皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
「私は、アルの─────貴方だけの『英雄』になりたい」
直接、その想いをアルへ言ったのは決意表明のようなものだった。
英雄に焦がれ、その背中だけを追いかけて、それなのに一度は逃げ出してしまっていたような私が口にするにはあまりにも烏滸がましい願いだ。
でも、もう逃げないと決めた。
私にとって英雄とは、物語の中にしかいない存在だ。現実には助けてくれる英雄なんているわけがない。
それをわかっていたからこそ、私は自分の手で剣を取ることを決めたのだ。
英雄はいつまでたっても現れない。だから私は自分で剣を執って戦い続けた、そしてそんな私の前に現れた英雄がアルだった。
アルは『英雄』で『救う者』で『助ける者』だ。
そこに疑いはなく、アルに救われて助けられてきた人はオラリオ内外に数多くいることだろう。
この地上で最も最後の英雄に近いという意味でも、その眩いまでの輝きを放つその在り方でも。
きっと私の知らないところでもアルは数多の『誰か』に手を差し伸べてきたのだろう。
そしてこれからもアルはきっとその足を止めることはない。
望む望まないに関係なくアルは視界全ての者を救ってしまう。
そして。
──────アルを救う『英雄』はまだ現れない。
絶対的な救う側であるが故にアルに助けを求める者はいてもアルを助けようとする者はいない。
或いはそれは『英雄』と呼ばれる者について回る宿痾なのかもしれない。英雄は救う者であって、救われるべき存在ではないから。
でも、そんなのは嫌だ。
私は、その孤高を払いたい。
だから、私がなるんだ。
アルは強い、物理的な実力の話だけではなくその精神性や在り方までもが。
私には眩しくて、羨ましくて、焦がれてしまうほどに強く気高い。
他者からの助けなんていらないとアルは言うかもしれなくて、これはただの私の我儘なのかもしれない。
心身ともに自分よりも弱い私なんてアルにとって煩わしいだけなのかもしれない。
でも、それでも、私はアルの助けになりたい。
だって、アルは独りで背負いすぎだから。
私なんかが何を言ったところできっとその歩みを止めることはできないのだろう。
けれど、だからこそ、私が貴方の側にいる意味を見出したい。
これはきっと私の傲慢で自惚れだ。けれどその願いを胸に抱いて私は戦い続けると決めた。
だから、これは決意表明であり宣言だ。
アルの唯一になりたいと願う私の想いの丈を形にして伝えるための誓いだ。
アルに伝え、自身の想いを確かめるように私はその決意を口にする。
「俺の『英雄』、ね」
私の急な言葉にアルは静かだった。その紅い瞳にどんな感情が込められているのか、私にはわからない。
世界から音が失われたかのような錯覚を覚えるほどの静寂が私たちの間に流れる。
沈黙が痛く、羞恥のような感情が湧いてきて逃げ出したくなるが、グッと堪える。
そのままアルとの音のない十数秒、その長いようで短い時間はようやく終わりを告げる。
小さな吐息と共に、いつもの調子でアルが口を開いたからだ。
────けれど。
アルの言葉が音となるよりも先に場の空気が静かで穏やかなものから戦場のそれへと変わる。
その変化を敏感に察知した私はすぐに思考を切り替えた。
少しばかり名残惜しいがこの肌を刺すような空気は無視できるものではない。見ればアルも既に剣の柄に手を置いている。
その空気の発生源はすぐにわかった。
前方からこちらへ歩いてくる大きな人影。
走っているわけでも武器を手にしているわけでもないのに周りの人間が自然と道を開ける。
まるでその歩みを邪魔すること、いや、その視界に入るすら恐れ多いとばかりに。
一つの生物としての段階が違うと思わせるような存在感を放つのは背に身の丈ほどの大剣を背負う二メドルを超える巨躯の猪人。
武人という言葉を体現する鋼のような鍛え上げられた肉体、巌のような顔、そして何よりその存在感を一際強く放つ錆色の瞳。
「『猛者』···················!!」
自然と私の口から喘ぐようにその名が漏れる。
【フレイヤ・ファミリア】が首魁、『猛者』オッタル。フィン、リヴェリア、ガレス、【ロキ・ファミリア】が誇る三頭領を凌駕するLv.8の冒険者であり、オラリオ────否、下界最強の眷属。
男神ゼウスと女神ヘラの壁を、千年の最強を塗り替えた正真正銘の英雄であり、アルという才禍が唯一まだ越えていない人界最強の存在。
その瞳にあるのはいつもの武人然とした色ではない。
息も詰まるような緊張感が辺りに満ちていくのを私は肌で感じとる。その空気に当てられたのか周囲の人々も息を呑むようにその姿を見ている。
その瞳にあるのは赤い戦意と誰に向けられているものかわからない瞋恚の炎。
『猛者』は私など視界の片隅にも収めていない。
視線の向かう先、その先にいるのは───────アルだ。
常人であれば、否、名のある冒険者であっても萎縮せざるを得ないその視線を正面から受けながらもアルは平然としている。
それどころか、まるで呆れているかのようなため息を吐いた。
一瞬の静寂の後、口を開いたのは『猛者』だ。
その声は固く静かなものだ。
それは覚悟。全てを断ち切らんとする凄烈なる覚悟を込めた刃そのもののような声音で彼は言った。
「死合うぞ、『剣聖』」
短く、そして重い言葉。
その言葉に込められた意志の熱はこちらまで届いてくる。
その一言で、察した。
『猛者』がクノッソスへの一次侵攻でアルがそうだったように死にかけたことは私も知っている。
だから、きっと。
このオラリオで誰よりもアルの強さを、その真価を知るが故に彼は今こうして私の前でアルとの果たし合いを望んでいる。
Lv.8という高みに至りながらなお上を目指すために。敗北を拭い、勝利を渇望するがゆえの『儀式』。
今のオラリオが戴く『真の最強』を作り出すための儀式。
自分自身、かつての最強に並び得る、否、越えうる英雄になるために彼は今ここに立っているのだろう。
互いを高め合う鍛錬をするにしても『猛者』の相手はアルにしかできないし、アルにとってもそれは同じことだろう。
私では悔しいがアルの戦いの糧にすらなれはしない。
だからこそ、邪魔はできない。
これからの戦いのためにも、アルが更に強くなるためにも。
私にそれを邪魔することは許されない。
「······································································································アル、私は先にホームに戻ってるから」
話の続きができないことは残念だけど、仕方ないことだ。背を向けて私はこの場を後にした。
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『死合うぞ、『剣聖』』
急に何言ってんだこいつ。
えっ、いや、普通にいやですけど。
こっちは今生最期の自由時間なんだぞ。
なにが悲しくて今生最期の自由時間をお前みたいなゴリラとに使わなきゃいけねぇんだよ。
言っとくけど、俺が地上で好き勝手遊べるの後二日か三日くらいだからな?
最低限やるべきタスクをこなしたらあとは好き勝手だらけるって決めてんだよ。
アイズとの話が終わったら次は『豊穣の女主人』で腹いっぱい食いおさめするかなぁとか思ってたんだぞ。
お前といるぐらいならアイズといた方が絵面的にも精神的にもよっぽどいいわ。
しかも言うに事欠いて死合うだぁ?
巫山戯んな、これ以上俺に経験値稼がせるんじゃねぇよ。
こっちはロキにステイタス更新された時に上がるステイタスを少しでも減らしておきたいってのに。
いや、まあ、そもそも更新されないのが最善なんだがこればかりはいくら考えても決戦目前にステイタス更新しない言い訳が思いつかねぇ。
偉業は別に達してない·············クノッソス燃やしたのもまぁギリギリ大丈夫だろうからランクアップをしないだろうけどステイタスはそれなりに上がりそうだからな。
ただでそうなのにこの上、オッタルと戦うなんて絶対にしたくねぇわ。
よし、アイズ、何か言ってやりなさい。
『······································································································アル、私は先にホームに戻ってるから』
あっ、行っちゃった。
えー、マジでこいつの相手するの?
ならせめてアレン交ぜようぜ。
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発狂に足る痛痒が全身を駆け巡る───それがどうした。
万物を殺す毒の残滓が貪るようにこの肉体を苛む────だからなんだと言うのだ。
そんなものは酷くどうでもよかった。
この身を焼くのは痛みではなく、自らの無力に対する瞋恚の炎だけだ。
唾棄すべき無力、無様と言う他ない醜態、頭蓋の中は昏い闇で茹だり切っている。
ないまぜになった感情が吐き気を催すほどに気持ち悪い。
気が狂うほどの自責の念に魂が摩耗する中、それでも残った一握りの理性が肉体を動かす。
やるべき事が残っている。
ここで無様に果てる事など許されるはずがない。
七年ぶりに啜った敗北の泥、その苦味を噛み締める。
この無様は、必ず雪ぐ。
そうしなければ顔向けできない相手がいる。そうしなければ己が己を許せない。
怒りが痛みも苦しみも凌駕する。
この身はまだ動く。
なら立ち上がれ、前に進め、剣を執れ、戦え。
まだ何一つとして終わっていない。
無様なら幾らでも晒そう。愚鈍もここに極まれりと言うのならそれも認めよう。
だが屈する事だけは決してない。
「·············何が『最強』なものか。こんなものが『最強』であってたまるものか」
聖女の治療を受けてなお完全には消えない毒の影響によって霞む瞳が映すのは過去の情景であり、今もなお追い求める『真の最強』。
まだ、届かない。まだ、及ばない。
あの最強の男達に、この身は未だ届いていない。
あの最凶の女達に、この身は未だ及んでいない。
自身の人生は華やかなものなどでは断じてない、屈辱の火と敗北の泥にまみれた無様なもの。
初めての敗北は大神の派閥の末端の団員に『一撃』で地面に叩きつけられた。
二度目の敗北は前衛ではないはずの才禍の魔女の細腕による『一閃』で廃屋に吹き飛ばされた。
何度も挑み、その尽くを敗北で塗り固め、だが歩みを止めることだけはしなかった。
面白い、と咆哮だけで俺を捻じ伏せた世界最強の眷属たる『英傑』は言った。
夫にしてあげる、と小指で俺を地に叩きつけた世界最恐の眷属たる『女帝』は笑った。
負けて負けて負け続けてきた。
そして、今もまた再び敗北した。
この身は何度負ければ気が済む。
かつてあの最強共に討たれた大いなる獣の亜種に敗北を喫した。
敗北の泥を礎として、最強の高みに臨む。それは、この身が歩んだ人生そのもの。
敗北の苦味と辛酸を噛み砕き、血反吐を吐いてもなお足搔く事を止めなかったこれまで。
血を吐くような日々の果てに得たモノこそ、今此処にあるこの力に他ならない。
たとえ誰に認められなくても構わない。
積み重ねてきた全てが今の俺を形作っているのだから。
今度こそ真の意味で越えなくてはならない。
あの武人を、英傑を、最強の男達を。
こればかりは『剣聖』にも誰にもこれだけは譲るわけには行かない。
故に────
「奴等に負け続けてきた俺が、今度こそ真に奴等を越えるッ!!」
────我が身命の全てを燃やし尽くそうとも必ずやあの獣を討つ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
衝撃、大震、そして大音響。
地面が、都市全体が揺るがされる程の剣戟の調べが都市の一角に響き渡った。
そして、衝撃の余韻を消し飛ばすかのようにして、両者が動き始める。
如何なる言葉でも飾れない至域の力と力のぶつかり合い。武器と武器が衝突し、大気が弾かれる衝撃音。
常人には、いや仮に第一級冒険者であろうとも視認する事さえ困難な速度で繰り出される剣技の応酬。
英雄ならざる者には介在を赦さない、高次元の戦い。剣が交わされる事によって生じる剣圧は嵐となり、周囲の空間を撓ませて、周囲の大気を軋ませる。
剣戟の応酬は瞬く間に千を超える銀光の交わりとなって、両者の間で咲き乱れ、散って行く。
「────────っ」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
夕刻に差しかかり、茜色に染まった空の下。只人と猪人は互いに地面を蹴り、弾かれたかの如く肉薄した。
凄烈な踏み込みによって地面が爆ぜる。
常人では視認する事も困難な速度で振るわれる黒刃。
それを迎え撃つのもまた黒刃。
『戦いの野』。
【フレイヤ・ファミリア】のホームであり、その団員たちが自分こそが『最強の勇士』に至らんするための儀式という名の殺し合いを執り行う原野。
だが、今、この原野に立っているのは治療師であるヘイズを除けばたった二人。
美神の団員たちはおろか、『女神の戦車』すらこの『儀式』の邪魔はしてはならないとフレイヤに命じられている。
たった二人の頂天による、至域の戦い。
その戦いは、既に千を超える剣戟の交わとして、その剣圧によって原野の地形すら変えかねない領域へと至っている。
当代のオラリオが敷く『真の最強』を見出さんとするたった二人の『戦いの野』。
「しィ───ッ!!」
「────」
『最強』の頂に至らんとする二人の戦士。剣戟が交わされる度に、原野に咲き乱れる火花。その輝きの一つ一つが第一級冒険者でなければ視認も叶わない。
その戦いの凄絶さはホームの建物の中から遠目にそれを見る団員達にも畏怖を抱かせる。
界を断つが如き刃の嵐。階層主すら容易く破断するであろう一撃が、大気を爆ぜさせる。
「【剣域・轟】」
瞬時、百を超える光刃が横殴りの雨粒のようにオッタルへ殺到する。
回避不可、防御不可、迎撃可能。
オッタルはその光刃の雨に自ら飛び込み、黒刃を閃かせながら斬り払う。無限を思わせる円環の斬撃、紫電と火片を帯びた黒銀色の斬光が無数の光刃となって絶え間なくオッタルへ襲い掛かる。
それが大気を斬り裂く度に暴風じみた剣圧が吹き荒れ、大地を、大気を、天を震わせる。その光刃の一つ一つがオッタルの轟撃に劣らぬ威力を秘めた必殺である。
距離を殺すそれに回避は下策、かといって無尽に放たれるそれを馬鹿正直に防ぐのは愚策。
オッタルが選択した行動は迎撃。
黒大剣を薙ぎ払い、光刃の全てを迎え撃つ。五指に備わる爪が割れ砕け、光刃を迎撃する度に響く音は槌を打ち鳴らすようであり、斬撃を放つ都度鳴り響く音は銅鐸を鳴らすようであった。
『絶対防御』。
単純なステイタスではもはや眼前の才禍に完全に劣りながらも、その神がかった技巧と駆け引きの妙により光刃の全てを迎撃する。
オッタルがゼウスとヘラの眷属に敗れ続けたその果てに開眼した武の真髄。寸分の狂いも許さないミリン単位での剣の操作と剣速、無駄のない力の配分と角度、重心移動により実現する文字通りの『絶対防御』。
魔法もスキルも不要とする純然たる年月の積み重ねの先に辿り着いたその境地。
如何なる第一級冒険者すら到達し得ぬ武の極致。
光刃と黒刃が交わり合い、弾け合う度に火花と暴風が荒れ狂い、二人の覇者の激突の衝撃で軋みを上げる原野を更に破壊し続ける。
クノッソスでの戦いにおいては操られた状態であったとはいえあの仮面の怪人エインすら封殺したアルの奥義を正面から斬り払い、迎撃して見せる。
だが、それでも防ぎきれない光刃はオッタルの身体を切り裂き、傷を与えていく。頬や胸板を裂かれ、鎧を穿たれ、それでもオッタルは止まらない。
「─────チッ」
光刃を絶えず放つアルが舌打ちする。
無数の光刃はそれぞれが異なる軌道を描き、緩急をつけてオッタルへと殺到するが少しずつ対応速度が上がっている。
何度か見せた奥義では通らないか、と手傷を負わせるだけにとどまる奥義を破棄し、アルは別の技を選択する。
光刃の奔流が搔き消え、オッタルを全方向から取り囲むように無数の円環が生まれる。
初見、それも光刃の弾幕を抜けた直後のオッタルにこの技は回避できない。
雷光、閃光。
雷鳴の嵐がオッタルを飲み込み、焼き焦がそうと迫る。雷円環の中心に取り込まれたオッタルは絶死の攻撃を前に黒大剣を構えるが防御や回避の不可を悟り、切り札を切る事を決断する。
「───────ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
いかなるモンスターの『咆哮』よりも重く恐ろしい猛猪の咆哮。それが響き渡り、空気を震わせた瞬間にオッタルは雷の嵐の中へ突進した。
その身を焼かれながらも正面から全てを打破し、肉薄する。
アルは即座に雷刃の嵐を解き、迎撃に移行するがその時にはもう遅い。
鍔迫り合い、黒刃と大黒剣が激突し、火花を散らす。凄絶なる『力』と『力』のぶつかり合いが衝撃波となって二人を中心に吹き荒れる。
『獣化』。
獣人でも限られた氏族、限られた者にしか発動させることのできない切り札。
月下の狼人がそうであるように己の中に秘める獣性へ全て委ねることで身体能力を激上させる。
比喩なく最強の猪人であるオッタルのそれは発動条件のない任意のものでありながら月下の狼人と同等かそれ以上の出力───階位昇華にも匹敵する絶大な力を誇る。
如何にアルがそのステイタスを限界を超えて蓄積してきたとはいえ、『獣化』を発動させた───疑似Lv.9となったオッタルを完全に上回るほどではない。
一般的な冒険者であればともかく、オッタルはLv.7からLv.8にランクアップした時がそうであったようにそのステイタスを限界は超えずとも最大値まで高めてからランクアップを行ってきた。
そんなオッタルが更に疑似的なランクアップを重ねればアルとて単純な身体能力の面では半歩劣る。
それでもアルが才禍たる所以を最大限発揮すればいくらでも覆せる差ではあるがどうあれ数値だけを見れば今この場において上なのはオッタルだ。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
獣の如き、否、獣そのものと言える咆哮をあげ、オッタルはアルを押し返していく。筋力と速度だけではなく、その圧倒的な耐久力を以て押して、押す。
鍔迫り合いになれば純粋な膂力で劣るアルは不利だと判断し、半歩下がって間合いを取り直そうとするが距離を取られると不利になるのは分かってるとオッタルは即座に踏み込み、大上段からの唐竹割りを放つ。
咄嗟にアルは後方へ跳びながらの受け流しを行うがオッタルは止まらない。そのまま地面を叩き割る勢いで黒大剣を地面に突き刺して身体を固定し、前に踏み込んだ左足で地を蹴りつける。
オッタルの身体と地面の間から爆裂して大地を弾き飛ばした破城槌の如き蹴りが放たれ、アルの身体を直撃する。
ぬるり、とアマゾネスの使う体技にも近い動きで軸をずらして蹴撃の衝撃を地面に受け流すアル。
だが、オッタルは止まらない。
蹴りを放つと同時に地面から黒大剣を引き抜いており、それを横に薙ぎ払いながら間合いを詰める。
前方に跳びながらの轟撃に剣を合わせるが、強烈な衝撃を殺しきれずに宙を舞うアルの身体。
その隙を逃す程オッタルも甘くない。
地を砕きながら踏み込み、黒大剣を大上段に構えると轟撃の勢いを利用してその場で一回転しながら薙ぎ払いを放つ。
まるで隕石が落下したかのような破壊力と共に放たれたその斬撃は地面を爆砕させ、衝撃で宙に跳んでいたアルを更に撃ち上げた。
空中で何とか体勢を立て直すもその瞬間にはオッタルもまた跳躍していた。
ここまでの攻防で互いが負った傷は酷く軽微。
余波に巻き込まれないように少し離れたところで戦いを見守るヘイズが特にやることがない程度には血が流れない戦いになっている。
埒が明かない、と先に判断したのはどちらだろうか。
先ほどよりも密度と重さを増した剣戟の応酬を終えた二人は僅かに間合いをあける。
「【銀月の慈悲、黄金の原野】───」
無骨な音色。彩のない英雄の詩がオッタルの口から紡がれ始め、オッタルの黒大剣が黄金色の光を帯び始める。
同時に詠唱こそないがリンリンと軽い鐘の音色が黒い光粒とともにアルの手に収束する。
「【この身は戦の猛猪を拝命せし】」
黄金猪の毛皮。
魔法に想像される火や冷気を吐く砲撃ではなく、雷や風を防ぐ防壁でもない。
付与魔法ですらないその黄金の輝きはただただオッタルの剣の一撃の威力を跳ね上げるだけの強化魔法。
「【駆け抜けよ、女神の神意を乗せて】」
アルの手元に収束する黒い光粒に魔法の紫電が交じりだし、その光量を増大させていく。
「【ヒルディス・ヴィーニ】」
「【
完成する二つの斬光。
生じる二つの光輝。
黄金色の斬光と黒銀色の斬光が互いに距離を殺しながら正面から衝突し、閃光と轟音が空間を劈いた。
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カスのこれまでの散々な行いのせいで大人びてきたアイズとどこまで行こうと何も変わらないカス。
オッタル「死合うぞ」
変態白髪「嫌だ」
アイズ「邪魔しないように先に帰っておこう」
加護精霊、世界「はぁ、つっかえ」
闘争本能「おっ、ええやん!!」
モチベーションに繋がりますのでコメントや評価よろしくお願いします!!