皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
メッセージなどでゼウスやヘラの残党にひどい目に合わせたロキ達が糾弾されないのはおかしいという意見をいくつか頂いたのでこの作品での解釈を書いておきます
現状原作の方で明言されていることは少ないですし、追放というのがどういった形だったのかもわかりません。
なので今作ではフレイヤクロニクル的にも新たに象徴となれる有望な後継に託すために自分達から壁になったんじゃないかなって解釈しています(マキシムは確実なのかな?)のでそれ関連でリヴェリア達を過度に責めたりはこの作品ではしません。
違和感があったりしたら申し訳ないんですがこれでもよろしければこれからもよろしくお願いします。
「··············『静寂』のアルフィア。神時代以降、アルが台頭するまでの間、最も才能に愛された眷属と呼ばれた前時代の『英雄』だ」
「静寂の、アルフィア······?」
忌むように、懐かしむように語ったリヴェリア。その様子に内容以上にただならぬものを感じ取ったレフィーヤ達は息を飲む。
「ああ、かつての最強派閥【ヘラ・ファミリア】にあってなお、異端とされた空前の才禍。口惜しいが、未だ私では及ばない最凶の魔導士だった女だ」
かつて最強と謳われたゼウスとヘラの二大派閥の幹部にしてLv.7に至った稀代の天才。かの才禍は魔法の才能のみならず、あらゆる技能の習得において卓越していた、と想起するように遠い目で告げる。
「そんな········リヴェリア様より?」
【ヘラ・ファミリア】。その勇名はかの派閥が都市を去ってから十五年たった今でも変わらず都市に根付いている。
アルフィアを含めた当時の第一級冒険者は全て死ぬか、都市を去ってしまったが、それでも最強の名に相応しい偉業の記憶は残っている。
『三大冒険者依頼』、迷宮都市オラリオの命題でありながら、千年もの間放置され続けてきた災厄の獣。『陸の王者』と『海の覇者』の二体を討ち取った二大派閥の片割れ、その団長のレベルは当代最強であるアルを上回る────『Lv.9』。
Lv.5、Lv.6の第一級冒険者はもちろんのこと、Lv.7の英雄ですら複数所属していた二大派閥は有史以来、間違いなく最強の集団であった。
そんな最強の集団を終わらせたのが他でもない『黒竜』であり─────そして【ロキ・ファミリア】だった。
「誰よりも秀でた、場合によっては団長であったLv.9の『女帝』すら打ち倒しかねないほどの才は今のアルと同じ、16歳にはLv.7へと至っていた」
アルを除けば第一級冒険者の中でも最高峰の天才であるアイズでさえ子供の頃から冒険者として活動していてようやくLv.6に到ったことを考えればいかに異次元の才覚であるかがわかる。
だからこそ異端視されていたことも。アルという怪物を知るからこそそれに並ぶ存在がいた、という事実に誰もが驚きを隠せない。
ましてやそれがアルの肉親、家族であるというのなら尚更だ。
「·············Lv.7『程度』で収まっていたのは奴がアルとは違い、その才の代価ともいうべき欠点を背負っていたからに他ならない」
才禍たる傑物の器の限界はただの英雄程度に収まるものではないとリヴェリアは暗に言う。
現在都市にいる第一級冒険者の数は40名ほどであり、都市に所属する冒険者の総数を考えればその比率は恐ろしいほど少ないが、逆に言えばそれだけの人数はいる。
そんな中、Lv.6の第一級冒険者は更に少ないものの、数えられる程度にはいる。
【ロキ・ファミリア】ならば『勇者』、『九魔姫』、『重傑』、『剣姫』、『怒蛇』、『大切断』、『凶狼』。【フレイヤ・ファミリア】ならば『女神の戦車』、『白妖の魔杖』、『黒妖の魔剣』。二大派閥だけでも十人はいる。
しかし、古き二大派閥失墜からの十五年、【ゼウス・ファミリア】の団長であった最強の男『英傑』と同じLv8へと至ったのはたった二人。そして『静寂』と同じLv7へと至れたのもその二人のみ。
それほどまでに『
そのような
「欠点········?」
自分たちの知らぬ旧世代の最強の実力に震えるレフィーヤだが、最強派閥においてなお、『異端』とされる才ならばアルも同じことだろう。
「ああ、アルを見ていると信じられないかもしれないが、奴は生まれつき身体が弱く、病に侵されていた。『恩恵』を受けてなお、癒えずにむしろ【スキル】として定着してしまった」
『あのアルの親族の身体が弱い? あの、アルの?!』、と誰よりも活力に溢れたアルの姿からは想像できぬ話に困惑する若手たちとそこは似ても似つかないなとアグレッシヴさの塊であるアルに散々、頭を悩ませてきたリヴェリアも顔を歪める。
「『海の覇者』、ダンジョンの階層を吹き飛ばすほどの威力を持った究極の攻撃魔法を以てかの大いなる竜種にとどめを刺した『三大冒険者依頼』の立役者であったが、その戦いによって致命的なまでに病が進行し、表舞台を去った。···········長らく、死んだとすら言われていたが再度現れたのは【ヘラ・ファミリア】が『黒竜』に敗北してから八年後、今から七年前に起きた『大抗争』の時だ」
世の冒険者は語る。
黒竜討伐を失敗したゼウスとヘラはそれを糾弾したロキとフレイヤによって追放された、と。
──────噴飯ものである。
確かに名目上はそういうことになってはいるが実際は違う、と当事者の一人である私は知っている。
かの黒竜によってゼウスとヘラは戦力の大半を失った、ここまでは事実だ。
『女帝』を始めとした彼らを絶対の最強たらしめていた覇者達の大半は黒竜によって討たれ、かろうじて生き残った者の多くも癒えぬ傷を抱えて引退を余儀なくされた。
──────で?
主力がいないからといって当時の自分達があの『怪物』達に勝てるわけがないだろう、と。
アルというかつての最強の領域に足を踏み入れつつある才禍が身近にいて、自分自身も英雄の領域を目前としているからこそ痛感させられる。
確かに力を失った君臨者が二番手や三番手にその座を奪われるのはよく聞く話で実際にそうして零落、あるいは台頭してきた者もいる。
当時最強の二大派閥として名を馳せていたゼウスとヘラにもそれは例外ではなく、結果的には彼らは都市を追われることとなった。
しかし、彼らにはそれを覆すだけの力は残っていた。
全盛期の【オシリス・ファミリア】などが都市に残っていればまた話は違ったかもしれないが当時はもう既に事実上の解散をしていたし、残った者達も都市の暗部に潜むことで再起を期していた。
確かにフィンやオッタルには突出した才能があり、それ以上の信念を持った紛れもない『英雄の器』だったがそれでも当時はまだ英雄の領域には程遠い実力しか持っていなかった。
『女帝』をはじめとした主力はいなかったものの手負いとはいえ今のフィンですら及ばぬ英雄達に当時の、今以上に未熟だった自分たちが勝てるものか。
いくら手負いで死を待つしかなかった状態とは言っても『英傑』をはじめとした覇者の生き残りはいたのだ。
アルが59階層で瀕死の深手を負いながらも赤髪の怪人を相手に対等以上に渡り合っていたように、牙が欠け、爪が折れたとしても覇者は覇者。
主力を失っていても、生き残りも数少なくとも、彼らが1000年にわたって 英雄の都に君臨し続けた最強の集団であることに変わりはない。
末端の団員ですら第二級の上澄み、そしてその上に立つ幹部達は今の第一級冒険者に比べてもなお怪物染みた実力を有していた。
主力を失ってもなお、世代で最強であるオッタルですらLv.5止まりであった当時の自分たちでは正面から挑んでも負けるどころか勝負になるかすら怪しい。
彼らと当時の自分たちの間にはそれほどの隔絶があった。
当時よりは多少マシになっていた大抗争の時点でさえ片や病魔に、片や死毒に冒されて死を待つしかなかった『静寂』と『暴喰』というかつての覇者二人にあわや都市の壊滅寸前まで追い詰められたのだ。
今にして考えてみればどう考えても勝てるはずが、届くはずがない。
ではなぜ彼らは都市から去り、全てにおいて劣っていた私たちが次なる最強として都市の頂点に立ったのか。
─────彼らは託したのだ。
黒竜討伐の失敗によって戦力の大半を失い、世界からの求心力を失くしたゼウスとヘラ。
自分たちの代での救世は不可能だと予期した彼らは世界から希望を失わせないためにも次代の象徴を見出だすことにした。
それが私たちだ。
次なる最強の台頭がなければ人は遅からず絶望する。だからこそ、たとえ道半ばで倒れようとも、未来への礎となるために、死に体の英雄たちは立ち上がった。
あるいはギルドと彼らの間に私ですら知らぬ密約が交わされていたのかも知れないが少なくとも彼らは自ら望んで次代のためにその身を捧げることを選んだ。
千年にもわたって隆盛を極めた英雄たちの最期には名誉も賞賛もなかった。
十五年前と七年前。
二度にわたって私たちの前に立ちはだかり、壁となった昔日の英雄達。彼らの犠牲なくして、私たちはこの場に立っていることはなかった。
···········だが、だからこそ、私は私たちの現状に不甲斐なさを感じずにはいられない。
彼らの期待に応えるために、彼らの犠牲に報いるためにこれまで地道に努力を、実績を、偉業を積み重ねてきた。
今はまだ、及ばないがいずれ追いついてみせるとそう誓って研鑽を諦めることなく重ねてきた。
だが、それでも確たる結果として私たちはアルに─────16歳の子供に身に余る重責を背負わせてしまったのではないだろうか。
まるでゼウスとヘラの代わりとなるかのように下界最速の速さで都市最強の頂きへ上り詰めたアルは強く、聡いからこそ今の下界の平和がいつ崩れてもおかしくない砂上の楼閣であると誰よりも重く受け止めたのだろう。
当時よりは強くなったとはいえいまだ英雄の領域には届かない私たちとこうしている今も最果てで力を蓄えているであろう黒き災厄。
刻一刻と終わりの時は迫っている。
だから、アルは焦ったのだろう。
或いは、その焦りこそが彼の才能を開花させた原因なのかもしれない。
────世界は英雄を望んでいる。
たとえ正道を捨て、異端の英雄に堕ちるとしても『最後の英雄』となろうと人知れずアルは決心したのだろう。
その決意は間違ってはいない。
黒竜の存在は遠からず、世界を滅す。今のままでは確実に黒竜に敗北し、滅亡の一途を辿ることは必定。
ならば、多少の犠牲を払ってでも新たな『英雄』を生み出し、世界の救済を成す他はない。
その考えは決して間違ったものではない。
だが、だが、だ。
「(あいつはまだ─────)」
─────子供じゃないか。
英雄たるものに年齢は関係ないと言う者も居る。確かに若輩のアルが最後の英雄に最も近いというのが確たる事実であることも否定しない。
しかし、それでもまだあいつはまだ『守られる側』で良いはずなんだ。
私は自覚する。
私は憤っている、他でもない自分自身に。
何が、最強の魔導士か。
何が、副団長か。
アルフィアにも、かつての英雄達にも未だ届かぬ我が身が恨めしい。
アイズ達の母親代わりを気取っておきながらアルを一人にしていたことが情けない。
悔恨と自責の念に押し潰されそうになる。泥のような自己嫌悪に浸る。
だが、それでも私にはやらねばならないことがある。
どんなに惨めであろうと、恥辱に塗れようとも、それだけは果たさなければならない。
「(これ以上、アルを一人にさせるものか)」
──────エルフとしての矜持も、王族としての責務も、今は捨てよう。
「─────容認できるものか」
オラリオを覆う白亜の市壁。目を凝らせばオラリオ全体を見渡せる高い壁の上でヘルメスは一人呟く。
風になびく稲穂のような美しい髪、細身ながら引き締まった体躯。
その神らしく整った面頬に浮かぶ酷薄とした表情を見て誰が今の彼をあのヘルメスだと思うだろうか。
常に飄々としていて、愉快犯を隠さない陽気で勝手な神。それがオラリオにおける伝令神ヘルメスだ。
しかし今の彼が浮かべる表情はそんな普段の彼からは程遠いものだった。凄絶なまでの苛立ちと怒り、アスフィですら知らない怒れる神の貌がそこにはあった。
彼の視線は都市の端、ちょうどダイダロス通りがある方に向けられて止まっている。
彼が見出した二人の英雄候補。
ゼウスとヘラの残り火であるあの兄弟こそ救世を成し遂げる最後の英雄になり得る英雄の器だとヘルメスは確信している。
だからこそ、こんな所でその輝きに翳りが見えてしまうことは許容できなかった。
異端の怪物をかばったことで当代最強の英雄たるアルの名声と立場は失墜しかけている。
そして弟もそんなことを兄に背負わせた罪悪感でその魂の輝きを曇らせつつある。
そんなこと容認できるはずがない。
誰に宣言するまでもなくヘルメスの神意はここに確たるものとして固まった。
どんな手を使ったとしても必ず再起させる。
──────たとえ、結果として英雄と少年の決断を踏みにじることになったとしても。
············こんなに幸せでいいのか、俺?
まだ事を起こす前だってのにこの空気感だけで色々爆発してランクアップとかしてしまいそうだぞ········?
このままこの空気の中でゆっくりしていたいけどそうもいかねえなぁ。
名残惜しいけどアミッドに詫びいれてリューに根回ししておいたし、そろそろベル達のとこ行くか。
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アルがゼウスとヘラの系譜だと異端児編前から知っていたのはヘルメス、フレイヤ、オッタル、リューくらい。
描写する機会が中々ないけどアルはヘスティア(弟の主神)とアスifでのアストレア(自分の主神)以外のギリシャ系女神にはかなりかしこまった口調だったりするよ。
なのでアルテミスやデメテル、あとアフロさんに対しても一応へりくだる。
その代わりにウラノス以外のギリシャ系男神には大体キツいよ。
【強くなる前にアル・クラネルを殺害しよう!!】
なんかめちゃめちゃ強い過去編ボス「殺す!!」
ショタアル「じゃあ逃げるわ」
なんかめちゃめちゃ強い過去編ボス「えぇ」
時系列が前であればあるほど曇らせ関係で焦っていないのでこれはあんまり美味しくないと判断した時点でガン逃げしますので逃げられないように事前に人質でも取りましょう、相打ちを狙ってきます
【殺せる確率】
人質≫足手まといあり>初見のデバフを掛けまくる>格上が単純に物理で殴る>数の暴力≫≫≫≫暗殺
【最終的な強さ】
静穏アル≧古代アル>女帝アル(tsフレイヤF)≫アストレアアル>本編アル>アミッド√>聖女アルちゃん
静穏は本編の上位互換
女帝は本編からベル要素を抜いて最適化
アミッド√はバフに全振りした魔法剣士
聖女アルちゃんは死なないヒーラー
精神性が歪めば歪むほど強くなりますが古代は例外。
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