皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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ちょっと難産。


173話 フィン「そもそも懐にアルとオッタルが入ってきた時点で僕でも匙を投げるレベルで詰みだ」

 

 

 

 

「──────順調すぎる」

 

 超硬金属で覆われたクノッソスの通路を進みながらフィンは誰の耳にも届かない小さな呟きを漏らした。

 

五つの『鍵』と複製した『鍵』による強襲。

 

第一級冒険者を主軸とした六部隊によるクノッソス侵攻はこれ以上ない程にフィンの作戦通り進行している。

 

だが、だからこそフィンは違和感を感じていた。

 

あまりにも上手くいきすぎている、と。

 

ダイダロスの手記は押さえ、神と怪人に次ぐ重要人物であるバルカは討った。

 

もはや盤面における王手をかけつつあり、第一侵攻の成功はもはや約束されたと言ってもいい。

 

だが、それでもフィンはこの戦いに言いようのない不気味さを感じていた。

 

何かがおかしい。

 

どこかに見落としがあるのではないか。

 

そんな疑心を思考から振り払おうとするが、疑念はまるで雪のように降り積もっていく。

 

「(敵が僕たちの侵攻速度に対応できなかった────?)」

 

 そうであればそれに越したことはないがフィンの勘はそう楽観的に捉らえてはくれない。

 

既にバルカを筆頭とした闇派閥残党の幹部はあらかた掃討し、無尽蔵を思わせた極彩色のモンスターもそろそろ品切れなのかその数を減らしつつある。

 

各部隊の被害は軽微、死者に至っては一人のみ。

 

それを目の前で目にしたレフィーヤもこの戦いにおいては使い物にはならないだろうがそれでも損耗は第二級が二人、もはや盤面の趨勢には影響はない。

 

全ての下準備が功を奏し、フィンの描いた勝利の青写真はほぼ完璧に現実のものとなりつつある。

 

ロキ達がタナトスがいるであろう迷主の間までたどり着くのはあと僅か、それなのに敵の動きがあまりにも単純で鈍すぎる。

 

退路を確保している以上、精霊の分身が暴走したとしても囮用の魔石を使って撤退すれば第二侵攻で確実に終わらせられる。

 

精霊の分身を除いた闇派閥側の十分な戦力は仮面の怪人、エインのみ。

 

ステイタスでいえばアルやオッタルですら及ばない怪人が出張ってくれば第一級冒険者クラスが精々二、三人しかいない各部隊は確実に各個撃破される。

 

だが、それを行うことは闇派閥側にとってもリスクが大きすぎる。

 

エインを止められる戦力はアルとオッタルのみ。

 

それは逆もしかりでアルとオッタルを止められるのはエインしかいないだろう。

 

エインが他の部隊の殲滅に向かえばその間、Lv.8の前衛二人とLv.6の中衛というフィンが闇派閥側なら天を仰ぐほどの戦力が放置される。

 

「(そもそも懐にアルとオッタルが入ってきた時点で僕でも匙を投げるレベルで詰みだ)」

 

 自らの懐でアルとオッタルを放置するなぞフィンならばそんなこと絶対にできない、瞬く間に食い破られる。

 

無論、フィンとて闇派閥の全てを知っているわけではない。

 

しかし、それでもアルとオッタルを相手取れる戦力などそうはいないはず、仮にいるなら前回の戦いで出してこない理由がない。

 

故にこそ、エインは確実にアル達のもとに差し向けられる。

 

仮にアル達の対処を捨てるのであれば狙われた部隊は即撤退、アルには()()()()()

 

フィンが暗にタナトスへ突きつけた二者択一に対しての答えは双方にとっての安全手。

 

「(アルが怪人を抑え、その内にアルが『万能者』の複製した七つ目の『鍵』でオッタル達に全てを喰い破らせる)」

 

 アルがエインに勝てるかどうかは分からないが、少なくとも瞬殺されることは絶対にない。

 

「(それも、問題なくできている)」

 

 眼晶を通してアル達とエインが接敵し、アルがエインを抑えている間にオッタル達が離脱できたことも確認できた。

 

精霊の分身ではオッタルには勝てない。

 

59階層レベルの準備があってようやく五分、それがランクアップしたオッタルのステイタスを推察した上でのフィンの結論だ。

 

そして、その予想も正しい。

 

現状、フィンが把握している戦力でLv.8を上回るのはエイン唯一人のみ。

 

全てが先手、全てが最善手。

 

だと言うのに────

 

「(─────親指の疼きが止まらない)」

 

 体感では59階層の戦いを前にした時と同程度かそれ以上の警鐘がフィンの親指を疼かせる。

 

その疼きの意味はフィンにもわからない。

 

だが、それでもフィンは己の直感を疑わない。

 

それは冒険者の本能とも言うべき、生き足搔くために必要不可欠な危機察知能力だ。

 

その本能がフィンに告げるのだ。

 

戦いはこれからだと。

 

そして────

 

「─────! どうした『白妖の魔杖』」

 

 ────ドクン、と一際大きく親指が疼くと同時にフィンは己の直感の正しさを知る。

 

光を灯した眼晶が繋がる先はヘディンの持つ眼晶。

 

そこから伝わる情報は────

 

「─────────────オッタルが、負けた?」

 

 現在撤退中。接敵した怪人以上の脅威にオッタルが敗北したことを告げるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

立ちふさがる障害の全てを鎧袖一触で薙ぎ倒していく平均Lv.7以上という少数精鋭という言葉すら生温いほどの三人。

 

いくら戦力を向かわせようと時間稼ぎにすらならずに無駄死にさせるだけとタナトスが判断したのか、侵攻してから一定時間経ったあたりから自爆兵どころか極彩色のモンスターすら現れなくなってきている。

 

そんな中、無機質なクノッソスの通路に黒い濃霧のような魔力がどこからともなく漂い始める。

 

どす黒い鱗粉のような魔力はそれを発する『ナニカ』がこちらへと近づいているこちらへと近づいている証。

 

「この魔力は··················」

 

 オラリオにおいても限られた第一級冒険者であり、その精神力の総量においては間違いなくオラリオ全冒険者の内、三本の指に入るであろう白妖精の軍師は自らのそれを遥かに凌駕する魔力の奔流を感じ取ってその美貌を戦慄に染める。

 

直接相対していないにもかかわらず、その濃密な魔力だけでLv.7やLv.8なんて領域すら軽く逸脱した怪物であることを十二分に知らしめる。

 

オッタルですら驚愕に近い表情を浮かべる鬼気とでも形容すべき濃密な魔力の気配。

 

まるで、そこにいるだけで天変地異でも起きかねないかのようなあまりにも異質過ぎる魔力の津波。

 

それが通路の向こう側から、より濃密により身近に迫るのを感じる。

 

そして通路の曲がり角の先から現れたのは────

 

「··············来たか」

 

 迎えるようにアルが呟く。

 

そこにいたのは、一つの影。

 

深層の階層主も、漆黒のモンスターも、精霊の分身でさえ足元にも及ばない、そんな絶対的な死の気配を纏う漆黒の人型。

 

紫紺のローブを纏い、不気味な仮面で顔を隠すその姿からは種族はおろか性別すら伺えない。

 

そして手には一本の細剣。

 

刀身からは黒い粒子が絶えず零れ落ち、闇色の輝線となって宙に舞う。

 

そして何よりも、その身に纏う魔力はオッタルとヘディンが今までに見たどんな魔導士の魔力よりも禍々しく、そして強大だった。

 

二人に刻まれる納得と警戒。

 

確かにこの怪物であれば【ロキ・ファミリア】が遅れを取ったというのも納得できる、と。

 

『『猛者』に『白妖の魔杖』か·················()()()()

 

「「!!」」

 

 ぽつり、と何の感情も込められていない、ただの独り言にも思えるほどに小さな声だったが二人は自身の本能が最大の警鐘を鳴らすのを聞いた。

 

「【永伐せよ、不滅の雷将】!」

 

「【ヴァリアン・ヒルド】!!」

 

 エインの放つ言葉に最も早く動いたのは二人のLv.8ではなくヘディン。超短文詠唱からなる直撃すれば第一級冒険者ですら肉体を炭化させる雷砲を容赦なく放つ。

 

オッタルやアルであっても至近距離での直撃を無傷で耐えることは叶わないLv.6の砲撃にエインはただ───片腕を突き出し、その砲撃を真正面から受け止めた。

 

「なっ!?」

 

 以前に、赤髪の怪人レヴィスがレフィーヤの【アルクス・レイ】に対して行ったのと同様。怪人にのみ許された人外の芸当。

 

己の砲撃に対して行うエインの規格外にヘディンは眼鏡の奥で目を見開く。

 

『───────!!』

 

 ヘディンの驚愕とエインの反撃よりも早く次手を打ったのは二人の『覇者』。

 

地を揺らす巌の踏み込みと影を残す様な迅雷の歩法。第一級冒険者でも反応不可能の域にあるそれらを同時に放った神速の踏み込み。

 

二つの階位差もあって共に『女神の戦車』を凌駕する速度で以ってウダイオスを一撃で断つ覇撃が同時に二つ放たれるという理不尽。

 

下手を打てばエインとて断たれかねない必殺。漆黒の細剣が円を描いて両撃を弾くがエインとの間合いを潰す様に懐へと潜り込んだオッタルとアルがエインを挟撃する。

 

オッタルとアルが共闘するなんてことはありえない。

 

ただ、単純に個々が眼前の敵へ最適最良の一撃を放っただけ、それが奇しくもLv.8同士の連携として働いただけのこと。

 

『·············チッ』

 

 純粋なステイタスは二人を軽く凌駕するエインだが何気なく挟まれる他を圧倒する技と未来視じみた駆け引き、そして単純な二対一という構図がエインに舌打ちをさせた。

 

瞬撃、壊波、轟雷。必殺の類を絶妙なタイミングで放ってくるオッタルとアル。相手が一人ならば流せた攻撃も、二人同時に放たれているために片方を無視すればもう片方に隙を晒してしまう。

 

『煩わしい!!』

 

「貴様こそ口を閉じろ、妖異」

 

 しかもLv.8の前衛二人を盾に後衛に徹するヘディンの放つ雷が損傷を与えるには至らないがエインの動作を妨げている。

 

即席且つ不完全な連携ではあるものの、個々の練度故にエインが思わず悪態をつくほどには機能する。この時点で前回の、【ロキ・ファミリア】による総力戦よりも善戦していると言えるだろう。

 

互いの何気ない一挙手一投足が戦域を一変させ、余波のみで超硬金属の壁を砕く。一合打ち合うごとに石畳が弾け、二合斬り合うごとに空間が振動する。

 

エインの細剣とオッタルの大剣、アルの長剣が衝突すればそれだけで階層全体を激震させ、互いの必殺を鍔競り合う。

 

英雄の領域を踏破した超越者三人の戦いはLv.6のヘディンで漸く追い縋れ、中後衛に徹して放つ雷砲以外では介入する余地もないほどに苛烈を極めている。

 

余波だけで幾十の第二級冒険者を再起不能にし、ただの一撃でもまともに食らえば第一級冒険者でも確殺するほどの力を持った攻撃を立て続けに放ち、隙あらば大技を繰り出そうと虎視坦々と機を伺う二人を相手にしているのにもかかわらずエインは一切の傷を負わずにそれを悉く弾き返す。

 

『覇者』の二人が放つ戦技の数々はこの下界においては間違いなく必殺と断言できるほど。しかし魔力の竜鱗を纏うエインにとってはLv.8の一撃でもスキルや魔法の後押しを受けていない攻撃なぞ何ら痛痒にすらならない。

 

しかしそれでも戦況は均衡している。

 

この場において図抜けた存在であるエインをして戦局を変えるにはもう一手が足りない。互いに互いを補い合うLv.8の前衛二人に対して決定打となる攻撃を放つことができない。

 

────『絶対防御』。

 

────『絶対応対』。

 

最強の怪物足るエインは『耐久』や『魔力』は勿論のこと、オッタル以上の『力』とアル以上の『敏捷』すら兼ねそろえている。

 

その差を埋めているのは数の差と『技と駆け引き』。

 

『猛者』オッタルがゼウスとヘラの眷属に敗れ続けたその果てに開眼した武の真髄。寸分の狂いも許さないm(ミリン)単位での剣の操作と剣速、無駄のない力の配分と角度、重心移動により実現する文字通りの『絶対防御』。

 

『剣聖』アル・クラネル────というよりもそのスキルである【闘争本能】がオッタルの『絶対防御』を元に身体に刻み込んだ対暗殺ではなく戦闘に比重を置いた自動迎撃、『絶対応対』。

 

エインとて二大派閥の第一級冒険者を凌駕するだけの『技と駆け引き』を身につけているが今はそれを発揮しきれていない。

 

二者共に手傷はあれど、それを意識させないほどには傷らしい傷を負っていない。

 

前回、エインとの初戦時と総戦力という意味では然程変わらないがオッタルというヒリュテ姉妹やベートを数段上回る都市最強の前衛と個としての力は及ばないが中衛として規格外の前衛二人の合間を縫う砲撃を撃ち込んで間を潰すヘディンは黒風を纏うアイズや全癒魔法による支援を行うアミッドの代わりを十二分に務めている。

 

故にこその拮抗。

 

───────ではない、とアルは心の中で断ずる。

 

「(純粋に前回より弱いな)」

 

 前回より確実に弱い。ステイタス自体はむしろ向上しているが肝心の『技と駆け引き』、そして狂気が足りていない。

 

少なくとも外的要因によるものではなさそうだが、とアルは冷静に分析する。

 

ベヒーモスの災毒も活かせていないし、何より攻撃に苛烈さがない。『技と駆け引き』も精々がLv.5の第一級冒険者と同程度といったところだろう。

 

────今のエインは万全ではない。

 

肉体面及び魔力面で言えば幾分の消耗もないがその精神面。

 

レフィーヤの前で妖精としての片割れが死んで分身の魔法が強制解除されてから直ぐにアルがいるところまでの最短ルートを身体能力に物を言わせて駆け抜けてきたエイン。

 

その時間差は精々が十数分。

 

一度、死を体感してからたったの十数分。

 

肉体の損耗や魔力の欠乏は緑肉を介した穢れた精霊から供給で瞬く間に補填されるがその心が半分欠けたような状態は時間経過でしか癒えることはない。

 

むしろ、その心に空いた孔を埋める為、無意識にアルのもとまで最短ルートを駆けてやって来たのだろう。

 

「レヴィスの魔石喰う前より弱くなってどうする」

 

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ』

 

 雷閃が舞い、剣風が渦巻く。それでも互いに致命の一撃を放つことができない膠着状態に業を煮やしたエインが遂に動く。

 

『───────』

 

 エインは細剣でアルと打ち合いながらも空いた左手をオッタルへと向ける。その掌に禍々しい魔力が集まり始めると同時に、エインを中心に闇色の濃霧のような魔力がより濃く漂い始める。

 

凄絶なる魔力の発露。第一級冒険者ですら肌に粟を生じさせる濃密なる闇色の魔力がまるで津波のようにオッタルを飲み込まんと迫る。

 

「【一掃せよ、破邪の聖杖】」

 

 エインの仮面の奥で詠唱が紡がれた。魔道具によりその内容こそ聞き取れないが種別は超短文詠唱、故に阻害は不可能。

 

漆黒の魔力がエインの手に集束し、魔法陣を展開する。全てを黒に染めるかのような闇の波動が通路に荒れ狂う。

 

アルの言葉に逆立てるようにして放たれる人界に赦された領域を超えた必殺の魔法。

 

自身すら一撃で沈めうる闇色の魔力光にオッタルは───────動かない。

 

それどころか、大剣をその身の前に突き立てると衝撃に備えたかのように攻撃の姿勢をとる。

 

「は─────」

 

 『絶対防御』を自ら解いたオッタルの姿にあっけに取られたかのような声を漏らしたのはアルか、ヘディンか、或いはその両方。

 

『絶対防御』を解くまでは良い。エインが今より放つ一撃は防御なぞ無意味とばかりに全てを穿つ滅命の魔力。

 

防御より回避。むしろそれ以外には即死を逃れる手はないとヘディンは判断する。

 

自分でも回避はともかく防御は無理だとアルも判断する。

 

しかし、オッタルが選んだのは回避でも防御でもなく───()()

 

「【銀月の慈悲、黄金の原野】───」

 

 無骨な音色。エインの禍々しいそれとは違う彩のない英雄の詩がオッタルの口から紡がれ始める。同時に、オッタルの大剣がエインの漆黒と相反する黄金色の光を帯び始める。

 

「【この身は戦の猛猪を拝命せし】」

 

 黄金猪の毛皮。

 

魔法に想像される火や冷気を吐く砲撃ではなく、雷や風を防ぐ防壁でもない。

 

付与魔法ですらないその黄金の輝きはただただオッタルの剣の一撃の威力を跳ね上げるだけの強化魔法。

 

「【駆け抜けよ、女神の神意を乗せて】」

 

 Lv.8へとランクアップして初めて使われる唯一の詠唱にして初めての『斬光』。

 

「【ディオ・テュルソス】」 

 

「【ヒルディス・ヴィーニ】」

 

 完成する二つの魔法。生じる二つの光輝。

 

邪魔者を先んじて消そうと決めたエインの滅雷とオッタルの距離を殺す斬撃が正面から衝突し、閃光と轟音が空間をつんざく。

 

アルの【サンダーボルト】とヘディンの【ヴァリアン・ヒルド】を優に凌駕する黒雷の極閃。

 

超短文詠唱でありながら最硬精錬金属すら融解させうるその黒雷の威力の丈は下界の民が放つものとしては最上。

 

【ヘル・フィネガス】を発動させたフィンや【復讐姫】の黒風を纏ったアイズはおろか、アルですら回避を選び続けてきた最凶の砲撃に初めて正面切って迎撃し、その身を晒して斬撃を繰り出したオッタル。

 

Lv.9を逸脱した怪物の魔法とLv.8の魔法。

 

ほんの刹那も許さず、漆黒の雷光が黄金の輝きを塗り潰すように飲み込む。

 

閃光の余波に目を細めていたアルとヘディンはその黒光の中にオッタルが飲み込まれるのを確かに見た。

 

しかし。

 

「「『──────!!』」」

 

 重なる三つの驚愕。必殺の雷閃を正面から迎え撃ったオッタルは、その身に纏った黄金の光によって黒い極光を切り裂けぬと悟ると振り下ろした剣を跳ね上げた。

 

単発の砲撃魔法にない『連撃』。どこまで行っても斬撃でしかないからこその強み。

 

斬撃で以って砲撃をかち上げた。

 

まっすぐに全てを貫通する黒雷の進路がオッタルから僅かに上へと転じ、超硬金属の壁を貫いてどこぞへと消えていく。

 

「────なるほど」

 

 無論、無傷ではない。黄金光の残滓を撒き散らす黒大剣を握る両腕からは肉が焼ける臭いと煙が立ち上っている。

 

逆に言ってしまえばその程度。

 

階位にして二段近い差を持つ相手の砲撃を正面から防いでおいてその程度の負傷で済んでいる無体。

 

オッタルの規格外の膂力とそれに見劣りしない剣技、そして英雄の器であると断ずるに相応しい精神力が成せる偉業にアルは思わず失笑を漏らす。

 

極限まで練磨し、極まりきった武というものはこれほどまでに領域を踏み越えるものなのか、と。

 

『─────っ、だからどうした!!』

 

 だが結局、打ち勝ったのがエインなのには変わりない。

 

一撃で仕留められぬというのであれば連発すればいいだけの話。オッタルさえ倒れればヘディンを討つ事は容易い。

 

後はアルと一対一を演じれば良いだけの話。

 

その考えに間違いはない。

 

だが、これまで誰一人として選ばなかったオッタルの行動に意識を傾けていたからこそ───静かに鳴る鐘の音色に気がつけなかった。

 

「炎域」

 

 十数秒足らずのチャージを【レァ・ポイニクス】の火衣に装填した魔力で成したのは紅蓮のカーテン。

 

アルとエイン、オッタルとヘディンを分かつように灼熱の壁が形作られ、エインの放った滅雷の残滓はそのカーテンに焼き尽くされて霧散する。

 

エインが最初からアルだけを見据えて戦っていたのと同じようにアルもエインとの一騎打ちを望んでいた。

 

とはいえ、激戦の果てにオッタルやヘディンが下されてからの決戦では困る。

 

オッタル達の役割はエインの相手をしているアルの代わりにクノッソスを踏破し、おそらくあるであろう怪人級の脅威を抑え込むこと。

 

その為だけにわざわざアスフィの造った『鍵』を元に急造の『鍵』を自分用にもう一個造ったのだ。

 

『クラネル、お前、最初から────』

 

「前回は精霊の分身に邪魔されたんでね」

 

 紅蓮の壁の先にあるオッタル達の気配が遠ざかっていく。元々、エインの相手はアルだけでするというのが事前の取り決めだ。

 

「じゃあ、改めてやろうか」

 

『·····················あぁ!!』

 

 先ほどまでとは打って変わったどこか狂熱さすら感じさせるエインの雰囲気。それを敏感に感じ取ったアルは、不壊剣を握り直すと微かに重心を落とした。

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

一応、伏線的なのはちらっとだしてるやつです。

 

闇派閥の皆様「『白妖の魔杖』に支援された『猛者』と『剣聖』??」

フィン「うん、僕なら匙を投げてる」

タナトス「エインちゃんは止めてたけど切り札出しちゃお」

エニュオ、フィン「「·············えっ」」

 

エイン「意識が定まらない」フラフラ~

白髪「せめて目覚ましてから来いよ」

 

 

【各√フィルヴィスに対する反応】

本編「スーーーーーッ」

聖女√「まぁ、なんだ、悪かったな、メンゴ」

アストレア「はぁ········」

女帝「あらあらまぁまぁ」

静穏「────英雄となれ(素)」

聖女アルちゃん「魔石砕いた瞬間に魔法をかけたらワンチャンないかな」

 

 

 






総合評価50000突破ありがとうございます!!

リュー関係の内容の修正は1月26日から始める予定ですのでもし必要な方はそれまでにPDF等で現状の保存をなさってください。
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