皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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溜め回終わり。

短いよ。


142話 変わる皆、変わらない他称英雄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都市南西の第六区画近く。

 

元【アポロン・ファミリア】のホームにほど近い通りの裏路地。

 

いつもよりも閑散としているオラリオでもより人の目のないその場所に年若い二人の冒険者────ベルとレフィーヤの姿が在った。

 

知性を持つモンスター、異端児について聞き出そうとするレフィーヤと話して良いものか迷うベルはどちらにせよ人の目のある大通りでする話でもないとどちらから言い出すこともなくこの場所に足を運んだのだ。

 

その判断は間違っていなかったようで、今の今までこの辺りに誰かが近づいてきた気配はない。

 

「(························どうしよう)」

 

 ここまで来たは良いがレフィーヤにどう説明すればいいのかベルにはわからなかった。そもそもベルに話せることはそう多くない。

 

異端児の存在を識ったのもごく最近であり、レフィーヤが、【ロキ・ファミリア】が求めているであろう異端児達とギルド、そして兄の関係なんてさわり程度しかベルは知らない。

 

そして、さわり程度の内容だったとしてもそれを他派閥、それも【ロキ・ファミリア】においそれと教えるわけにはいかないだろう。

 

オラリオに来て日の浅いベルですら異端児達の存在、そしてそれを秘密裏に保護していたギルドの関係が表に出たらかなり不味いことになるだろうことは予想できる。

 

まだ、フェルズや兄の判断の上であれば問題はないだろうがベル個人の判断で話して良いことだとはとても思えない。

 

下手をすればベルから異端児達の隠れ場所等を聞き出して掃討する気というのもありえなくはないのだ。

 

だから、ベルが今ここでレフィーヤに話すことが出来ることは本当に少ない。

 

流石にこの状況では逃げることも難しい。まだ、実力行使で聞き出すような事をしてくれば一切の躊躇なく逃げ出せるのだが、レフィーヤはベルが何か話すのを待ってくれている。

 

故にベルは自分でも整理できていない頭を必死に動かして言葉を絞り出そうとしていた。

 

もっとも、苦悩しているのはベルだけではない。

 

「(················勢いでここまでしちゃったけどどうしよう)」

 

 かなりの行き当たりばったりの勢いでベルを捕まえてしまったレフィーヤも同じく悩んでいた。

 

今のレフィーヤの行動は完全なる独断専行であり、フィン達の命令を無視していると言っても良い。

 

レフィーヤ個人としてはベルに聞きたいことはいくつもある。異端児という喋るモンスターについて、異端児を匿っていたと思われるギルドとの関係について、そして依然行方不明なアルについてもだ。

 

だが、質問して答えてくれるだろうか。普通に考えて異端児達にとって最大の仮想敵であろう派閥の自分に。

 

勿論、いきなり尋問をするようなことはする気もないし、穏便に話が出来るならそれに越したことはないのだが、冷静さを欠いていたレフィーヤはそこまで頭が回ってはいなかった。

 

偶然顔を合わせたベルを勢いのまま捕まえてこんなところまで来てしまったのだ。

 

レフィーヤはベルが異端児と何らかの関係があることは確信している。でなければ、モンスターを庇うなんて真似をするわけがない。

 

だが、その関係とは一体何なのか? それを聞き出すのはそう簡単なことではないだろう。

 

そんな相手にどう話を持ちかければ良いのか? いや、それ以前にどう切り出せば良いのかもわからなかった。

 

ぐるぐると回る思考の中、ふとレフィーヤの脳裏に塞ぎ込むアイズの姿がよぎった。

 

「·····················アル、さんは」

 

「え?」

 

「アルさんは私達を────「やぁベル君! 奇遇だね!」────ヘルメス、様っ」

 

 レフィーヤの心の奥から溢れ出た問いを遮るかのような不躾な声。全くこの場にそぐわないその声をレフィーヤは知っていた。

 

「おっと、レフィーヤちゃんと逢瀬の最中だったのかい? すまないねぇベル君。この埋め合わせはまた今度するさ」

 

 神ヘルメス。

 

対闇派閥に於いては【デュオニュソス・ファミリア】と並んで【ロキ・ファミリア】と同盟を組んでおり、今回のモンスターの件においてはウラノス側に立っているであろう【ヘルメス・ファミリア】の主神である男神がそこにはいた。

 

普段ならばそのこちらを揶揄うような愉快神の言葉にレフィーヤはムキになって否定するのだが、今はその余裕はない。

 

ベルもレフィーヤも先ほどまでの考えを捨てざるを得なかった。

 

「悪いね、レフィーヤちゃん。ヘスティアにベル君を探すように頼まれててさ。続きは今度で頼むよ」

 

 吹きすさぶ嵐のような神威。

 

下界の存在ではどうあっても頭を垂れざるをえない『超越存在(デウスデア)』としての一端。英雄と言われる者たちが放つ覇気とはまた違う、圧倒的な存在としての格の違い。

 

そんなものを正面から浴びて二人は畏怖や恐怖よりも先に驚愕を覚えていた。ベルは言うまでもなく、レフィーヤもロキの護衛や雑用としてヘルメスと何度も顔を合わせていた。

 

普段のヘルメスを知るからこその驚愕と動揺。

 

確かにヘルメスは剽軽で調子の良い神であり、下界の子供達を揶揄って遊ぶような子供っぽい一面はあれどこのような場面で神威を放って威圧するような真似をするタイプの神ではない。

 

レフィーヤは少し前にあった犬人のルルネ(ヘルメスの眷属)の言葉を思い出した。

 

『··············今のヘルメス様、余裕がなくてさぁ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は、フィン・ディムナは自覚している。

 

自分は全てを救う英雄なんてものにはなれないと、自分は人工の英雄でしかないのだと。

 

見せかけの勇気に、演出した栄光、造られた偉業、鋪装された冒険。全てを利用し、全てを切り捨てる非道とも言える手段。

 

何度も手を汚した。

 

大を生かすために小を犠牲にした。

 

大を守るために、小を切り捨てた。

 

目的は一つ、『女神フィアナ』に代わる小人族の新たな光となって失われた一族の誇りと勇気を取り戻させること。

 

そのために僕は、多くの命を踏みにじった。その全ては大を救うための尊い犠牲だと、そう割り切って。

 

僕が欲するのは小人族の新たな光となるための英雄譚。『大衆の英雄』であり、『奸雄』であり、『人工の英雄』。

 

僕のこれまでを否定するつもりも後悔するつもりも、ましてや犠牲にしてきた命の重みを忘れたつもりもない。

 

·················だが。

 

あの時、【ロキ・ファミリア】を前にして自らが都市の敵となる事すら覚悟してヴィーヴルを守ろうとしたベル・クラネル。

 

そして、弟と弟の決意を守るように英雄としての名声を捨て去り、『当代最強』の英雄としての責務と覚悟(隻眼の黒竜を討つ責務と覚悟)を説いたアル。

 

損得を顧みず、誰かのために自らを擲つ、その蛮勇ともいえる覚悟。

 

眩しかった。

 

そして、彼等(本物の英雄)(人工の英雄)とは違うとそう見せつけられた気がした。

 

あの時から胸に残るこの気持ちはなんと表すれば良いのだろうか。この胸に燻る、あの兄弟に対する嫉妬とも羨望ともつかないこの感情は。

 

··········いや、本当はわかっている。

 

これは、きっと『憧れ』だ。

 

そうだ。

 

「················僕も、そうありたい」

 

 『決別』の刻だ。一族の栄光『女神フィアナ』の再来となる野望、小を切り捨てて大を掬い取る覚悟。

 

それらに今、決別と超克を告げよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル・クラネル

『Lv.3』 

 力:D577→SS1090

 耐久:D508→SSS1389

 器用:D582→SS1008

 敏捷:A807→SSS1305

 魔力∶D531→S998

 

幸運︰H

耐異常︰H

 

《魔法》

【ファイアボルト】

・速攻魔法

 

《スキル》

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する

 

英雄願望(アルゴノゥト)

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

闘牛本能(オックス・スレイヤー)

・猛牛系との戦闘時における、全能力の超高補正。

 

 

「ひぇ··········っ」

 

 ベッドに寝そべったベルの背中に光と共に浮き上がる神聖文字の羅列にヘスティアは息を呑み、冷や汗をかく。

 

前回のステイタス更新からおおよそ一週間程度。

 

異端児達を救うための戦いを前にヘルメスに連れられてホームへ帰ってきたベルのステイタスの更新をしたのだがその凄まじい能力値の伸びにやはり驚愕する。

 

前回の数値からほとんど倍にまで激上したステイタスはLv.3昇華前のLv.2最終更新値─────18階層でのアステリオスなる猛牛の異端児との戦いを終えた後の数値と似たり寄ったりの数値になっていた。

 

SSS以上の能力評価は存在しないんだなぁ、とどこか現実逃避気味にそんな考えを浮かべたヘスティアは、しかしすぐに意識を目の前の少年に戻す。

 

この数日でベルが体験した過酷極まる冒険とも言えぬ戦いに思いを馳せながらヘスティアはベルの背中を摩った。

 

ランクアップができないのがおかしいくらいの死闘に次ぐ死闘。

 

本気ではなかったとはいえ都市最強の冒険者─────はるか格上のLv.8である実兄とのウィーネを巡る戦い。

 

第一級冒険者にも匹敵するという実力を持った異端児のリド達を纏めて一蹴する仮面の人物との戦い。

 

暴走したウィーネとの追走劇も含めれば、冒険者になって半年未満の少年が経験するには余りにも酷な戦いだった。

 

「··············ベル君、ごめんよ 。やっぱり君には負担をかけることになる」

 

「あはは、大丈夫かわからないですけど平気です」

 

 「できる限りのことはやりますよ」と笑ってみせる少年の姿に頼もしさとわずかばかりの痛ましさを覚えた ヘスティアは自分もまた努めて笑顔を作ると仲間の元に戻るベルを見送った。

 

「···············よし、僕もあの子たちのサポートを務めなきゃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

区画整理なぞ知ったことかと言わんばかりに好き勝手な増築が繰り返された結果、無許可の違法建築物が立ち並んで地上の街でありながら迷路のような有様になっている迷宮街ダイダロス通り。

 

夜が明け、空が白み始めるダイダロス通りを闊歩するいくつもの異形の影があった。

 

幽鬼のように足音も抑え、元賢者謹製の魔道具で気配や音までもまた最小限に留めている。

 

その誰もが違う種の異形であり、紅い鱗を持ったリザードマン、全身が岩石で出来た有翼獣、人頭蛇体のラミアと多種多様の怪物たちが集団で動いていた。

 

「念願の空は拝めたけど·············こんなコソコソしながらじゃねえと見れないなんてなぁ」

 

 異端児のまとめ役であり、今の今まで 率先して地上に取り残された異端児の保護をしていたリザードマンのリドはそう呟くと「やっぱり、オレっちは日陰者がお似合いなのかもしれないな」と怪物の面貌を皮肉げに歪めて笑う。

 

原初の『憧憬』。

 

異端児達であれば多かれ少なかれ持っている迷宮の外、すなわち地上への憧れ。

 

心の中では叶うことのない夢だと理解しながらも、異端児達はその叶わない夢を願い続けていた。

 

それは今も変わらない。

 

計らずも地上へと出たリド達は全てに圧倒された。

 

太陽と蒼穹、雲と雨。蒼穹を貫くような白い摩天楼、都市を覆う巨壁、そして何より、都市を行き交う多種多様な種族の人類。

 

そのどれもが異端児達が思い描いていた地上の景色であり、リド達にとっての憧れの具現だった。

 

迷宮の中にいては決して見ることの出来ない景色を目にし、異端児達は魅入られたように何度も空を見上げた。

 

だからこそ、そこに生きる者達から向けられた別離と敵意は異端児達の心を強く抉った。

 

そこに。

 

「待たせたな」

 

「お久しぶりです、皆さん」

 

「ヴェルフ、命!!」

 

 リド達と同じように元賢者謹製の魔道具を身に着けたヴェルフ達が姿を現した。再会に喜ぶウィーネの声に思い思いの暗い考えを浮かべていた異端児達も僅かに顔を明るくする。

 

ウィーネと【ヘスティア・ファミリア】の関係はたとえそれが一時的なものだとしてもリド達の理想の具現である。

 

それが甘い毒だとわかっていても彼らを見ていると彼らと歩む未来が欲しいと願ってしまいそうだった。

 

だが、とリドは思う。

 

それは今の異端児達にとって受け入れてはいけない毒だ。

 

「──────リド、時間だ。始めよう」

 

「っ、ああ」

 

 掌の上で魔道具の球を転がすアルの言葉にほんのわずかな躊躇いと申し訳の無さを覚え、それを振り払うかのようにリドは力強く頷いた。

 

先日の戦闘の影響で半ば倒壊した建物の屋根の上に駆け上り、胸郭を大きく膨らませて解放する。

 

「ォ、オオオオオオオオオオオオ──────────ッ!!」

 

 都市中に響き渡る怪物の咆哮。これより始まるオラリオを舞台とした騒乱を告げ知らせるその咆哮に都市は揺れた。

 

その咆哮に。

 

栄光との決別を心に決めた『勇者』は静かに目を閉じた。

 

燃え上がる黒い炎を鎮める『剣姫』は不壊剣の柄を握りしめる。

 

悪逆を以って正道を往く『英雄』は静かに嗤った。

 

──────戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よーし、楽しむとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

いい空気吸いすぎて真面目さが足りない他称英雄のカス。

 

後はもう下るだけ。

 

【各√エニュオに対する反応】

本編・アストレア「頑張れ♡頑張れ♡」

聖女√「かぁーっ」

女帝「役立たずが」

静穏「悪いが事を起こす前に天に還ってもらう」

ベルが妹IF「殺す!!!!!!!!!!」

 

【各√アイズに対する意識】

本編・聖女√「スターターキット」

アストレア「俺が言えたことじゃないけどいつか死ぬぞお前」

女帝「つまんね」

静穏「いつかお前だけの英雄に出会えるといいな(素)」

ベルが妹IF「着込め、教育に悪い」

 

 

・各√分岐ポイント

アルフィアがアルだけに会う→本編

アルフィアが兄弟に会う→静穏

アルが本編より年上、養子→アストレアIF

アルが女でベルと関わり薄い→女帝IF

アルが女でベルと仲良し→聖女アルちゃん

本編アルが事故る→聖女√

ベルが妹→闇のモンペ

ベルが死ぬ→アルフィア・フィンメンタルの救界モード

 

一番強いのが救界モード、一番やばいのが闇モンペ、一番悪質なのが女帝








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