い倒れ伏していてもおかしくない状態。それでも、少年は折れることなく、その瞳に強い意志を込めて目の前の脅威を見据えている。
『─────、──────』
対する『竜』もまた、瀕死の獲物に対して油断なく身構えている。歴戦である『竜』は手負いの獣が如何に危険であるかを知っているからだ。
故に慎重に、それでいて隙無く相手の出方を伺うように睨み合いが続く。その視線はまるで値踏みするかの如く少年に向けられており、その顎門の奥からは粘ついた唾液が滴り落ちている。
少年のレベルは1。個体によっては素でLv.2相当のポテンシャルを誇る『インファント・ドラゴン』、その『強化種』であり、ともすれば一部の能力はLv.3にすら迫りかねない『竜』を相手に勝てる道理はない。
圧倒的格上たる『竜』を前に少年が逃げないのには理由があった。
それは少年の背後、倒れ伏し口から少なくない量の血を吐いたであろう痕跡のあるヒューマンの少女。
瀕死に近い浅い呼吸を繰り返しながらも未だ命ある彼女。少年と同じ【ファミリア】の所属であり、Lv2の上級冒険者だった彼女は少年のパーティーの中では一、二を争う実力者であり、少年にとって冒険者として先輩といえた。
そして、他ならぬ『竜』によってうちのめされ、その凶爪の下に倒れたのだ。
『竜』の攻撃を受けて死んでいないのはひとえに彼女の【ステイタス】が高かったから──────ではなく運が良かったからに他ならない。
もはや、戦闘能力はなく、かろうじて意識を保つのが精一杯であり、少年が他の冒険者と同じように逃げれば彼女は『竜』によって当然のように殺されることだろう。
だから、少年は逃げなかった。たとえ勝ち目のない戦いであっても逃げるわけにはいかないと覚悟を決めていた。
『──────ッ!』
そして、遂に我慢の限界に達したのか、『竜』はその巨体を震わせて地を蹴った。
猛然と迫る超重量の突進。少年の華奢な身体など容易く吹き飛ばすほどの質量がその速度を以て突き進む。
その一撃は並の冒険者ではとても受けきれないだろう。
轟音と共に地面を陥没させながら迫り来る脅威。移動そのものが攻撃と化したかのような圧倒的な迫力。
「ぐっ!!」
『竜』の突進を受け止めることなどできない。故に、少年は咄嵯の判断で横へ飛ぶことで回避を試みる。
直後、先程まで立っていた場所を『竜』の尾が通過。凄まじい衝撃が大地を揺らす。
少年は転がりつつも即座に体勢を整え、起き上がりざまに剣を構える。だが、その表情に余裕はない。
もし、あの一撃を喰らえば今の少年など容易に絶命していたはずだ。そんな攻撃を間髪入れずに次々と繰り出してくる。それも、その全てが必殺の威力を持つ連撃。
少しでも気を抜けば、一瞬で押し潰される。そんな予感をヒシヒシと感じさせるほどにその動きは洗練されていた。
幸いなのは『竜』にとってはもはや、倒れ伏す少女の姿など気にも留めていないことだろう。
魔導師である少女が今、『竜』の攻撃を受ければ確実に死に至る。
そのことを理解しているからこそ、既に少女への興味を失くしたかのように『竜』は今も自分へ剣を向ける少年だけを見つめている。
そして、再び振るわれる剛体。少年は紙一重でそれをかわすが、それさえも織り込み済みとばかりに襲いくる尾による追撃。
技にも等しいその連続攻撃は少年に反撃の機会を与えない。必死に剣を振るう少年だが、その刃は空を切るばかりで一向に致命打を与えられず、ただ体力を消耗していく。
今度は前足で少年を踏み潰さんとばかりに振り下ろされた足。
『竜』の体重は見た目からしてトンを超すだろう。そんな質量の塊が頭上から降って来ればいかに『恩恵』があるとはいえ、受け止めることはできるはずもない。
「──────ッ、ちぃ!」
少年は、しかし落ち着いていた。まるで、自分のやるべきことを最初からわかっているかのようだった。
迫る『竜』の足を掻いくぐり、最小限の動きで避けると同時に『竜』の横腹へ剣を突き立てる。
骨までは至らずとも皮膚を裂き、肉を断つ感触が手に伝わり、確かなダメージを与えたことがわかった。
『竜』が痛みで僅かに怯んだ隙に、その脇を駆け抜け背後を取ると、少年は『竜』の首筋へ狙いを定め、渾身の力を込めて剣を振り抜く。
『──────────!?』
甲高い絶叫を上げ、血飛沫を上げて『竜』は前のめりになる。致命傷ではないにせよ、決して軽くない傷を受けた。
この瞬間だけは確かに『竜』は少年を見失っていた。
少年は『竜』の死角から飛びかかるように斬りかかり、その首を切り裂かんと剣を振るう。『竜』の硬い鱗を切り裂き、肉を断つ手応が伝わる。
だが、その程度の傷では決定打にならないことは明白であり、少年はすぐにその場を離脱する。
そして。
「─────【サンダーボルト】」
少年に許された唯一の『奇跡』。速攻魔法という他に類のないその魔法は白き稲妻を呼び寄せ、荒れ狂う雷鳴が空気を揺るがす。
Lv.1とは思えぬ魔力の発露。自然界における落雷を思わせる雷光の奔流が降り注ぎ、その一撃が容赦なく竜の肉体を蹂躙する。
直撃の瞬間、凄まじい光が炸裂し、轟音が大気を震わせた。『竜』の肉体を焼く電撃の熱波が周囲に撒き散らされ、大気が焦げ付く。
当然ながら、それですら致命傷には至らない。だが、それでもほんの僅かの間、動きを止めるには十分だ。
ここに来て少年は『竜』と拮抗した。
『竜』は知るまい、『竜』が真正の『怪物』だとするならば少年は真正の『英雄』の器の持ち主。少年の真価は格上相手にこそ発揮される。
「悪いが、俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんでな」
◆◆◆◆◆◆◆
マジでこんなところで死んでたまるか。
いや、もうさ········馬鹿なの?
俺、Lv1だよ? お前明らかに上層に出ていい強さじゃねぇだろ?
なんで俺、Lv2が一撃でやられるようなやつ相手に一人で戦ってんの?
確かにみんなを庇ったりして死にたいとは思ってたけど早すぎるわ、まだアイズ達と知り合ってすらいないっての。一応、後ろに倒れてるエルフィはネームドキャラだけど、割に合わんわ。
あー、早く強くなりたいわ。
◆◆◆◆◆◆◆
『竜』ははじめから強かったわけではない。無論、稀少モンスターとしての最低限度の力は有していたが今のような種を超越するような力は持っていなかった。
その力の源は同胞の『魔石』。
『竜』は誕生してすぐに仮面を被った人型の『怪物』に捕らえられた、その『怪物』の正体について『竜』は知る由もなく、ただただ自らよりも圧倒的なまでに強いということしかわからなかった。
そして、檻の外から投げ込まれた紫紺の結晶。その輝きに抗えぬ『食欲』を感じた『竜』は禁忌の本能に従うがままその『魔石』を噛み砕いた。
その瞬間、全身に奔るえもいえぬ全能感ともとれる快感。それは今まで感じたことのないほどの圧倒的な情動。
同時に感じる飢餓感。それは今まで感じたこともないような飢えにも似た衝動。乾きにも似た渇望。
目の前の全てを喰らい尽くしたい。
そんな獣じみた欲求が湧き上がる。
もっと欲しい、もっとこの力を味わいたい。そんな衝動に駆られた『竜』はその日から定期的に投げ込まれる紫紺の魔石を狂ったかのように喰らい続ける。
その度に強くなる己の力。その力が、さらなる強さを求める。その繰り返し。
しかし、いくら喰らっても満たされることなどない。それどころか更に餓えるばかり。
────────足りない。
尽きることのない飢餓感と膨れ上がる力。足りない足りないと、それだけしか考えられない。理性さえもが薄れていく飢餓感。
そんなある日、突然として『竜』は檻から解き放たれた。自身を捕らえた『怪物』に報復をする気はなかった。
まだ勝てぬことはわかりきっていたし、今はそんなことよりもただ飢餓を満たせるものを求めていた。
それから『竜』は同胞たるモンスターを殺し、その『魔石』を喰らってまわった。
渇く心を癒すため、ただひたすらに喰らう。魔石を失ったモンスターの成れの果てによる灰の海が拡がる。
だが、それでも満ち足りることはなかった。どれだけ殺しても、喰らっても、喰らえば喰らうほど更なる空腹感に襲われる。
殺しても殺しても満足できない。食べても食べても満たされない。血を吸って、肉を裂いて、骨を折って、臓物を引きずり出して、魔石を嚥下する。
同胞を殺し、その肉を貪り、骨をしゃぶり、魔石を喰らう。やがて、殺した同胞の数が千を超えたある日のこと、同胞とはまったく違う様相の集団────人間の冒険者パーティーと出会った。
最初はいつものように殺して食おうと思ったのだが、不思議なことに全く美味そうには思えなかった。むしろ、ひどく不味そうだ。
これはおかしいと思いつつも、やはり殺しても食べようとは思えない。だが、『嫌悪』を感じると同時に不思議と惹かれるものを感じる。
飢えとも違う、なんとも言えない奇妙な感覚。なにかがザワつく。まるで身体の内側で得体の知れないナニカが暴れているかのようだ。
産まれてすぐに捕らわれた『竜』は知る由もないがそれこそがモンスターの性、その荒れ狂う本能に逆らう理由もなく『竜』は人間たちに向けて走り出した。
容易く蹴散らせる同胞たちとは違い、その人間達はなかなかに手強かった。
前衛と後衛の連携、そして個々の力量は劣るが数の差で押し切らんとするその戦い方はどこか懐かしさを覚えるものだった。
後衛がなにか長々と詠唱したかと思えば真紅の火球が鱗を焦がす。間髪入れず弓を持った人間が矢を射れば、槍を構えた人間は雄叫びを上げながら突撃してくる。
しかし、それも長くは続かない。ついに限界を迎えたのか一人の人間が倒れる。それを見た他の仲間であろう人間たちが怒りの形相で襲い掛かってくる。
その表情を見て何故かまたあの嫌悪感を抱かずにはいられなかった。だが、それがどうしたと言わんばかりに爪を振るい、牙を突き立て、尾を振り回す。
どうにも気持ち悪くて、苛立ちに任せて暴れているうちに人間達は自身には敵わぬと悟ったのか倒れた仲間を肩に寄せ、逃げようとする。
それを見た瞬間、またあの得体の知れない感覚に襲われ思わず吐きそうになった。
──────────不快だ。
そして、武器すら捨てて逃げようとする人間のうちの一人をその強靭な尾で打ち払い、壁へ叩きつけた。他の人間達は立ち止まれば全滅しかないと悟っているのか止まらずに走り去る。
追うのは難しくない、だが、不愉快にも壁へ叩きつけた人間はまだ生きている。
これにとどめを刺してからでも追うのは遅くないだろう、と考えたとき。
─────グサリ、と。
産まれて初めて、焼けるような痛みを感じた。見れば腹部に深々と突き立てられた短剣があった。
そしてそれをした人物を見る。数いた人間の一人、その中でも小さい個体。だが、その目はまるで自らを捕らえた『怪物』を思わせる血のような輝赤だった。
その輝きを見たとき、『竜』は初めて恐怖というものを感じた。寒気立つような畏怖が全身を支配する。ぞくぞくとした震えが背筋を走る。
────怖い?
あり得ない感情に戸惑いながらも、とにかくこの小さな人間は危険だと直感が告げていた。
このまま放置すれば何をされるかわからない。ならばここで殺すべきか。
いや、そもそも何故自分はこんな小さな存在を恐れる必要があるのか。
確かに初めて傷をおったのは確かだ、だが、それは不意を打たれたからにほかならず、その傷も『竜』の巨体からすればかすり傷程度でしかならない。
つまり恐れるべき要素などないはずなのだ。なのにどうしてか、目の前の小さな人間が恐ろしいと感じずにはいられない。
それは紛れもない事実であり、そのせいなのか、それとも別の要因があるのか。だが、逃げるわけにはいかない。
理由はわからない、だが、目の前の存在が何よりも恐ろしく、今すぐ殺してしまいたいと心の底から思ってしまう。
矜持でも、本能でもなく、自身ですらわからぬ『なにか』に突き動かされたのように吠え、少年へその爪を振りかざした。
◆◆◆◆◆◆◆
─────一体、どれほどの時が経ったのだろうか。
もはや、互いに全身を血に染め上げていた。既に双方ともに立っていることすら難しい状態。
血を流しすぎたためか、それともこの激しい戦闘の疲労によるものか、ふらつきそうになる足に力を込めて必死に堪える。
視界が霞み、思考が定まらない。それでも眼前の敵だけは見失わないようにと意識を集中させる。
疲弊し切った両者の戦いはもはや、どちらが先に倒れるかという一点のみに集中した泥仕合となっていた。
余力はなく、気力でなんとか持ちこたえているだけに過ぎない。いつ倒れてもおかしくはない極限の状態。
混ざり合う互いの意識と殺意。溶け合うような錯覚。灼けつくような熱さに、凍えるほどの冷徹さ。
力と技の応酬は続く。何度も交差し、ぶつかり合い、火花を上げる。
互いに決め手に欠けるまま、ただひたすらに相手を殺すことだけに全霊を傾ける。
異端の神童と異端の怪物。互いを喰らいあう獣同士の闘争は決着がつくことなく続いていた。どちらも、止まることを知らぬかのよう。
やがて、そんな拮抗が崩れたのは果たしてどちらか。きっかけはほんの些細な出来事。しかし、それがきっかけとなり状況は一気に傾くこととなる。
そして、遂に終わりが訪れる。
『─────【サンダーボルト】』
甲高い音とともに、雷光が走る。それは一瞬の出来事。放たれた魔法は狙い違わず、その巨体を貫いた。
鱗を剥がされ、肉をえぐられた今の『竜』には防ぐ術はなかった。身体中を駆け巡った電撃に、ぐらりと体勢を崩す。
たが、それすらも囮。
雷の衝撃に硬直し、魔法を放った少年を探そうと視線を動かしたその刹那、影が差す。再度、放たれた白雷と共に白刃が振り下ろされた。
自身の感電も厭わない、捨て身の一撃。その威力は凄まじいもので、その刃はいくらか残った鱗を貫き、骨まで断つ。
『竜』が最後に見たのは迸る白き雷霆とそれを纏った少年の姿。
その稲妻の一斬は呵責なく自身の『魔石』を貫き、砕いていた。
だが、不思議と身に滾っていた嫌悪は消えていた。
─────なんて、美しい。
灰となる肉体の痛みすら気にならなくなるほど、その光景は美しく、神秘的だった。
崩れ去る『竜』の肉体。その刹那、視線が交わる。その瞳は、先程までの激しい戦いからは想像できないほど穏やかで優しいものだった。
──────もう一度、見たい
『竜』が残したのはそんな憧憬とも言えぬ願望と吹けば飛ぶ一山の灰、赤褐色の鱗だけ。
そして、それを最後に『竜』はこの世から姿を消した。
「──────────」
『竜』はゆっくりと目を開く。どうやら意識を失っていたようだ。起き上がろうとすると酷い倦怠感に襲われた。
泥の中にいるかのように体が重い。まるで全身に鉛でも埋め込まれたかのようで指一本動かすのすら億劫だ。
──────ここは············どこだ。
辺りを見回す。そこは薄暗い洞窟の中。だが、自身が寝そべっている地面は土ではなく苔のようなもので覆われている。
なにか巨大な生き物の肚のなかにいるかのような圧迫感を感じる。どうやら自分が今まで眠っていたのはこの場所らしい。
──────■は、何をしていたんだっけ。
思い出そうとするが記憶に霞がかかったようにハッキリしない。蕩けるような甘い夢を見ていたような気もする。
──────まぁいい、それよりもまずは腹ごしらえだ。
考えるのをやめ、とりあえず食料を探すことにする。
『竜』はまだ、自らの変調にきづかない。四足ではなく、二足で歩く自らの肉体に未だ疑問を持たない。
怪物ではなく、人間に近しい姿になったことにも、まだ気づいていない。
怪物の異形と人間の醜美が混じり合った歪な姿をした存在に成り果てたことに、『竜』は未だに気づけずにいる。
ただ、今は。
「あの光をもう一度、見たい」
憧憬にも似た渇望だけがその胸に宿っていた。
──────────────────────────────────────────────────────────────────
『竜』
前々から考えてた没オリキャラ。名前はまだない。アル以外のオリキャラは出すとしたら本編完結後。
『怪物』
まだ、目を焼かれてない。
『ヒューマンの少女』
誰とでも仲良くなれるエルフィちゃん
ここ数日、0評価とそれとは別なメッセージがいくつも来てびびった·····。
厳しいご意見もありましたが私では気がつけない読者視点での非常に為になるご意見をいただきました。
メッセージでの批評・ご意見は真摯に受け止め、原作最新刊とかともできるだけ矛盾のないように頑張るので良かったらこれからも読んでもらえると嬉しいです。
それでまた、アドバイスをいただけたら本当に助かります。
それ以外の方々もモチベーションに繋がりますのでこれからも評価、コメント、批評のほどよろしくお願いいたします。
アストレアレコードを挟んで八章から異端児編です。毎日投稿は厳しくても最低、毎週三回以上更新はしていくつもりです。