皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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進撃の巨人が改めて面白すぎる




119話 実は一回、18階層まで様子見に行ってる白髪頭

 

 

 

 

 

 

 

 

窓から暖かな光が差し込んで来るのが瞼を閉じていても分かる。昨日いつ眠ったのかよく覚えてないが、カーテンから漏れる光を見る限り朝はもう来ているようだ。

 

「ん、くぅー········」

 

 寝起き特有の倦怠感に包まれながら身体を起こす。欠伸をしながら目を擦り、瞼を開けると眩しい朝日が目に入って来て思わず顔をしかめてしまう。

 

ごろんとベッドの上で寝返りを打ち、枕元に置いてある魔石製品の時計をちらりと確認する。まだ起きるには少し早い時間だけど、二度寝するには目が冴えてしまった。

 

ふかふかとした羽毛の掛け布団が心地良い。けれどこのまま起きてしまおうかと悩み、結局あたしはベッドから抜け出した。

 

変な体勢で寝たせいか少し痛む腰をさすりつつベッドから降りると、肩にかかっていた毛布がするりと落ちる。どうやら誰かがかけてくれたらしい。

 

「んー······アルぅ?」

 

 寝ぼけ眼で部屋を見渡すも彼の姿はない。それどころかこの部屋にはあたし以外誰もいないみたいだ。

 

そういえば昨日の夜はフィンにアルを見張ってろって言われたからアルの部屋で『アルゴノゥト』や『理想郷譚』とかの英雄譚について色々教えてあげてたんだったっけ?

 

でも途中で疲れちゃってそのまま眠っちゃったんだよね。その証拠にテーブルの上には読みかけのまま放置された本が何冊か置かれる。

 

あれ?そう言えばアルはどこに行ったんだろう? まだ頭が覚醒していないせいかうまく思考が回らない

 

きょろきょろと辺りを見渡してもアルの姿が見えない。

 

一体どこに行っちゃったんだろう?

 

ふぁ~あ、と大きなあくびをしてベッド脇に置いてあった水差しを手に取り、コップに注ぐ。

 

人の部屋ではあるけれど一応この部屋にあるものは自由に使っていいと前々から許可をもらっているため遠慮なく使わせてもらう。

 

冷たい水が喉を通って行く感覚が心地良い。水を一気に飲み干し、喉を潤してから再びベッドへダイブする。

 

ぽふんっと柔らかな衝撃が背中から伝わり、微睡みそうになるもののすぐに意識がハッキリしてきた。

 

アルがいない。こんな早朝なのに何処にいるんだろう? まさか一人で外に出たりしてないよね? 何気なしに窓の外へと視線を向ける。

 

窓の外を見て太陽の傾き具合を確認してからあたしは部屋を出て洗面所へと向かうことにした。

 

「·········流石にあんな夜中にダンジョンに行ったりはしてないよね?」

 

 確かアルより先に寝てしまっていて記憶がないけど、既に深夜だったはず。いくらなんでもそんな時間にダンジョンに行くとは思えないんだけど。

 

フィンがあれだけ言ったんだし大丈夫だとは思うんだけど、それでもやっぱり心配になる。

 

それに万が一、アルが夜中に外に出たりしたらすぐに気付くはず。だからあたしが起きるまで待っててくれてるとは思うんだけど············。

 

「あっ」

 

「あっ」

 

 ドアを開けて廊下に出ると、ちょうど階段の方から歩いていくアルと鉢合わせした。お互いの顔を見た瞬間、声が出てしまう。そして同時に思ったことは同じだったようで。

 

アルはバツの悪そうな顔を浮かべていた。それは多分あたしも似たような表情をしているだろう。

 

「··········ダンジョン、行ってないよね?」

 

「いや、行ってない」

 

 アルなら日帰りどころか一、二時間で18階層まで到達して事態を解決させて地上に戻ってくるなんて簡単に出来ると思うけど。まぁ普通に考えて当然だよね。

 

アルにはちゃんと釘を刺しておいたからきっと大丈夫だと思うけど、それでもやっぱり心配してしまうのは仕方ないことだ。

 

みんなのために動いてくれるのは嬉しいけど、無茶だけはしないでほしい。

 

一人で何でもかんでも抱え込まないで欲しい。あたしにも頼ってほしい。

だってあたしたちは仲間なんだから。

 

そう思ってじっと見つめると、アルは何とも言えない微妙な顔をしていた。まるであたしの考えを見透かしているような感じで。

 

·········なんかちょっと恥ずかしいな。アルの目を見ると何故か全て見抜かれている気がする。

 

あたしのほうが歳上なのになんだか子ども扱いされているみたいで釈然としなかった。

 

アルはあたしよりもずっと大人で頼り甲斐があって、強い人だ。あたしがアルのことを凄いと感じる一番の理由はそこかもしれない。

 

だからこそアルが困っている時は力になりたいし、助けたい。アルはあたしにとって大切な友達で家族なのだ。

 

同じファミリアの仲間として支え合いたいと心の底から思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こっちだ、ベル・クラネル!!』

 

「───────ッ」

 

 異端児達と【ガネーシャ・ファミリア】の戦いから少し離れたリヴィラの街中。すでにリヴィラを根城としていた冒険者たちの姿はどこにもなく、薄気味悪い静寂に包まれていた。

 

戦いの喧騒から離れ、誰もいないはずのその場所に声だけが響く。感覚の鋭い一部の獣人や視界に依らない感知力を持ったモンスターならばその街中を走る二つの見えない影を捉えることができたかもしれない。

 

『リバース・ヴェール』。愚者謹製の魔道具の力により姿を隠した二人。

 

【ガネーシャ・ファミリア】のミッションに秘密裏に同行することを許されたベルとフェルズは【ガネーシャ・ファミリア】が暴走している異端児の相手をしている間にリドたちと合流してこれまでの経緯を聞いていた。

 

闇派閥に与する密猟者の一派によって攫われたと思われるウィーネの行方を探すために人間の多くいるリヴィラを襲撃し、匂いを辿ってウィーネを攫ったであろう密猟者の拠点を突き止めた。

 

『追うぞ············』

 

 罠だとわかっていながら先行したリド達異端児を追うように最硬精製金属の扉の先の通路を進んでいく。

 

高い魔法耐性を持った深層モンスターのドロップアイテムが混ぜ込まれている周囲の石壁や扉に使われていた最硬精製金属、オリハルコン。

 

ダンジョンで発掘されるアダマンタイトを優に上回る強度を誇る最高硬度の合金。

 

そんなものが混ざっている迷宮の壁はベルの魔法やフェルズの魔道具では破壊することは出来ず、また扉に関しては傷つけることすら出来ない。

 

魔術師としてその構造の異常さにフェルズが中身のない眼底を見開く。

 

石材の敷き詰められた廊下を進み、突き当たりを曲がるとそこには大きな広間があり、その中央ではリド達と──────

 

『············来たか、クラネルの弟』

 

 全身を黒紫のローブで覆い、不気味極まる仮面を被った人物が立っていた。透明状態であるはずの自分たちを捉えるかのように真っ直ぐに向けられる視線。

 

そして、その足元には気絶させられたと思われる異端児達とかろうじて意識のあるリドやグロスが転がされていた。

 

「··············ぁ」

 

 急速に喉が渇く、背筋が凍りつく。まるで心臓を直接鷲掴みにされたような恐怖。目の前にいる存在が恐ろしく、恐ろしい。

 

ベルの本能が全力で警鐘を鳴らしている。

 

────アレは、ダメだ。

 

絶対に関わってはいけない類のものだ。呼吸すらままならないほどの重苦が物理的な圧力となって襲いかかる。

 

それは殺意でも敵意でもない、ただそこにあるという存在感だけで人を殺せる程の濃密な魔力。

 

今まで感じたことのない異質で異常なまでの力の波動に膝が震える。まるで世界そのものに否定されているかのような圧倒的で絶対的な力の差。

 

瘴気が人型を象っているかのような異形の存在に気圧されそうになる。

 

隣に立つフェルズもその骸骨の表情は伺い知れないが、おそらくは自分と同じ気持ちだろう。

 

それくらいにこの場を支配する圧倒的な威圧感は凄まじいものだった。胸を掻き毟るかのような不吉な予感。

 

今すぐにここから逃げ出したくなる衝動に駆られるも、ベルは奥歯を噛み締めてその衝動を抑え込む。

 

ここで逃げれば異端児達が殺されるかも分からない。

 

だが、自分がいたところで何が出来る?

 

禍々しい魔力の奔流を放つ怪物を前にして、ベルは何一つ有効な手段が思いつかない。

 

あらゆる情念を塗りつぶすかのような恐怖が心を満たしていく。闇色に染まっていく思考。

 

脳に氷柱を突っ込まれたかのように身体が冷えていく。血が通わなくなる感覚。

 

ナイフを逆手に握る指先から徐々に感覚が消えていく。アステリオス を前にした時ですら感じなかった死への恐怖。あれはもっと単純だった。

 

理屈抜きの純粋な力の塊だ。

 

だが、これは違う。

 

単純な力などではない。

 

その存在そのものが人の理解を超えた、理外の領域に踏み込んだものが持つ力。抗うことを許さない絶対強者の覇気。

 

まるで嵐のように吹き荒れる力の暴風がベルの心を蝕んでいく。呼吸が浅くなり、冷や汗が止まらない。

 

もう立っているのがやっとだ。

 

しかし、それでもなんとか足に力を入れる。

 

「貴方、は········?」

 

『··········私を前にしてまだ口が利けるか』

 

 仮面の奥の目がこちらを向くのが分かる。それだけでベルは腰が抜けそうになった。少しでも気を緩めばその場で嘔吐してしまいそうなほどに強烈なプレッシャー。

 

何らかの魔道具によって声を変えているためか、男か女かの区別が付かない。

 

だが、それでもわかる。

 

目の前の存在が普通の人間でないことは。

 

瘴気の渦の中心に佇む存在はベルの問いに答える代わりにゆっくりと右手を掲げた。

 

次の瞬間、その掌の上に黒い紫電が現れる。それが一体どういう意味を持つのか、それを察せない程愚かではなかった。

 

フェルズは魔道具のマントを展開してベル達を助けようとするが、それよりも早くその手が振り下ろされる。

 

バチリ、と雷光が弾けた。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ?!」

 

 ベルもフェルズも、リド達もその場から動くことすら出来なかった。何よりも早く広間を通り過ぎる紫電。

 

その速度は視認することはおろか知覚することさえ許さない神速の発露。フェルズの展開した魔防のマントを容易く貫通し、ベルの全身を駆け巡る。

 

まるで神経を直接撫でられているかのような激痛。体中の細胞を焼き焦がされるような熱さ。

 

「がっ、あぁあああっ!?」

 

 全身が弾けたかと錯覚するような衝撃にベルは悲鳴を上げながらその場に崩れ落ちた。

 

視界が真っ赤に明滅する。全身を駆け抜ける灼熱の痛みに意識を手放したくなるが、全身を焼くような激しい痛みがそれを許さない。

 

フェルズの魔道具は確かに効果を発揮した。そこらの上級魔導士の攻撃魔法ならば完全に無効化できるほどの対魔法性能を誇る愚者謹製魔道具。

 

だというのに、目の前の紫電はそんな防御すら意味がないと言わんばかりにフェルズたちの体を蹂躙していく。

 

『なん、だ、君は────』

 

 ローブを焼き尽くされ、骸骨の面頬を晒すフェルズ。その眼窩に宿る炎の瞳が驚愕に見開かれる。

 

詠唱はなかった、フェルズの魔砲手のような魔道具を使ったようにも見えなかった。そもそもなにかを発動させる素ぶりすら見せていなかった。

 

にもかかわらず、その雷撃は間違いなく魔力による現象。

 

そしてその威力は第一級冒険者の砲撃すら凌ぎかねない。

 

かつて魔法大国に賢者ありと呼ばれた不老の魔道士は未知の術理を前に困惑と畏怖の感情を抱く。

 

『まさか、ただ魔力を解き放っただけだとでも·········』

 

 魔法ではなく身体能力の延長線上のただの魔力放出。400年の時を生きてきたフェルズだからこそ理解できる異常性。

 

そして理解できたからこそ、戦慄が走る。未知の化物に対する恐怖が湧き上がる。フェルズが見たこともないような膨大な魔力。

 

『スパルトイ?·········いや、どちらでもいいか』

 

 そして何よりもこの怪物は手加減をしている。殺すつもりなら魔法を使わずとも一瞬でフェルズとベルの命を奪えたはずだ。

 

足元に倒れ伏している異端児達も気絶しているだけで殺されていない。

 

この場にいる者達の中で誰一人として死んでいない。だがそれでも敵であるということは肌で理解出来た。

 

「ぐ、っぅ、う········っ!!」

 

 ベルは苦痛に顔を歪めながらも立ち上がる。フェルズの魔道具の防護のおかげで負傷は免れたが、それでも痛いものは痛い。

 

ベルはナイフを構える。その視線の先にいる怪物は、ベルを見て僅かに驚いたようだった。

 

ベルが動けるとは思っていなかったのだろう。しかし、それも当然か。今の一撃を受けてもなお立ち上がれる者などそうはいない。

 

ダメージではなく精神的な問題として圧倒的な力の差を前にすれば大抵の者は絶望に打ちひしがれてしまうものだ。

 

まして相手は人智を超えた力を持つ怪人にして怪物にして化物。

 

勝てるはずもない。

 

「逃げろ、ベルっち!!」

 

 リドが叫ぶ。だが、ベルはその言葉に従うわけにはいかない。逃げれば彼らが殺されるかもしれない。

 

それにあの異形の存在の目的がまだ分からない以上、ここまで来て逃げるのはあまりに無責任だ。

 

ここで逃げたらきっと後悔する。

 

それは直感だった。ここで逃げてはウィーネに二度と会えない気がしたのだ。

 

だからベルは、目の前の怪人に抗うことを選んだ。その意思が伝わったのか、怪人は仮面の下で興味深げに目を細める。

 

『血は争えないとでも言うのか········』

 

「え········?」

 

 怪人は静かにそう呟くとベルに向けて右手を掲げる。再び現れる紫電。今度は先程のように収束されたものではない。

 

純粋な暴力の奔流。それがベルに向かって一直線に襲い掛かってくる。ベルは咄嵯に躱わそうとするが、それよりも早く紫電がベルを飲み込んだ。

 

だが、雷光がベルの身体を駆け巡る前にベルの前に赤い影が割り込む。

 

「────ぐッ!!」

 

「リドさん?!」

 

 リドがベルの前に出てその身を投げ出す。ベルを庇ったリドの肉体を紫電が容赦なく焼き焦がす。

 

「こんっ、なも、んッ!!効くかよぉッ!!!」

 

『───!』

 

 両刃刃の片手剣を盾にしたリドの全身を紫電が駆け巡る。肉を焼かれる激痛に歯を食い縛りながらリドは剣を振り下ろす。

 

いくら怪人の魔力が凄まじくとも 詠唱すらしていないただの魔力放射、それも全力ですらない攻撃で倒れるほどリドは軟ではない。

 

「グォォォオオオオオオオオオ!!」

 

 それに合わせるようにグロスも石の爪を振るう。そのどちらも冒険者として換算するならばLv.6の域に届くほどの実力者。

 

都市内外に名を轟かせる第一級冒険者でなければ相手にならない程の実力の持ち主だ。

 

だが、相対する怪人はその階梯すら軽く踏破する規格外。

 

「ガァアアッ!?」

 

 怪人の右腕の一振りがリドとグロスの巨体を吹き飛ばす。

 

「がぁあああっ!?」

 

「リドさ──────」

 

 吹き飛ばされたリドを受け止めることも出来ず、ベルは地面を転がる。打撃ですらない、ただの腕のひと薙ぎで二人はまるで赤子同然にあしらわれてしまった。

 

『お前たちに用はない、異端の怪物ども─────少し話をしよう、ベル・クラネル』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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白髪頭会話例

 

・ベル

「···········フッ(後方理解者面)」

 

・対【ロキ・ファミリア】

「ああ」「そうか」「わかった」「···」

 

・対ヘルメス

「あぁ、なんだデケェ蝿かと思ったらお前か」「俺相手に交渉が通じると思うなよ」「できないってのは嘘吐きの言葉なんだぞ」「俺、そんなこと言ったか?言ってない、知らん、黙れ、証拠は?」

 

・対アミッド

「いや、でも、俺にもやることあるし······」「おいおい、俺がお前に嘘をついたことなんてあったか?」「············ははっ」「悪い、訳あって今はまだ理由を話せないんだが·······頼むよ、お前にしか、アミッドにしか頼めないことなんだ」

 

・対アレン(妄想)

「( ̄ー ̄)ニヤリ」「(⁠ ⁠´⁠◡⁠‿⁠ゝ⁠◡⁠`⁠)...ㇷッ」「(⁠◉‿⁠⦿)ニタリ⁠」

 

 

 





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