皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
溜め回その二
大抗争から遡ること一年。闇派閥暗躍の影はあれど、まだ表沙汰には大きな事件も起きていない頃。
その日のダンジョンにはおおよそダンジョンに入るには若すぎる8歳かそこらの少女がいた。
物語の精霊か妖精のような愛らしい姿とは裏腹にモンスターの返り血だと思われる赤い液体が少女の全身を染め上げていた。
小人族用のものと見間違うようなこじんまりとした軽鎧に腰にはいくつかのポーションが数本。
流れるような金髪は背中の真ん中あたりまで伸ばされ、か細い手足にはそれぞれ波紋鋼製の手甲と脚甲を身に着けている。
そしてその手に持つ剣は特別な拵えでこそないものの武骨なデザインをした実用的なものだった。
一見すれば冒険者風の格好をしただけの少女だが見るものが見ればその立ち振る舞いと装備の使い込み具合から彼女が相当な実力者であることが分かるだろう。
そんな彼女の名はアイズ・ヴァレンシュタイン。
普通ならば剣などを持つはずもない年齢でありながら都市最大派閥【ロキ・ファミリア】の上級冒険者として『剣姫』或いは『人形姫』という呼び名で知られている少女剣士だ。
彼女はいつものようにリヴェリア達の目を盗んで一人でダンジョンへと潜り、無理な鍛錬を積んでいたのだがこの日は──────。
「···········なんでそんなに強いの?」
「は?」
上層12階層。中層手前にあたるこの辺りで出現するモンスター相手であれば片手間で倒せるほどに成長したアイズは偶然同じ広間に居合わせた少年に声をかけた。
突然話しかけてきた彼女に怪しげなものを見るかのような視線を向ける少年は穂先だけを赤く染まらせた槍を肩に載せたまま何言ってんだこいつ、と言わんばかりの声を出した。
その態度に少しだけむっとしたアイズは少年────アルに向かって更に言葉を重ねる。
「あなた、冒険者になったばかりって聞いたけどどうしたらそんなに早く強くなれるの?」
冒険者になって一年あまり、世界最速記録に並ぶ速さでランクアップを果たしたアイズのレベルが2なのに対してほんの数ヶ月前にオラリオに来たというアルのレベルは既にオラリオでも上位に当たる3だというのだ。
それがどれだけ異常なことなのかは 一時期伸び悩み苦心したアイズだからこそよく分かる。
アイズの所属する【ロキ・ファミリア】とアルの所属する【アストレア・ファミリア】は同じ体制側の派閥でこそあるが主神同士の折り合いがあまり良くない────というよりも善神極まってるアストレアをロキが一方的に嫌っている────ため直接の関わりはほとんどない。
アイズ自身は知るよしもないが異常な速度で成長するアルと関わることでより一層無理をしてしまうのではないかと危惧したフィンやリヴェリアによってそれとなくアイズが【アストレア・ファミリア】と関わらないように誘導されていたりもしたのだがそれはさておき。
兎にも角にも自分よりも明らかに早い成長速度を見せるアルに対し前々から嫉妬にも似た興味を抱いていたアイズは偶然ダンジョンで鉢合わせた今を逃すまいと質問をぶつけたのだ。
とはいえほぼ初対面で一方的に知っているとばかり思っていた彼女にいきなり話しかけられたら誰でも困惑するわけで。
これがもう少し成熟した時点のアル・クラネルならばとっさにそれっぽい雰囲気を作って逆に何らかの布石にするくらいのことは息をするように行ったかもしれないが如何せん今の彼はまだ子供。
前世の年齢を合わせれば年齢上は一応、成人の砌ではあるが中身はまだ十代半ばの少年。
何より、純度100%の漆黒である『
つまるところあまり対人に気を遣う性ではなかったのだ。
故にその答えは────
「知らんけど才能じゃね?」
────実に身も蓋もないものであった。
『
しかし残念ながらここにいるのはただのクソガキだ。『猛者』や『重傑』に打ちのめされて上には上がいることを実感する前の才禍であるがゆえにそう答えるしかなかった。
少なくともアルにはそれ以外言いようがなかった。だが、当然の帰結としてアイズはそんな言葉で納得できるはずもなく、かと言ってそれ以上の追及もできずに結局。
「··········そう」
私って才能ないんだ、と世の冒険者が聞けば憤死するような自虐的な結論に至った。そして、そんなアイズの姿を見て何を思ったのか、あるいは何も考えずになのか。
「格上ぶっ殺せば強くなれるし、今からゴライアスでも倒しに行くか? 手伝ってやるよ」
リヴェリアやロキ、そしてリュー達が聞けば泡吹いて倒れるような提案をした。
格上を倒すということはすなわち自分の実力以上のモンスターを相手にするということだ。
そんな無謀なこと、自殺行為に等しい。まして、アイズはつい最近レベルが上がってようやくLv.2になったばかりだ。
まして相手は『迷宮の孤王』ゴライアス。
通常のモンスターとはタフネスもサイズも比にならない階層主であり、その相当レベルは4。
十分な前衛と後衛を揃えた第二級冒険者のパーティーですら全滅することもある、それほどの強敵だ。
一部の上位派閥が中層以降に潜るために通りがけで倒す以外にはリヴィラの街の冒険者たちが数十人がかりで挑む怪物。
そんな相手にたった二人で挑もうというのだから、正気の沙汰ではない。
いくらなんでもそんな相手にどちらも適正レベルに届いてないLv.3とLv.2の二人で勝てるはずがない。普通の感性を持つ冒険者ならまず間違いなく断るだろう。
だが、生憎とここには普通ではない少女がいた。アルの言葉を聞いた瞬間にアイズは目を見開き、次の瞬間には嬉々として首を縦に振っていた。
─────その日、瀕死一歩手前になる事を代償に一日で全アビリティ熟練度上昇値、合計1000を越えたおバカ二人は当然のように派閥の団長と副団長、なにより主神に凄まじい勢いで叱られることとなった。
◆ ◆ ◆ それから数日後。
アルは相変わらず毎日のようにダンジョンへと潜り続けていた。
アイズもまた、時間を見つけてはアルと訓練を行う日々を送っていた。
ただ、この数日で二人の関係は劇的に変わっていた。
端的に言うのであれば、クソガキ二人は秘密裏に結託していた。その目的は言わずとも知れている。
要は、自分達のレベルを上げたいのだ。理由は至極単純で、強くなるため。ステイタスを、レベルを上げるためにはモンスターなどの敵を倒し、経験値を稼ぐ必要がある。
経験値の仕様上、一人で戦った方が窮地に陥りやすくステータスを上げるという意味では手っ取り早い。
しかしそれはつまり死ぬリスクが高いということでもあり、二人いれば一人で潜るよりかは最低限の安全を確保できるということでもある。
加えて、一人では回収や運搬の難しい魔石やドロップアイテムを二人ならばある程度効率的に集めることができる。
一人で潜るのはそれなりに不便だがだからと言って同じファミリアの仲間と潜ると無茶なことはできない。
その点、アルとアイズの二人ならば互いに互いの安全を最低限保証しつつ仲間といると止められるような方法で効率良く経験値を稼ぐことが可能になるのだ。
二人とも別々の時間にダンジョンに潜り事前に決めておいた場所で偶然を装って遭遇し、そこで合流して一緒に探索を行う。
アルとアイズ、二人が互いを利用しあう関係になったのは必然だった。
アルとアイズがそれぞれ単独で潜った時と比べて得られる経験値は多少少なくなったかもしれないがそれ以上に効率が良くなり、結果として両者の成長速度は飛躍的に上昇した。
お互いを必要以上に気づかわなくていい。あくまで利害が一致しただけの一時的な同盟。
アイズにとってアルという存在は、決して悪いものではなかった。彼女は元々、己の力を磨くことに余念のない剣餓鬼である。
そのため同年代の友人などおらず、そもそも同年代で冒険者になっている者自体がほとんどいないため切磋琢磨する相手すらいなかった。
そんな中、アルは少し年上とはいえ同じ目線で互いを高め合えるライバルと言える存在だ。
何より同世代から半ば恐怖されているアイズには親代わりのリヴェリアやロキ達を除けば気軽に話せる相手が皆無であった。
親のように接し、時に厳しく指導してくれるフィンやリヴェリアの存在は大きかったが、それでもやはりどこか遠慮があった。
だからこそ、兄のように接することのできるアルの存在がアイズには新鮮であり、心地よかった。
脇目も振らずに突っ走るアイズとそれを止めずにアイズ以上に突っ走るアル。
そんな二人の関係は闇派閥と秩序の派閥の抗争がより激しさを増していくまで続いた。
そして、一年後。
「「──────はあぁッ!!」」
光の落ちた工場跡で二つの金色の軌跡が暗黒の内で幾重にも交差する。常人の目には残像すら捉えることのできない速度で打ち合わされる刃。
大抗争の一夜目を終えた翌日、住民たちからの糾弾に耐えることのできなくなったリューは昨日アルが撃鉄装置による自爆で深手を負った工場跡にてアイズと剣を交わしていた。
その発端としては闇派閥の信徒を探して工場跡に入ったアイズが挙動不審な覆面のエルフ────リューに闇派閥かどうか聞いたのがきっかけだ。
リューとしては自暴自棄から来る八つ当たりのようなもので醜い憂さ晴らしに過ぎなかったが、アイズはそんなリューの歪んだ思惑に収まらぬ剣域を以って応えた。
「(この体躯にこの年齢でありながらステータスは私よりも上········!!この歳で一体どれだけの死戦を潜り抜けてきたのか!!)」
たった数合の攻防でリューはアイズの実力を見抜き、その異常性に戦慄した。自分以上の『力』と自分以上の『耐久』、そして自分以上の経験と技術を兼ね備えた怪物。
それこそが目の前にいる金髪の少女の正体だ。
可愛らしい容姿などただの飾りに過ぎない。
皮を一枚はがせばそこにあるのは怪物の如き強靭さと凶暴さだ。
「(この人、すごい巧い。動きの速さ以上に次の手が読みにくい·········!!)」
対するアイズもリューの実力に舌を巻いていた。対モンスターの技術であれば比べるまでもなく自分が上だと断言できるが対人戦では別だ。
リヴェリアによって闇派閥との戦いから遠ざけられていたアイズに対して正義の派閥の主力の一人として常日頃から苛烈な『実戦』に身を置いてきたリュー。
卓越した第二級冒険者同士の戦いは終始、拮抗しており、互いに互いが並々ならぬ強敵だと理解した。
故に両者共に手を緩めることなく全力でぶつかり合う。銀閃と閃光が幾度も交差し、その度に火花を散らす。
加速に加速を重ね、思考に思考を重ねる。一瞬でも判断が遅れれば敗北するとわかる拮抗状態。
交わす言葉はなく、ただ剣戟の音だけが響き渡っていく。迅雷の如く振るわれる一撃に嵐のような連撃。
両者の攻撃は掠ることこそあれど決定打を与えるには至らない。
「(二つ名にこれ以上ないほど相応しい鋭利な剣筋と迷いの無さ──────なるほど、『剣姫』という呼び名も頷ける!!)」
「(だが────)」
「(誰だがわからないけどすごく強い········!)」
「(けど────)」
「「(─────アルには遠く及ばない)」」
しかしながら『剣姫』の鋭さは、『疾風』の疾さはいずれも『死槍』とすら呼ばれる戦いの申し子には及ばない。
互いにアルほどではないと相手の強さを理解したが故に生まれた僅かな意識の隙間。ほんの一瞬の緩急を持ってより一層激しく、より速く、より強く、両者は互いの技をぶつけ合う。
立体的、空間的な駆け引きに優れたリューに対し、その全てを斬り裂くような直線的で荒々しいアイズの攻撃。
疾風の如き速度と稲妻の如き鋭さを併せ持つ両者の攻防は周囲の瓦礫を砕き、廃墟の様相を変えてなお止まらない。
打ち合うことによって生じる火花だけが照らす暗闇の中、両者の激突は激しさを加速度的に増していく。
「ここまで来て押しきれないとは···········これが【ロキ・ファミリア】の『剣姫』!!」
「はぁ、はぁ、はぁ········そっちだって凄く速い。けど負けられない」
息を切らしながら二人は互いに睨み合い、得物を交える。レベルに収まらない才能のぶつかり合いは既に戦闘と呼べる代物ではなくなりつつあった。
剣戟と呼ぶにはあまりに苛烈で、もはやそれは殺し合いに近い。
剣の技量だけで言えばリューはアイズに、対人の技量だけで言えばアイズはリューに一歩劣るだろう。
お互いにやりにくいと感じながらそれでも己の力を尽くしてぶつかり合う。
「噂に違わぬ戦闘狂か!!いいだろう、ならば最後まで付き合ってもらうぞッ!」
リューはそう言って剣を振るい、アイズもそれに呼応するかのように駆ける。
「──────うん、いいよ」
次の瞬間、幾度目かはもう数え切れない交錯が暗闇の中で火花を散らした。
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
その頃、アルは聖女による治療中。
本編の100倍扱いがいいアイズ。アルは相手が歳下だと曇らせ対象から外れる代わりに悪い意味でクソ甘くなります。
アステリオス(0歳)『?!?!?!』
例外もいます。ベルに対しては甘いけど厳しい。アストレア・レコード時空だと原作開始時点で本編より3歳ぐらい年上なのでその分災を逃れるキャラがそれなりにいる。
フィルヴィスはそれでも同じ年なので対象から外れません。
フィルヴィス(19歳)『?!?!?!』
『本編アル』
曇らせ欲:100
救世意識:50
人間関係:50
成長閾値:50
色恋興味:1
ベル信頼:100
ベルと接する⇒「こいつなら世界救うわ」と確信⇒なら好き勝手やってもいいな⇒オラリオに来る前から本編メンタル
ゼウスと接する⇒「神は曇らせに向かねぇな」と判断⇒横のつながりに特化しよう
なお、世界にとってもコイツにとっても周りにとっても聖女√の次にバランス良い世界線。
『アストレアif』
曇らせ欲:80
救世意識:70
人間関係:60
成長閾値:60
色恋興味:20
ベル信頼:40
ベルと接さない⇒「原作通りに進むとは限らないよな」と思案⇒脳焼かれるまではどっちつかず⇒オラリオに来て1年ほど経ってから曇らせにシフト
『アルフィアif』
曇らせ欲:0
救世意識:100
人間関係:100
成長閾値:100
色恋興味:0
ベル信頼:100
曇らせにシフトする前に母⇒「隻眼の黒竜やべえ」と実体験を聞いて確信⇒「ベルには英雄なんてやばいもんになって欲しくない」⇒非曇らせにシフト
曇らせを狙わない⇒アルから曇らせ欲を無くすと本編に所々あった第三者意識や冷徹さ、秘密が消える⇒曇らせに向いていたくそ強精神エネルギーが光側に向く⇒よくも悪くも前だけを見て焦りながら輝く姿に周りが曇る⇒多分全てを大団円で片付けてから一人だけ死ぬ
アル・クラネルはアル・クラネルなので目的>人の心
『女帝if』
曇らせ欲:120
救世意識:1
人間関係:1
成長閾値:70
色恋興味:0
ベル信頼:50
本編アルがちょっと引く。
『聖女√』
曇らせ欲:30
救世意識:50
人間関係:70
成長閾値:30
色恋興味:30
ベル信頼:100
穏当。
『聖女アルちゃんif』
曇らせ欲:20
救世意識:60
人間関係:80
成長閾値:20
色恋興味:0
ベル信頼:100
穏当。
『古代if』
曇らせ欲:70
救世意識:90
人間関係:70
成長閾値:100
色恋興味:0
アルゴノゥト信頼:1
曇らせとかそれどころじゃねえ!!