皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

171 / 204
169話 第一侵攻

 

 

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

『Lv.6』 

 力:H100→158

 耐久:H117→166

 器用:H131→G201

 敏捷:H112→G200

 魔力∶H154→G230

 

狩人︰G

耐異常︰G

剣士:H

精癒:I

 

「どこ行っとったか知らんけど熟練度トータル300オーバー·······大層な修行やっとったみたいやなぁ」 

 

 アイズの背中に灯っていた光が消え、一新されたステイタスが刻まれた。

 

その数値に『猛者』との過酷極まる訓練を思い出すようにぎゅっと拳を握りしめる。

 

クノッソス第一侵攻、直前。

 

遠征以上の一戦を前に希望した団員のステイタス更新を次々に行っていたロキは「あー疲れた疲れた」とぼやきながらもその開かれた双眸に宿るのは強い熱。

 

「これで準備は全て終わりや。────勝ちに行くで、アイズ」

 

「────うん」

 

 普段の軽薄な様子は鳴りを潜め、真剣な表情のロキに呼応するようにアイズも力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

──────あっ、これ無理なやつだわ。

 

【直感】とスキルがぎゅんぎゅん言ってる。

 

やべぇ、ヘイズとヘディンしか引っ張って来れなかったけど今からでも無理矢理オッタル呼ばなきゃみんな死んじゃう。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン第二の出入り口を探して見つけたクノッソスへの最初のアタックから始まり、『異端児』関連のゴタゴタなどここ最近の騒動の渦中にあるダイダロス通り。

 

『異端児』と【ロキ・ファミリア】の戦闘によって破壊された区域の復興及び瓦礫などの撤去作業という名目の下、スラムの住民はギルドの用意した仮設住居に移動させられている。

 

そのダイダロス通り中央地帯。

 

外部からの侵入と中からの脱走を防ぐ冒険者による『包囲網』の中心。武装した様々な派閥の冒険者が物々しい雰囲気の中、資材や物資の運搬を行っている。

 

「あっ、アミッドもこっちの部隊なんだ!!」

 

「はい。フィン団長と協議した結果、この北東の部隊が最も適切だろうという結論になりまして」

 

 クノッソスに攻め入る七つの突入部隊、そのうちの一つでありフィンとヒリュテ姉妹を主力とした複数ファミリアの混成部隊。

 

その一部隊に合流する形でアミッドは最硬精錬金属の扉前の地下通路に来ていた。

 

美しい白銀の長髪に宝石のごとき輝きを秘めた同じく白銀の双眸。女神と見間違うばかりの美しい容貌とその美貌に違わない清廉な雰囲気。

 

ただそこにいるだけで場の空気を清浄なそれへと変えているのではと思わされる白い存在感。

 

彼女が身に纏うのは以前のクノッソスへのアタックの際にも身に着けていた白を基調とした戦闘衣ならぬ『法衣』であり、その手には蒼水晶の長杖が握られている。

 

某『剣聖』がLv.5となった辺りから単独での深層進攻を繰り返して少しずつ揃えた、【幸運】の発展アビリティと某『剣聖』の殺傷効率を以ってしても手にすることの難しい超々レアドロップをもとに作製された下手をすれば某『剣聖』自身の装備より高価な装備。

 

防刃・防魔を始めとしたあらゆる攻撃に隙なく対応して各種状態異常攻撃にも耐性を持ち、装束でありながら精錬金属製の全身鎧にも勝る強度を誇る法衣。

 

魔法の効果増幅の他にも精神力消費軽減、状態異常打破効果強化と回復魔法の行使に特化し、さらに極僅かではあるが装備者の精神力を自動回復する特殊効果を持つ特殊武装の長杖。

 

都市最高のヒーラーであるアミッドの能力を更に底上げし、むしろアミッドにこそふさわしいと言える第一等級武装だ。

 

そのアミッドの左右にはアミッドほどではないにしろ熟達したヒーラーである【ディアンケヒト・ファミリア】の団員が補佐として控えている。

 

「我々の解呪薬の製薬作業のせいで作戦決行が遅れてしまい申し訳ありません」

 

「なに言ってんのよ、そもそもアミッドの専用の秘薬がなきゃ不治の呪いを癒せないんだからこっちがお礼を言わなきゃ」

 

 【ロキ・ファミリア】がクノッソスの第一侵攻をするにあたって準備したのは大きく分けて四つ。

 

一つ目は他派閥との協力。不治の呪いに対抗可能なアミッドを擁する【ディアンケヒト・ファミリア】を始めとして侵攻中の地上の警戒を担当する【ガネーシャ・ファミリア】、『万能者』の魔道具で別働隊としての働きをする【ヘルメス・ファミリア】、戦力としてではなく数によるマッピング要員として【ディオニュソス・ファミリア】などとの協力関係の締結。

 

そして直接、侵攻には参加しないが魔剣を始めとした装備の供給等を行う後方支援担当として【ヘファイストス・ファミリア】、有事の際の予備戦力兼地上の防衛戦力として【カーリー・ファミリア】。

 

【フレイヤ・ファミリア】に()()()()()を取り付けることはできなかったが、その()()()()()()を取り付けることはできた。

 

二つ目は『支柱』の作成。開いた最硬精錬金属を固定するために超硬金属や白剛石から作られた支柱を各隊数十本ずつ用意した。

 

一部を除けばLv.1かLv.2しかいない闇派閥の雑兵では取り外せないそれと各隊一つずつの『鍵』を使ってクノッソスを文字通り拓いていく。

 

三つ目はクノッソス内に点在する最硬精錬金属の扉を開く『鍵』の複製。多種多様の罠と防衛装置を打破するためには必要不可欠なダイダロスの血族の瞳から作られた『鍵』の魔道具。

 

先日の『異端児』関連の騒動を経て【ロキ・ファミリア】が確保したのは五つ、部隊を編成して攻め入る分には十分な数だが逆に言えば闇派閥側が認知していない六つ目、七つ目の『鍵』があれば伏兵として奇襲をかけることができる。

 

そして最後の四つ目はアミッドとアルのいない部隊が不治の呪いにさらされた際、それを治療する為の対呪詛専用の秘薬の開発と量産。

 

以上の四つの達成を経てようやくクノッソス攻略に乗り出せた。

 

「ありがとうございます。·············この部隊があの呪いを相手にした際はご安心を、あの呪いは私が殺します」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン中層域、安全階層18階層。淡い輝きを湛えた水晶と緑が美しい森林はここが怪物の巣窟であるダンジョン内だとは信じられないほど静謐で穏やかである。 

 

迷宮の楽園(アンダーリゾート)』とまで呼ばれる地下世界に広がる蒼と緑の色彩はまるで地上の光景をそのまま写し取ったかのようであり、ここに暮らすモンスターたちは他の階層から移ってきたものであり、この階層で産まれたモンスターはいない。 

 

安全地帯―――ダンジョンの壁や天井を構成する石材から突き出た水晶が淡く発光しており、その光のお陰で暗闇に支配されることもない。

 

そんなダンジョンの中とは思えない壮観な『夜空』を広げる地下世界の楽園に怪物の一団の影が蠢いていた。

 

フェルズ謹製の眼晶で【ロキ・ファミリア】と連絡を取り合っている『異端児』達は地上から攻める冒険者達とは別に18階層の東端にある出口からクノッソスに攻め入る手筈となっている。

 

各々が突入までの準備をしている中、ただ一人異形ではないヒューマンの青年がフェルズと何やら話し合っていた。

 

『これは··············魔石製品、いや魔道具か?』

 

「まぁ、魔石を素材にした魔道具ってとこだ」

 

 アルから手渡された中に絶えず紫紺と赤緋の混ざった灯火を揺らめかせる手のひらサイズのランプを興味深げに眺めるフェルズ。

 

華美な装飾は一切なく、硝子の筒に魔石と機構を組み入れただけの簡素な作りで壊れないことにのみ注力したような形だ。

 

フェルズが持っているものだけではなくアルの持ってきた雑嚢に同じようなランプが軽く三桁に届こうかという数が詰め込まれている。

 

「魔石が力を使い果たして砕け散るまで僅かな間、俺の【レァ・ポイニクス】の火を灯す『炉』だ。もう起動済みだから明日にはただのガラクタになっちまうがな」

 

『それで、これをどうしろと? これ自体が君の魔法を魔剣のように吐き出せる、というわけではないのだろう?』

 

 アルと自分以外の【神秘】のアビリティを持つ者の二人の血と髪を回路、魔石を燃料として【レァ・ポイニクス】の火を付け、しばらくの間絶やさないだけの魔道具。

 

超級の魔道具作成者であるフェルズが見たところ砕いたりしたところで魔剣のように劣化魔法を発動させるわけでもなく所有者に何らかの加護を与えるわけでもない。

 

そんなものを急に持ってきてなにに使うのかと首を捻るフェルズにアルは淡々と言葉を続ける。

 

「これ自体には何の力もないが、まぁ俺の火が燃え移りやすくなる為の保険のようなもんだ」

 

 説明しているようでどこか要領を得ない説明にフェルズは骨の顔を怪訝なものに変える。

 

「クノッソスは広いからな。俺の戦域外で何かあった際【英雄覇道】で【レァ・ポイ二クス】の範囲を拡張させただけじゃちょっと自信ないからいざという時、俺の火が必要なとこまで届くようにするためのもんだ」

 

『···············つまり、精霊の分身への対策というわけか?』

 

 クノッソスを攻めるにおいて特大の注意を払わなくてはいけない戦力が二つ、闇派閥側にはある。

 

一つは言うまでもなく怪人。赤髪の怪人レヴィスは斃れ、現在存在を確認できているのは仮面の怪人エインだけだがあまり考えたくはないがあと一人や二人抱えている可能性は捨てきれない。

 

エインのみだったとしてもその脅威の丈は単独で戦局を覆しうる盤上の『女王』だ。

 

もう一つは『宝玉』に寄生されたモンスターが一定数の魔石を喰らうことで至ると思われる精霊の分身。

 

寄生したモンスターと喰らった魔石の量にもよるがその強さは最低でもLv.6の階層主相当。

 

単独で間違いなく討てると確信できる冒険者はアルとオッタルだけであり、第一級冒険者を複数含まない部隊が遭遇すればまず間違いなく壊滅する脅威。

 

そんな精霊の分身が振るう多種多様な属性の精霊の魔法にアルの【レァ・ポイニクス】が特上の盾として機能するのは59階層の戦いでわかっている。

 

仮に【レァ・ポイニクス】の支援を受けながら戦うことができればその勝率は跳ね上がる。

 

「···············あーまぁ、そんなとこだ」

 

 中層から攻め入る『異端児』達に侵攻中、適当でいいからクノッソスの通路や簡易苗花にばら撒いておいてくれと伝えたアルは魔石製品を詰めた雑嚢を置いて地上に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

クノッソス南西。最硬精錬金属の扉前、ガレスを中心に集結した戦力の中に二人のエルフの姿があった。

 

「フィルヴィスさんっ! フィルヴィスさんもこの部隊に?」

 

「ああ、ディオニュソス様の護衛の関係でな」

 

 同胞の友人の姿に声を上げるレフィーヤにフィルヴィスは応える。侵攻を直前とした場の雰囲気に当てられてか、その表情は普段より硬い。

 

だが、それもそのはずこの南西の部隊こそがある意味では本隊とも言える最重要部隊だ。

 

今回の第一侵攻の最終目標は二つある。

 

一つは精霊の分身の発見───可能であればアルを向かわせて各個撃破すること。

 

そしてもう一つはクノッソスの建設と運営を司ってると思われるダイダロスの血族とその主神であろうタナトスの拿捕だ。

 

この部隊は後者の、敵首魁陣の拿捕を最優先目標とする部隊。

 

故にタナトスを拿捕するため、神であるディオニュソスとロキが同行している。

 

全知零能の身である神には当然ながら冒険者のような戦闘能力は全く無い。相手の眷属に危害を加えられることはないが闇派閥の雑兵の自爆に巻き込まれたりモンスターによって弑される可能性は十分にある。

 

だからこそファミリアの団長であるフィルヴィスが護衛についているのだ。

 

「────ディオニュソス様の護衛、ですか。すっかりあの方の右腕気取りですね」

 

「···········アウラ」

 

 そこに二人とは違うエルフの冷たい声が届いた。二人が振り向いた先、そこにいたのは白い長髪を後ろに結わえた美麗なエルフの少女。

 

赤と黒の花を思わせる装飾が施された戦闘衣に身を包んだ彼女の名はアウラ・モーリエル。

 

フィルヴィスが団長を務める【ディオニュソス・ファミリア】の副団長であり、その美しい風貌は一般の者がエルフと聞いて想像する穢されざる妖精そのものだ。

 

悪く言えば神経質そうであり、良く言えば意志の強いの彼女の紫紺の瞳は自身のファミリアの団長であるフィルヴィスへ睨みつけるように向けられている。

 

「なにやらディオニュソス様の側でコソコソと動き回っていたようですが今度はファミリア全体を巻き込んで我々を殺しますか、『死妖精』」

 

「っ」 

 

 棘のようなアウラの声に直接険を向けられているわけではないレフィーヤも反応してしまう。

 

アウラが口にした二つ名はフィルヴィスの正式な二つ名ではなく畏怖と忌避を込めて呼ばれる彼女の蔑称だ。

 

27階層の悪夢に巻き込まれたことを皮切りに彼女とパーティーを組んだ者は一つの例外を除いて全てその命を散らしている。

 

そのフィルヴィスは繰り上がる形で団長となった【ディオニュソス・ファミリア】の団員たちにですら煙たがられているとレフィーヤは聞いていた。

 

「·············すまない、アウラ」

 

 非難の目を向けるアウラにフィルヴィスは何も言い返すことなく、ただ謝罪の言葉を口にする。

 

「············ですが、今だけはくだらない確執も因縁も捨てます」

 

「ディオニュソス様からことの経緯は聞いています。殺害された仲間たちの弔いであり、都市の存亡をかけた戦いというのなら同じファミリアの眷属と協力しない理由はありません」

 

確執も因縁も決して軽いものではないがより深く大切なものために今日ばかりは、というアウラの言葉にフィルヴィスは静かに目を見開く。

 

「アウラ··············」

 

「貴女もその同胞に縋ってないで精々その役目を果たしてください」

 

 目を丸くするフィルヴィスにアウラはフンと鼻を鳴らして顔を背けた。

 

「良かったですね、フィルヴィスさん」

 

「··················ああ」

 

 嫌味を交えながらも協力を申し出たアウラにレフィーヤが声をかける。そのレフィーヤにフィルヴィスは短く、だが確かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「·············すまない、アウラ」

 

 口の中で小さくそう呟いて、フィルヴィスは再び謝罪の言葉を口にしたがそれを聞き届けた者は誰もいなかった。

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

白髪「なんか遠くから聞こえてきた気が············」

 

 

【各ルート喧嘩っ早さ】

聖女アルちゃん(治せるからまず殴る、カーリー・ファミリアより殴るのが早い、単純に沸点が低い)≫≫≫ベル妹(闇のモンペ、精神攻撃も合わせてくる)>女帝(頭ヘラ・ファミリア、性格とたちの悪いアルフィア)≫アストレア(考えが足りない)>本編、聖女√>静穏(アルはアル)

 

各周年イベントにアルを放り込んだら

【グランド・デイ】

「オッタルに【レァ・ポイニクス】付与したらなんか終わったな」

【アルゴノゥト】

「あー鬱鬱」

リュールゥ「貴方は喜劇しか謳えない」

アルゴノゥト「僕は、笑うよ」

「クソが」

【アストレア・レコード】

記念話。

【アエデス・ウェスタ】

「どけヘスティア!!ヒロインは俺じゃ!!」

【ナイツ・オブ・フィアナ】

フィン「僕に夢を見せた責任をとってもらう」

「フィン、お前はただ前だけを睥睨して突き進め」

「────俺がお前の『槍』になってやる」

【ハルモニア】

「ベルがんばえー」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。