皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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116話 次があるなら俺が素直に指示を聞くとかいう希望的観測をやめることだな

 

 

 

 

 

ギルド地下、祈祷の間。

 

リヴェラ壊滅の件で騒がしい地上とは打って変わり、静寂に包まれたその場所は厳かな雰囲気に包まれていた。

 

「最善はアルと【ガネーシャ・ファミリア】をリヴィラに派遣してダンジョン内で騒ぎを収めることだったのだが·········」

 

「仕方あるまい、ロイマンの判断は常ならば間違っていない」

 

 悔いるかのようなフェルズの言葉に、苦々しい表情を浮かべながらウラノスが答える。

 

18階層のリヴィラが壊滅したという情報はすでに事態の鎮圧のために戦力を集めようとしたロイマンの指示でオラリオ中に拡散されている。

 

遅れて指示訂正の命令を出したが、もう遅いだろう。この状況で冒険者のダンジョンへの立ち入りを禁止するなど、違和感を募らせる結果にしかならない。

 

零細派閥ならまだしもファミリアとして有力であればあるほど違和感を覚えるはずだ。

 

冒険者たちの意見を黙殺することはできても、完全に無視することはできない。特に今回のような緊急の事態は即、都市の壊滅に繋がりかねないほどの危機的状況なのだ。

 

本当はそうでなくても異端児たちの存在を知らない冒険者たちや神々にとって今回のギルドの対応は理解しがたいものがあるはず。

 

最悪、ギルドと冒険者の間に軋轢を生みかねない。

 

だが、今更もう手遅れだ。

 

冒険者たちと異端児たちを戦わせる、それだけは何としてでも避けなくてはという考えから今回の対応に至ったのだ。

 

既に異端児たちは動き出している。

 

もう異端児たちは止まらないだろう。

 

新たな同胞として迎え入れたウィーネをさらわれたことに対する憤怒はもはや抑えきれないところまできている。

 

これまでも彼らはその同胞を人間によって何度も失ってきた。

 

『密猟者』によってどこぞに売られていった同胞が帰ってこなかったことは数え切れない。

 

その度に涙を呑み、歯を食いしばって耐えてきた。

 

だが、今回、ウィーネ·······異端児がアルの庇護から外れたタイミングをつけ狙うかのように攫われたことで彼らの怒りは限界に達した。

 

ベルからウィーネを託されたそのすぐに奪われたことによる申し訳なさや悔しさはあれどそれ以上に怒りは燃え上がる。

 

そして、今までずっと堪えていた悲しみが爆発した。

 

それはもはや同胞を奪われたことへの怒りだけではない。

これまでに自分たちから仲間を奪っていった者共に対しての純粋なまでの敵意と殺意の発露だった。

 

その感情は同胞の仇を取り戻すまで消えることはない。

 

その気持ちは痛い程に分かる。

 

だからこそ、彼らをこのまま暴走させるわけにはいかない。

 

彼らに真っ当な人間を殺させてその手を血に染めさせることだけはあってはならない。

 

他ならぬ彼らの手で人類との融和という夢を途絶えさせるわけにはいかない。

 

何より、彼ら自身にその道を選ばせたくない。

 

フェルズは骨しかない拳を固く握り締め、ウラノスもまた眉根を寄せて厳しい顔をしている。

 

ダンジョンへの冒険者の立ち入りは止めているが最悪、その混乱に乗じて闇派閥残党が動くことも予想できる。

 

後手に回ってしまえば更なる事態の悪化を招く恐れがある。それこそ最悪の結末を迎えることになるかもしれない。

 

ダンジョン内のモンスターの移動及び、モンスターの出現位置の変化は深層域では時折起こる現象であるが、比較的地上に近い中層で起こればそれは明らかに異常なことだ。

 

ヴァルガング・ドラゴンの砲撃やラムトンなどの『階層無視』の能力を持ったモンスターを除けば上下の階層に対して二階層分程度しか移動しないはずのモンスターが一気に登ってきたなぞダンジョンについて詳しく知っていればいるほどその異常性に気付くだろう。

 

ギルドや都市の上層部が隠蔽しようとしてもいずれ異端児の存在がバレてしまうのは時間の問題だ。

 

こちらの事情について一切知らないからこそたちが悪い。

 

第一級冒険者や第二級冒険者の上澄みでなければ探索できない深層域のモンスターがせいぜいがLv.2までの冒険者が探索する中層まで登ってきたなんて日頃からダンジョンを探索する冒険者からすれば恐怖以外の何ものでもない。

 

加えてそのいずれもが強化種と思われる異常個体ときている。

 

ましてやそれが百体近く、それも群れを成しているなんて誰がどう考えても早急に【ロキ・ファミリア】か【フレイヤ・ファミリア】を派遣─────あるいはガネーシャやヘファイストスなどの有力派閥も含めた大規模な派閥連合で対処しなければならない事案である。

 

だからこそそれをしないギルドに不信感を抱く冒険者は増えるばかりなのだ。

 

「もはや彼らは私の問いかけにも応じない··········」

 

「アル・クラネルの制止も聞かなかったようだな」

 

「ああ、私達、人類の声は届かない。だからといって放置もできない·········」

 

 こうしている暇にも刻一刻と状況は悪化していく。フェルズの言葉にウラノスは同意するように深く首を縦に振る。

 

「アル・クラネルに【ロキ・ファミリア】の行動をとどめさせている間に事態の解決を図らねばならない」

 

 闇派閥残党との戦いに際し、神経質になっている【ロキ・ファミリア】は場合によってはギルドの制止を無視して行動する可能性がある。

 

そうでなくともあるいは 神以上の観察眼と聡明さを持つ『勇者』ならばギルドが隠そうとしている異端児の存在に勘づいてしまう可能性もある。

 

できることならこれ以上大事にならないようにギルドの情報統制内で迅速に事態を収束させたい。

 

「18階層の事態収束·········異端児達の応対は【ガネーシャ・ファミリア】に一任して問題ないだろう」

 

 異端児による冒険者の殺戮を防ぐには第一冒険者を複数抱える【ガネーシャ・ファミリア】が最低限の精鋭で対応した方が良い。

 

異端児について知っているガネーシャならば上手くやってくれるはずだ。

 

リドやグロスの相手は正直手に余るだろうが、それでも異端児達に撤退を選ばせることはできるはずだ。

 

「············アル・クラネルはどうする?」

 

 ウラヌスの命を受けてフェルズは今回も秘密裏に裏で動いているアルのことを思い浮かべる。

 

一度は拒まれたとはいえ異端児と親交深いアルならば怒りに支配された異端児達を止められるかもしれないし、万一の戦力として一切の憂いがなくなる。

 

というか、ぶっちゃけアル一人を向かわせれば全員の無力化すら容易だ。

 

「いや、『リスク』が高い、他の冒険者の目がある場所で異端児と関わらせるわけにはいかない、それは最終手段だ」

 

 都市最強の冒険者がモンスターと密通していたなんてことが露呈すれば今回のギルドの対応の不透明さとは比べものにならないほどの動揺が都市を襲うことになる。

 

そんな事態だけは絶対に避けなければならない。アルが異端児と関わりがあることはごく一部の関係者のみに留めておかなくてはならない。

 

「フェルズ────代わりではいないが、ベル・クラネルをミッションに組み込め」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────まぁ、何はともあれ今は情報が錯綜していてどれが正しいのかも判断がつかん」

 

 ギルドの放送からしばらく黄昏の館では慌ただしい空気に包まれていた。団員は各々が装備の点検や身体の確認、あるいは情報の精査など思い思いの行動をとっている。

 

ギルドからの待機命令を受けた若手幹部達もホームの中を落ち着きなく歩き回り、そわそわしっぱなしだった。

 

そんな中、ようやく冷静になった幹部達は談話室に集まって改めて腰を落ち着けると会議を始める。

 

まず最初に口を開いたのは神妙な顔のガレスだ。

 

今回の一件はあまりにも唐突過ぎて情報が不足している。何より不可解なのはギルドが冒険者のダンジョンへの立ち入りを禁止していること。

 

ギルドからの通達を無視することは可能だが、それはそれで後々面倒なことを引き起こす。

 

「だからって私達まで待機してる必要はないでしょ、ガレス」

 

 ガレスの言葉にティオネが苛立たしげに言う。

 

イレギュラーなのは承知しているがだからこそ機動力があって対応力にも優れた────なにより実力のある自分たちは動くべきだと主張する。

 

口には出さないがアイズやベート、ティオナと言った若手の幹部達も一様にその意見に賛同するように強く見つめ返す。

 

その困惑と意見は間違っていない。

 

純然たる事実としてリヴィラが数十ものモンスターによって壊滅させられたのだ。

 

それも上層から深層に至る様々な種類のモンスターの強化種と思われる異常個体が百近くという未曾有の異常事態。

 

全てが全て情報通りとも思わないがその脅威のほどは少し聞き齧っただけでも想像に難くない。

 

仮にそのモンスターたちが地上まで攻め上がってきたらどれほどの被害が出るか分かったものではない。

 

それを食い止めなければオラリオは間違いなく未曽有の危機を迎えることになるだろう。

 

情報から察するになぜかそのモンスターたちは中層のリヴィラに留まっているようだがそれもいつまで持つかも分からない。

 

だからこそ都市最強派閥である自分たちは動かなければならない。そんな幹部達の心情を察したようにガレスは小さく嘆息する。

 

ガレスもギルドの対応には違和感を覚えているが、それに対する答えは持ち合わせていない。

 

ギルドの対応の不透明さと命令の撤回はまるでギルドそのものが組織内部で今オラリオで起ってるのと同じような認識齟齬が生じているかのようであった。

 

しかし、それが何なのかまではガレスは推測することはできなかった。

 

「何らかの秘密を冒険者に隠そうとしている、とかかのぉ········」

 

「ギルドの上層部がなんか企んでるって事?」

 

「いや、流石にそこまでは分らんがの」

 

「········」 

 

 幹部達が言葉を交わすなか、フィンは一人黙考する。先ほどのギルド職員の反応、フィンの直感が何かがおかしいと囁いている。

 

その正体が何なのかは分からないが、このタイミングでの指示変更に加えて冒険者への入場禁止、情報開示もなくただただ待機しろと言う指示。

 

フィンはその指示にギルド上層部自体も混乱していると感じていた。

 

「(まず、ギルドが何かを隠そうとしている·····それは確実だ)」

 

 だが、ギルドが隠そうとしているのは何だろうか?

 

先ほどの放送にあったような『未知の強化種』の存在を隠すため? 否、ギルドが混乱していることを考えるとそれすらも怪しい。

 

錯綜する情報の中でどれが正しく、どれが誤っているかの判断材料が少なすぎる。

 

なにより───────。

 

「なんだってギルドはガネーシャの連中に全部任せてやがる!!」

 

「(それだ、そこが最大の違和感だ)」

 

 ギルドの発表ではいたずらに冒険者を投入して被害を増やすよりは精鋭だけに絞れて組織的行動に優れた【ガネーシャ・ファミリア】に任せた方が安全だと判断したということらしいが、それでも疑問が残る。

 

それに付随した未知のモンスターを相手にするには『怪物祭』などでモンスターのテイムを行っていてモンスターの相手に慣れている彼らが適任というのも間違いとまでは言わないがどこか違和感がある。

 

組織的行動に優れているという点であればそれこそ【ロキ・ファミリア】に話が来ないのは可笑しい。

 

それにモンスターの異常発生の理由追求の必要があるとはいえ彼らのテイマーとしての技術が必要になるとは到底思えない。

 

いや、そもそもの話。

 

「(【ガネーシャ・ファミリア】の()()()()()()()?)」

 

 【ガネーシャ・ファミリア】は強い。

 

Lv.6に限りなく近い実力者である『象神の杖』を筆頭に数多くの実力者を擁すこの都市でも屈指の大派閥だ。

 

所属する第一級冒険者の数に至ってはこのオラリオでも最多であり、Lv.6こそいないものの派閥としての総戦力は自分たちとフレイヤの派閥に次ぐオラリオ第三位の勢力を誇る。

 

その組織力や実力はフィンもよく知るところではあり、基本女神のためにしか動かないフレイヤの派閥と要所要所で暴走しがちな自分たちの派閥を除けばオラリオ最高戦力の集まりと言っても過言ではない。

 

大抵の事態なら問題なく対処できるはずだ。

 

だがそれでも今回に限って言えば彼らだけに一任するのは些か不安がある。

 

リヴィラの壊滅自体はよくあることだが100に迫る強化種の出現や冒険者の装備を身につけたモンスターなど聞いたことがない。

 

彼らの実力は疑うべくもないがそれでも今回の脅威は一派閥の手に負えるものなのかどうか疑わしい。

 

強化種の中に第一級冒険者クラスの戦力が複数いる可能性を考えれば【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】を含めた派閥連合を組んで事に当たらせるべきだっただろう。

 

ギルドもそんなことは十二分に理解しているはずなのになぜそれをしなかったのか?

 

「(そうまでして隠したく、それでいて【ガネーシャ・ファミリア】にならバレても構わない秘密··········?)」

 

 数秒の間に高速で巡らせた思考にフィンは小さく首を振る。どれもこれも憶測の域を出ない考えでしかない。今は情報が足りな過ぎる。いくら考えても推測以上のことは思い浮かばない。

 

強化種の大量出現、冒険者の武器防具を装備した個体、そしてギルドの不可解な対応。

 

あまりにも不自然な状況が重なって起きているこの状況にフィンは嫌なものを感じていた。

 

まるで見えない何か大きな事態が裏で動いているかのような得体の知れない感覚。

 

このオラリオの存亡に関わるような何かが迫ってきているような予感それをフィンは拭えずにいた。

 

「(冒険者の装備を身につけた強化種の同時出現、か)」  

 

「(··············ギルド、いや神ウラノスが隠したがっているのがそのモンスターたちの暴かれてはいけない『正体』というのは穿ち過ぎかな)」

 

 フェルズやベルが聞けば目を剥くようなことを平然と考えながらフィンは小さく息を吐いた。

 

だが、フィンはそれらの懸念を全て飲み込む。

 

「(少なくとも闇派閥との決着がつくまではいたずらに軋轢を生んでる場合じゃない)」

 

 闇派閥との戦いに勝利するにはギルドや他派閥との連携が必須だ。

 

「────何にせよ、情報が足りない今先走って空回りすることは避けたい」

 

 そう言ってフィンは幹部達を見回す。今すべきなのは現状の把握と情報の収集、そしてそれを踏まえた上での最善の選択を取ることだ。

 

「気持ちはわかるが今は機じゃない。僕たちはギルドの決定に従って、ここで待機しよう」

 

 動くのは【ガネーシャ・ファミリア】の結果を待ってからでも遅くはない。そう結論を出したフィンの言葉に幹部達は不満げながらも押し黙った。

 

各々、不満や疑念はあるようだが今の状況下ではどうすることもできない。

 

「特にアル、みんなに隠れてダンジョンに潜ったりしたらダメだよ」

 

「あーはいはい········」

 

 先ほどまでの緊張した空気を和らげるように冗談交じりで言うフィン。

 

昨日、ラキア王国の件から熱愛報道の件までファミリアを離れて続けていた単独行動から帰ってきたアルはリヴェリアにこってりと絞られていた。

 

とはいえアルが悪いわけではないのは分かっているのでお咎めはなく、むしろ踏んだり蹴ったりなことに同情的な視線が多かったのだが。

 

今回に関しても極論、アルが単独で先行してしまえばガネーシャの派閥よりも速く、確実に事態を収束させることができるかもしれない。

 

だが、今後のことを考えればアル一人にばかり負担をかけるわけにもいかないし、そもそもそんなことをすればギルドとの関係悪化は避けられない。

 

放っておくと勝手に行って勝手に解決しそうな気がしたので軽く釘を刺したのだ。

 

しかし、その言葉に当の本人は興味なさ気にそっぽを向いて答えた。

 

その様子にフィンは苦笑する。おそらくはもうすでに行く気満々だったのだろう。

 

「ティオナ、君はアルが抜け出さないように監視を頼むよ?」

 

「わかった!! ダンジョンで体を動かせないのは残念だけど久しぶりに英雄譚についていっぱい話せるね!!」

 

 その言葉にティオナは元気よく返事をし、その横でアルが少しばかり焦りを浮かべる。

 

「いや、俺の知識は大体ベルと爺の受け売りだから········」

 

「なら、あたしが面白いのを教えてあげる!!」

 

 超級の童話オタクであるティオナに捕まったが最後、夜通し語られることになるだろう。

 

だがこれで抜け出すことはできないだろう。その二人のやり取りを見て微かに微笑むとフィンは表情を引き締めて口を開いた。

 

「待機と言ったがそれは裏を返せば事が起こればすぐに動くということだ。皆、いつでも出撃できるように準備だけはしておいてくれ」

 

 フィンの言葉に全員が静かに首肯し、談話室から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────半日後。

 

すっかり日が落ち、夜の闇に閉ざされた黄昏の館。深夜と言っても良い時間帯の館の中を歩く影があった。

 

薄暗い廊下を音もなく進む人影は寝静まった館の者たちの目を盗んで進んでいく。

 

それなりの速度で歩いているにも関わらずその体からは一切の音が生じない。

 

まるで最初からそこに存在していないかのように気配が希薄で全ての方向から死角をとるように進んでいる。

 

深夜と言ってもまだ何人かは起きているはずだが、それでも誰の目にも留まらないのは異常だった。

 

そしてその影の正体は────。

 

「(俺を本気で待機させたいんだったら複数人に寝ずの番をさせるべきだったな)」

 

 ホームで待機しているように念押しされていたアルだった。

 

するりするりと人の目を避けて歩き続けるその動きはダンジョンでモンスターを狩る冒険者のそれでは到底ない。

 

まるで暗殺者のような身のこなしであり、事実、その隠密技術は大陸の裏界隈で密かに恐れられる暗殺系ファミリアの秘伝だ。

 

まだアルがそういう趣味の方々からつけ狙われる幼さを残していた時にとある酒場の猫人から学んだ技である。

 

それをその暗殺系ファミリアに所属するどの暗殺者よりも優れた才能と都市最強の第一級冒険者としての身体能力によって獣人の第一級冒険者ですら気づけない隠行の奥義にまで昇華させたモノ。

 

影に溶け込んだようなアルの動きに気づける者は誰もいない。事前に分かっていたとしても見つけることは困難を極めるだろう。

 

「(それにしてもほぼぶっ通しで話し続けるとかあいつ元気よすぎだろ·······)」 

  

 比喩でなくずっと英雄譚や童話について語っていたティオナに若干煤けた目を浮かべるアル。

 

目的のために磨き上げた聞き手の技量が無意識に災いしたせいでこんな時間になるまで眠らずに延々と話を聞いていたのだ。

 

ようやく寝たティオナから無音で離れて部屋から抜け出す頃にはこうして完全に深夜となっていた。

 

異常なほど寝つきがよく一度眠れば中々起きないので大丈夫だと思うがティオナが起きて自分の不在に気が付かないよう、早めに済ませて戻らなければと内心思いながら通路を歩いていく。

 

そうして、中庭を経由して外へと出る。

 

所々にある魔石灯の明かりを避けて足音を消して進みながら目的地を目指す。

 

わずか数分でたどり着いたのは白い外装の治療院であった。

 

「(次があるなら俺が素直に指示を聞くとかいう希望的観測をやめることだな)」

 

 そのままアルは無言で裏手の窓枠に手をかけた。

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

対アミッドは次回で。

 

 

 

白髪頭『次があるなら俺が素直に指示を聞くとかいう希望的観測をやめることだな』

 

勇者『えぇ·············』

 

組織人として何か致命的な欠陥を抱えた白髪頭。

 

 

 

 

白髪頭『バレなきゃ犯罪じゃないし、仮にばれても言いくるめられればそれは犯罪じゃない······!!』

 

聖女『少なくとも不法侵入は言いくるめられる以前に現行犯ですよ』

 

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