皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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期間空きすぎて申し訳なかったです········。

体調不良自体はそこまで長引かなかったんですがスランプに入りまして中々続きが書けませんでした。

何があろうと死なない限りは失踪だけはしませんのでよければこれからもよろしくお願いします。


136話 だっていつ来ても良いって言われたし……

 

 

 

 

 

 

 

【フレイヤ・ファミリア】の本拠、戦いの野。

 

都市最大にして最強の派閥である美神の団員達が日夜、文字通り血反吐を吐きながら訓練とも言えぬような鍛錬に明け暮れる血と戦の荒野。

 

深層の死地すら霞むほどに苛烈な戦場では今もいずれもが歴戦を誇る眷属達が裂帛の気合いと共に刃を交わしている。

 

そんな激戦区の一角で唯一、誰とも向き合わずに槍を振るう猫人の姿があった。

 

背丈ほどの長槍をまるで手足のように自在に操り、架空の敵へ向けて時に薙ぎ払い、時に刺突し、時には石突きで殴打する。

 

その槍捌きは荒々しく猛々しいがいずれの所作も洗練されており、見る者を虜にする美しさがある。

 

猫人の青年――アレン・フローメルは感情を排した機械的とも言える動きで槍を繰り出し続ける。

 

戦いの野で日夜しのぎを削っているのはLv.1からLv.4の一般団員たちであり、第一級冒険者である幹部たちは様々な理由から戦いの野での対人戦を禁じられている。

 

普段、アレンのような幹部が鍛える際はダンジョンに潜るのだが今は地上に現れたモンスターの一件のせいで叶わない。

 

「··············チッ」

 

 氷のようだった表情がほんの少しだけ歪む。抑えようともしていない苛立ちが湯気のように輪郭を帯びて滲み出ている。

 

その様には恐れ知らずの団員達ですら思わず背筋を震わせる。アレンの苛烈さは幹部の中でも随一だ。しかもその苛立ちが長槍に込められているとなればもはや誰も何も言えないし触れられない。

 

女神の為であれば自死すら躊躇わないであろう団員達も自分達を容易く噛み殺せる魔猫の虎の尾ならぬ猫の尾をわざわざ踏むような愚行はしない。

 

行き場のない殺意を持て余し、アレンは槍を振るう。既に何千、何万と繰り返した動作に淀みはなく、流麗ですらあるがどこか荒々しい。

 

ここ数日、アレンはずっと不機嫌さを隠そうともしていない。

 

その原因は言うまでもなく地上に現れたモンスターの一件、そのモンスターたちを【ロキ・ファミリア】の『剣聖』が庇ったということだ。

 

無論、アレンにとってモンスター······怪物は故郷と家族を奪った忌まわしき仇であり、叶うことなら皆殺しにしてやりたい憎むべき対象だ。

 

だが、今回のことに関する苛立ちはアルがそんなモンスターを庇ったからでは断じてない。

 

「(·········クソッ、何をしてやがるんだ、あの野郎は)」

 

 現在、オラリオにおいて『剣聖』アル・クラネルは英雄の立場でありながらモンスターに味方した背信者として扱われている。

 

実際にその様を見た者があまり多くないこととギルドや主要ファミリアが情報統制してるが故に今はまだそこまで深刻ではないが、いずれそう遠くないうちに事は誰にも止められないほどに大きくなるだろう。

 

そしてそうなればアルはこれまでに為し遂げた偉業も功績も全てが否定され、これまで築き上げてきた地位も名声も全て失うことになる。

 

行き着く先は破滅か追放か。

 

積み上げてきた輝きがまばゆければ まばゆいほどそれが墜ちた時の反動は大きく、醜く堕ちていく。

 

人類にとってモンスターが不倶戴天の敵であるのは紛れもない事実だ。

 

モンスターの脅威により近いオラリオの住民にとっては尚の事である。

 

衆目の前でモンスターを庇うなんてことをすれば糾弾される立場に立たされることになるのは馬鹿でもわかる。

 

それがわかっていながら何故アルはモンスターを守ったのか?

 

前々から悪い意味で常識で測れないところが多々あるとは思っていたが今回に関してはさすがに理解できない。

 

「(あの方はなにか感づいている様子だったが·········)」

 

 18階層での武装した強化種の大進行に始まって次々と現れた異常事態の数々。

 

いずれをとっても尋常ではなく本来であれば最大派閥の片割れである【フレイヤ・ファミリア】はその鎮圧のために動くよう要請されるはずだ。

 

だがしかし、今回に限っては事態がどれだけ深刻になろうともダンジョンへの立ち入りさえ許されずあろうことかギルドはここまで大きくなった今回の一件を【ガネーシャ・ファミリア】に一任すると決定した。

 

確かに全派閥最多のLv.5を擁するあのファミリアならば大抵の事柄はどうにかできるかもしれないが、それでも限度はある。

 

今回の件はフレイヤとロキの派閥が協力して事に当たらなくてはならないほど厄介なもののはずなのだ。

 

なのにギルドがこのような決定を下したのには何か裏があるようにしか思えない。

 

まるで知られてはならない事が何か裏にあるようではないか。

 

その辺りのことをアレンの主であるフレイヤは何か勘づいていたようだがわかっていてギルドの思惑に素直に従うその神意まではアレンに量ることは出来ない。

 

「────ッ」

 

 それにしても苛立たしい。この数日間、ずっと我慢してきたがそろそろ限界が近かった。

 

アルがどんな目に遭おうとも知ったことではないしむしろ良い気味だと思う。

 

だが、アル自身がそれをよしとして容認していることがアレンには我慢ならないのだ。

 

アルのやったことは確かに排斥されて然るべきことではあるがアルの力を以てすればこの程度の世論の傾きなど力尽くでどうにでも出来る。

 

弱者がどれだけ声高に喚こうが強者の暴力の前には塵芥に等しい。だというのにアルはそれを良しとしない。

 

全てをひっくり返し自分の思うままに物事を突き通せるだけの力を持っておきながら自ら姿を隠し、汚名を灌ごうともせずに影に潜む。

 

そのあり方が気に障って仕方がない。

 

アレンにとってアルは嫌悪の対象であると同時にオッタルと同じようにこれから自らの手で下さなければならない壁だ。

 

『英雄』はその栄光を失った段階でただただ大きな力を持っただけの怪物に成り下がる。

 

ただの怪物をわざわざ付け狙う趣味はない。ただ強いだけの怪物ならばダンジョンでいくらでも倒している。

 

違うのだ、アレンが超えるべきは、美神の戦車が真に轢き殺すべきは自分以上の英雄でなければ意味が無い。

 

故郷を奪った黒竜への憎しみとはまた別種の暗い怒り。

 

このままアルが戦う力すら持たない無辜の民衆によって英雄の立場を追われ、ただの怪物に成り下がるくらいなら差し違えようども自らの手でなんとしてでも葬る。

 

「(たとえ女神の意思に反する結果になろうとも──────)」

 

 『あいつ(当代最強)』にゼウスとヘラ(前時代の最強)と同じ轍は踏ませない。

 

いざとなれば英雄のまま殺してやる。

 

アレンはギリ、と歯軋りをしてから槍を背に担ぎ血花の荒野を後にする。もはや黙々と槍をふるっている気分ではない。

 

たとえ不敬だとしても主であるフレイヤに自らが動く許可をもらうための直談判をするために館の中へと戻る。

 

「猪野郎にも、『勇者』にも譲らねぇ」

 

 何としてでもフレイヤに動く許可を貰う────否、ここからは独断で動くと宣言をしに荒野とは打って変わって瀟洒な廊下を進む。

 

向かう先は言うまでもなくフレイヤの自室だ。

 

団員のほとんどは外で鍛錬をしており、ヒーラー達も今は外でいつ重傷者が出てもいいように待機しているため館の中は静寂に包まれている。

 

アレンは足音一つ立てずに歩くとそのまま目的地にたどり着く。そしてノックをしようとした瞬間、中から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

アレンは咄嗟に足を止めて耳を澄ます。中にいるのは二人、片方は敬愛してやまないフレイヤの声だ。

 

そして、もう片方は────

 

まさか、とアレンが目を見開いた瞬間中での話が終わったのかドアが開かれ、その人物が出てくる。

 

「ん? おっ、アレンか」

 

「──────────────────────────────────────────────────────は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっほ、ベル』

 

 ··········兄さんが僕たちのホームに突然やってきた。

 

どうやったのか【ロキ・ファミリア】や他の冒険者の監視の目を縫ってきたらしい。傍から見ても彼らの監視の目は鋭く、かなり厳しいものだと思うのだけど、どうやって掻い潜って来たのだろうか。

 

驚きを隠せない僕たちを置いてけぼりにして兄さんはさも当たり前のように話を切り出す。

 

兄さんの話ではダンジョンに戻れない異端児達の大体の場所の目星はついているけど他の冒険者に見つからずに彼らをダンジョンに連れ帰るのは難しいとのこと。

 

『まぁ、最悪全員ブチのめせばやってやれないことないんだけどな』

 

 ··············それはさすがにやらないでほしいし、兄さんにはやってほしくない。

 

でも確かに今、都市は緊迫した空気に包まれている。異端児達が都市の脅威とみなされているのは事実。あらゆる派閥の冒険者によって警吏の巡回も強化されている。

 

そんな中、異端児達を連れてダンジョンに潜るのは至難の業だろう。でも、そんなことは百も承知で僕は行くつもりだった。

 

そんな僕の考えを読んだように兄さんは言った。

 

『フィンとリヴェリア·······あーあとアイズはこっちで抑えるがそれ以外の幹部やアキ達まではさすがに手が回らん』

 

 全員ぶっ飛ばす前提ならまた話は違うんだが、と付け加えながら兄さんは面倒くさそうに頭を掻いた。

 

『お前らだってさすがに正面から行こうと思ってたわけじゃねえだろ、俺が目いっぱい目立つからお前らはアキ達に見つからないようにあいつらをダンジョンまで送れ』

 

 兄さんと【フレイヤ・ファミリア】の団長を除けば都市最強の階梯であるLv.6三人を押さえられるだけでもかなりの戦力ダウンになるはずだし、指揮系統も混乱させられる。

 

それに加えて僕たちの存在を露見させないためにあえて派手に動くことでこちらに注目を引き付けないようにするということだった。

 

元々、僕たちだけでは『勇者』の指揮を抜けることは正直難しいと考えていた。けど兄さんがいるなら限りなくゼロに近かった勝機がかなり上がるはず────

 

『とはいえ決行のタイミングまでまだ結構時間があるからちょっと鍛えてやるよ』

 

『················えっ?』

 

 僕はアステリオスさんから聞いていたのだ、兄さんの鍛錬は地獄を見るほどに辛いということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ステータスを上げるための実践訓練は前提として個々人に対する訓練はどうするかな。

 

レフィーヤみたいに深層に連れて行ければその辺の細かいこともおのずとついてくるけど流石に今の状況でそんなことできないしな。

 

サンジョウノ・春姫は【レァ・ポイニクス】で精神力供給と自爆した際の保護をした上で並行詠唱、高速詠唱。

 

ヤマト・命は武神タケミカヅチの元眷属だしそこら辺は教えることないから教えてなさそうなきったねぇ技とか考え方を植え付······教えよう。

 

ヴェルフ・クロッゾは鍛冶自体は教えられること何もないから精霊関連の融通と深層域のドロップアイテムあげるぐらいか。

 

リリルカ・アーデはどこまでフィンに近づけられるかだけどこんな短期間じゃ無理だし、今は【ロキ・ファミリア】やヘディン、闇派閥残党のやり口の判例を目いっぱい教えられるだけ教えよう。

 

そして、ベルは···········まぁ、倒れるまで実践しかない、か?

 

アイツに関しちゃベートがいるから下手に俺が教えんのもあんま良くないだろうからな··········。

 

いや、アイツらの訓練よりもまずは不確定要素を潰す方が先か?

 

─────対【ロキ・ファミリア】大作戦実行までに俺がやるべきことは二つある。

 

それはベル達の訓練と負け筋を潰すための手回しに他ならない。

 

まず、今回の件におけるこっちの明確な敗北条件は異端児が冒険者や闇派閥の信徒によって一人でも殺されることだ。

 

異端児達が都市の脅威と見なされている以上、作戦の途中で彼らが害されることは十二分にあり得る。

 

とはいえフィンや幹部たちには前回の接触で十二分に異端児達がただのモンスターではないということを認識させている。

 

よほどのことがない限り【ロキ・ファミリア】は異端児達を殺すのではなく生け捕りにしようとするはず。

 

【ガネーシャ・ファミリア】は表向きはともかく実情はこちら側に近い。

 

異端児達が本当に危険と判断されれば切り捨てにかかる可能性はあるが··········まぁ、ガネーシャはそんなことはしないだろう。

 

その他の派閥に関してはそもそもあいつらを殺せるだけの力を持っている派閥はない。

 

イシュタルの残党やヘファイストスの上級鍛冶師、点在するLv.5の第1級冒険者には多少気を配る必要があるだろうけど基本は問題ないはずだ。

 

だから異端児達がもし闇派閥以外に殺されるとしたらそれは【フレイヤ・ファミリア】に他ならない。

 

一般団員ならばまだしも幹部連中は今の異端児達じゃ勝ちようないし、フィンたちとは違って容赦もしないだろう。

 

オッタルに至っては異端児達が全員でかかったとしても秒殺必至だ。

 

原作からして今回の件で積極的に行動することないだろうけどフレイヤはいまいち気まぐれで行動が読めない。

 

あの女神がいつどこで何を起こすのか予測するのはさすがの俺でも不可能だ。

 

ウラノスが動かないように手を回しているし、フレイヤ自身ベルの輝きとやらが曇らないようにするはずだから異端児をどうこうしようという考えはないと思うんだが万が一があったら俺一人じゃ幹部連中全員を止めることは正直厳しい。

 

だから··········うん、面倒だがベルたちの訓練を始める前に直接フレイヤんとこ行って話通しておくか。

 

今の立場上アポイントメントとか取れるわけないけどこっそり侵入してもいいよな?

 

フレイヤのやつ、前に来たかったらいつ来てもいいって言ったし。

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

アレン「このまま落ちぶれるくらいなら英雄のままぶっ殺してやる」

 

物理的にも名声的にもアルが他の誰かに殺されるぐらいなら事情とか全部かなぐり捨てて自分の手でぶっ殺してやる、という考えのアレン。

 

 

 

 

アル「正面からは今の立場的にもあれだしそもそもオッタル達が通さねえよな··········」

 

アル「············なんかもう考えるのめんどくせーし警備の目を盗んで不法侵───忍び込んで直接フレイヤだけに話通しに行くか」

 

色々考えたけど途中で面倒くさくなって強行手段に出た変態白髪。

 

 

 

 

フレイヤ「来たかったらいつ来てもいいのよ」

 

不法侵入してもいいとは言ってないフレイヤ。

 

 

 

 

クロエ「私が教えました」

 

ショタ時代の変態白髪にそういった悪用し易い隠密技術を教えた戦犯。

 

 









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