皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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輝夜ヒロインの書いてみたい、これが完結したら頭のおかしい人格破綻者が主人公じゃないちゃんとしたやつ書いてみるかな。





198話 最強

 

 

 

 

 

 

 

「七年前の『大最悪(モンスター)』召喚の再現、か」

 

 オラリオのとある酒場、主に脛に傷持つ者や闇に生きる者たちが密会や『偶然』会うことのある暗黒期以前からある曰く付きの店であり、非合法の賞金稼ぎや暗殺者の斡旋場としても使われている。 

 

そんな店にはそぐわない清廉な風貌の小人族とその主神である女神の他には怜悧な美貌を持った青髪の美女と物語の吟遊詩人のような格好をした金髪の男神、そして黒いフードに全身を包んだ魔術師と思わしき者がいた。

 

『あぁ、召喚された階層を考えればその脅威は越えかねないが』

 

 酒場の奥の部屋を貸し切って話しているのは【ロキ・ファミリア】団長の『勇者』フィンとその主神であるロキ。

 

【ロキ・ファミリア】と協力を結んでいる【ヘルメス・ファミリア】の団長と主神、アスフィとヘルメス。そして、ギルドの創設神ウラノスの腹心の魔術師、フェルズの五人だった。

 

二次侵攻の準備をあらかた終わらせ、後は参加者各自の自己調整に任せる段階となっていたが急遽、フェルズから使い魔の梟を通して連絡が入った。

 

フィンやヘルメスもまた、地上にいながら誰に言われるまでもなく察知していたクノッソスではない、ダンジョンの異変。

 

オラリオの冒険者の中でも一握りしか到達していない深層、その更に奥から生じたモンスターという名の災害。

 

『深層まで潜れるリド達に偵察を頼んで『眼晶』を通して私も()()の進行を確認したが正直に言って今のダンジョンは地獄だ』

 

 ダンジョン、それも深層域での神威の解放による漆黒のモンスターの召喚。

 

クノッソスで今も練り上げられている精霊の術式に気を取られ、その把握に僅かな遅れが生じてしまった。

 

召喚されたモンスターは七年前、邪神エレボスの策謀によって37階層で召喚された『大最悪(モンスター)』と同じように地上までの階層を全てを破壊しながら昇ってきている。

 

「昇ってくる速度は?」

 

『元が移動型ではないバロールということもあっては前回よりは遅いが明日には深層を脱して下層につくだろう。··················地上───いや、クノッソスまではあと三日といったところか』

 

 階層無視の閃光を撒き散らしながら地上へと突き進む漆黒の『単眼の王(バロール)』。

 

その進行速度は遅いが、それでも徒歩の冒険者とは違って階層を物理的に貫いて直線的に進まれてはあと三日程度で中層域、クノッソスにまでたどり着いてしまう。

 

おそらくは精霊の術式によって満ちる神の力にも近しい天界の力を目指して突き進んでいるのだろう。

 

ダンジョンへの冒険者の立ち入りを禁じていなければ多くの被害が出るところだった。

 

「召喚目的は七年前と同じだろうね、精霊の六円環が失敗した際の保険だろう」

 

「保険ちゅーには物騒すぎるけどな、深層の階層主が地上まで出たら都市なんて焼け野原や」

 

 だからこそ、七年前と同じように中層域あたりで仕留める必要がある。

 

精霊の六円環による『天の扉』の発動見込みもあと三日程。

 

なら決戦はその前夜になるだろう。

 

重要なのは誰が『単眼の王(バロール)』を討つかだ。

 

元のバロールですらその推定レベルはLv.7、漆黒の個体ともなれば18階層に出現した漆黒のゴライアスがそうであるように1レベルは上と見た方がいいだろう。

 

ウダイオスよりもより深層の階層主なのだから当然だが今のオラリオにバロールを単騎で撃破できる冒険者は二人しかいない。

 

そしてその二人には変えられない役割がある。

 

単眼の王(バロール)』以上の脅威である怪人エインと『亜種(ベヒーモス)』の討伐。

 

数の有利が働かないそれらをほぼ単騎で撃破する必要がある最強二人は当然動かせない。

 

ならば二人に準ずる者達をまとめてぶつけるしかあるまい。

 

『『勇者』、君は必須だろう』

 

「·····················あぁ、正直に言って前線には出ずに指揮に徹したかったがそうも言っていられない。最低でもあと三人は欲しいが················」

 

 ここで言うあと三人、というのは第一級冒険者のことだ。

 

現状のLv.6では間違いなく最上位であり、魔法の効果も加味すれば格上殺しも十二分に可能なフィンは推定Lv.8の怪物を相手にするには必須だろう。

 

そしてその手足となって戦う第一級冒険者が最低でも三人はいなければ勝機は薄い。

 

エインや『亜種(ベヒーモス)』がそうであるようにそれほどの怪物相手に数は大した意味をなさない。Lv.4以下の者達はサポーターとして何名かつけるだけでいいだろう。

 

「つくづく戦力が足りないなぁ」

 

 嘆息するようにヘルメスがぼやくが今のオラリオの戦力は男神(ゼウス)女神(ヘラ)がいた全盛期ほどではないにしろ十二分に充実している。

 

現役の冒険者にLv.6が一人しかいなかった七年前の大抗争に比べれば遥かにマシだ。

 

むしろ、敵方の戦力の層が厚すぎるのだ。

 

深層の階層主と同等以上の『精霊の分身』が六体に加えて推定Lv.9の『亜種(ベヒーモス)』と推定Lv.8の『単眼の王(バロール)』、そして敵方最強戦力であろう仮面の怪人エイン。

 

正直に言って意味が分からないレベルの戦力。

 

それぞれがオラリオが総力をあげてようやく討伐できるかどうかというレベルの脅威であり、そしてその三体の怪物に選り抜きの戦力を割けば肝心の作戦目標である『精霊の分身』の討伐に回せる戦力が足りなくなってしまう。

 

都市の破壊者(エニュオ)』がどれだけ冒険者を甘く見ていないかが透けて見える。

 

「(·················そうだ、『都市の破壊者(エニュオ)』には神らしい余裕が一切見えない)」

 

 全知零能の存在である神々からすれば下界の子供たちは見下ろして当然、文字通りの子供のような存在だ。

 

善神であれ邪神であれ共通して少なからずある神ゆえの傲慢、人類への侮り。

 

それが『都市の破壊者(エニュオ)』には一切見えない。むしろ必要以上に警戒している節すらある。

 

もはや怯えとすら言っていいほどに。

 

ギリギリで用意してきた『単眼の王(バロール)』などその最たる例だ。

 

普通に考えればエインと『亜種(ベヒーモス)』だけでも冒険者の殲滅は普通に可能だろうし、それに加えて各々がウダイオス以上の『精霊の分身』による時限式の特大の反則。

 

すでに必要以上の戦力と断言してもいいほどに揃えている。そこまでしておきながら自らがダンジョンに喰われるリスクまでしょって『単眼の王(バロール)』を召喚する、それが解せない。

 

どちらにせよ今回の戦いにおいては敵の油断や傲慢ゆえの失策は期待できないだろう。

 

だがそれでも勝たなければならない、たとえ相手がどれだけ強大で厄介であってもだ。

 

「·················戦力の分配に関してはシャクティ達も交えて再考しよう。───それより今は神ヘルメス、【ディオニュソス・ファミリア】の様子はどうだい?」

 

 一次侵攻で主神が送還されたことで恩恵を喪った【ディオニュソス・ファミリア】。

 

恩恵を失いつつも犠牲なく地上まで帰還することのできた彼らだがその精神状況は決して良いとは言えない。

 

敬愛する主神を亡くし、自分たち自身も恩恵を失った状態で緑肉の濁流に殺されかけたのだ。そのショックは計り知れない。

 

中には錯乱して自害をしようとする者や周囲に当たり散らす者もいる。

 

仕方がなかったこととは言え、一度は彼らを見捨てた【ロキ・ファミリア】とは顔を合わせられないだろうと【ヘルメス・ファミリア】とギルドによって保護されている状態だ。

 

「あぁ、ロキの言う通りに開錠薬を何人かに使ったが····················全員、ディオニュソスの眷属ではなかった」

 

 ヘルメスらしからぬ重い口調でそう告げる。開錠薬、神血を材料に【神秘】のアビリティを持つ者が作製できる特殊な薬剤であり、生死に関わらず眷属の背中に使うことでそのステイタスを暴くことが可能なものだ。

 

今更、『都市の破壊者(エニュオ)』の正体が分かったところで大した意味はないが、その開錠薬を使って彼らがディオニュソスの眷属ではないことを確認できたということはつまりはそういうことなのだろう。

 

どちらかといえばこの戦いが終わった後の後処理が大変そうだなとフィンは内心で嘆息した。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

地を揺らし、大気を震わせる衝撃。

 

その衝撃は比喩でなくオラリオ中に響き渡り、都市中の冒険者達の視線を衝撃の発生源へと釘付けにする。

 

英雄ならざる者が割って入れば即座に肉塊へと変ずるであろう斬光と斬光の応酬。

 

光と音、衝撃の余波が駆け抜け、大地に降り注いでいた砂煙を消し飛ばす。幾百の瓦礫を巻き上げ、原野の地面を抉り、全ての視界を白く塗り潰す。

 

アルとオッタル。

 

世界最強の二人と断じてもよい第一級冒険者同士の全力の衝突に大地は震え、空間が軋みをあげる。

 

雷光。

 

世界を照らし、空を灼き尽くす雷光が荒れ狂い、斬光の衝突に遅れて大気を震撼させる。その余波のみで並の冒険者であれば死に至るであろう衝撃の乱舞が『戦いの野』の原野を蹂躙し、破壊する。

 

十二分に距離をとっていたはずなのに巻き添えを喰らいそうなヘイズが戦慄するような衝撃の中、覇者の激突は続く。

 

黄金色の斬光と黒銀色の斬光。

 

その二つの斬光が衝突した衝撃の余波だけで空を舞う瓦礫が消し飛び、大地は抉れ、大気は震える中、アルとオッタルは剣の間合いを詰めていく。

 

互いに無傷ではない。

 

オッタルの身体には無数の裂傷が刻まれ、アルの腕にも無数の切り傷が生じている。

 

だが、それでも二人の動きに鈍重さはない。むしろより速度を上げながら剣戟を応酬し合う。

 

自身の必殺を凌いだ目の前の強者へ対し高揚していく戦意が二人の速度をさらに上昇させる。

 

オラリオが、下界が戴く『真の最強』がどちらなのか。

 

それを今、己が身をもって証明してみせようと二人の戦士は更にその速度を引き上げる。

 

轟音と共に剣戟が打ち合わされる度に閃光が瞬き、余波の衝撃がオラリオ中に走る。都市中を驚愕と動揺に包みながら、二人の覇者は剣戟の応酬を加速させていく。

 

「────オオオオオオッ!!」

 

 凄まじい衝撃を撒き散らしながらオッタルの放った必殺の一撃はアルのそれを完全に相殺しきれずに光粒と雷光をばらまきながら『戦いの野』を蹂躙した。

 

都市そのものを震撼させる衝撃。

 

民衆達は絶対的な力への根源的な怯えと理由のわからない胸の高鳴りをその身に覚え、冒険者達は自身では到底及ばない領域にあるその衝撃の連続に災害か何かがオラリオを襲っているのかと錯覚する。

 

そして、神々は男神(ゼウス)女神(ヘラ)に代わる『真の最強』を生み出す儀式の調べにその心を震わせていた。

 

だが、その儀式を面白く思わない者もまだ当然ながら存在する。

 

その戦いを肉眼で見る【フレイヤ・ファミリア】の団員達。Lv.4以下の者達はその力に圧倒され、対抗心なぞ抱く余地もなくただ見守るしかできない。

 

だが、第一級冒険者の幹部たちは自分がその儀式に参加することすらできないことを呪い、舌を打つ。

 

一次侵攻でオッタルと同じ泥を啜ったヘディンだけはどこか理解を示すようにオッタルを見守るが他の六人はそうではない。

 

女神の命だ。それに逆らってあの戦いに水を刺すような真似はしないが決して面白くはない。

 

そしてその怒りにも似た感情を最も強く持っていたのは──────

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

─────なんだ、この様は。

 

無意識に舌を噛み切りそうになるほどの昏い熱が腹の底から沸き立つのが自覚できる。

 

その熱を吐き出す様に、あるいはその熱がより深くなるのを防ぐように息を吐く。

 

その熱の正体は怒りだ。

 

いつまで経っても壁として自身の前に立つオッタルに対してのものであり、自分以上の速さで全てを越えていくアルに対するものでもあり、そしてその全てを束ねてもなお届かない自身の脆弱へのものである。

 

間違っても己があの場に立つことを禁じた女神への怒りは欠片たりとも存在しない。

 

ただの憤怒とも違う、形容しがたいこの昏い熱が身体の中を渦巻くのを感じる。

 

その熱を冷ますように再び息を吐くがそれもすぐに無意味になってしまう。

 

背に担ぐ槍がやけに重い、そう感じてしまう程に自身の内の熱は確実にその身を焼いている。

 

愚図()』を切り捨て、最強の戦車になると誓った結果がこれかと己の無様に怒りが沸き立つ。

 

戦って力及ばずに破れるならばまだしも戦いの場に身を置くことすら許されていない無力。

 

女神の命はもっともだ。

 

男神(ゼウス)女神(ヘラ)を越える『真の最強』を作り出す儀式に参加する資格を持つのはこの都市で二人しかいない。

 

オッタルとアルだ。

 

あの二人の戦いに割り込むことは未だ七年前の、災毒に苛まれて死に体であった『覇者』の域にも届かぬ自身では力不足、資格がない。

 

それは分かっている。

 

だが、それでも。

 

────何故、俺は見てるだけしか出来ない。

 

────何故、俺はあの場に立てていない。

 

そう思ってしまうのは傲慢だろうか。

 

いや、傲慢でも構うものかと吠えたくなる衝動を必死に抑え込む。

 

女神の命に逆らってあの戦いに割り込みたい衝動を必死に抑え込む。

 

あの場に立てぬ無力な己への怒りが身を焦がすのを感じる。

 

ぎり、と歯を食いしばった。

 

歯茎から血が流れる程強く噛みしめて、憤怒を必死に抑え込む。

 

今の自分にあの場に立つ資格───あの二人と正面きって戦う力がないことは自身が一番理解している。

 

気に入らないし、腹立たしいがそれを認めなくては自分は一人の勇士ですらなくなる。

 

そう己に言い聞かせながら内なる熱を再び冷まそうと息を吐く。

 

だが、それでも身体の中で燻ぶる熱は消えない。

 

「·····················許さねぇぞ」

 

 ホームの窓から見える理外の闘争、自身ではあの場に立てないと認めざるを得ない光景を睨みつけながらその一言だけが喉からこぼれ落ちる。

 

「次に負けやがったら俺がてめえらを轢き殺す」

 

 揺るぎない瞋恚の炎を瞳に宿し、そう呟く。行き場のない屈辱と怒りを込めたその呟きは誰にも届かずに消えた。

 

その視界の先では一人の覇者が肩で息をしながら片膝をつき、もう一人の覇者が悠然と佇んでいる。

 

今、英雄の都であるオラリオが戴く『真の最強』が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「勝て」

 

「────あぁ」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

さーて、むさい戦いも終わったし、嫌だけどステイタス更新して後は適当にだらけとこ。

 

『勝て』

 

 まぁ、一応勝つは勝つつもりよ?

 

なぜなら一方的に俺が死ぬだけだとエイン、巻き添えに俺以外のやつらも殺して回りそうだからね。

 

その上で自分が死ぬっていうのが最大の難関だから先に致命傷を負った上で気合でエインを無力化してから死ぬのが妥当かな。

 

無力化して俺が死んだ後エインのケアはレフィーヤに任せればいいだろ。

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

フェルズ「やべぇよやべぇよ」

ヘルメス「戦力差パなくね?」

フィン「ガチ過ぎる」

ヘルメス「黒幕の正体って···········」

 

アレン「クソが」

アル「はーだる」

 

 

 






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