皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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12000超えちゃうので分割した前話の続きで短い溜め話です




108話 倫理観でモンスターに負ける男➁

 

 

 

 

───────黒。

 

赤黒く、青黒い。光を通さないヘドロのような粘性をもった何かが、そこにあった。

 

地上から何百メートルも降った地下深くにある人造迷宮の最奥。幾重にも防護を施された特殊な衣服を身につけた闇派閥の者たちが見守る中、それは静かに鎮座している。

 

人造迷宮の中に点在する広間の中でも一際巨大な空間の中央に鎮座する黒は、まるで心臓のように鼓動を繰り返していた。

 

そしてその鼓動に合わせるように、脈打つように、うねりながら形を変えていく。様々な精錬金属によって補強された水槽の中でソレはゆっくりとした速度で変貌を遂げていた。

 

溶液に浸かったその体表はまるで岩のようにも見紛うゴツゴツとした硬質さに満ちている。どくりと脈打つ血管が時折浮かび上がり、液体の流れに揺らめいた。

 

あらゆる地上生物を掛け合わせたかのような器官の数々。繭のような形状をした胴体からは無数の管が伸びており、周囲の機器に接続されている。

 

揺籃の中に浮かぶ胎児のようにも見える怪物。しかしそんなものを見て、何を思うよりも先に視線を引きつけられるのはその瞳だ。

 

人の目とは異なる複眼や単眼。獣の目とも違う瞳孔のない水晶体の如き目が無数に体皮に浮かんでいる。

 

モンスターのそれとも異なる不気味な瞳。繭に包まれた胎児の姿をしながらもその瞳だけが奇怪で異形だった。

 

蠢動するように水槽の中で脈打ち続ける巨体。一部が欠落した体を塞ぐように埋め込まれた宝玉が脈打つ度に少しずつ埋まっていく。

 

幾重にも覆われた水槽の中にあってもその毒素は漏れ出し続けている。徹底された空気清浄装置をもってしても漂い続けるほどの濃度を持つ濃密な劇毒。

 

精霊の護符を含めた耐毒の装備を身につけた昇華した神の眷属でなければこの空間に踏み入ることすら叶わないだろう。

 

死に至る猛毒を孕んだ魔窟の深部、そこにて生まれたばかりの新たなる魔の新生を見守りながら、 エニュオとその一派は静かにその時を待っていた。

 

都市の破滅を目論む闇派閥の残党が用意した魔竜と怪人に並ぶ第三の英雄殺し。

 

『剣聖』と『猛者』を殺すための切り札が産声を上げるまであと少し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルとの戦いから数分。20階層へレイに先導されながら移動するベル達。拭えぬ疲労感の中、ポーションを飲み干して消耗した精神力を回復させる。

 

大樹の樹洞の中のような洞窟を通り抜けていくとじっとりと湿り気を帯びた空気が霧のように漂っていた。

 

密林のように連なる木々の隙間からはモンスターの影が見え隠れし、警戒を解くことはできそうもない。

 

だが、度々出現するモンスターはアルやベル達が手を出すまでもなく先導するレイによって一蹴されていく。

 

【耐異常】のアビリティを発現させた上級冒険者でも完全には無毒化できない劇毒の胞子を振りまくキノコ型モンスター、ダークファンガスやミノタウロスに匹敵するほどの巨体と上回る敏捷を誇る熊型モンスター、バクベアーなど数々のモンスターを一撃で葬っていく。

 

冒険者で言うところの第二級を優に超えて

いるであろうレイの戦いっぷりは通常のセイレーンの戦闘能力を考えれば異質と言えた。

 

「(··········バーチェさんと同じくらい?)」

 

 兄経由で知り合ったLv.6のアマゾネスに迫るだけのポテンシャルを垣間見せるレイに戦慄しつつ、鬱蒼とした森の中を進む。

 

陽光の代わりに差し込む蒼白い苔の光が視界を照らし、時折聞こえる水滴の音は森の不気味さを引き立てる。

 

樹洞の連絡路を降り、ようやくミッションの目的地である20階層にベル達は辿り着いた。

 

緑が生い茂る空間。そこには様々な種類の花が咲き乱れ、地面を覆う草花は絨毯のように広がっている。

 

見たこともない色鮮やかな花や花弁を蓄える木、それに群がる蜜蜂や蝶などの虫型の小型モンスターたち。

 

この光景だけ見ればダンジョンの中層にいることを忘れてしまいそうになるほど幻想的な世界が広がっていた。

 

食料庫が近くにあるためか屹立する翡翠色の水晶柱は淡く輝き、その淡い燐光は辺りの景色をより一層際立たせる。

 

恐ろしくも美しい自然の光景に言葉を失うベル達。色彩鮮やかで、美しい自然風景。床や壁を破って生える草花の楽園は迷宮の中に存在するとは思えないほど美しかった。

 

そんな絶景の中、何度かモンスターと遭遇するも、レイとアルの前には為す術なく、一瞬にして屠られていった。中層に足を踏み入れたばかりのベル達とは格が違う戦いを見せつけられ、自分達との実力差を思い知る。

 

そして、ベル達は遂に目的の場所へとたどり着いた。

 

そこにあったのは石英の領域。翡翠色に輝く透明な結晶体が地面に埋め込まれたように露出している。石英自体が発光しているため、周囲は薄ぼんやりと明るい。

 

まるで大樹の枝と絡みつくように樹木そのものと癒着した水晶塊がそこら中に生えており、それらが天然の鍾乳洞を作り上げていた。

 

「ここが·········指定された目的地?」

 

 石英の領域は美しくはあるが行き止まりであり、周囲に特別なものや人の姿は見当たらない。

 

行き止まりの壁には何処かへ繋がる道などなに一つ無く、広間の中心には石英の柱が乱立するばかり。リリルカが困惑するなか、ウィーネの尖った耳がぴくっと動く。

 

「なにか、聞こえる··········」

 

 きょろきょろと首を動かし、ウィーネが呟く。よくよく耳を澄ませてみると微かに何かの音が聞こえてくる。誰かの声のような音が反響するように聞こえてくる。

 

どころか心地よい音色。旋律が聞こえてくる。鈴の音のような、透き通るような綺麗な音。

 

「これは··········歌?まさか、誰かが歌っている?」

 

 確かに聞こえてくるのは美しい少女の歌だった。透き通るような声は聞く者全ての心を癒やすようで、思わず聞き惚れてしまうような歌声。

 

どこかに隠し通路でもあるのか、或いはこの美しい景色そのものがなんらかのモンスターの罠なのか、石英の生えた壁や天井を注意深く観察するが特に怪しいものはない。

 

あるのは澄んだ水の溜まった池のみ。

 

魔石灯で周囲を照らしても石英が明かりを反射して輝いているだけだ。だが、間違いなくこの石英畑の奥から歌声は響いており、ベルは不思議そうに目を瞬かせる。

 

「道は······ないけど、ここの先から聞こえてるよね?」

 

「ええ、でも······」

 

 確かに歌声はここの先から発せられている。だが、抜け道や怪しい亀裂などは一切見当たらず、そもそもこの奥に本当に人が居るのかどうかすら分からない。

 

しかし、アルが魔石灯で池を照らすとその底に横穴のようなものがあることがわかる。覗き込んでみると、その先は暗闇に包まれて先が見えないがどうやらどこかに水の流れが繋がっているようだ。

 

「とはいえ、濡れるのは嫌だな」

 

 そう呟いたアルは、指で壁を軽く撫でる。

 

──────岩壁が切れた。

 

ドン引きするリリルカ達をよそに壁に穴をあけて岩盤の通路を開通させるアル。その様子にレイとアル以外の全員が唖然とした表情を浮かべる。

 

岩壁に塞がれてたかのように続く連絡路は暗く、それでいて一本道。その先に何が待っているかも分からず、躊躇うベル達を他所にレイとアルは当然のようにその道を進んでいく。

 

「·········まさか、未開拓領域ですか?」

 

 地図にない連絡路。それを見てリリルカは慄然とする。古代の時代よりダンジョンに挑んできた先人たちが残した記録。

 

現代の冒険者たちは人類の未到達階層である72階層以降ならいざ知らず、それ以前の階層の探索には先達たちが書き遺した地図や情報による事前知識を持った上で挑むことができている。

 

だが、広大にして遠大にすぎるダンジョンの構造のすべてを把握しているわけではなく、未だ誰も踏み入ったことのない場所も数多い。

 

古代の時代より今の今まで誰一人として見つけることのできなかった未到達の領域も存在しており、冒険者達の間ではそういった未知の場所のことを『未開拓領域』と言うのだ。

 

「行くぞ」

 

 人類にとって前人未到の未開拓領域。そこに足を踏み入れるという恐怖感を抱きながらもベル達は意を決して後を追う。

   

魔石灯の明かりがなければ真っ暗な闇に覆われるであろう暗い洞窟。どこからか響く歌声以外にはなにも聞こえない静寂の中、ベル達はひたすらに歩き続ける。

 

動悸が激しくなり、呼吸が荒くなる。緊張と不安が入り混じる中、ベル達はいつ終わるとも知れぬ長いトンネルを潜り抜けていく。

 

未知への恐れ、これから待ち受けるなにかに対する警戒心、そして期待。狭苦しい通路の中、ベル達はただ無言のままに歩いていく。

 

光もなく、時間感覚さえも狂いそうな闇に覆われた空間の中を歩くこと数分。やがて、ベル達の視界に光が差し込んだ。

 

「··············えっ?」

 

 ようやく出口に辿り着いたベル達が目にしたのは広大な広間だった。

石英の柱が立ち並ぶ神秘的な光景は変わりないが、明らかに違う点がひとつだけあった。

 

そこには大小様々な種類のモンスターたちがひしめき合い、異様とも言える光景が広がっていた。

 

巨大な狼のようなモンスター、紅い鱗を持ったリザードマン、全身が鉱石で出来たゴーレム、影が人型を成したようなウォーシャドウ、翡翠色の体皮を持つドラゴン。

 

他にも本来一堂に会することのない上層、中層、下層、深層、様々な階層で生まれたあらゆる種類のモンスターたちが集まっている。

 

モンスターでありながら冒険者のような装備を身に着けている者もいれば、中には人間に近い姿のモンスターまでいる。

 

自分たちに向けられる大小様々な多くの眼光にリリルカは思わずたじろぐ。

 

「どれだけの数がいるんです·······か········」

 

 その数はもはや数え切れないほど。10、20、30······50では足りないだろう。

 

広いはずの部屋が狭く感じるほどの数のモンスターがそこら中に蔓延っている。

 

まるでモンスターの見本市のようであり、あまりの非現実的な光景に絶句する。

 

そんな中、アルは平然と部屋の中央へと歩を進めるとベルたちの方に振り返り、言った。

 

「紹介しよう。こいつらは『知性』あるモンスター──────異端児(ゼノス)だ」

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────────────

 

【アル式ブートキャンプ】

月謝:曇顔(後払いでまとめてでも可)

実績:一年間、パーティを組んでいたエルフは今や············。

 

・レイ

頭のおかしい白髪の近くに1年間いたせいで装備面を含めてかなり強くなった。総合的にはLv.6の下位、モンスターとしての能力をフルに使えばバーチェあたりには勝てるかもしれない。定期的に頭のおかしい白髪が深層から魔石を持って来る。

 

・闇派閥残党

超頑張ってる。

 

 







3DSのストアが使えなくなりましたけど皆さんはもうこれだけはっていうソフトは確保し終わりましたか?

私はメインの3DSが壊れてもいいように収穫の十二月っていうノベルゲーシリーズを中古の3DSに入れました
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