皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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やっとここまで来た········



109話 やーい、お前 ドクズ変態白髪野郎(アル・クラネル)の弟!!

 

 

 

 

 

「紹介しよう。こいつらは『知性』あるモンスター──────異端児(ゼノス)だ」

 

 大量のモンスターたちを背にアルはベル達に静かに告げる。こちらに向く大量の眼光を前にして、リリルカたちは戦々恐々としながらもアルの後方を見やる。

 

上層、中層、下層、深層、とそれぞれ様々な階層で出現が確認されている様々な種類のモンスター達。

 

下半身は蛇で上半身は美しい女性の姿をしているラミアや全身が硬質な石で出来た石竜、人間の上半身に蜘蛛の脚を持たしたような姿をしたアラクネ、影が人型を成したようなウォーシャドウなど·········。

 

そんな多種多様なモンスター達。しかもそのほとんどが武装している。

 

そのだれもが強力な力を秘めているのは一目瞭然でこんな狭い場所に集まっていること自体が異常だと言わざるを得ない。

 

しかし、それ以上に気になることがあった。それは、この場にいるモンスター達から敵意を感じないこと。

 

否、正確には友好的と言っても良い雰囲気が感じられる。まるでこちらを観察するかのような好奇、そして親しみさえ感じさせる視線を向けてくる。

 

その中でもひときわ特徴的な赤い鱗を持ったリザードマンらしきモンスターが歩み出てくる。筋骨隆々なその巨躯と手に持った大剣。

 

下手な精錬金属よりもよほど硬いであろう鱗に鋭い爪、爬虫類特有の瞳孔が縦長になった目。

 

剣を交えずともわかる凄まじい強さの気配にベル達は息を飲む。敵意はなくとも無意識に身構えて警戒してしまう。

 

「─────クッ、クギャギャ、アはははははははははははははははははは!!!!!」

 

 だが、その警戒心はリザードマンの高笑いによって霧散する。目を丸くするベル達を他所にリザードマンは愉快そうに笑う。

 

怪物の咆哮ではなく人語の哄笑。そのことにベル達は驚く。迫力のある外見とは裏腹にどこか軽薄さを感じさせるリザードマン。

 

のしのしと近付いてくるリザードマンがベル達の前で立ち止まる。見上げるほどに大きい体躯に圧倒されるベル達。

 

「ク、はははははは────ッ、面白れぇ!!アルっち以外にこんな冒険者がいるなんてな!!」

 

 何事かと困惑するベル達を他所にリザードマンは声を上げて再び大声で笑う。突然の事態に理解が追い付かず唖然とするベル達を他所にリザードマンはさらに言葉を続ける。

 

「アルっちと戦うなんて命がいくらあっても足りないってのに怪物を庇うなんてな!!」

 

 演技とはいえあんなにおっかないアルと戦えるなんてすごいなと感心するリザードマン。

 

「まずは謝らせてくれ、オレっち達の同胞を保護したあんたらがどういう人間なのか試してた」

 

「試す·······ですか?」

 

「ああ、そうだ。本当に信用できるのかどうかをな」

 

 いざという時にウィーネを見捨てて逃げたりしないかどうかを試していたと語るリザードマン。

 

「まあ、アルっちの弟って話だったから信用できるとは思ってたけどな。で、オレっち達が相手しても良かったんだが、互いにやりすぎて万が一があっちゃいけないから、アルっちにやってもらったんだ」

 

 「だからアルっちを悪く思わないでくれ」という言葉にベル達は納得する。

 

ただ、彼らがやるよりもアルがやった方が緊張感があり、尚且つ危険度が増していたような気がするが敢えて口には出さなかった。

 

「詳しいことは後で話すけど······アルっちが沢山怖がらせちまった。すまなかった」

 

「オイ」

 

「冗談だよ。────同胞を今まで守ってくれて、ありがとう」

 

 人間のように頭を深々と下げるリザードマン。その姿にベル達は驚愕する。知性あるモンスター。人間と変わらない感情を持ち、人間と同じ考えを持っている。

 

鱗、体躯、爪、牙、そのどれもが人間とはかけ離れた怪物らしい異形ではあるが、目の前の彼は人間と同じように頭を下げ、礼を言う。

 

姿以上にその内面が人間に近いことを実感させられる。怪物特有の残虐性といったものが全くない。

 

ウィーネと同じよう人語を理解し、人語を話すことができるモンスター。

 

あるいはあの、漆黒の─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古代の神殿であるかのような荘厳さに満ちた石造りの地下空間。モザイク模様の意匠が凝らされた床には無数の石柱が立ち並んでいる。

 

魔石灯ではなく松明の炎に照らされて壁画のようなレリーフが浮かび上がっているさまは御伽噺の中に入り込んだような感覚を抱かせる。

 

等間隔で灯された松明の炎だけが唯一の光源だ。ぱちぱちと薪が爆ぜる音だけが響く地下神殿。ギルド本部の地下にある大広間、神座が中央に設けられている祭壇。

 

「────異端児?」

 

 そこに腰掛けているオラリオの創設神にしてギルドの主神である老神ウラノスに相対するように童女の神、ヘスティアが立っていた。

 

ヘスティアの言葉にウラノスは静かに頷く。ギルドから【ヘスティア・ファミリア】に下されたミッション。

 

そのきっかけとなったウィーネという理知を持ったモンスター少女、彼女のような存在について何を知っているか。それを訊きに来たのだ。

 

「我々は彼等のような理知を宿したモンスター達をそう呼んでいる」

 

「達……? じゃあウィーネ君みたいな子達が他にもいるってことかい!?」

 

 人類に対して敵意しか持たない怪物とは違う。人間と同じ感情と知性を持つモンスター、人類と遜色ない心を持った異端の怪物。それが異端児という者達だとウラノスは語る。

 

そんなモンスターの存在は聞いたことも見たこともなかった。そもそもモンスターとは太古の昔より悲劇と災厄を人類にもたらし続けた人類の不倶戴天の敵だ。

 

人とモンスターは決して相容れない。知性などあるはずもなければ心があるわけもない。しかし、この数日一緒に過ごしてきたウィーヴルの少女ウィーネの姿を思い出す。

 

彼女は人と同じように笑い、泣き、怒り、悲しんで見せた。確かにあの子は人間じゃない。だけど、それでもただのモンスターでもない。

 

本来のモンスターの有り様から外れた異端の存在。そんな存在が他にもいる。そのウラノスの言葉はヘスティアにとっても衝撃だった。

 

「一体いつから異端児という存在が現れたかはわからぬが彼らと接触する中で我々は彼らの保護をしている」

 

「保護!? ギルドがモンスターをかい!?」

 

「ああ」

 

 正気か、とでも言いたげな表情を浮かべるヘスティアに対し、ウラノスは特に気にする様子もなく肯定してみせた。

 

いくらそのモンスター達に人間と似たような理性や感情があっても結局はモンスターであることに変わりはない。

 

モンスター達は人類にとって常に脅威であり続けなければならない。

 

その個体たちは安全だったとしても仮にその存在が世間に露見してしまえばモンスターと戦う者たちの手が鈍る可能性がある。

 

そうなれば感情を持っているかもしれないものを殺す手が鈍るが鈍ってしまうことで犠牲になる人々が増えてしまう可能性だってある。

 

それをあろうことがモンスターを殺す者たちである冒険者達を纏めるギルドが保護している。それはあまりにも信じ難い話であった。

 

感情以上にリスクの方が大きい。ウラノスは決して悪神でもなければ愉悦神でもない。

 

千年前にオラリオの地に降臨した最初の神々の一柱であるウラノスは下界に娯楽を求めて降りてきたちゃらんぽらんな神々とは違う。

 

下界の置かれていた現状をいち早く把握し、人類と世界を守るべく行動を起こした神格者なのだ。

 

今もなおこのギルドの地下でただ一人、祈祷を捧げてダンジョンの大穴が溢れぬよう『蓋』をし続け、世界の秩序を守っている。

 

そんな彼だからこそモンスターと人類の確執の深さとモンスターの恐ろしさを誰よりも知っているはずだ。

 

ヘスティアの知るウラノスは善神ではあるが目先の感情に流されるような性質ではない。

 

むしろ、自分のような神がそうならぬよう諌める側だ。ならば、彼はいったい何を考えているのか。困惑の色を見せるヘスティアにウラノスは下したミッションの真意を語り始める。

 

「ベル・クラネルに下したミッションはあの竜の異端児を仲間のもとに······異端児のコミュニティに合流させるためのものだ」

 

 竜の異端児、ウィーネ。生まれたばかりの彼女を唯一の同胞である異端児たちの元に合流させるため。

 

ウィーネが街で騒ぎを起こしてしまったことで身構えていたヘスティアだったが、まさかそのような穏当な理由だとは思わず目を丸くさせた。

 

だが、だからこそ腑に落ちない点もある。

 

「··········わからないな」

 

「なにがだ、ヘスティア」

 

「なんでわざわざミッションなんて形にした上で僕にこんな説明までしたんだい?」

 

 ギルドの権力と力があればいかようにもウィーネを攫うこともできたはず。それなのになぜこのような回りくどいことをしたのか。

 

彼らを保護する理由はともかくとして彼らの存在が露見するのはギルドとしてもまずいことだろう。

 

それを口封じをするどころかわざわざ説明までしてヘスティアに理解を求めるなど、何か別の目的があるのではないかと勘ぐってしまう。

 

「ふむ········ベル・クラネル達がモンスターが理知を持った存在を知ってしまったということもあるが一番の理由は·············試すためだ」

 

 叡智の丈を映す深い湖面のような瞳を細めながらウラノスは言う。ヘスティアはウラノスが何を言いたいのかわからず、首を傾げた。

 

「ほんの僅かの瞬きほどの可能性だったとしても『英雄』が見出した一筋の希望と夢、それを支える力になりえるかもしれないと考えたからだ」

 

「希望と夢?」

 

 ああ、とウラノスは深く首肯する。ウラノスの口から語られたのは、オラリオの主神たる老神の抱いた僅かな期待と願望。

 

「人類と怪物、有り得ざる共存の道の架け橋になれるかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、これからベルっちって呼んでいいか?」

 

「えっ、あっはい···」

 

 友好的に接してくるリザードマン────リドにベルは戸惑いながらも答える。他の異端児たちも興味津々と言った様子でベルの方を覗き込むように見ている。

 

あくまでも少女のような見た目をしているウィーネと違って怪物らしい姿形をしているため少し怖い。

 

リドはそんなベルの心情を見抜いたのか苦笑すると爬虫類独特の瞳孔をした目を細める。

 

「ベルっち」

 

「は、はい?」

 

「握手をしよう」

 

 すっ、と差し出された手にギョッとしてしまう。

 

だって、怪物の手だ。

 

人間の手と全く違う。

 

白い竜鱗の篭手と紅い鱗に覆われている怪物の手。差し出されたそれは恐ろしくも思える。差し出されているその意味に思わず固まる。

 

「ベ、ベル様」「ベル殿」「ベル」「ベル様っ」

 

 卒倒しそうな自分に仲間が声をかけてくれる。だが、リドはそんなベルを見ても何も言わずにただじっとこちらを見るだけ。まるでこちらの反応を窺っているようだ。

 

兄であるアルは··········。

 

「(兄さんどこ·······?)」

 

 油汗を流して苦悩している弟を他所にアルはいつの間にかいなくなってしまっている。どうすれば良いのかわからず困り果てるベル。

 

怪物との握手。敵意はないことが分かっていてもやはり身構えてしまう。

だが、いつまでもこうしているわけにもいかない。

 

正直な話、かなり恐い。人類とかけ離れた怪物、それも友好的に接してくるからこそ余計に違和感が湧き上がってくる。

 

ぶっちゃけ、逃げてしまいたい。

 

だが、ウィーネと初めて出会った時のことを思い出す。

 

リドはベルが動くのを待っている。握手するのか、それとも拒むのか。黄色い瞳孔は真っ直ぐにベルを捉えて離さない。 

 

「···········!」

 

 感情の読みにくいその瞳の中に揺れ動くものがあるのに気付いた。期待と不安、そして─────。

 

意を決したベルは震えそうになる腕を必死に堪えながらリドの手に自分の手を伸ばす。

 

リドの掌に触れる。リドの手は見た目よりも温かかった。血が通っている証拠であり、生きていることを証明する体温。

 

ぎゅっと握り返される。優しく包み込むような握力に驚きつつもベルも握り返す。

 

すると、リドは嬉しそうに笑う。

 

その笑顔に釣られてベルも笑う。

 

「よ、よろしく」

 

「おう!よろしくなベルっち!!」

 

 わぁ、と広間中から歓声が沸く。ベル達の周りをぐるりと囲うモンスター達、二人の様子を固唾を飲んで見守っていた彼らも喜びの声を上げる。

 

ベルはそんな彼らの反応に困惑しながらも、リドの手を離して一息吐いた。大小様々な手がベルに伸ばされる。

 

ワァワァ、ギャアギャア、と騒ぐ一同は魔石灯を付して宴会の準備を始める。暗闇に包まれていた大広間が灯りによって照らされて一気に明るくなる。

 

石英の柱が乱立する空間、鍾乳洞のような光景が顕になる。天井からは水晶の塊がいくつも垂れ下がり、水滴が落ちて弾ける音が鳴り響く。

 

わずかに生活感のあるテーブルや椅子などはリドが持ち込んだものだろうか。

 

暗闇にいたモンスターたちの姿もはっきりと見える。レッドキャップのゴブリン、人懐っこい笑みを浮かべるハーピィの少女、巨大な蛇の下半身を持ったラミア。

 

多種多様な種族のモンスター達、その誰もがベル達に好奇の視線を送ってくる。

 

「────グ、木竜!?」

 

 ヴェルフが声を上げ、命達もギョッとした表情で緑色の鱗に覆われたドラゴンを凝視する。石英の壇の上に佇んでいるのは紛れもなく、緑の鱗を持つ竜種。

 

ほんの数刻前に死を覚悟した木竜の強化種を想起する巨体。木皮を思わせる体色の竜が静かにこちらを見ていた。

 

あれとどちらが強いかわからないが老成した雰囲気を放つ竜を前にベル達は緊張してしまう。

 

「アルト、似テル!!」

 

「お話ししましょう!!」

 

『ゥウウ·········』

 

 だが、次々にベル達の方へと駆け寄ってくるモンスター達は皆一様に友好的な態度で接してくる。

 

流暢に喋れるものから片言のものまでいる。それでも友好的に接するモンスター達にベル達は戸惑いを隠せない。

 

わぁわぁ、きゃいきゃい、とベル達は取り囲み、握手を求めてきたり、質問を投げ掛けてくる。

 

ベルは戸惑いながらもアルに助けを求めるように兄の姿を探すが、彼は忽然と姿を消してしまっている。

 

親し気に話しかけてくるモンスターの中にはウィーネやレイのように人間の女性のような美しい容姿をした者がおり、距離感の近い者もいれば、明らかに水着にしか見えない服装の者もいる。

 

そんな彼ら彼女らに圧倒されながらも、ベルは何とか会話を続けていく。そんな彼らを眺めながらリドは笑みを深めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「···········モンスターが暴れた?」

 

 リヴェリアやレフィーヤとすったもんだ色々な話をしてからようやくホームに戻ったアイズは少々慌ただしげな雰囲気に眉をひそめる。

 

ティオネ達から話を聞くとどうやら昨日、街中に突如としてモンスターが現れたらしい。

 

「ええ、西区画の方で出たみたいよ」

 

 アルがどこぞに消えてからすでに数日が経過しているが未だに戻らないことに不安を覚えていたアイズ達はティオネの話を聞いて思わず顔を伏せる。

 

普通に考えて祈祷によって塞がれているダンジョンからモンスターが一人でに出てくるということはまずありえない。

 

あるとすればフィリア祭のように誰かがモンスターを捕えて地上に連れてきたという可能性が高い。

 

「食人花とかじゃなくて············?」

  

 真っ先に想起するのは 闇派閥の使役する極彩色のモンスターだ。地上に現れたという前例もあり、良からぬことを考えていてもおかしくはない。

 

さすがにアルが帰ってこないことと関連付けてしまうのは早計だが、こちらに関しては闇派閥絡みの可能性は十分に考えられる。

 

「違うみたい、確か人型のモンスターだったって」

 

「人型? コボルトとか?」

 

 いや、ハーピィみたいな有翼種らしいわよ、とティオネが横から口を挟む。しかし有翼種の人型のモンスターとは妙な話である。

 

人型のモンスター というだけでも珍しいが有翼の、ハーピィやセイレーンと行ったモンスターは最低でも中層以降に出現するはずだ。

 

そんなものがなぜ地上に出現したのか、そしてどうして西区画など人の集まる場所にわざわざ現れたのか。疑問点は多い。

 

「今回のは闇派閥とは関係ないって団長は予想してるみたいよ」

 

 闇派閥の立場から考えてみれば何一つとしてメリットがない。地上に被害を出したいというのであれば自在に操作できて尚且つそこらの上級冒険者よりもよほど強い食人花を使う方が手っ取り早いだろう。

 

ハーピィにしろセイレーンにしろ個体での強さはそこまででもなく恩恵を受けてない 一般人ならいざ知らず、上級冒険者を相手取るには少々頼りない。

 

広範囲攻撃や毒でも持っていれば話は別だがそういった類のモンスターでもない以上はわざわざ地上まで出てくる必要性を感じられないのだ。

 

仮に闇派閥が関係していたとしてもこんな回りくどいことをせずに最初から食人花の群れなりなんなりを投入してきたほうが効率が良いし簡単でもある。

 

陽動的行動にしてももっと他にやり方はあるはずだ。実際、誰一人として亡くなったり、怪我人が出ていない時点でその可能性は極めて低いといえる。

 

そもそも、闇派閥の残党が地上にモンスターを連れてくる上で経由しなくてはならないクノッソスとダイダロス通りはすでに【ロキ・ファミリア】や情報共有された【ガネーシャ・ファミリア】の団員達によって封鎖されている。

 

闇派閥側も馬鹿ではない、仮にバレていない出口があったとしてもこんなつまらないことに使ってバレるリスクを負うような真似をするはずもない。

 

つまり、この一件は少なくとも闇派閥とは無関係だと考えられる。

 

「(·········なら、アルとも無関係?)」

 

 アルに関してはただ単にどっかで時間を潰しているだけかもしれないが、それでも心配なことに変わりはない。

 

その強さをよく知っている身としては流石に危険な目にあっているとは思わないが、それでもやはりどこか落ち着かない気持ちになる。

 

フィンやガレスはいつものことだろうと気にしていないようだったがアイズだけはどうしても気になってしまう。

 

なにか、何か致命的なことを見逃してしまっている気がするのだ。それが分からなければ後々後悔することになるのではないかと焦燥感に似た不安に駆られる。

 

自分の知らないところで何か大変なことが起きているのではないかという漠然とした予感があるのだ。

 

まるで自分だけが取り残されてしまったかのような感覚に苛まれ、胸の奥底を掻きむしるようなもどかしさが募っていく。

 

予感にも似た嫌な感覚。胸の奥底に燻ぶるような言い知れぬ感情が渦巻き、それを紛らわすように首を振った。今の自分には何も分からない。  

 

結局のところ今は待つことしかできないということなのだと理解したアイズは小さく息を吐いて思考を切り上げる。

 

さすがに帰ってこないということはないだろうし今は街に現れたというモンスターについて考えるべきだ。

 

「ギルドとかでも結構、騒ぎになってるみたいよ」

 

 ダンジョンから連れて来られたわけではない場合、市壁の外。古代の時代にダンジョンの外に出て魔石を削ることで繁殖したモンスターが何らかの方法で市壁を越えてきて都市内部に入り込んだ可能性が高い。

 

普通に考えればそれもありえないがダンジョンからモンスターが出てくるよりはまだ現実的だ。

 

一応、ギルドから依頼されたファミリアたちが警邏と調査をしているみたいだが、今のところこれといった成果は上がっていないらしい。

 

「·············」

 

 当時の状況は分からないが一般人たちは今もモンスターがどこから現れるのかと戦々恐々としていることだろう。

 

怯えた市民たちの顔を思い浮かべて思わず暗い気持ちになってしまう。早く見つけて安心させてあげたい。

 

「フィンはなんて言ってるの?」

 

 とはいえ 今は時期が時期だファミリアの幹部としては、団長ひいてはファミリア全体の意向を確認する必要がある。

 

「他ファミリアに不自然と思われない程度に軽く調べてほしいってさ」

 

 【ロキ・ファミリア】が闇派閥残党との決戦を近々に控えているということは一部の同盟ファミリアを除いて他のファミリアや市民たちは知らない。

 

下手にその情報が流布されて混乱が起きても困るため、基本的には秘密にしてある。

 

だが、いくら可能性が低いとはいえ完全に闇派閥と関連がないとも言えない以上、最低限気にするくらいはしておくべきだ。

 

「もし、モンスターを見つけたらどうしろって?」

 

「できれば生け捕りにして欲しいってさ」

 

 中層程度までの強さのモンスターならば捕獲はそこまで難しくもないだろう。

 

「でも、もし一般人に被害が出るようなら処分して構わないって」

 

「────────分かった」

 

 その言葉に何の苦慮もなくアイズは了承の意を示した。アルが不在な以上、自分がしっかりしなくてはと気を引き締める。

 

アルが帰ってきたときに少しでも負担が軽くなるように、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

一年前アル「アマゾネスのが怖いわ」←ノータイム握手

 

・リド

強さはだいたいLv.6中堅くらい。深層魔石デリバリーサービスと階層主のドロップアイテムから作られた装備のおかげでかなり強い。フィンやガレスたちにはまず相手にならないけど【ロキ・ファミリア】の若手幹部が相手なら割と善戦した上で負ける。

 

・グロス

Lv.6下位〜中堅くらい。アルのことは人間というよりもなんかそういう区分を超えた大怪物だと思ってる。

 

・アル

ウダイオスやアンフィス・バエナを定期的にリスポーン狩りしてドロップアイテムをいくつか貯めてる。

 

〈社会人として〉

平常時はちょっと病的なレベルに報連相を徹底するが一度でも逃げを選択した時は数日単位で連絡が取れなくなる組織人、社会人としては落第のアホ。  

 

どこまで遠くに逃げていても重要な事態が起きると前触れなくスっと現れる習性があるためフィンたちはあまり気にしていない。

 

琴線に触れない限りは割と真っ当な思想と社会規範の上で行動する常識人よりの振る舞いをするが一定ラインを超えると『真面目に考えるのめんどくせえ』ってなって急に責任感がどっか行っちゃう。

 

基本的には人間のクズ。

 

〈制御方法〉

実は行動を縛る方法が一つだけあって逃げるって考えが生まれる前にどんなにくだらないことでもいいので時間指定した予定を入れておくとギリギリ責任感が勝つ。

 

〈精神年齢〉

生前が未成年なのは確定してるので幼児の時期などを差し引けばだいたい10代後半〜20代前半(物事によって変わる)で肉体年齢とそんなに差はない。

 

〈色恋について〉

色恋にはかけらほどの興味もないがあえて曇り抜きの異性の好みなどをあげるとしたら見た目はヘディン(を女性に)、性格はおっとりとしているタイプ(だと思っているが我が強いのに惹かれる)。

 

〈好きな食べ物〉

甘いものを筆頭とした体に悪いもの。あと曇り顔。

 

〈曇り抜きの趣味〉

貯金とDIY。貯金通帳を見ることに使う以上の喜びを見出すタイプ。神秘のアビリティのせいでDIYの凝り具合に拍車がかかりつつある。

 

 

・アイズ

運がない

 

 

 

 










加筆の関係で内容自体はまだだいぶ差がありますがようやく改定前の話数に並べました。

ここまで戻すことができたのは皆さんがいつも読んでくれて日々の感想や評価をくださったおかげです。

本当にありがとうございます!!

これからも更新を頑張っていくのでお気に入り登録や感想、評価のほど動画よろしくお願いいたします。




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