皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

27 / 139


カサンドラとか、ティオナとか改定前に空気だったキャラを活躍させたいけど本筋は変えられないからなあ

書かないけど過去編書いたら相棒ティオナ、師匠リュー、賑やかしクロエ、ヒロインオッタルになるかな。

フィルヴィスとアイズは本編で書く、かな?


二十七話 でもコイツ、ラスボスみたいな笑い方するよ?

 

 

 

 

ベルつっよ·······

 

あのミノタウロスももはやLv3近くあんじゃない?

 

元からあんなもんなの? てか、なんでベートに弟子入りしてるんだ?

 

アイズやリューならともかくベートととか関わる接点もないし、相性も悪いだろ。

 

結果的にベルが勝ったからいいが······カッコつけず最初からベルにだけ武器渡せば良かったかな。いやまぁ、でもそれはそれでなんか違う気がするし、結果オーライってことで良いだろう。

 

アイツ、ゼウスのジジイの教育のせいか曇っても立ち上がってくる主人公タイプだから曇らせようがなくて苦手なんだよな·········。

 

······アイズやベートに任せればあんま関わることもないだろうし、まあいいや。

 

そろそろ59階層だし、穢れた精霊戦かな。この間戦ったのは失敗作?だったらしいから本物はどれほどなのかね。

 

レヴィスちゃんと一緒に来てくれれば俺を殺してくれるかもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

淀んだ水気に満ちた空気と悍ましくもある生臭い獣臭の二つが混ざり合い、濃密な気配となって漂っているのが感じられる。

 

耳を澄ませば聞こえてくる濁った水音と獣たちの息遣いは、まるで獲物を前にした魔物たちが舌なめずりをしているようにも思える。

 

目につくのは、巨大な蛇のようにうねる細長い黄緑色の体。鱗に覆われた太い胴体から伸びる長い首は、裂けて毒々しいほどに鮮やかな花を咲かせる口元へと続いている。這いまわる芋虫型モンスターの数は、その十倍ではきかないだろう。

 

脈打つかのように蠢動し、腐臭を漂わせる緑肉の肉絨毯に覆われた空間、死臭とも腐臭ともとれる悪臭に満ちた生理的嫌悪感を覚える異境。

 

黄緑の肉壁の中で咲く赤紫の花弁からは、粘性のある蜜のような液体が流れ落ちている。それはまるで花の香りに誘われた昆虫たちを捕食する食虫植物を彷彿とさせる姿だった。

 

意志を持っているかのように胎動する無数の触手の先端には、吸盤にも似たイボ状の器官がついている。粘液で濡れ光るそれらは、獲物を求めるようにゆらゆらと揺れている。

 

肉を引き裂く水っぽい生々しい音が響くたびに、粘液まみれの触手が激しく波打ち、花びらが妖しく明滅する。そして再び聞こえる、何かを引き摺るような湿った音。

 

冒険者達の知るダンジョンとはあまりにもかけ離れた異常な光景、まさに悪夢と呼ぶに相応しい情景だ。その異境の中央にはすらりと伸びた肢体と豊かな双丘を持つ美しい女性の姿がある。

 

短く切りそろえられた艶やかな赤髪、不快気に歪めた整った顔立ち、鬱蒼とした森を思わせる深い緑色の瞳、背は高く、胸や腰回りは引き締まりつつも女らしい曲線を描いている。

 

身に纏っているのは、肌に張り付くような薄い生地で作られた露出度の高い戦闘衣。革製の防具は一切身につけておらず、動きやすさを重視した軽装であることがわかる。

 

しかし、彼女の鍛え上げられた肉体美を隠すことはできず、むしろその身体を覆う薄布が淫靡さを醸し出しているようにさえ思えた。そんな彼女は苛立たしげに眉根を寄せていた。

 

モンスターの断末魔と思われる声が響き渡る中、積もった灰の中に混じった紫紺の欠片をレヴィスの白魚のような細い指が摘み上げて口に含む。

 

それと同時に、周囲にいた無数の芋虫型モンスター達が一斉に動き出す。奇怪な鳴き声を上げながら、まるで津波のようにどこかへ消えていく。やがて、芋虫型モンスター達の群れが完全に見えなくなると、彼女の視界の端に黒い人影が現れる。

 

『何ヲシテイル』

 

「エインか─────見ればわかるだろう。食事だ」

 

 全身を覆う闇色のローブに身を包んだ小柄な人物。複数の声が重なったような不気味な声で問いかけるその人物は、フードの奥にある二つの赤い光点を不気味に揺らめかせている。

 

性別すら判別できないその声にレヴィスは不愉快そうに顔をしかめると、小さく鼻を鳴らしてから答えた。

 

そんな彼女らの足場を埋めつくすのは灰の山。そして、その中には紫色に輝く石の破片があった。殺戮したモンスターの核である魔石を拾い集めているのは、レヴィスが食事をするために他ならない。

 

『【ロキ・ファミリア】ハ既ニ深層へ向カッタ』

 

 美味くなさそうに、ただ黙々と作業を続けるレヴィスに対し、エインと呼ばれたローブの人物は不満そうな口調で言葉を返す。先程よりも語調を強めたその声色からは、明確な怒りが込められていることが窺える。

 

「流石に早いな·······。まあ、死神(タナトス)の眷属から『剣聖』用の呪詛武器(カースウェポン)と呪具は受け取った、長引かせる必要もないか」

 

 怪人としてモンスターの魔石を喰らうことで際限なく成長する怪物、強化種の性質をもつレヴィスは戦いに向けての準備を整えているに過ぎない。エインの声に含まれる憤怒など気にも留めず、淡々と言い放つ。

 

『アレ程ノ数ノ『分身』ヲ一度ニ使イ捨テルツモリカ?!』

 

「そうでなければ育成に躍起になった意味がないからな。六体分の宝玉は残しておいてある、問題はなかろう」

 

「貴様も、『剣聖』とは戦えないなどとはのたまうなよ、アレこそが最大の障害だ。貴様らの切り札たる魔竜も殺しかねん」

 

『────ッ、ワカッテイルッ!!』

 

 吐き捨てるように言い放ったレヴィスの言葉に、エインは忌々し気に声を荒らげる。そんなエインに背を向けてレヴィスは広間の奥へと歩きだす。

 

今も次々と食人花のモンスターが吐き出され続ける緑壁から離されるように、徐々に移動していく。やがて、肉壁にぽっかりと開いた空洞の前に立つ。

 

そこは、迷宮区の階層主の間とよく似た造りの空間だった。部屋の中には、無数の巨大な肉塊と大量の魔石が置かれている。そして、部屋の中央には、赤紫色をした肉の柱に支えられた祭壇のようなものがあった。

 

まるで心臓のように脈打つ赤紫の肉柱の中心には、一本の大剣が突き刺さっている。禍々しいほどの力を感じさせる漆黒に染まった刀身が見て取れるねじくれた大剣。

 

滴るのは、血ではない――粘着質を帯びた黒い雫。まるで意思を持った生命体であるかのように、その雫は絶えず流れ落ちる。そんな異様な様相の大剣を、レヴィスは冷めた目で引き抜く。

 

瞬間、周囲の肉壁が波打ち、地面の肉が盛り上がり、そこから無数の触手が伸びる。蠢く緑肉がレヴィスに殺到する。

 

抵抗せずに受け入れるレヴィスの四肢に触手が絡みつく。しかし、触手の締め付けによる痛みはない。段々と硬化していき、ついには鎧のように全身を覆う。

 

穢れた精霊の祝福を受けた緑肉の鎧。それを纏ったレヴィスの姿は、まるで深淵の化け物のようだ。異形の肉体を得たレヴィスを拘束していた無数の触手が離れると同時に、肉の壁の一部が裂け、そこに新たな通路が開かれる。レヴィスはその先に歩を進める。

 

「『剣聖』は59階層で殺す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン深層域50階層、ベースキャンプの仮設テントからはずれた崖。巨大な一枚岩の端に立つベートは無言で大穴をにらみつけていた。

 

「なんのようだ、アイズ」

 

 琥珀色の瞳が遥か眼下に広がる広大な空洞に向けられている。その視線の先では数多のモンスターがひしめき合っているのだろう。壁面に開いた穴に一体どれ程のモンスターが潜んでいるのかもわからない。

 

後ろから近付いてきたアイズがベートの隣に並ぶ。そして──ベートは横目で隣を見た。

 

美しい少女だ。流れるような金髪は光を受けて輝き、肌は透き通るように白い。身に纏うのは白を基調とした軽装鎧とスカートにも似たズボン。腰には二振りの剣を差しており、そのどれもが一級品であることがわかる。

 

アルの隣に立てる剣士。それがベートのアイズへの偽らざる評価だった。たしかにフィンやガレスのように今のアイズより強い者もいる。だが、その強さへの執念は彼らやベートよりもアルに近しい。

 

「何を見ているの?」

 

「見りゃあわかんだろ。明日もぐり込む、薄汚ねぇモンスターどもの巣穴だ」

 

「ベートさんはなんで、アルの弟を弟子にしたの?」

 

 数日前、ミノタウロスとベルの戦いの前に聞いて答えをもらえずに有耶無耶になった質問。アイズの瞳に今も焼き付いているのは、冒険を超えた少年の背中だ。

 

「······大した理由はねぇ、素質はないが伸びるとは思った。そんだけだ」

 

「素質がない?」

 

 そんな訳はない、圧倒的格上であるミノタウロスとの一戦に勝利したことやあの限界突破したステイタスは兄であるアルのような才能がなければたどり着けまい。

 

「性格やら技術の問題だ、恩恵との相性は良いんだろうがな。アイツはお前や俺とは違う、戦う者じゃない·······そのはず、だったんだがな」

 

「アイツは俺の予想を超えて、殻を破りやがった」

 

 その琥珀色の瞳には弟子に負けていられないという強い意志が込められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風を斬る音とともに振るわれる銀の大剣。凄まじい勢いでブンブンと振られ、地面の砂が舞う。褐色の肢体を晒す露出の多い踊り子のような戦闘衣を着た少女が身の丈ほどの大きな大剣を振るっているのだ。

 

剣士としての技量よりも有り余るパワーに頼った振り方だ。だが、その一撃は重く速く、受け止めた相手の武器ごと砕きそうなほどだ。

 

「ん〜、大双刃じゃないとやっぱり調子くるうな〜」 

 

 アダマンタイトすら溶かす溶解液を蓄えた芋虫型のモンスターに対する新武器である不壊属性の【ブレード・ローラン】を振り回すティオナの顔には隠せない興奮があった。

 

残像を残すような速度で縦横無尽に大剣を振るうティオナは、自分の身長以上の長さの大剣をまるで苦にもしていないようだ。褐色の肢体が火照り、全身から湯気が立っているように見える。

 

「······そろそろ寝ろ、明日にはアタックだぞ」

 

「あっ、アル」

 

 息を切らしたティオナに近付いた長身の青年が呆れたように言う。純白の短髪と切れ長の目をした精緻な顔立ちの美男子であり、彼はねむたげに目を細めている。

 

ティオナはそんな彼を見てニパッと笑い、アルに駆け寄る。ティオナはアルより年上なのだが、まるで兄に甘える妹のようである。

 

「でもさー、じっとしていられないんだ。こう、体が昂っちゃって」

 

 誰にでも人懐っこい性格をしているティオナだが、アルに対しては特に踏み入ろうとする。

 

他のアマゾネスとは違い、身の危険を感じないため、アルも邪険には扱わない。アルは小さく嘆息すると、自分の背中に張り付いている少女に声を返す。

 

「··········ベル、か」

 

「うんっ!!」

 

 ティオナは嬉しそうに笑みを浮かべて大きく首を縦に振る。

 

「昔、相手が自分より強いってわかってるのに、アルがインファント・ドラゴンと戦ったときみたいだったね!」

 

 なんとも言えない苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるアルを他所に頬を染めてニコニコしているティオナは天蓋を見上げながら言った。

 

「·······ねぇ、今でもアルは英雄にはなりたくないの?」

  

 そこでふと、いつもの底抜けの明るさが一転し、ファミリアの皆は見たことがない静謐な表情を見せる。それはどこか哀愁漂うもので、彼女の心の奥底にある悲しみを感じさせるものだった。

 

「ああ、俺には英雄願望なんてものはないし、『アルゴノゥト』のような道化にもなれそうにない」

 

「········そっかぁ」

 

 しかし、それも一瞬のこと。すぐに彼女は普段通りの笑顔を見せてくる。それを見たアルは何も言わず、ただ無言で視線を前に向ける。そして、ティオナはまた満面の笑みになり、彼の横に並ぶ。

 

「·········いつか、いつか必ず」

 

「あたしが英雄譚にしてもらったように。アルを笑わせて見せるからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

アルのキャッチコピーはアルゴノゥトオルタです。  

喜劇を演出する英雄になれない道化→アルゴノゥト

悲劇を演出できず英雄にしかなれない道化→アル

 

 

【Q&Aコーナー】

Q.友達を笑わせたいです、どうすればいいですか?『匿名希望のアマゾネス』

 

A.前世みたいなムーヴすれば内心、アポロンみたいな顔で大笑いしてくれるよ。

 

 

 

 

【Q&Aコーナー②】

Q.クラ·········んんッ、『剣聖』が【ロキ・ファミリア】でもっとも親しいのは誰なんだ? やはり、剣姫か?『匿名希望の仮面怪人』

 

A.違います。

 

回答者『幹部陣だとティオネ、ベートの上くらいでワースト3位です。まぁ、フィン、リヴェリア、ティオナの順かな』

 

回答者『上位二人が飛び抜けてて、アマゾネス補正(マイナス評価)込で三位なティオナは曇らせなしでも時間割くのを惜しまないくらいにはよく思われてる』  

 

回答者『相手の背景込みで曇らせ楽しむタイプだから過去がよくわからんリヴェリアは火傷しにくい良ポジ』






▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。