皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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ちょっと難産





178話 それは、よかったな。俺はもう飽きてきた

 

 

「ぐあっぁぁっ!? 」

 

 精霊の分身の捕捉を主目的に侵攻を続けるアイズとベート率いる部隊はこれと言った強敵と遭遇することもなく快進撃を続けてきた。

 

しかし、それでも全員が無傷とは行かず、奇襲する闇派閥の雑兵に不意を討たれた団員が呪詛の刃を貰ってしまい、その痛痒と止まらない血に蹲る。

 

専用の解呪薬の他にはアミッドかアルの魔法でないと癒せない不治の呪詛。

 

そこに。

 

「【集まれ、星の息吹、月の恵み】」

 

 静かな詠唱の調べ。その魔力光は月を思わせる蒼。蒼光の粒が翳された団員を包み込む。

 

「【生まれし傷よ、忘れるな。癒えぬ痛みなどないことを】」

 

 Lv.2のヒーラーであるリーネの歌が清浄なる月の光を伴って舞う。決して派手ではない、支える者の魔法。Lv.2の魔力から紡がれるのは癒しの願い。

 

「【平穏を貴方に、安らぎをここに。私は貴方を───癒したい】」

 

 『聖女』と『剣聖』の聖なる奇跡の権能には及ばぬとしても、その力は確実に呪詛を癒し、傷を塞ぐ。

 

「【────ルナ・サーナティオ】!!」  

 

 傷を遠ざけ、死を遠のける月光の雫。その輝きが翳り消えていく頃には呪詛に冒されていた団員の傷は完全に癒えていた。

 

「すごい、アミッドとアルしか治せなかった呪詛を···········!!」

 

 完全に塞がれた傷にアイズが瞠目する。一度呪詛で深い傷を負って生還したリーネは不治の呪詛に抗う一種の抗体をその身に有している。

 

アミッドとの訓練で新たに得た力を完全にものにした今、リーネは部隊を支える柱としてその力を存分に振るっていた。

 

呪詛による傷を癒された団員が立ち上がり、再び武器を構える。

 

「進んでください!皆さんの呪いも、傷も、全部私が癒します。だから、ベートさん! 貴方が救ってくれたこの命はもう雑魚じゃありません!!」

 

「··············はッ、傷塞ぐ程度で粋がってんじゃねぇぞ!!」

 

 リーネの毅然な言葉にベートが獰猛に吐き捨てる。『弱者の咆哮』、自らの惰弱を嫌い、殻を破らんとする者の咆哮に僅かに口角を吊り上げる。

 

『こちら側』へと来た者への小さな称賛と嘲笑を浮かべて駆け出すベートにリーネ達が追随する。

 

 

「死ぬ気でついてこい、ヘバッたら置いていくからなぁ!! ───癒せるもんなら癒して見やがれ!!」

 

「はいっ」

 

 ベートの鼓舞にリーネは力強く頷いた。

 

 

 

───その時、世界が啼いた。

 

『ガ、ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア────ッ!!』

 

「「「────っっ!?」」」

  

 リーネやアキ、ベートですら地を揺るがす果てしない衝撃の丈に体勢をぐらつかせ、戦慄に顔を強張らせる。

 

クノッソスはおろか、隣り合うダンジョンや地上の都市までを激震させる次元を異にする暴威。

 

「なにこれ、地震ッ!?」

 

「違げぇ!! これは『咆哮(ハウル)』っ───!!」

 

 動揺するアキ達にベートが即座に否定する。天災にも錯覚する衝撃の源を第一級冒険者の獣人としての勘が正しく認識する。

 

咆哮、そう、それは獣が放つ咆哮だ。

 

しかし、その規模は桁が違う。ゴライアスや深層域の竜種すら比較にならない丈に戦慄する。

 

「(あの黒いミノタウルスよりも────)」

 

 アイズも地を揺るがす咆哮に額に冷や汗を浮かべながら驚愕する。

 

クノッソス、ダンジョン、オラリオ、その全ての存在が一様にその咆哮に反応した。その咆哮はクノッソス全域、そしてオラリオ全域に響き渡り、都市を激震させる。

 

それはまるで、世界そのものが啼いているかのよう。

 

「クソがッ、()で何が起きていやがる!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

階層主の一撃すら比較にもならないほどの圧倒的な衝撃。

 

オッタルの防御を容易く打ち砕き、その肉体を蹂躙し、骨肉を砕く一撃は間違いなくLv.8の第一級冒険者の命を刈り取るに十分な威力を持っていた。

 

レオンやフィンと言ったごく一握りの強者ですらまともに受ければ即座な死は避けられない。

 

だが、『頂天(オッタル)』。

 

魔法による拘束によって不完全となった『絶対防御』。

 

生死を分ける窮地においてオッタルを救ったのは身体に染み付いた『技と駆け引き』。一瞬の間に片腕のみを拘束から解き、防御に回せたことがオッタルの命を繫いだ。

 

「───────────···············································································································································································································································がぁっ」

 

 だが、片腕以外の四肢を封じられた状態での不完全な防御で凌ぎきれる程オッタルを喰らわんとする暴虐の嵐は甘くはない。

 

即死は免れようとも致命には十分な衝撃、骨肉を深く抉り取る一撃に血潮が舞い散る。

 

肉が裂け、神経が断裂し、骨が砕き尽くされる。血と臓物が零れ落ち、人造迷宮の地面を紅く染め上げる。

 

己の骨肉が奏でる悲惨な協奏曲を他人事の様に耳にするオッタルは瀕死の呻吟を上げる。

 

揺れる視界、掠れる聴覚、乱れる呼吸、消えかける意識。

 

そして、身に刻まれた損傷以上にオッタルの命を瀕する『亜種(ベヒーモス)』の災毒の猛威。

 

まだ流れ出る血に染まっていない肌に赤黒い斑点が浮かび上がると、オッタルの身体を蝕む様にその斑点が広がっていく。

 

秒を要さない毒の侵食、オッタルの身体を喰らわんとする猛毒の侵食に黄色い泡を口から零す。

 

血がどす黒く濁り、肉が腐る様に崩れ落ち、臓腑が溶け落ちる。

 

痛み、苦しみ、熱、寒、鼓動が次第に弱まり、体温が消えていく。

 

「───·········が、はっ」

 

 苦痛に身悶えする間もなく倒れ伏すオッタルの頭上に巨大な影が落ちる。

 

その影の正体は、オッタルの命を刈り取る為に振り上げられた巨獣の豪脚。

 

己の一撃を受けておきながら未だ命の灯火が潰えていないオッタルに止めを刺さんと、その脚を振り落とす。

 

「ちィ───」

 

 踏み潰される寸前、雷鳴の如く駆け寄ったヘディンが危機一髪オッタルの身体を抱えて離脱する。

 

踏み下ろされた脚が地面と衝突し、その衝撃は迷宮の床を砕き散らす。 

 

砕けた床の破片が雨の様に降り注ぎ、暴風の如く巻き起こる砂塵が視界を覆い隠す。

 

「が、ぁ────っ」

 

 だが、その代償にオッタルを抱えたヘディンの左腕に『亜種(ベヒーモス)』の蹄が掠める。

 

その一撃はLv.8の英雄を沈める破撃、直撃ではないとはいえ容易く筋繊維を断ち、骨を粉砕し、神経を引き千切る。

 

その激痛にヘディンは噛み殺せぬ苦悶の声を上げるも決して腕の中のオッタルを離さず、砂塵の中から離脱する。

 

微量とはいえ刻まれた毒、その猛威にヘディンの意識は蝕まれ、左腕はまともに動かない。

 

自分一人では絶対に勝てない『亜種(ベヒーモス)』に背を向けて広間の出口へと駆け出す。

 

その判断に間違いはない。

 

オッタルが沈んだ今、Lv.6の自分でははあの災獣を仕留めることは不可能。

 

ならば今は逃げるしかない。  

 

「·······································································()()()

 

 無様な敗走の屈辱にヘディンは唇を噛み締める。玲瓏たる美貌は瞋恚の火に歪み、血と汗で汚れる。

 

だが、今はその屈辱を甘んじて受け入れるしかない。

 

感情の激震によって眼鏡を剥ぎ取ろうとする右腕を意思の力で止め、怒りに浸りそうな思考を切り替えた。

 

 

 

 

『──────────』

 

 自身に背を向けて逃げ出す二人の冒険者をその二つの瞳で視る。己の命に刃を立て、恐怖を刻んだ冒険者達。

 

己が命を狙った冒険者達の背中を視て、その双眸に宿るのは憤怒か、それとも愉悦か。

 

それは誰にもわからない。だが、一つだけ確かなことはその背を視た『亜種(ベヒーモス)』は激した。

 

自らに恐怖を与えておいて自身の危機に逃げることなぞ罷りならないと、その激情を糧に再びその脚を踏み出す。

 

憤激に駆り立てられた脚が床を砕き、豪脚を振り上げる。その勢いは先程よりも速く、そして力強い。

 

『ガ、ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア────ッ!!』

 

 二人を追う『亜種(ベヒーモス)』は猛り狂う激情のままに『咆哮(ハウル)』を上げる。

 

地を揺さぶる大咆哮、その咆哮に込められた怒りの感情、そして殺意。物理的破壊力すら孕んだ鼓膜を震わす轟音がクノッソス全体を震撼させる。

 

大音量の咆哮は衝撃波となって迷宮の壁を破壊し、天井から崩落した瓦礫が砂塵の様に降り注ぐ。

 

『大いなる獣』の系譜たる災獣はただその脚を踏み出すだけでクノッソスの環境を一変させる。

 

神の送還も、精霊の六円環も待つことなく端的に全てを粉砕する災いが解き放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

炎が、氷が、雷が、光が、闇が、ありとあらゆる属性の火砲が無作為に、無秩序に、あるいは巧緻極まる芸術的な軌道を描いてアルへ殺到する。

 

その全てが音速を超えて着弾し、炸裂した炎が風を巻き込み灼熱の嵐となりて荒れ狂う。熱波が身を焼き、薙ぎ払うような暴風が皮膚を裂き、引き千切らんばかりの豪雨が襲う。

 

「『────ぁ、ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』」

 

 穢れた精霊の狂啼と悲鳴。

 

撃ち出された炎は火球となりてアルの全身に殺到し、着弾と同時に爆散して更に炎を撒き散らす。

 

水圧によって打ち付けられた巨岩さながらに襲いかかる氷塊が生み出す絶対零度の冷気が瞬間的に巨大な氷の棺となってその肉体を呑み込む。

 

生み出された雷光で以って大気を灼き焦がすほどの電撃を浴びせかけられ、そこに生まれた光粒が姿なき刃となって渦巻き切り廻る。

 

荒れ狂う嵐を体現する闇刃の牢獄が爆炎に煽られてより渦を巻き、空を魔力を斬り裂いては新たなる爆炎を生み出し、その熱波と魔力の牢獄の中に無数の光条が煌めく。

 

詠唱を介さずに空間から生み出された無数の光弾が雨霰と降り注ぐ。音速を遥かに上回る速度で以ってして飛来する光弾の一発一発は、その威力もさることながら着弾と同時に爆裂し、炸裂した魔力の衝撃によってアルを呑み込み、押し潰す。

 

無秩序に放たれる魔法の嵐はアルの周囲のみならず広間全体にまで及び、もはや砲撃魔法による絨毯爆撃と言っても過言ではない。

 

だが、しかし。

 

「学ばないな、妖異。何度俺に魔法を無駄撃ちすれば気が済む? 精霊とは妖精以上の魔法種族(マジックユーザー)ではなかったのか、三下」

 

 その全てが剣の結界によって阻まれる。前後左右、そして上下から、四方八方から放たれるありとあらゆる魔法攻撃の悉くをアル・クラネルという剣士は完璧に防ぎ切る。

 

防ぐのみならず、その一つ一つを斬撃によって打ち払うことで威力を殺しつつもその余波を技による力の方向転換で以ってしてエインへと攻撃を返すのだからたまらない。

 

攻守を兼ね揃える防御術は全ての魔法を相殺し、今も絶えずにエインの肉体を苛み続ける。

 

「『イタイ痛イ痛イイタイ痛イ痛イアアアアアァァァアア!?』」

 

「それは、よかったな。俺はもう飽きてきた」

 

 苦しむエインを庇うように緑肉が砲撃を次々に撃ち放つ。それらを当然のように打ち落とし、或いは魔素に分解して回収しながらアルは再度剣を振るう。

 

剣閃が迸る度にエインの悲鳴と絶叫が上がる。それはもはやどちらが怪物なのかわからないほどに、一方的な光景。

 

『技と駆け引き』の欠落。

 

或いはエインが穢れた精霊にその身体を乗っ取られておらず、本来の『技と駆け引き』を振るえる状態であればその奥義を破れたかもしれない。

 

しかし、それを知る術はないし知る必要もない。今のエインは確かに怪人としてのエインよりも強大な存在かもしれないが稚拙な悪意と莫大なだけの力を振るう『怪物』でしかない。

 

欠損すら瞬く間に癒す怪人の不死身のような治癒能力は秒を刻むごとに削がれていき、その肉体は少しずつ癒える間もなく斬り刻まれ続ける。

 

怪物と人類の異種混成故の不死性も、穢れた精霊との接続による魔素の供給も一見は無尽に思えるが下界の存在である以上は無限ではない。

 

少しずつ、ほんの少しずつだがエインの肉体を修復する力が足りなくなっている。

 

その身に刻まれる剣速はエインの肉体が癒える速度を上回り、再生する端から斬り刻まれていく。

 

領域を満たす穢れた精霊の魔力もアルの斬撃によって散らされ、奪われ続けている。

 

剣閃が奔る。

 

ただそれだけで周囲に蔓延する魔力の統一は乱され、不死鳥の火によって浄化されていく。

 

穢れた精霊にとって唯一の生命線である魔力を一方的に搾取され続けるという拷問めいた攻撃の前にエインの不死性と魔力はその力を減らしていく。

 

「『しぁァアアアアアアア──!!』」

 

 もはや精霊の魔法では傷一つつけられないとようやく学んだのか、Lv.9の域を脱した身体能力でもって剣の結界を力強く打ち据える。

 

だが、その程度ではアルの斬撃を阻むには足りない。剣閃が奔り、エインの肉体に無数の裂傷と火傷痕が刻まれていく。

 

再生する端から斬り刻まれるのだからそれは当然の結果であり、しかしエインもそれを黙って受け入れるほど愚かではない。

 

エインの全身から血飛沫が上がる中、その傷口が泡立ち、瞬く間に癒えていく。

 

そして同時にその体表に新たな肉鎧が形成されていく。エインの魔力と穢れた精霊の力がさらに強く癒着し、その力をもってして以ってその肉鎧を形作って行く。

 

剣幕によって肉鎧が斬り消されるまでの暇にアルヘ肉薄し、その肉を断たんと刃が閃く。

 

穢れた精霊に乗っ取られてからろくに使われなかった覇獣の細黒剣(ベヒーモスの黒剣)をエインは旋風の如し連撃を放つ。

 

極まった身体能力に優れた魔力が掛け合わされることでその剣速は常軌を逸したものへと昇華され、振るわれる度に衝撃波と風圧が巻き起こる。

 

嵐のように荒れ狂う連撃でありながらもそれは確実にアルの命を刈り取らんと迫り来るが、それを阻んだのもまた剣閃だった。

 

するり、と必殺を誇る怪物の轟撃を()()()

 

力の方向を逸らされ、その勢いのままにエインはたたらを踏む。そこへアルの斬撃が奔る。エインも咄嗟に剣で防ぐが、その防御ごと斬り刻まれる。

 

それでもエインに動揺はない。即座に肉鎧を再生し、再度攻撃に移る。

 

だが、当たらない。

 

掠りも、しない。

 

速度も膂力も勝っているにもかかわらず、その全てが躱される。

 

「『ナンデっ、ナンデっ!? なんで、なんで、どうしてっ!?』」

 

()()()()()

 

 宝の持ち腐れだな、とアルは吐き捨てると呪剣を納刀し、空いた腕を閃かせる。

 

「『ァ、え···········!?』」

 

 技を以ってエインの手から覇獣の細黒剣(ベヒーモスの黒剣)を掠め取る。

 

不壊剣を持つ片腕で【剣域】を維持しながらの早技。エインが認識することすら許さず、一瞬の内に細剣を奪い取っていた。

 

「────あぁ、なるほど。そういう剣か」

 

 瞬時、流れ込む多大なる呪詛と怪物との異種混成でなければ耐えられない災毒。

 

英雄ならざる者が握ればその瞬間に血泡と砕けるであろう禍々しき剣の呪いと毒。

 

そして、それを塗りつぶすほどの膨大な魔力と戦意の奔流。

 

アル・クラネルという剣士は、災いをその身に宿す呪剣に狂わされることなくむしろその全てを力として捻じ伏せ、理解した。

 

瞬時、集う紫紺の魔力光。59階層の戦いでレヴィスが使おうとして他ならぬアルに発動を妨げられた武装の限界突破(リミット・オフ)

 

その効果は『陸の王者(ベヒーモス)』の脅威の象徴である災毒の風、その再現。

 

「剣とはこのように振るう」

 

 ゼウスの系譜たる『剣聖』の手にあってその『大いなる獣』の残片は剣として再誕して以来、最高最大の輝きを宿す。

 

一時、剣の結界が消える。

 

そして。

 

「『ひィ─────』」

 

 この戦い始まって最大の一撃の予感に穢れた精霊が怯えの悲鳴を上げる。

 

迫り来る断頭の刃。暴風を纏う斬撃は剣閃そのものすら斬線の軌跡と化す。

 

そのあまりの鋭さにエインは反射的に背後へ跳び退るが、もはや遅い。

 

全てを断ち切らんとする一撃を前にエインの直感が警鐘を鳴らすもそれはあまりにも遅すぎる。

 

瞬間、世界の音が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

さーて、どうしよ。

 

久しぶりにちょっと本気出して戦ってみたけど全然こいつ戻らねぇ。 

 

手元が狂って殺さないように加減してるとは言え、そろそろ半分は削ったはずなんだが参ったな··················。

 

魔法と再生封殺してある程度削ればどうにかなるだろうと踏んでたんだがこれもしかしなくてもエインが死ぬまで器乗っ取るつもりか?

 

こういう類は大抵本体のダメージのフィードバックがいくもんだとばかり思ってたけどそういうわけじゃねえのかな?

 

これが魅了とか神経支配とかなら【レァ・ポイニクス】で一瞬なんだけど苔の巨人の『種子』みたいに原因の魔石をどうにかしないと無理なタイプかー。

 

さすがに今の段階で魔石は砕けないし、かと言ってこのままやってたらエインの器が先に限界迎えそうなんだよなぁ。

 

どうすっかなぁ。

 

·······················ここで使うか?

 

いや、だが、まだ·······················。

 

·································ん?

 

『ガ、ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア────ッ!!』

 

 っ、なんだ、これは、モンスターの『咆哮(ハウル)』か?

 

いやいや、クノッソス全体が揺れるとかどんな規模だよ。

 

もしかして、この『咆哮(ハウル)』の原因があの時の勘の──────。

 

『──アル!! 聞こえるか!!』

 

『! フィンか、どうした』

 

『この『咆哮(ハウル)』の発生階層は君のいる十二階層の一つ上、十一階層。─────っ、オッタルが敗れた!! 君も可能ならば撤退しろ!!』

 

························································································································································································································································································································································································あ゛ぁ?

 

誰がなんだって?

 

オッタルがなんつった?

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

アルの奥義の内、三つは対オッタル用の技だよ。

 

対猪奥義第一号にして普通に通用しなかった【剣域】はカスダメ重ねる技なので再生能力持ちの怪人には本来使うべき技じゃないです。

 

前々から言っているようにアルの本領は単騎でこそ発揮されるものなので戦い方的にはロキ・ファミリアよりフレイヤ・ファミリア向きです。

 

・ベヒーモスの剣の没要素

祝詞文:【蠢動しろ、陸の王者。その息吹(わざわい)を以って万物(すべて)を呑み干せ】」 

 

限界突破の際の祝詞。炎の鷲のエルグス・パンドラみたいな。天授物でも神創武器でもないので没。

 

 

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