皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
「遅れた身としては少しはやることが残っているといいんだけどね」
フィンを先頭にウィーネ達を保護したアイズとフェルズと行動を共にしていたガレス達が合流した一団はやや拍子抜けしたような様子を見せながら、驚愕の表情を浮かべたミュラーと対峙する。
Lv.6の第一級冒険者四人という過剰に過ぎる大戦力の合流にミュラーは目に見えて狼狽する。
「チッ、しっかり出遅れてるじゃねえか」
「あれはレフィーヤと··········」
ベルの猛攻からかろうじて逃れた数匹の食人花が反射的にフィンへと飛びかかるがフィンに届く前に双剣と不壊剣の煌めきに解体される。
「ウィーネっ、リリ! 春姫さんも········!!」
アイズ達に守られるように連れられたウィーネの達の姿にベルは思わず安堵の声を漏らす。
「レフィーヤ、それにベル・クラネル···········君達もいたとはね」
道中で行方不明になっていた冒険者を保護していて遅れてしまった、とフィンが呟きながら槍を構える。
「さて、君が今回の件の首謀者ということでいいのかな」
「─────っ!!」
槍と共に向けられる視線に、そして声によってミュラーの脳を揺さぶるような恐怖が駆け巡る。
あと一歩で喋るモンスターを確保できたはずなのに何故こうも容易くひっくり返されるのか。
その優れた智慧故に今の自分が置かれている状況の最悪を悟る。
それでも、と自らの研究に縋るように懐の短剣の柄を弾いて『光の共鳴音』を響かす。
ベルによって打倒されたはずの『怪人兵』が所々から流血しながらも跳ね上がるように起き上がる。
魔石を砕かれ灰となったモンスターとは違い、自身の目に人間と映る彼等の命を迷いなく奪えるほどベルは冒険者として昏い死線を越えてはいない。
それでも、再起不能とまでは行かないもののこの場における戦闘続行能力を奪うにはあまりある損傷を与えてある。
だが、怪人ほどではないにしろ文字通り化け物じみた自己治癒能力を持つ『怪人兵』の中でもその力が比較的高い七の個体は『光の共鳴音』によって無理矢理にだが再起動を果たした。
七体だろうが十三体だろうが複数のLv.6を相手に勝てるはずもないがこの手勢で時間を稼ぎながら逃走し、クノッソスまで退却して仕切り直す。
その思考に至るまでにミュラーが要した時間は僅か三秒。
だが────、 フィンがその企みを挫くのにかけた時間は二秒にも満たなかった。
「ゥ゙、ガアァァァァァァァ───!!」
「不正の狂化兵か、七年前を思い出すよ」
口角から泡ともに咆哮を吐き出し、獣のような俊敏な動きで飛びかかってくる七体の『怪人兵』にフィンがどこか懐かしそうに呟く。
その呟きと時間を同じくして、フィンの槍の穂先が閃く。魔法を使った自身を思わせる凶猛の狂戦士の長槍が唸り上げて迫るがフィンはその先端に槍の穂先を合わせて軌道を逸らす。
力の向きが捻じ曲げられ、膂力と速度によって生じる威力を殺された長槍使いの『怪人兵』がたたらを踏むよりも早くフィンの金槍が七つの金閃を描く。
文字通りの一撃必殺。『技と駆け引き』すら不要とただただ研ぎ澄まされた神速の速攻で以って鮮やかに七人ものLv.4を処理するのにフィンがかけた時間は僅か一秒あまり。
「数はともかく質は随分、落ちたようだね」
嘲りすらなくLv.7に限りなく近いLv.6としての感想を呟くフィン。ラウルやアリシアなどの二軍の団員からすれば脅威かもしれないが七年前の大抗争で下した不正の『精霊兵』に比べれば二枚は落ちる。
まだ手綱を握っているのがヴァレッタであればもう僅かは手間取ったかもしれないが戦いを知らない研究者ではその運用もたかが知れる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ、侵入者は【ロキ・ファミリア】·········!? 『千の妖精』がいる時点で嫌な予感はしてたけどさぁ、流石にこの戦力は·········!!」
フィンの言葉に対してミュラーは忌々しげに表情を歪めながら後ずさる。
フィン以前にベル一人に呆気なく掃討された以上、言うまでもないことだが今この場に用意してる戦力は第一級冒険者複数を同時に相手取れるようなものでは到底ない。
Lv.4上位相当の『怪人兵』とそれには及ばぬものの第二級相当のモンスターの寄生体等で畳み掛ければLv.5の第一級冒険者一人や二人くらいならば押し潰せるかもしれないが流石にベル達に加えて都市最大派閥のLv.6四人は時間稼ぎすらできない。
「ああもうっ、なんでこうなっちゃうかなぁ!!───嗚呼、まいったなぁ、こうなるなら欲をかかずにさっさと逃げるべきだったなぁ」
「もう、貴方達を守る戦力はもういません、大人しく投降してください」
「捕まっちゃうのはちょっとなぁ·············。まだまだ、やりたいことがいっぱいあるしぃ·············、はぁ、『コア』出して」
レフィーヤの勧告にミュラーがガリガリと頭を掻きながら呟くと側めている雑兵の一人に命令する。
「··············ッ、しかし、『コア』はこの『実験場』そのものと繋がっていて───」
「今この場で一網打尽にされるよりはマシでしょぉ? どっちみちこの『実験場』も放棄するつもりだったんだからさぁ」
「··············、かしこまりました!!」
僅かに逡巡する様子を見せた雑兵だったが身を翻して領域全体に管を伸ばす機器に触れる。
「ねぇ、冒険者諸君!! 僕を捕まえる前に残りの行方不明者がどこにいるか知りたくなぁい?」
「時間稼ぎに付き合うつもりはないよ、君を捕まえた後でいくらでも吐かせることはできる。聞くに値しない」
「ああもう、流石は『勇者』、冷徹だなぁ。でもさ、本当にちょっとだけ聞いてよ、もうだいたい予想ついてると思うけどこの領域はダンジョンからの栄養補給の代わりに冒険者の『魔力』で成り立っているわけ」
わざとらしく声を上げるミュラーの言葉をフィンが切り捨てるが、構わずミュラーは話を続ける。
食料庫のクオーツから溢れる栄養素を糧に一定区域を穢れた精霊の『領土』とする『苗花』。範囲は狭いが『実験場』の機能はそれとほとんど同質。
そして、それを食料庫のクオーツから溢れる栄養素の代わりに成り立たせているものこそがここ最近立て続いていた行方不明の上級冒険者達の魔力。
「生かさず殺さずで捕らえた上級冒険者の檻であり、魔力を吸い上げて精霊の領土を構築・維持する『発生機関』············そんな大掛かりで場所を取る『装置』、一体どこに据えてあると思う?」
「─────、まさか」
「そう!! 領域の最奥、つまりここ!! そして君たちの足元だ!!」
ミュラーの言葉を引き継ぐように周囲の緑肉の脈動が激しくなり、地面が鳴動する。
呼応するように機械の管を通じて天井や壁からも不気味な音が響き始める。そして、地面を割るようにして巨大な肉塊がその姿を現す。
ダンジョンからモンスターが産まれる時と似て非なる光景とともに周囲を包む生臭い臭気。
「超大型級·········!!」
巨大なモンスターに緑肉の触手が鎧のように絡み合った歪な肉塊のサイズは階層主にも迫りかねない超大型級。
中層のモンスターが放って良い雰囲気とはかけ離れたその威容は深層の怪物すら凌駕する。
生け贄を欲するように蠢く肉の触手は粘液を垂らしながら周囲の壁や天井、床をも侵食してその領域の濃度を増していく。
「はははははははははっ! 食人花じゃなくて巨大花を怪人が捕まえてきた深層種に配合した特殊異形だ!! 純粋な戦闘能力はもちろん、接触しただけで冒険者の魔力も吸い取る!!」
元よりLv.5相当のポテンシャルを持つ巨大花を配合したそのモンスターは冒険者の魔力を吸収・蓄積する能力と合わせて深層の階層主にすら匹敵し得る。
その『コア』が露出した事に合わせて周囲の緑肉から食人花が次々に開花するように産み出され、その数は瞬く間に二桁に至る。
「────全て殲滅する、皆、僕の指揮に入れ!!」
ガレスがリリルカ達、戦闘能力に乏しい三人を護るように前に立ち、フィンが槍を構えて号令をかける。
緑肉から産み出された食人花の数は既に百を超えており、この広い空間を埋め尽くさんばかりに増殖を続けている。
「思えば君との共闘は初めてだったね、ついてこれるかい? ベル・クラネル」
「っ、はい!!」
モンスターの増殖速度を凌駕する冒険者達の速攻。援護すら不要とばかりにフィンとベルが真っ先に食人花の群れを散らし、遅れてベートとアイズが続く。
食人花や寄生体の触手を斬り払い、あるいは回避しながらその奥の緑肉の塊へと一直線に突き進む。
いくら数だけを増やそうと同族喰らいを重ねていない食人花のポテンシャルはLv.2からLv.3の下位程度。
その打撃耐性やしぶとさは大したものだがそのどちらも既に『既知』へと変えた冒険者達には通用しない。
まさに鎧袖一触とばかりに蛇体が千切れ飛ぶ。増殖速度は落ちる気配はないが最初からやって来なかったことを考えても遠からず尽きるのは間違いない。
そして、それを待つことすらする必要はない。
「────援護、いらない。倒せる!!」
増殖を重ねる食人花の大群はフィンとベルだけで十分に殲滅が可能。故に自分が『コア』を断つ、とアイズが疾走する。
アイズから見ても油断ならないポテンシャルを秘めているのは分かるがそれだけだ。
すでに山ほど葬った極彩色のモンスター。『未知』には程遠く、強いと言っても精霊の分身には遠く及ばず精々が前々回の遠征や18階層での戦いで討たれた精霊の分身に至れていない不完全な『女体型』と同程度。
量産できるならばまだしも単体であればアイズ一人でも問題なく処理できる。
「───言い忘れてたけどさぁ。そのモンスターの中には魔力の『供給源』がわんさか取り込まれてるよぉ?」
「──────っ」
両断しようと剣を構えたアイズの耳にミュラーの声が滑り込み、その攻撃を止める。
確かに、確かに聞こえる。蠢く緑肉の奥から呻き声が、助けを求める嘆きの声が。
「·············た、けて」「········ぅ····ぁ·········」「·············ぃたい、くるし·········」「·······だ、れか·········」「···········たす、けて」
緑肉に覆われてその場所や正確な数は測れないが、耳をすませばそんな弱々しい声がいくつも幾つも響く。その声は怪物のものではない、紛れもなく人間のもの。
「捕らえた冒険者の大半はその『コア』と同化している、『剣姫』のすごーい攻撃なんて当てたら死んじゃうんじゃないかなぁ!?」
あまりの悍ましさと悪意に言葉を失うアイズにミュラーが愉悦に満ちた声で追い打ちをかける。
「人質、いや、肉の盾か。物理でも魔法でも儂らの攻撃を下手に当てれば取り込まれた冒険者たちを殺しかねんと言うわけだな。こんなことならアルを連れてくるべきだったか」
闇派閥らしい悪辣さに嫌悪感を隠さずにガレスが呟く。魔力を吸われて衰弱しきった冒険者達に掠る程度であろうと第一級冒険者の攻撃を耐えきるだけの耐久力は期待できない。
アルの【レァ・ポイニクス】ならば何も考えずに丸ごと焼くだけで冒険者だけを燃やさずに『コア』だけ焼けただろうが、今の一団にそういった魔法の持ち主はいない。
「せめて、どこにいるかが分かれば·············」
「皆さん!! 私なら分かります!!」
苦慮を浮かべる一同にレイが声を上げる。モンスターとして冒険者とは異なる感覚器官を持ち、なにより『音』による反響探知を行えるレイならば緑肉の塊のどこに冒険者が捉えられているかが分かる。
「·················どういうことだい?」
「フィンさん、レイさんは『音』でどこに何があるか探って捕らえられてる人たちの位置を割り出せます! だから、あの
「·················いいだろう、各員。ベル・クラネル及び彼女の指示に従え!!」
ベルの熱意に押されるような形でフィンが即断する。元より『異端児』達とはクノッソス侵攻における同盟を組んでいる。
遅かれ早かれ背中を預けて戦うことになるのだ、ここで信じなければ同盟の意味もなくなる。フィンの号令にガレスたちも頷く。
「──────────っ、見つけた! 右腕に一人!上腕部を切り落とせば傷つきません!!」
『反響定位』。歌人鳥としての怪音波を反響させ、その反射で空間の把握を可能とするレイが緑肉の塊に捕らえられた冒険者の位置を割り出す。
その声に、ベルとフィンが即座に反応し、緑肉の触手を切り裂いて囚われた冒険者を解放する。
「ぅ、ぁ·················」
解放された冒険者達は魔力を奪われて衰弱しているものの命に別状はないようで、すぐに意識を取り戻す。
「腰部に二人! 左腕上部に一人! 右脇腹に三人!!」
「はっ、それなりに使えるじゃねぇか」
矢継ぎ早に告げられる声にベートが獰猛な笑みを浮かべて緑肉を解体する速度をさらに上げる。
「モンスターが人を、助ける··············」
ウィーネがそうであったように自身の危険を省みないレイの献身にアイズが呟くように驚愕を漏らす。
「モンスターと冒険者が協力して人命救助!? ···········嘘でしょ、あり得ないってそんなの!?」
そのあまりにも常識外れな光景に、ミュラーが信じられないとばかりに頭を掻きむしる。
そんなミュラーの動揺など知ったことかとばかりに緑肉の塊が確実に削られていく。
この領域の主であるだけあって抵抗は激しいが連携する第一級冒険者達を阻むだけの力はない。
モンスターは人類の敵であり、冒険者にとっては打倒すべき『悪』であるはず、それなのに共闘するなぞミュラーにとっては到底理解しがたい光景でしかない。
「っ、その個体は『怪物』だ!! 僕達、人類の敵だよぉ!? 見ればわかるよねぇ? 腕の代わりに生えた翼に人外の器官!良いのかい? 冒険者が、ひいては天下の【ロキ・ファミリア】がモンスターなんかと協力しちゃってさぁ!?」
仲間割れを狙うようにミュラーが叫声を上げる。
太古の昔に突如として現れた大穴の化け物達。人類よりも遥かに高い身体能力を持ち、特殊な能力を駆使する怪物達は人々を襲い、時に喰らい、殺していく。
人類の歴史にも遺らぬ大古の時代より存在する彼らによって積み上げられた悲劇の数は計り知れない。
人類そのものの存続が脅かされたことは一度や二度ではない。多くの者が犠牲となり、時には大陸を席巻する大国が滅んだことすらある。
破壊と殺戮、その二つを存在意義としたモンスターの脅威はいつの時代も消え去ることはない。
モンスターと人類が相容れることはない。
「血迷った冒険者が『怪物』をかばったらどうなるかはおたくの『剣聖』のおかげでよく分かってるよねぇ!? 石を投げられて蔑まれて迫害される!!」
「こんなことが知れたら民衆はどう思うかなぁ!? 君たちの名声まで地に落ちちゃうよ!? ねぇ、『勇者』!!」
揺さぶるよう、あるいは脅迫でもするようにミュラーがフィンに言葉を投げかける。
その言葉は間違ってはいない。仮に【ロキ・ファミリア】がモンスターと協力してるなんてことが知れれば民衆のフィン達への評価は一気に下落するだろう。
だが────。
「·················情報が遅いな」
「はぁ!?」
僅かに嘲るようにフィンが呟く。その言葉の意味をミュラーが問い返すように声を上げるがもうすでに『そんな段階』の話は終えた後だと言外にフィンは告げる。
「いや、すまないね。闇派閥の一員ならば既に察しているかと思ったんだが。─────────それに、どこに『怪物』がいるんだい?」
「何を、言って·········」
清々しげに笑うフィンの、『勇者』の仮面を脱ぎ捨てた表情にミュラーは言葉を失う。
「生憎だけど僕の目には彼女が
「だって、そうだろう? 身を挺して前線で戦い、力を尽くして冒険者の救助に努めた。理性を持ち 、他者を想って行動する。それは『怪物』ではなく、『人間』と同じ在り方だ」
「彼女の献身と勇気に敬意を示さずしてどうして『勇者』を名乗ることができる?」
謳い上げるようにミュラーの言を切り捨て、『勇者』はそう言い切る。
既に信じるとは決めた、そしてそれに献身と勇気で以って応えたのであれば『勇者』として同胞と認めない道理はない。
「フィンさん··········!!」
「っっ··········!! 冒険者ってさぁ、本当にさぁ··········!!」
フィンの言葉にベルが歓喜の声を上げ、ミュラーは憎々しげに表情を歪めて歯噛みする。
「『人の心』を持った怪物より、『怪物の心』を持つ貴方達の方が悍ましい。·············私はそう思った、だから、貴方達に彼女達は傷つけさせない」
フィンの言葉を引き継ぐようにウィーネを背に守るアイズがそう言い放つ。正義などではない、冒険者としてはむしろ悪とさえ言える判断。
だが、それでも、と。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ、やれっ、僕の作品!!」
もはや仲間割れをさせる目すらないと悟ったミュラーが叫ぶ。その声に従い『コア』が唸り声を轟かせて新たな触手を生み出し、襲いかかってくる。
だが、その体内にもう捕らえられた冒険者はいない。
冒険者という人質がなければ多少しぶといだけの緑肉の塊など第一級冒険者達の敵ではない。
「もはや何の憂慮もない──────皆、かかれ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『勇者』『剣姫』『重傑』『凶狼』の四人の第一級冒険者にベルとレフィーヤ、そしてレイ。
ウダイオスですら容易く討てるであろうその一団はリリルカ達や救出した冒険者を守りながらでも危なげなく『コア』を容易く葬った。
「ハッ、散々手を焼かせやがって気味の悪ぃデカブツが」
「しぶとくて魔法の耐性が高くて斬りにくかったけど、それだけ」
食人花の掃討と合わせて、『コア』の討伐を終えたベートとアイズが言葉を漏らす。何度か戦ったことのある『女体型』と同程度の相手だ、今さら手こずるなぞあり得ない。
「·················」
「·················」
「(だ、誰も話そうとしません。なんだか気まずくて重い空気が··············)」
二言三言交わして沈黙する一団。その空気に春姫は居心地悪げに身じろぎし、きょろきょろと周りを見渡す。
だが、それは無理からぬことだろう。いくら同盟を組み、ある程度互いを認めた関係となったとはいえ少し前まで敵対に近い関係にあった相手といきなり仲良くできるはずもない。
「(モンスターと共闘した直後ならこんな空気にもなります!!あぁ、もう、一族の勇者でも誰でもいいですから口を開いてくださ〜い)」
くそ気まずい沈黙に辟易としながらも第一級冒険者たちに言葉を投げかける勇気など到底ないリリルカが心中で悲鳴を上げる。
フィンでもベルでもいいから何か言ってくれないかなとリリルカが頭を悩ませたその時、唐突に明るい声が場の空気を破る。
「みんなっ、助けてくれてありがとう!」
ベルの腕に抱きついていたウィーネが腕から飛び退いて一同に礼を言った。その感謝の言葉に第一級冒険者達は面食らい、互いに顔を見合わせる。
あまりにも純粋で裏表のない感謝の言葉。或いは人間の子供よりも無垢で純粋なその言葉に険を和らげる。
「···········はは、まいったな。まさかモンスターからお礼を言われるなんてね」
「がはははっ! 何を言っておるフィン、この娘っ子たちがモンスターには見えないと言ったのはお主だろうが!」
「··············あぁ、そうだったね、そうだった」
もはや忌避を抱くのが馬鹿らしくなるほどに天真爛漫なウィーネの笑顔にフィンが毒気を抜かれ、ガレスの言葉に苦笑を漏らす。
「ウィーネ·········」
「嗚呼·········あなたは私たちの中で一番幼くて、そして誰よりも成長していますね、ウィーネ」
「って、そういえばあのミュラーとかいう研究者は?!」
流れる穏やかな空気にレフィーヤも一瞬ほっこりと目を細めるがすぐに正気を取り戻して叫ぶ。
モンスターの灰の他にこの場に転がっているのは無力化された『怪人兵』と闇派閥の雑兵だけでミュラーの姿はない。
「とっくに逃げ出してるっての。俺たちがデカブツと派手にやりあってる間に端の抜け道から逃げやがった」
「えええっ!? 分かってて逃がしちゃったんですか!? は、早く追いかけないと!?」
何を今更と、面倒臭そうに言うベートにベルが叫ぶ。今回の明らかな 黒幕であるミュラーを逃せばまたいつこのようなことが起きるか分かったものではない。
「問題ないよ、ベル・クラネル。冒険者たちを保護したリヴェリアが外を張っている。············それに、君の怖いお兄さんが逃さないさ」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「はぁ、はぁ············危なかった、間一髪だったよ」
『コア』と第一級冒険者の戦いの余波に巻き込まれないようにしながら抜け道から大樹の迷宮に逃れたミュラーが息を切らせて呟く。
「他の同志はおろか『怪人兵』も全て放棄して本当によろしかったのでしょうか?」
「仕方ないでしょぉ、あれ以上欲張ってたら確実にやられてたよ。『怪人兵』も調整中のがクノッソスに何体もいるし、研究は僕の頭があれば続けられる」
「あんな真性のバケモノたちとこれ以上戦うなんて────」
数を減らした雑兵の言葉にそう応えていたミュラーだが、そこで言葉を止める。
その原因は足元だ。出口の周りの地面を覆うように積もる灰。推察するまでもなくモンスターの亡骸、それも隠して配置していた食人花のものだろう。
その亡骸が散っているということは─────
「やぁ、こんちは」
「···············け、『剣聖』?」
『人の心』を持たない真性のバケモノがそこにはいた。
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ウラノスの依頼で【イケロス・ファミリア】よろしく闇派閥系のヤバいヤツやヤバい強化種とかは定期的にバケモノにこんにちはされてます。
バケモノ「やっほ」
フィン「なんで僕達より先にいるの?」
バケモノ「散歩」
フィン「えぇ········」
バケモノ「伏兵とかいないか周り見とくから」
【各√ラスボスに対する反応】
本編「くぅん」
聖女√「」
アストレア「はわわ」
女帝「チッ」
静穏「────じゃあな、また会おう(素)」
ベルが妹IF「【ヘスティア・ファミリア】に改宗しないか?」
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