皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
話の都合上今回はかなり短いです。
148話 アルフィアは僕の母になってくれるかもしれなかった女性だ
『異端児』と【ロキ・ファミリア】の密約。
首脳陣とアル、そして『妖精部隊』の者しかまだ知らぬことではあるが【ロキ・ファミリア】は対闇派閥残党────すなわち、人造迷宮クノッソス攻略において同盟を締結した。
それは、【ロキ・ファミリア】にとって、『勇者』にとって諸刃の剣だ。
手を取り合うことによって得られる戦力は絶大だが第三者に【ロキ・ファミリア】がモンスターと手を結んだことが露呈すればアルがそうだったようにその名声は汚名と拒絶によって地に落ちるだろう。
───────しかし、アル一人が『異端の英雄』と成り果てるよりは幾分かマシだ。
闇派閥の使徒がアルとアステリオスという理不尽極まる大戦力によって全滅させられたクノッソスの連絡路でフィンとフェルズが密約をかわすのを見ていたリヴェリアは静かに目を伏せた。
フェルズに対して少なくない悪感情を向けていたリヴェリアだが彼女自身、『異端児』たちが人間と同じような感情を持つというならば好き好んで敵対したいとは思わない。
思うところがないわけではない、だが、それはフィンとアルの『覚悟』を思えばどうとでも捨象できる。
だが、どう言葉を飾ろうと『怪物』が人類にとって絶対の恐怖であり敵なのは変わらない。
都市最大派閥である【ロキ・ファミリア】はその性質上、モンスターに憎悪を持つ者が多い。
それを払拭するのは至難の技だろう。中でもアイズとベートをどう説得するかが特に問題だ。
リヴェリアはそう考えて、小さくため息をついた。
「···················違うな」
誰に聞かれることもなくリヴェリアはそう呟いてクノッソスの、深層種のドロップアイテムで覆われた灰色の天井を睨めつけた。
あれこれと『異端児』との同盟による今後の事を憂慮していたがそんなことが今のリヴェリアの心を占めているわけではない。
リヴェリアが心を押し潰しそうなほどの鬱屈した感情を抱えているのは────もっと別の、今も『英雄』であり続けているアルに対しての無力感故だった。
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「────────なんで」
何度も何度もあてもなく心の中で問い続かれた言葉が、口からこぼれ落ちる。
どこかに消えていった覆面のエルフのことも気にならないほどに、あの『放送』は私の心を深く抉っていた。
フィンが何を考えてモンスターと手を結ぼうと思ったのかは分からない。
いや、わからなくはない。
あのモンスター達は強い。
直接戦ったわけではないけどあの時、ダイダロス通りに出てきたモンスターの中の何体かはティオネやベートさんと互角に戦っていたみたいだし、最後に出てきた黒いミノタウロスは────多分、アル以外の【ロキ・ファミリア】の誰より強い。
【
だから、あのモンスター達と組むのはきっと正しい選択なのだろう。
あの黒いミノタウロスや私達と同じくらいには強いモンスター達が味方になるのなら闇派閥との戦いで大きな力になるのは私だってわかる。
そう、わかる、わかるけど『嫌だ』。
背中が、神の恩恵を刻まれた背中が熱くて痛い。
「モンスターは、人を、殺す」
──────あのモンスター達は違うことはわかっている。
「モンスターのせいで、たくさんの人が、泣く」
──────あのモンスター達も私達と同じように泣くのだろう。
「モンスターは·········私達の、敵」
──────アルにとっては違う。
「···················」
黒いナニカが胸の中で暴れている。アルが、フィンが、あのモンスター達と手を組むのが仕方がないことだって頭の中では納得することができても心がそれを否定する。
気持ちが落ち着かない。黒い怒りが、黒い憎悪がいつまでも無くならない。
『力』が、失われた『風』が、あの禍々しい『漆黒の終焉』が泥のようにこびりついて取れない。
体の底から、血液が沸騰するような憤怒が私を襲う。痛哭が想起させるのは、黒き終わり。
『すまない·············ごめんね、アイズ』
母を奪った終わり。
『───生きろ、お前は』
父を奪った黒き竜。
消えない、消えるはずがない。消してはならない復讐の火が私の全てを覆い尽くす。
私は、モンスターに全てを奪われた。
皆は、モンスターに奪われた。
全ては、あの黒い竜が奪っていった。
モンスターは赦さない、モンスターは全て殺す、殺して殺して殺してその先に母を取り戻さなければ私はずっと前に進めない。
それは、きっとアルも同じのはずなのに。
アルの目には、私と同じ『昏い火』が宿っているのに。
それなのにアルはモンスターと手を組む─────私ではなく、怪物の手を取る。
わからない、わかりたくない、
私は、モンスターに、あの『漆黒の終焉』のせいで──────
『──────『黒竜』を討つ』
「ぁ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ─────ッ!!」
私の中の黒い炎が、火種が燃え盛る。
アルが、モンスターと、『異端児』の手をとったのはあの黒き終わりを───私から全てを奪った『隻眼の黒竜』を討つためだ。
私達とでは、私とでは、アルは勝てないと、そう判断したのだ。アルはきっと私を捨ててなんかない。むしろ守るべき対象として見ているのだろう。
そんなこと分かってる、わかっているけど、それでも。
どれだけ考えてもこの黒い炎を消すことは出来ない。
私は強くなるために、お母さんを助けるために、アルに追いつくために、これまで必死に頑張ってきたのに。
それなのに、アルは私を置いていくんだ。
嫌だ、赦せない。
私に憧憬を与えてくれたのは貴方なのに。
私はもう、─────────のに。
「私を、置いていかないで」
行き場はない。答えはない。
『剣』が重い。モンスターを殺す為の刃が、今はただ重い。いつまで待ってもどこまで啼いても、私の元に『英雄』なんて現れなかった。
誰も私を助けてはくれなかった。だから私は『剣』を執った。何体殺した。何百体、何千体と数え切れないほどにモンスターを殺してきた。
その度に少しずついなくなったお父さんとお母さんに近づいてるようなそんな気さえして『剣』が軽くなった。
でも、今は──────
『あなたも素敵な相手に出会えるといいね』
『いつか、お前だけの英雄に出会えるといいな』
二人の言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡る。アルは、私の『英雄』になってくれるはずだったのに。
それなのに──────どうして。
あのモンスター達が憎い、恨めしい─────羨ましい。
アルも私と同じように、私以上にモンスターを憎んでいるはずなのになんでモンスターと手を結べるのだろう。
いくら理由を作ろうと私なら絶対にその『手』は握れない。嫌悪が、憎悪が、憤怒が、それを拒む。
「だから、なの?」
私がお母さんを奪ったモンスターを憎むのと同じ以上にモンスターを憎むからこそその元凶を討つためなら憎いモンスターとでも組めるのだろうか?
とぼとぼと当てもなく歩きながら私はそんなことを考えていた。
私がモンスターを憎めば憎むほど、アルと私は離れていく。アルが『隻眼の黒竜』を討って、世界を救うことを望むほど私はアルに置いていかれる。
月光が降り注ぐオラリオの路地裏を、私は一人で歩く。
黒いナニカが胸の中で渦巻いて心を黒く染めていく。私が私でなくなっていく感覚を味わいながら、ただ月を眺めていた。
そして───私の目に映ったのはよく識る二人だった。
「············リヴェリアと、アル?」
なんでこんなところにいるのだろう。周りを見ても二人以外の団員は見当たらない。
二人だけで何を話しているんだろう?
声はかけられなかった、今、アルと話すのは怖かった。だから隠れるように物陰に潜んだ。
『こんなこと、聞くべきではないとわかってはいる。─────だが、教えてはくれないか』
『············アルフィアは、アイツはお前のなんだったんだ』
──────『静寂』のアルフィア。
識っている、覚えている。七年前の大抗争で戦った【ヘラ・ファミリア】の元英雄。
怖かった、強かった。多分今の私でも勝てない本物の『英雄』。人間でありながらどんな怪物よりも恐ろしかった昔日の最強。
敵として戦って、最期には私達の敵のまま18階層で死んだ灰色の魔女。
交わした言葉の数は多くなかったし、『黒い竜』と戦っていて私は『静寂』の
でも、今にして思えば彼女は私にほんの少しだけ『似ていた』。
あの時は彼女がただただ恐ろしくて分からなかったけれど彼女の閉ざされた瞼の奥には『昏い火』が宿っていた。
それは、モンスターに
そんな彼女とアルが一体────
『母親』
『───────ッ』
「───────ぇ」
『──────に、なるかもしれなかった女性、と言ったところか』
『··············まぁ、今となっては死んだ母親の姉ってだけだよ』
『言葉を交わしたのも共にいたのも彼女が死ぬ··········死にに行く前のほんの少しの間だけだったしな』
『─────ただ、そうだな』
『彼女の為にも、ってわけじゃないが
『っ、なにを?』
『────────世界を救う『英雄』を』
まぁ、見出すまでもなくベルなんだけどね?
なんかもうがっかりで疲れたから帰っていいかな、話なげーよ。
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Q.一番の目的の為なら親の仇とも手を組める?
A.もう組んでる
アイズ、リヴェリア「」
フィンに脳みそ壊されてあんぽんたんになってる敗北者「まぁ、ベルなんだけどね」
ここ最近口から出任せのそれっぽいことしか言ってないあほ。
本当は後半にアルin竈火の館パートをくっつけるつもりだったけど温度差がパナかったのでやめました、次話かな?
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