皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
コロナやった、きっついわ。
三十五話 超過剰戦力なベル・クラネル救助隊
そこはダンジョン深層。【ロキファミリア】はおろか、【ゼウスファミリア】ですら到達していない未到達領域である。
脈打つ緑肉の通路。壁は脈動し、天井からは滴が落ちる。漂う獣臭と腐臭、そして血臭。そして雪のように積もったモンスターの成れの果てである白灰の山。緑肉に生きたまま飲み込まれ、今もうめき声をあげる人間の果樹園。歴戦の冒険者ですら顔を顰めるような地獄絵図がそこにはあった。
その地獄の中心にいるのは二人の怪人。
どちらも地上の最高戦力たる第一級冒険者すら及びもつかない正真正銘の怪物であり、その白灰の山はその片割れによって築かれた殺戮の跡地だ。
『完成サレタ『宝玉』ヲ四ツト最凶ノ英雄ゴロシマデ持チ出シテ、一人モ殺セナカッタトハナ』
「········黙れ、貴様が戦っていれば結果は変わっていただろうが」
だが、その力の差は歴然であった。片や、黒衣を纏い、仮面で素顔を隠した怪人。片や、赤髪に翡翠眼の怪人。その体には無数の傷があり、既に満身創痍の状態だ。数多の魔石を喰らい、精霊の歪んだ加護が形となった緑肉の鎧を着てようやく、Lv7の最下層に指をかけられる程度のレヴィスと違って、レヴィスを罵る仮面の怪人エインは一切、魔石を喰らっていないのに関わらずLv7の最上位······あるいはそれ以上の階位に足を踏み入れていた。
『············オマエタチト轡ヲナラベテ戦エト?』
エインから噴き出すは歴戦の冒険者であっても死への恐怖で膝をつく程の凶悪な殺気。都市最強すらも上回る魔力を伴ったそれはただそれだけで地上の者たちを殺しかねない。
『オリヴァス・アクトガ怪人トシテ生キ残ッテイタノヲ私ニ隠シテイタナ』
「····他ならぬエニュオの指示だ、私がとやかく言われる筋合いはない」
さしものレヴィスもその殺意にも繋がりかねない格上の激情にその冷涼な面貌を微かな畏怖に歪める。
「······まぁ、どちらにせよ。あの英雄は死ぬ、アリアを庇ったせいでな」
呪いが解呪できたとしても下界最凶最悪の死毒は今もアルの肉体を蝕み続けている。いかに気合でその苦しみをはねのけ、戦えたと言ってもそれは火事場のバカ力に過ぎない。いかなる魔法、いかなる妙薬を用いたとしても緩やかに、苦しみながら死んでいくだろう。
そんなレヴィスの皮肉の混じった確信めいた言葉にエインは。
『二度モ、クラネルト戦ッテオイテマダ理解シテイナイトハ呆レルナ』
仮面越し、変音の魔道具越しでもわかる嘲笑を浮かべて未だ傷の癒えきっていないレヴィスを見下す。その嘲りの言葉の意味がわからず、訝しげに見上げるレヴィスに対してエインは語る。
『クラネルガ、アノ男ガ毒ゴトキで死ヌモノカ』
お前はアル・クラネルをわかっていないと言外に告げたエインはレヴィスのもとから去り、自らの第三魔法を唱えてその身を二つに分ける。
仮面をつけたままの、怪人としての人格であるエインはそのまま迷宮の奥へ歩きだし、人としての人格は上の階層に、18階層へ向かうために準備を始める。
「········『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインか」
英雄が命を賭して庇った『姫』の名を。
「嫉妬なぞ、する資格もないだろうに········!!」
仮面をつけてないその姿は黒壇の髪と白磁の肌を持った女神にも等しい美貌を溢れ出る感情で歪める一人のエルフの少女だった。
【ロキ・ファミリア】ホーム、黄昏の館。朝っぱらから度数の高い酒瓶を空にしていたロキは、酔いが醒めてきたのか顔色を悪くして震えていた。居残り組の団員達も、いつも以上にだらけている主神に目を向けることもなく黙々と作業をしている。
「アイズたん達、早く帰ってこんかな〜」
アイズ達が遠征に出発して既に一週間が経過していた。ぼんやりと呟くロキの声に、寂しさはあれど憂いはない。みなが無事に戻って来ることを疑っていないからだ。そんな風にロキがだらしなく過ごしている中。
「ロキ、ベートさんが帰ってきました!!」
「おっ?」
通路から前触りもなくかけられた報告に、ロキは勢いよく立ち上がる。そして大股で部屋を出て行くと階段を下りて呼びに来た団員について玄関ホールへと向かった。そこには見慣れた青年の姿があった。ベートは相変わらず不機嫌そうな雰囲気だったが、その腕には白い包帯が巻かれていて、表情にもどこか痛々しげな色が浮かんでいる。
「おーっ、ベートー よく帰ったな!!」
「うるせえ、まだやることがあんだよ」
勢いよくハグしてきたロキに対し鬱陶しげに躱したベートは、激闘の後らしくその戦闘着は所々焼け焦げており、顔にも小さな傷を作っていた。ロキと話をしている間も視線は周囲を忙しなく動き回って出迎えた団員達に指示を出している。男女の団員達がベートの剣幕に押されながらも言われた通りに走り回る。
ロキは気になったことを尋ねることにした。
「なぁベート、アル達は?」
「まだダンジョンだ」
ロキの問いにベートは再び出発の準備をしながら端的に答える。それを聞いてロキは目を丸くする。遠征の帰り、大量発生したポイズン・ウェルミスの劇毒のせいで、遠征本隊の帰還が困難になったらしく速さではフィンたち以上のベートが先に地上に戻り解毒薬を持ち帰ることになったそうだ。
そして、アルがポイズン・ウェルミスとは格が違う死毒に侵され、危険極まる状態であること。
「ベヒーモスのドロップアイテムを使った呪詛武器かぁ、アルは大丈夫なん?」
「呪いは消えたが、なにより毒がやべえ、ババアの魔法じゃどうにもならねぇな。アイツの付与魔法で進行を抑えちゃいるがそれも時間制限ありだ」
ベヒーモスの病毒はアル自身の魔法である【レァ・ポイニクス】の解毒作用でのみ対抗でき、それでも快復はせずに現状維持が精々だ。いくら燃費が良くても魔法を永遠に使い続けることはできない。
「俺は 【ディアンケヒトファミリア】 に行く。あの聖女くらいだろ治せそうなやつはよ、ロックスにはポイズン・ウェルミスの解毒剤を回らせろ」
「オッケーや!! こりゃ二、三日かかるかもな〜」
ポイズン・ウェルミス自体稀少モンスタ—であり、その体液を材料とする解毒薬は滅多に出回らない。都市中を回らせるとなるとかなりの時間がかかるだろう。人海戦術をしたところで在庫はすぐに底をつくはずだ。新しく【ディアンケヒト・ファミリア】に作ってもらう必要がある。
出費以上にオラリオ最高の治癒術師であるアミッドに借りを作ることになるが背に腹は代えられないし、本人はアルのためなら秘密裏の協力も惜しまないだろう。ロキが頭の中で算盤を弾いていると、ベートは玄関口へと向かいながら装備の確認をしている。
「それよりベート、休まないで平気か? ダンジョンから帰ってきたばっかでヘロヘロちゃんやろ?」
「要らねえよ。あと止めろ」
ニタニタ笑いながら言う背後からの茶化しに嫌そうに顔をしかめるベート。下位団員からリュックサックを受け取り背負うと、そのまま出て行こうとしてロキに肩を掴まれる。振り向くベートにロキは真剣な眼差しを向けた。
「せやったらステイタスの更新だけでもしとこか」
「あ゛ぁ?」
怪物進呈。ダンジョン内で冒険者が自分達に襲い掛かって来たモンスター達を他の冒険者達に押し付けていく行為であり、自身が生き残ることを最優先とする冒険者の間では時折行われる行為である。
悪意をもって行われた悪質なものでない限りは緊急避難的措置の一つとしてギルド側から咎められることもない。
しかし、受けた側が命の危機に瀕するのも事実であり───サポーターのリリルカ・アーデと新たにパーティを組んだ【ヘファイストスファミリア】のヴェルフ・クロッゾの三人で中層へ挑んだベルだったが、そのさなかに怪物進呈を受け、危機的状況に陥っていた。
中層から上層に戻るどころか迷宮の陥落によってより一層深みへと落ちていき、もはや地上に出ることもままならない状態だ。リリルカの提案によって安全地帯である18階層へ向けて進んでいた。
しかし、放火魔とも称される危険モンスターヘルハウンドの群れやベルにとっては因縁の相手であるミノタウロスに立て続けに襲われる。ヘルハウンドの火炎の息吹へ対魔力魔法を何度も発動したヴェルフは精神力を大量に消費したことで体が限界に到達した精神疲弊状態となり、気絶してしまっている。
リリルカも気絶していた。『上層』とは勝手が違う 『中層』の重圧感は、Lv2となったベルとは違い、Lv1でも下位の実力しか持たないリリルカの心身をとことんまで疲弊させていた。
まともな補給も行えず、むしろ道具をベル達へ優先的に回して。パーティの中でも最も【ステイタス】が乏しいリリルカの体力はとっくに尽きていた。
精神力回復薬も二属性回復薬も既に手もとにはない。二人を回復させる方法は、今のベルにはなかった。
自分の呼吸音以外何も聞こえない静寂の中、ベルは自分の不甲斐なさに唇を強く噛み締める。周囲が暗くなっているため表情までは見えないだろう。だが、その顔色は青白く、血色を失っていた。
気を失ったリリの小さな手を握り、ヴェルフの肩を支えて歩くベルは、今にも倒れそうな状態で必死に意識を保ち続けていた。
心を押し潰すような不安と恐怖、そして後悔が胸の内を渦巻く。 怯む心を奮い立たせるように拳を握る。少しでも身軽になるため最低限の武装だけを残して荷物を全て捨てて、小柄なリリを背負っているために動きは遅い。
「ぐっ、うっ·········」
気絶した二人の身体を支えることで精一杯だった。もう何度目になるかもわからない襲撃を受けては撃退する。疲労困ぱいの状態で戦っているせいで、傷だらけになっていた。
ランクアップしていなければすでに力尽きていたことだろう。二人分の重さを背負いながらでは、そう長くは持つまい。次、モンスターに出くわせば終わりだと悟ったベルは歯を食い縛る。
全身の筋肉が悲鳴を上げている。足が重い。頭が痛い。視界が霞んでいく。汗を流しすぎたのか、喉の奥が渇きひりつくように痛みを発する。
弱音を吐いて泣き言を言いそうになる自分を叱咤し、ベルは前に進む。後先のことなど考えず、ただひたすらに歩き続ける。
時間感覚はとっくに失われていた。それでも、止まれば死ぬという確信があった。どれだけ歩いたか分からない、どれだけ時間が経過したかも分からない。丸一日以上は経過しているかもしれないし、あるいはほんの半日程度なのかもしれない。太陽の光も届かないこのダンジョンの中では正確な時間は分からない。
一層、暗さが増した気がする。17階層への階段を降り終えるとまるで夜が訪れたかのように、暗闇が支配する空間へと変わっていた。
モンスターと遭遇しても即座に戦闘に入れるよう注意しながら歩みを進めるベルだったが、モンスターは一向に現れない。
息が詰まるような緊張感だけが辺りを支配しており、心臓の鼓動がいやに大きく聞こえる。無意識のうちに早鐘のように脈打つ鼓動、耳鳴りのような音が頭の中に響く。
苦行にも似た移動を続ける中、心が折れかける、先も見えない深い闇の中を進むことに心細さを感じてしまう。あるのかもわからない出口に一人取り残され
投げ出してしまいたい、逃げてしまいたいという感情に支配されていく。
────ギリィッ
歯を砕かんばかりに強く食い縛り、その気持ちを振り払う。僕が倒れれば、誰が二人を守るんだ? 誰が二人を助けるんだ?僕が割れれば、二人も死んでしまう。
────そんなこと、絶対にさせない! 自分に言い聞かせ、震える足を無理やり動かして歩かせる。憧憬で塗り固めた英雄願望に突き動かされるまま、前に踏み出す。17階層最奥へ続く通路をモンスターの気配に怯えながら進み続ける。
「·······なんで」
静かに過ぎる沈黙の中で、ふと声を漏らす。それは誰かに向けて呟かれたものではなく、思わず漏れてしまった独り言だ。
反響するように木霊した自分の言葉に驚きながらも、ベルはその言葉をもう一度口に出した。静まり返った暗い洞窟内にモンスターの気配はある。だが、なぜか襲ってくる様子はない。
先程から気配は感じるものの、こちらを伺うだけで襲いかかってこない。その事に違和感を覚えると同時に、嫌な予感を覚えずにはいられなかった。不自然なまでに静かすぎる。
それがかえってベルの不安感を刺激していく。リリルカを背負い直してから、ベルは歩く速度を上げた。18階層を目指して歩を進める。しかし、いくら進んでもモンスターの影すら見当たらない。おかしい。こんなことは今までなかった。
背筋が凍るような感覚。まるで罠にはまったかのような錯覚に陥る。悪寒を覚えたベルは走るようにして駆け出し、二人を背負いながら走り続けた。全身の筋肉が軋みを上げる。
肺が焼けるように熱い。心臓が破裂しそうだ。それでもベルは立ち止まるわけにいかなかった。後ろを振り返る余裕など無い。少しでも早く前へ進まなければならない。
壁も天井も広い空間も全て闇に覆われている。視界の端々に映るのは岩石ばかりで、道標となるものは何もない。ただでさえ足場の悪い場所なのに、気絶した人間を背負っているため、より一層行動に制限がかかる。
やがて左側の壁のみ磨きあげれたような光沢のある岩肌が露出した箇所を見つけた。凹凸の一つなく滑らかに加工されたような壁面を見て、ベルは何かに導かれるようにそちらへ向かう。継ぎ目のない一枚岩の壁は視界を覆うように広間の端まで続いている。
「·····嘆きの壁!!」
17階層最後の障壁、たった一体のモンスタ—を産み出す階層の終着点。
バキリ、と。
鏡のような壁面に亀裂が走った。波紋が広がるように、壁面全体にヒビが広がっていく。背筋を氷柱で撫ぜられたような悪寒に襲われて、ベルは二人の体を強く掴んで走りだす。
懸命に脚を動かすベルの耳に、背後の岩壁が崩れ落ちる音が届いた。振り返らずとも分かる。あの巨大な怪物が動き始めたのだ。
轟く地響き、崩れる岩の音。そして振動。徐々に近づいてくるそれから逃れるために、ベルは必死になって前へと進んだ。
バキッ、バキッ、と。破砕音が次第に大きくなっていく。重々しい足音が近付いて来る度に恐怖心が増していく。もうすぐそこに迫っている。もう数秒もしないうちに追いつかれるだろう。
増していく恐怖心に焦燥感を煽られ、更に加速する。より大きく亀裂が入った壁に、もはや一刻の猶予もない。
鳴動する大地、迫り来る脅威。ついに恐れていた瞬間が訪れた。巨大な破砕音と共に、モンスターが姿を現した。
土煙を巻き上げながら現れた巨躯は、一見すると人間のように見える。
違うのはその大きさ。ゆうに5メートルは超えるであろう身長に、灰褐色の配色。巨人としか形容しようがないほどの大きさの人型。血の通っていないような灰褐色の皮膚が、生気を感じさせない不気味な印象を与える。
これまで見てきたいかなる怪物よりも巨体を誇るそのモンスターからは師である狼人にも感じた根源的な畏怖を抱かずにはいられない。
隔絶した力の差、格の違いを思い知らされ、ベルの膝は笑っていた。そんなベルを嘲笑うかのように、巨人の口元が弧を描く。
『迷宮の孤王』ゴライアスが、遂にベルの前にその全貌を現した。
アドバイザーであるエイナや師であるベートにその存在は聞いていた。
─────これが、階層主。
中層では間違いなく最強の存在であり、その認定レベルは4。それもその巨体からわかるように高い耐久と体力を誇り、レベル4以上のパーティでの討伐が前提とされるほどの難敵。
強者の威圧を撒き散らすそれはまさにモンスターの王に相応しい風格を備えていた。階層主の存在を確認した途端、ベルの思考は真っ白に染まり、理性と本能が一致する。
わき目も振らずに、一目散に逃げ出した。背を向けて脱兎の如く逃走を開始したベルの背中を、無慈悲にもその豪腕が薙ぎ払う。
衝撃。凄まじい勢いで吹き飛ばされ、ベルの体は宙を舞う。地面を転がり、ようやく止まった頃には全身に激痛が走っていた。意識が飛びそうになるのを堪えて、すぐさま立ち上がる。
「オ、オオオオオオオオオオオオオッッ!!」
雄叫びを背に、自らを鼓舞して再び走り出す。だが、既に限界を迎えている肉体は言うことを聞かない。思うように動かない体を叱咤し、ただひたすらに逃げることだけを考える。
二人を担ぎなおし、ベルは再び疾走を始めた。しかし、大気を切る音と共に飛来したのは無数の岩石。礫が雨のように降り注ぎ、ベルの行く手を阻む。
必死に避けようと身を捻るが、それでもいくつかが体に突き刺さった。痛みに耐えながら、ベルは歯を食いしばって前へ進む。それでもまだ逃げ切ることは出来ない。
背後から振り下ろされた拳によって砕かれた岩盤。舞い上がった粉塵に視界を奪われ、次の瞬間には眼前に巨大な掌が迫ってきていた。
「ぎっ、づっつ、か!?」
凄まじい衝撃にボールのように何度も跳ね転がされる。地面に叩きつけられた衝撃で肺の中の空気が全て吐き出され、声にならない悲鳴を上げる。
あらゆる角度で打ち付けられ、洞窟の奥へ飛んで転がってを繰り返し、やがて壁に激突することでようやく止まることが出来た。全身がバラバラになりそうな程の苦痛。呼吸をするだけで吐き気がこみ上げる。指先一つ動かすこともままならない。
薄れゆく視界の中で、18階層へと続く出口を這いずって進む。
光の差す穴を目指して、少しでも遠くへ。
そうしなければ、死んでしまう。
死への恐怖がベルの脳裏を埋め尽くす。
ようやく辿り着いた先には、迷宮内とは思えない草原が広がっていた。
緑豊かな草木が生い茂り、清涼な風が吹き抜ける。
もうぴくりとも動かなかった。
全身を襲う激痛に、ベルは動くことすら出来ない。
遠のこうとする意識の中、二人をゆっくりと横たえる。
せめて二人だけは助けなければ。
そんな思いで必死に手を伸ばすが、届くはずもない。
だが、意識を失う寸前、かさっ、かさっ、と人が歩み寄ってくる音が聞こえてきた。
渾身の力をふり絞り、視線を向ける。ぼやけた視界に血色の悪い足首をガシッ、と掴
んだ。
それが誰なのかは分からない。
だけど、どこか懐かしい温もりを感じた。
微かに震える唇を動かして、懸命に言葉を紡ぐ。
「助けて·····兄、さん」
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ソロアル≫壁≫ソロアル(人の目あり)>ロキ連中とのアル≫壁≫対アミッドアル
【Q&A】
Q,アルが戦闘力てきな意味でもう戦いたくないと思ってる相手はいますか?『匿名希望の妖精』
A、極論、それが曇らせにつながるならたとえ相手が黒竜でもタイマンしますよ、やつは