皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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インフルエンザが落ち着いたので毎日投稿は難しいかもしれませんが再開します。

あと関係ないけど5期後半のキービジュのオッタル、いくら何でもゴリラすぎない?




160話 (返すの俺じゃないから)どうでもいいですよ

 

 

 

 

──────次は『一撃』だった。

 

あの時の俺は今日の俺が昨日の俺より弱いなんてことはありえない、なんてことを本気で考えてしまうくらいには驕っていた。

 

魔女の『一閃』に強くなることに諦観を覚えてから三年余り、オラリオに来て一ヶ月程度たって真に強くなることはできなくとも『それなり』に届く程度の才はあると気がついた頃。

 

『目的』はあれどまだまだ先のことだと今はあくまでも下準備の時期だとファミリアの幹部陣に近い関係になるためにも貪欲に強くなることを求めて日夜、ダンジョンに潜って鍛えていた。

 

知識も、技術も、望んで努力すれば必ずついてくると信じて疑わなかった。

 

実際、単純な強さでいえばまだ【ロキ・ファミリア】では下から数えた方が早い程度ではあったがそれはあくまでも経験不足故にであり、これからの伸びしろは十分にあると。

 

今を考えればその考えは間違ってはいなかったし、むしろもうちょい怠けてた方が良かった気がしないでもないが、少なくともその時は日々上がっていく自身の力に少なからず酔っていて驕っていた。

 

そんな、井の中の蛙の傲岸も、矜持も、才気も、全てはその『一撃』に諸共に砕かれた。

 

『───────、がっ』

 

 俺の動きは悉くが読まれ、その上漸く当てた······躱されなかった攻撃ですら小揺るぎすらさせられずに払いのけられた。

 

ただ一度の拳撃で身に叩き込まれたのはこれ以上ないほどに純然たる力の差。それは、俺のこれまでの傲岸を嘲笑うかのように容易く打ち砕き、砕けた剣の刀身は自分の折れた心を映し出すかのようだった。

 

通り一遍の捨て台詞を吐くことすら許されずに、ただ呆然とする俺をその男は、その『英雄』は静かに見下ろした。

 

『···············噛み締めろ、それが敗北の泥だ』

 

 俺に対する失望でも侮蔑でも憐憫でもなく、ただただ純然たる事実を告げるようなその一言。それが、俺が生まれ変わって初めて真に感じた敗北の味だった。

 

自分よりも強い相手なんてこのオラリオではいくらでもいる。フィンやガレス、リヴェリアなどがそうだ。

 

だが、それでも、あの三人には感じなかった高みがそこにはあった。

 

痛みよりも驚愕が勝った。自分の剣が、自分の技術が何一つ通用しなかったという現実なんてそんなものはどうだって良かった。

 

ここまで、この世界の人間は強くなれるのかという驚愕と、ここまで行っても届かない壁の高さに絶望し、そして歓喜した。

 

どれだけ努力を重ねても決して届かない領域があることは理解していた、しかしあの男の一撃は俺のそんな諦観を容易く吹き飛ばした。

 

才はあるがあの魔女のような逸脱者ではない眼前の男は不断の努力と研鑽の果てに力を得たのだと理解した時、俺は『英雄』というものの在り方の一つを識った。

 

『立つか、良いだろう。·········構えろ』

 

『ぉ、オオオオオオオオオオッ!』

 

 交叉はなかった。こちらの一撃は容易く払いのけられ、返す刃で地に叩きつけられた。

 

それでも俺は何度も立ち上がり、その度に叩き伏せられて、その度に立ち上がって挑み続けた。

 

いくらランクアップしているとはいえ、第二級にも満たぬ若輩が加減を多分に含んでいたとしてもLv.7の一撃に何度も耐えれるわけはない。

 

一度目で既に骨は砕けて筋肉は断裂し、二度目で内臓を痛めつけて血反吐を吐き、三度目では折れた骨が皮膚を突き破り、四度目では既に意識はなかった。

 

それでも立つ俺に『英雄』は初めてその機微を見せた。

 

『·············悪くない』

 

 その言葉と共に初めて抜かれた緋色の大刃。その輝きがその日、最後の記憶だった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

『猛者』オッタル。

 

ゼウスとヘラの、千年の壁を乗り越えし現代の英雄の一人にして『ナイト・オブ・ナイト』に並ぶ最後の英雄候補筆頭。

 

この英雄都市オラリオで唯一、三千年来の才禍の権化たる剣の鬼に持って生まれた『なけなし』の才と不断の努力でもって『対等』であり続ける『次代の壁』となろうとする『覇者』。

 

そんな男との鍛錬はアイズにとってこれまでになく過酷なものだった。

 

 

 

 

都市最大派閥【フレイヤ・ファミリア】のホーム『戦いの野』。

 

最奥にある天界を思わせる屋敷と咲き誇る花園。その美しい景観とは裏腹にその本質は女神の寵愛を賜るべく鎬を削り合う眷属達の血で血を洗う闘争の原野。

 

深層の死地すら霞むほどに苛烈な戦場ではいずれもが歴戦を誇る眷属達が裂帛の気合いと共に刃を交わしている。

 

中堅派閥ならば間違いなく団長になれるであろうLv.4の強者まで交じる派閥内抗争。

 

種族も性別も年齢も問わず、オラリオの頂点を、女神に相応しい己を目指し戦い続ける猛者達。

 

だが、そんな彼らも今日ばかりは自らの闘争ではなく、原野の中央で行われる第一級冒険者同士の鍛錬とはとても言えぬ闘争に目を奪われていた。

 

「─────温い」

 

「〜〜〜〜〜〜っっ!!」

 

 吹きすさぶ嵐のようであり、暴虐の雷のようでもある連攻。風の支援を受けて立体的に四方から攻め立てる刃はたった一人の猪人を捉えられず、稀に掠ろうとも堅牢な体躯に掠り傷一つ付けられていない。

 

対人においてはどうしてもセーブしてしまう風の付与魔法だが、ここ数日の鍛錬によりこの『覇者』を相手にそんな余裕など欠片も存在しない。

 

故にこそ、アイズは颶風の丈を最上に引き上げる。ミシッと大気が悲鳴を上げ、風を纏った銀の刃がさらに加速した。

 

だが、それでもなお届かない。

 

Lv.6のステイタスと颶風の後押しをいかんなく発揮した地を這うような低姿勢から突き上げる刺突は圧倒的な膂力に制御された大剣で強引に軌道を逸らされる。

 

刹那の停滞、それを見逃すはずもない猪人の剛撃が振り下ろされる。秒にも満たない刹那に風を鎧のよう全身に纏い、一撃を凌ぐに全てを費やして回避する。

 

辛うじて凌ぐが、飛び散った大気の刃と凄まじい衝撃の余波にアイズの身体は吹き飛び、地面を転がりながら勢いを殺す。

 

そして、その時には猪人は既に次なる攻撃へと移行している。一足一刀の間合。それを詰めるには一秒も要しない。

 

その巨体から考えられないほどの敏捷は風を纏ったアイズのそれを優に上回っている。

 

それでも、反応できない程の差ではないとその一瞬を逃さぬように全神経を集中させる。

 

そして、それは成された。

 

振り下ろされる大剣を紙一重で躱し、懐に潜り込む。そして、その勢いのまま渾身の一撃を放つべく風の砲撃を剣身に装填する。

 

しかし、それを読んでいたかのように猪人は大剣を振り下ろすと同時に柄から左手を離し、素手の拳打で以って風の砲撃ごと不壊剣を打ち据えてねじ伏せる。

 

「なっ············!?」

 

「温いと言った」

 

 アイズが猪人───オッタルに頼み込んで始まった『鍛錬』。師事する側がLv.6、指南がLv.8という極めて高次元の鍛錬。

 

しかし、その鍛錬はあまりにも一方的なものだった。

 

鍛錬とは名ばかりの実戦に次ぐ実戦。オッタルの剛撃は掠るだけでもアイズを容易く吹き飛ばす。

 

風の鎧で身を守っても、その守りごと打ち砕く。機微も殺意もない唯々圧倒的な力をもって振るわれる暴虐の嵐。

 

膂力では勝負にすらならない。ならば速さをと、風の力を借りて攻撃を放てど全てを技で以ってあしらわれる。

 

アイズの頼みを承諾こそしたがオッタルには親切丁寧に導いてやるつもりなぞ欠片もない。

 

刃で以ってしてその高みを示すだけ。故に、その攻撃に加減もなければ手心もない。

 

本気ではないし全力にも程遠いがオッタルはアイズがつまらない失策を犯せば躊躇いなくその刃で以ってアイズを断つだろう。

 

そう、アイズに一切の疑いなく思わせる程にオッタルは圧倒的であった。

 

鍛錬が始まってからのこの七日、アイズは常に地を舐めている。

それでも、その瞳から戦意は失われていない。何度地に伏せようとも立ち上がり、再びその高みに立ち向かう。

 

再び己に誓った誓いとアルから授けられた熱を胸に、少女は強者へと挑む。

 

不屈の闘志をその身に宿す少女に、しかしオッタルは感心するでも憤りを見せるでもなく、再び淡々と剣を振るう。

 

「··········っ!」

 

 再び振るわれた暴威を、アイズは風の力を借りて強引に回避する。しかし、その回避の動作に僅かな乱れがあった。オッタルはそれを見逃すことなく追撃を放つが、それを不壊剣で以て打ち払う。

 

そして、再び始まる剣戟の嵐。

 

だがそれはそう長く続かず、アイズの風が解ける。

 

自らを軽く凌駕する強者を前に節約や加減などを思慮の外に捨てて常に最大出力を保っていれば幾ら【精癒】のアビリティがあろうとも精神力が途切れるのは必定。

 

いくら燃費の良い【エアリエル】といえども、意味のわからない精神力の自己補完と精霊からの供給で万全な状態であれば週単位で発動し続けられる【レァ・ポイニクス】とは違い出力を絞ったとしても半日程度維持するのが限界だ。

 

無論、一般的な魔導士の魔力がジョウロの水とするなら『滝』とも評される魔力総量に加えてリヴェリア以上の回復速度、周囲の精霊からの無制限の魔力供給を受けられる頭のおかしい種族詐欺といくら精霊との混血であるとはいえヒューマンの前衛剣士であるアイズを比べるほうがおかしいのだが。

 

同レベル帯ならば【レァ・ポイニクス】以上の出力を誇っている【エアリエル】の常の最大出力の負荷はエリクサーで打ち消そうが完全に消せるものではない。

 

風が切れ、肉体も限界に達そうとしていたアイズだが、それでもその瞳には諦念はない。

 

「···················『剣姫』」

 

「お前がこうまでして戦わんとしている相手は、どれほどのものだ?」

 

 その眼差しと不屈の闘志にオッタルは構えをとき、問いかける。

 

オッタルからしても今のアイズは十分すぎるほどに強い。自分にアルには及ばぬまでも白兵戦でこの少女と同等以上に戦える存在などオラリオに十人も存在しないだろう。

 

ヒューマンという一般的にはダンジョン探索に向いていない種族でそれも16という若さでこの領域まで達するのは驚嘆に値すると言ってもいい。至上の才能と不断の努力の両方がなければ成し得ないことだ。

 

アル?あれは若いヒューマンの皮被ったナニカだから。

 

その己の現状に満足どころか不満すら抱き、より高みへと至らんとするその姿勢は冒険者として正しく、そしてオッタルに少なくない興味を抱かせた。

 

「··············わからない。 相手の底が見えない」

  

 この七日間ただ前だけを見ていたアイズの視線が初めて下を向き、自身の影と絡み合う。

 

その瞳に宿るのは恐怖でも焦燥でもない、ただ昏い畏怖だった。想起するのは悪夢が具現化したかのような暗澹の『夜叉』。

 

かの、不気味極まる仮面をつけた怪人エインにアイズは手も足も出ずに圧倒された、それもレヴィスの魔石を食らう前のエインに対してだ。

 

【ロキ・ファミリア】の幹部たちが手も足も出ず、アルだけが唯一、戦えていた怪物の頂天。

 

赤髪の怪人レヴィスも今のアイズと同等以上の力を有していたが正直に言って比較する対象にもならない。

 

「───────今の貴方より、強い」

 

 オッタルと同じLv.8のアルですら勝てずに終わったその強さはどう低く見積もってもLv.9相当。

 

フィンがかつての最強たる『女帝』以上と評したかの怪人の危険度はあるいは三大冒険者依頼の怪物にすら匹敵するかもしれない。

 

精霊の分身の地上召喚など待たずともあの怪人が単独で地上に出て暴れ回るだけでも向こう100年は修復不可能な傷がオラリオに刻まれるだろう。

 

「怪人、か················タンムズから聞いてはいたが·················」

 

 その単語がオッタルの口から出たことに、思わずアイズは顔をあげる。

 

だが、オッタルの瞳に宿るのは驚愕や畏怖ではなく闘争心。その身に纏う戦意と威圧感が色がついたかのように膨れ上がる。

 

「···········まぁ、いい。それと『剣姫』、お前と打ち合って、わかったことがある」

 

「?」

 

「お前は自分で思っているほど、対人戦に秀でていない」

 

 突然のダメ出しにガーン、と擬音が聞こえそうなほどにアイズの中の小さな少女がショックを受けてその相貌を愕然とさせる。

 

自慢するつもりはないがこれでも都市有数のLv.6まで上り詰めて『剣姫』の二つ名で呼ばれているのだ。

 

確かに最近、自分の力不足に悩むことが多かったけれどもなんだかんだ言って全体で見れば自分はかなりやる方だと思っていた。

 

それが、明確な格上であるオッタルに否定されたのだ。アイズの内心は大荒れだ。

 

しかし、そんな少女の心情を知る由もないオッタルはそれに構わず言葉を続ける。

 

「無論、周囲と比べれば遥かに突き抜けている。お前は十分強い。だが、俺やフィン達と比べれば、『温い』」

 

「俺達の時代にはゼウスとヘラがいた。俺達の反抗などものともしない化物達が·············あの時代、だ」

 

 オッタルの目がどこか遠くを見るかのように細まり、その身に纏う戦意が急速に静かになる。

 

ゼウスとヘラ、それは今のアイズにとっては決して聞き逃せないワードであり、遠からず乗り越えなくてはいけない壁だ。

 

このオラリオに神々が降臨してからの千年間、圧倒的な強さでオラリオの頂点に君臨し続けてきた二つの大派閥。

 

オラリオの歴史そのものと言ってもいい両派閥の強さに直にアイズが触れたのは七年前の大抗争の時だけだったが眼前の『覇者』はアイズが恩恵を受けるずっと前からその最強達が現役だったオラリオにいたのだ。

 

そしてその最強達が去ってから始まった『暗黒期』。

 

傍若無人で何より強かった彼らが黒竜に敗れ、都市から消えたことによる抑止力の消滅。

 

ゼウスとヘラにはどうやっても敵わないと闇に身を隠していた者たちが死と絶望を地上にもたらすため台頭し始めた文字通りの暗黒の時代。 

 

アイズも経験したあの数年間はダンジョンの中層や下層よりもともすれば地上の方が危険に満ちていた。

 

あの時代に身を置いていたものは否応なく対人戦を突き詰めなくてはならならなかった。

 

だが、その『暗黒期』を経験していないのにも拘らずオラリオには対人戦において無双たる男が一人いる。

 

「アルは?」

 

「············『剣聖』は対人とモンスターを分ける機微を持って生まれていない。『我々』との比較対象にはならん」

 

 埒外の才能とそれを寸分の揺らぎもなく受け止める至上の器を持った化物。生まれた時代や環境なぞなんの関係もなく、己のあり方を突き詰める才禍と自分たちを比較するべきではないとオッタルは素っ気なく答える。

 

「だが、勘違いするな。お前の本領は、そこにはない」

 

「自覚はしているだろう。お前の剣の本質は『人と戦う剣』ではなく『怪物を殺す剣』だ」

  

「その一点に関してはお前の鋭さは俺やフィン達を上回り、『剣聖』にも匹敵する」

 

 自他を顧みず、己そのものを刃として怪物を葬る在り方。それが、アイズの本質でありその剣はアルにすら届きうる鋭さを持つが故にオッタルはそう断言する。

「己の『黒い意志』を統べろ。 そして、思い出せ。─────今からお前が立ち向かう難敵は通過点に過ぎないことを」

 

 奇しくも先日アルに言われたのと同じ言葉をオッタルにかけられる。

 

想起するのは全てを奪われた果ての冬の記憶。己に誓った絶対の『悲願』。

──────そして、誰も、オッタルですら真の意味では『対等』にはなれぬ『孤高の英雄』の背中。

 

「─────!!」

 

 アイズの不壊剣を握る力が無意識に強くなり、それに呼応するかのように尽きた筈の風がなけなしの精神力を振り絞って解き放たれる。

 

「それでいい」

 

 僅かな機微、だが確かな変化をその身に感じ取ったオッタルは満足げに頷く。

 

そんなとき。

 

 

 

 

───敵襲!! 敵襲!!

 

───アルフリッグ様が吹っ飛んだ?! 敵は一人だ、囲めぇ!!

 

───命にかえてでもフレイヤ様を御守りしろッ!!

 

───【抜き放て、魔剣の──ぐえっ

 

───ヘグニ様がやられたッ?! クソっ、団長を呼べぇ!!

 

 

先までオッタルとアイズの剣戟だけが響いていた『戦いの野』に突如として響き渡る尋常ならざる戦いの音色。

 

「敵襲、だと?」

 

「───!!」

 

 敵襲。オラリオ最大の派閥であり、【ロキ・ファミリア】を差し置いて最強の名をほしいままにする【フレイヤ・ファミリア】に敵襲、それも喧騒を聞く限り単騎で第一級冒険者の幹部を含む『強靭な勇士(エインヘリヤル)』と呼ばれる歴戦の猛者たちを圧倒している。

 

まさか────怪人?

 

白昼堂々、攻め入ってくるなど正気の沙汰ではないが、【フレイヤ・ファミリア】に単騎で攻め入ってくる相手などそれくらいしか考えられぬ、そうアイズが結論付けて自分も迎撃に向かおうとしたとき、高速でこちらに吹き飛んできた黒い影を視界に入れる。

 

ぐるぐると空中を回転しながら吹っ飛んできた黒い影は地上を数度の回転をつけて転がる。それは力尽きた者が投げ飛ばされたのとは違い、衝撃を殺そうと自ら転がっている動きだ。

 

「く、そが··········」

 

 身体を土埃にまみれさせながら立ち上がったのは精強なる猫人の男。今のアイズと同等か、それ以上の強さを誇る【フレイヤ・ファミリア】副団長のアレン・フローメルだった。

 

「何があった、アレン」

 

「黙れ、筋肉達磨。あのクソ野郎は俺が轢き潰す───ッ!!」

 

 自らに次ぐ使い手であるアレンの様に流石にただ事ではないと眉をひそめて聞くオッタルだったが、アレンは聞き入れず、第一等級武装たる銀槍を翻す。

 

そして、目前に湧き立つ土埃の中から悠然と歩み寄ってくる一つの人影をアイズは視認する、その正体は──────。

 

「いや、俺。普通にノックしただけなのにいきなり攻撃魔法打ち込まれた被害者なんだけど」

 

 アイズの同僚であり、憧憬の対象。オッタルと双璧をなすオラリオ最強の片割れ、アル・クラネルだった。

 

「どの口で言いやがる、何度も何度も軽々しく忍び込みやがって!!」

 

「この間は女神の手前、見逃したが二年前ここで何したか忘れたとは言わせねぇぞッ!!」

 

 鍛錬を申し出に来たアイズへ向けていたものとは比較にもならない激憤。アルを睨みつけるアレンの眼にはかつてないほどの敵意が籠められている。

 

「··········?」

 

「忘れてんじゃねぇッ!!」

 

 まさか、抗争かと、身構えたアイズだったがどうやら致命的なまでにアルを嫌っている【フレイヤ・ファミリア】の団員が敵対派閥の本拠地に一人で来たアルに対して過剰な反応をしてしまったのが始まりのようだ。

 

「そこまでよ、アレン」

 

「···············フレイヤ様」

 

 だが、このままでは本当に抗争に発展しかねない、そう考えた時、美しいソプラノの声が『戦いの野』に響き渡った。数日前とは違う、絶対的な『女王』としての命令に狂犬ならぬ狂猫であるアレンも引き下がる。

 

「それで、貴方は何をしにここに来たのかしら?」

 

「いや、普通にアイズを迎えに来ただけなんだが·············お前の眷属、血の気多すぎだろ」

 

 万象を平伏させるフレイヤの『女王』としての覇気を前にしても何一つ変わらずに話すアルに後ろめたさは全く無く、嘘を見抜けるフレイヤも仕掛けたのは自分の眷属だと理解し、ため息をつく。

 

「そう、ならいいわ。けど、ここまで暴れられてはいそうですか、と許すのもねぇ·········」

 

 今の『戦いの野』には天上のヴァルハラもかくやという美しさはもはやなく、荒れ果てた荒野のようになっていた。たしかに、【フレイヤ・ファミリア】からしかけたとしても他派閥の拠点をここまでにしてお咎めなしはありえないだろう。

 

「あ? あー、じゃあ借り一つ追加、ってことでいいだろ」

 

 対するアルの言葉にぎょっとするアイズだが、ふとアレンが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていることに気づく。

 

「あら、ならこないだのお願いとは別に返してくれるの?」

 

「あーうんうん、返す返す、アフロディーテに誓ってもいい」

 

「···········誓う気すらないじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

【闘争本能】

オッタル由来。自動迎撃は恩恵がある限り常時発動。最低限度だが他スキルや魔法もこいつが勝手に使う。アルがその気になってちゃんと戦った方が強いのでアルが本気になるとバフ方面に切り替わる。

 

アルが積み立てステイタスとアルフィア並の才能の割にそんなに強くないのはこのスキルに全て投げてるため。

 

早い話がドラクエの作戦『いろいろやろうぜ/いのちだいじに』みたいなAI自動戦闘。

 

 

 

・【加護精霊】【天授才禍】

→本人の資質によるもの。

 

・【憧憬追想】【サンダーボルト】

→本人の資質&原作の『ベル・クラネル』由来

 

・【英雄覇道】

→アルフィア&ベル由来。

 

・【闘争本能】

→オッタル&原作の『ベル・クラネル』由来

 

・【レァ・ポイニクス】

→アリーゼエミュ&アルフィアの最期エミュ&魂の属性由来

 

・【リーヴ・ユグドラシル/■■■■■・■■■】

→必要にかられた&曇らない神うぜー

 

 

IFだと

・アストレアIFが主神由来でほんのり光属性より

・静穏が伯母義父猛者騎士由来で英雄味つよつよ

・ベル妹がガチビルド

・女帝が呪詛と闇と自傷のカーニバル 

・聖女アルちゃんが最初から殴ってくるヘイズ(中身が計画性捨てたアル)







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