皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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(再投稿、やっぱりこれ以上は内容が歪むわ)


一章〜三章完結記念間話 偽善蠢動・後

 

 

 

 

「───【空を渡り荒野を駆け、何物より疾く走れ。星屑の光を宿し敵を討て】!!」

 

「【ルミノス・ウィンド】!!」

 

 緑風を纏ういくつもの大光玉。前衛でありながら魔導士顔負けの広域攻撃魔法が光の濁流となって闇派閥の雑兵達を飲み込む。

 

だが、その猛攻をもってしてもリュー達の置かれている窮地を打開するには到底及ばない。

 

「クッ───!!」

 

「〜〜〜〜〜ッ、どんだけいやがんだ、コイツら!?」

 

 部下にヴィトーと呼ばれていた不気味な男の率いる雑兵の多くはレベル1、それも一般人に毛が生えた程度の練度でしかなく、本来ならばリューたちにとっては決して苦戦するような相手ではない。

 

『量より質』の神時代において熟達した一人の上級冒険者は十人の常人に勝る一騎当千の力を発揮するという。

 

だが、今回ばかりはそれにしても数が多く、いくら倒そうとも後から湧いて出てくるように現れてくるのではキリがない。

 

「素晴らしい·····!! ここまでの多勢に無勢であっても諦めずに戦い続けるとは流石は正義の眷属と言ったところでしょうか?」

 

「───余裕のつもりか、破綻者」

 

 輝夜が苛立たしげに刀を振るう。

だが、ヴィトーはその斬撃を事もなげに短剣の腹で受け止めて甲高い音を立てながら弾き、輝夜に肉薄する。

 

その動きはまるで舞を踊るような美しさすら感じるほど洗練されたものであり、この男もまた只者では無いと知らしめる。そして、そんな男が振るう二振りの短剣はまさしく凶器そのもの。

 

その凶刃が煌めく度に掠めた輝夜の身体から鮮血が散っていく。だが、それでもなお、輝夜の瞳に恐怖の色は浮かんでいない。むしろ好戦的な笑みを浮かべて、輝夜は果敢に攻め立てる。

 

だが、ヴィトーはその全てを受け流すように回避してみせる。

 

「(チッ、アイツさえいなけりゃどうとでもなるんだがな·····)」

 

 俯瞰した視点で戦場を見るライラは内心毒づく。Lv.3でも上位に位置するステイタスとファミリア内でもアルに次ぐ白兵戦能力を持つ輝夜を相手にしてなお、互角以上に渡り合う技と立ち回り。

 

おそらくはLv.4だろう。そして厄介なことにヴィトーは突破力のある輝夜とアリーゼ、近中遠で広域攻撃魔法を使うリューの三人を同時に相手取り、かつ的確な指示を出して連携を取らせないように立ち回っている。

 

しかも、その指揮は見事なもので、決して無理攻めをせず、こちらの戦力を見極めた上で適切な人数を配分している。それはつまり、こちらの情報をある程度把握していることの証左だ。

 

ヴィトーの実力は間違いなく、闇派閥の中でも幹部クラス。それに従う凄まじい数の雑兵たち、このままではすり潰されるのは時間の問題だった。

 

だが、真に危ういのはリュー達ではない。

 

 

 

 

より追い詰められているのは二対一で同格の妖精姉妹の相手をしているアルである。

 

階層主すらまるごと呑み込もうかという業火の柱がアルを、そしてその背後からアルに斬りかかろうとした闇派閥の雑兵達をダンジョンの床や壁ごと吹き飛ばす。

 

だが、爆炎の中心にいたはずの少年の姿は既にない。そして次の瞬間、轟音が響き渡ると同時に爆炎を引き裂いて白い稲妻が何条にも枝分かれして意思を持っているかのように暴れ回る。

 

─────【サンダーボルト】

 

攻撃魔法と攻撃魔法の応酬。雷光が煌めき、爆炎が渦巻き、水晶が砕かれ、岩石が舞い踊る。余人を寄せ付けぬ次元の戦いを繰り広げる三人の周囲にはもはや原形を留めていないモンスター達の残骸が散乱している。

 

「あはっ、愉しい!!樂しいわ!!」

 

「ふふ、もっと踊って!!アル!!もっと私達を楽しませて!!」

 

「────ッ!!」

 

 【アレクト・ファミリア】の団長副団長であるディース姉妹とアル。共にそのステイタスはLv.5に到達している。

 

二振りの騎士を救う安楽剣(スティレット)を振るう白妖精の姉、ディナに魔法や魔剣を自在に扱う黒妖精の妹、ヴィナ。

 

きゃいきゃいと可愛らしい声で叫びながらまるで無垢な子供が玩具で遊ぶように、醜悪な悪女が恋人との逢瀬を楽しむような表情を浮かべて真骨頂たる殺戮の連携をアルに向けて繰り出す二人。

 

この場で誰よりも速く動けるのは間違いなくアルだ。だが、そんなアルですらも二人の動きを捉えることはできていない。それどころか、二人の攻撃を避けるので精一杯という有様だった。

 

「ああ!!仲間を心配しているのね!!でも大丈夫!!私達は貴方のことしか見ていないわ!!」

 

「私達は貴方だけを見ているわ!!だから貴方も私達だけを見ていて!!」

 

 高速戦闘を繰り広げる三人と少し離れた後方ではアリーゼ達が懸命に奮戦しているが、それでも戦況は明らかに不利であった。

 

そんな彼女達にヴィナの魔法が向けられでもしたら、抵抗すらできずに一瞬にして消し炭となっても可笑しくはない。

 

しかし、ヴィナはリューやライラには目もくれず、ただひたすらにアルを見つめて、その唇からは熱に浮かされたかのような甘い声音で魔法の砲撃と共に愛の言葉を投げかける。

 

そしてそれは、姉のディナも同様。二人はアルへの想いを口にしながら、同時に魔法を放ち、時には武器を振り回す。

 

姉のディナは穢れを知らない滑らかで白い肌を興奮で赤く染め上げ、妹のヴィナはその瞳が蕩けてしまいそうなほどに潤ませていた。

 

二人の少女の視線を一身に受けながらも、アルは顔色一つ変えずに反撃の手を止めようとしない。

 

白妖精のディナと黒妖精のヴィナの姉妹はどちらも容姿端麗。幼い印象を受ける青い果実のように瑞々しい肢体をエルフとは思えぬ露出の多い踊り子のような衣装で包んでいる。

 

女神を嫉妬させてしまうほどの美貌を持つ少女達だが、その美は獲物を引き寄せる食人花のような妖しさを孕んでいた。

 

「すごい!!すごいわアル!!こんなに私の剣が避けられるなんて初めてよ!?

 

「余所見なんかできないくらい激しくしてあげる!!」

 

 ディナの振るった刃がアルの頬に傷をつけ、ヴィナの持つ魔剣の風がアルを苛む。

 

遠中近に隙のない二人のコンビネーションに、流石のアルも攻めあぐねる。

 

「─────ッ!」

 

 アルがオラリオにやってきて数年、何度この姉妹に殺されかけたかわからない。

 

その度にアルは常人にはありえぬ速度で成長を重ね、今や姉妹と同じLv.5まで至った。だが、そんなアルと戦い続けることによって姉妹も更なる高みへと上り詰めていた。

 

姉妹ともにLv.6に限りなく肉薄した領域に足を踏み入れており、その実力はもはや都市最強派閥の主力を凌駕できるだけの力を有している。

 

その速度はまさに怪物の域。アルの攻撃を掻い潜り、あるいは避け、時にカウンターを叩き込む。

 

そして、その攻撃はどれもまともに受ければ必殺。一撃喰らえば終わりの極限状態の中で、アルと姉妹の戦いはさらに激しさを増していく。

 

ここまで来てなお、アルが二対一の状態で拮抗できている理由は間隙なく速射することのできる速攻魔法と多対一に秀でた立ち回り、そして──────慣れ。

 

「俺がこれまでに何回お前らと戦ってきてると思ってる?」

 

「「きゃあっ!!」」

 

 雷の速攻魔法、都合二十四連射。錯綜し、不規則な軌道を描きながらアルの放った雷撃がディース姉妹を襲う。回避は不可能。防御も間に合わない。直撃すれば間違いなく絶命とまではいかないが戦闘不能に陥るであろう威力を秘めた攻撃は──────────しかし、姉妹を捉える寸前で食い止められる。

 

「【開け、第五の園。響け、第九の歌】」

 

 ヴィナの歌うような詠唱に呼応するように姉妹の前に巨大な魔法陣が展開され、都合六つの砲門が姿を現す。

 

「【ディアルヴ・ディース】!!」

 

 あらかじめ待機状態にしていた広域攻撃魔法をスキルによる姉からの魔力供給によって更に強化した上で放つヴィナ。

 

それはまるで灼熱の柱。雷撃の暴風雨を食い破り、アルの視界を埋め尽くす。六柱の灼熱の業火がアルを飲み込もうと迫りくる。

 

だが、それを前にしてもアルは動じない。冷静な表情のままヴィナと同じように待機状態にしていた『大鐘楼』の音色を解放した。

 

「【英雄正道(アルバート)】、起動。─────【サンダーボルト】」

 

 収束する白と黒の粒子。アルの周囲に展開された魔法陣から放たれたのは、先程までとは比較にならないほどに巨大かつ凶悪な破壊力を宿す、落雷の嵐。

 

轟音。

 

大気を震わせる衝撃と共に、互いの魔法が衝突。互いに一歩も譲らぬ激しいせめぎ合いを繰り広げて一瞬の拮抗の後、灼熱の奔流は雷によって喰い破られ跡形もなく消え去る。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」

 

「あぁっ!!」

 

 余波で走った紫電がディナを襲い、彼女の身体を焼く。しかし、ディナは苦痛の声ではなく矯声を上げながら艷やかな肢体を捩らせ、ヴィナもまた顔を淫媚に歪める。

 

白妖精特有の透き通るような白い肌はところどころ黒く焦げ付き、露出度の高い衣装は所々破れて扇情的な姿になっていた。

 

「貴方のプレゼント、素敵だったわ!!」

 

「今すぐ抱きしめたいくらいよ!!でも、残念!今日はこれまでにしなきゃ!!」

 

 きゃいきゃいとはしゃぐように笑い合う姉妹。その瞳には狂おしいほどの愛情と劣情に彩られていた。

そんな二人を冷めた目つきで見据えるアルは、小さく嘆息する.

 

「偉大なる邪神の王に言われているの!! 本番まで愉しみはとっておけって!!」

 

「次は必ず殺すわ、アル!! 楽しみに待っていて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

····················うーん、いや、なんというか、悪くはないんだがな

 

エルフで実力者なのは非常に美味しいと言える姉妹だが

リューに比べればどこか初々しさに欠ける感が否めないし、何より人を殺しすぎている。

 

なんか悲しい過去、というか出生になんかトラウマ的なのあるっぽいしそれを利用すればイケるか········?

 

ここまで精神が破綻してると曇らせられなそうなんだよな。

 

マジで異常者の考えることはわからんからなーーー。

 

·········あっ、そうだリューを姉妹から庇って死ねばいいんじゃね?

 

リューは言うまでもなく、守られることのなかった『妖魔』であった姉妹から光に生きる『妖精』であるリューを固執している俺が庇えば曇らせられるかもしれないな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁン·······? 【アストレア・ファミリア】の雌共か!! てめー等はお呼びじゃねぇんだよ、乳臭えガキども!!」

 

「黙れッ!! 皆が笑う筈だったこの場所で、よくも······!」

 

「絶対に許さないわ!! 絶対に、これ以上誰も奪わせない!!」

 

 炊き出しを行っていた平和な広場が一人の女の登場によって地獄へと変わり果てる。禍々しくねじ曲がった大剣を担ぎ、殺戮を謳歌するその女の名はヴァレッタ・グレーデ。闇派閥の幹部であり、数多くの冒険者を屠ってきた猛者だ。そんな彼女の登場に怒り心頭の二人は武器を構え、臨戦態勢に入る。

 

「バ〜カッ!! Lv3のてめー等がLv5の私に敵うと思ってんのかぁ〜?!」

 

 『殺帝』の二つ名を持つ闇派閥の幹部を務めるヒューマンであり、その認定レベルはオラリオの最高戦力たる第一級冒険者並のLv5。頭角を現してきたルーキーとはいえ、Lv3であるリューとアリーゼの手に負える相手ではない。二人とは格段に違う、ステイタスから放たれた剛撃にたまらず吹き飛ばされる二人だったが、白き残像だけを残して飛来した神速の一撃によってヴァレッタも吹き飛ばされ、状況が変わる。

 

「───奇遇だな、俺もLv5だ」

 

「アル·······!!」

 

「お姉ちゃん達を助けに来てくれたのね!!」

 

「そろそろ弟扱いをやめろ、アリーゼ。──で、無事か、ポンコツエルフ」

 

「ってーなっ、クソガキがあッ!! 来やがったな!!」

 

 【アストレアファミリア】の黒一点且つ最年少でありながら最強。オラリオが誇る最高戦力たる歴代最年少の第一級冒険者、アル・クラネルがそこにいた。

 

アルの持つ銀槍が霞むほどの連突きを繰り出すが、ヴァレッタはその悉くを防ぎ切り、反撃として振り下ろした大剣がアルを襲う。だが、アルはそれを回避し、ヴァレッタの懐へ潜り込むと同時に、渾身の力を込めた蹴りを叩き込んだ。地面に亀裂を走らせながら後退するヴァレッタに対し、速攻魔法の雷閃を放つ。それを大剣で防いだ瞬間を狙い、高速移動からの刺突を見舞う。

 

しかし、ヴァレッタはそれさえも見切っており、身体を反らして避けてしまう。だが、ヴァレッタではアルの速さに追いつけず、追撃の石突を避けきれず直撃してしまう。衝撃を殺し切れず地面を削るように転がり、即座に立ち上がるも、既にアルの姿はない。背後に現れた気配に反応して振り返ると、眼前に迫る銀槍の先端を視認するも、咄嵯に大剣を振り下ろすことで防御に成功する。

 

「チィッ······! どおなってやがる、てめぇ、クソガキィ!! たった数日でどれだけステイタスを上げてやがる!!」

 

「あとは老いるだけのお前と違って俺は成長期だからな」

 

「ほざくんじゃあねぇッ!!」

 

 第一級同士の戦いはまさに嵐のように激しく、巻き上がる土煙の中、攻防が繰り広げられていた。その光景を目の当たりにした二人の少女達はただ唖然としていた。自分達では歯が立たなかった相手をいとも容易くあしらう弟分を見て、彼女達が感じたのは嫉妬よりも先に、歯がゆさだった。自分たちよりも年若い弟分に守られているという現実。それは二人にとって耐え難い苦痛であった。

 

槍と大剣が激しくぶつかり合い、互いに弾き合う。そして間髪入れずに繰り出されるアルの連続攻撃に防戦一方となるヴァレッタは苛立ちを募らせていく。

 

「(ちぃっ!! このクソガキがァ!!)」

 

 言動こそ荒々しいがヴァレッタは闇派閥の頭脳であり参謀役でもある。故に彼女は冷静に戦況を把握していた。自分が押し込まれていることを理解した上で、この場に【ロキ・ファミリア】の援軍が迫ってきていることも悟っていた。だからこそ、この状況を打破するにはどうすればいいのか、思考を巡らせていた。

 

そうしている間にも、アルの攻撃の手は緩まない。むしろ加速していく。このままでは敗北すると判断するが、打開策は見つからない。ならばと、大剣に込められた力を更に強め、その反動を利用して後方へと飛び退く。突然の行動に意表を衝かれたアルは一瞬の隙を生み出してしまい、その隙を逃さず、ヴァレッタはニヤリと口角を上げて大剣をアリーゼ達に向けて投げつけた。

 

アリーゼは慌ててリューを抱き締め、そのまま地面に伏せる。舌打ちしたアルは同じく銀槍を振り絞って投擲。回転しながら迫る大剣を打ち砕くも、その時には既にヴァレッタは逃げきっていた。

 

「クソガキが!! てめーのせいで計画が台無しだ!! 絶ッ対にてめーは殺すからなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「·······神エレン、ありがとうございます。手を貸してくださって───」

 

「いやいや、気にしないでいいよ、リオンちゃん。俺はただ、君達に謝りに来ただけだからさ」

 

「えっ·····?」

 

「俺もさ、君たちの真似をして、さっきの子以外も助けてみたんだ。それで、俺もようやくわかったよ。────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! 充足するよ、嬉しいね、これは病みつきになってしまう!」

 

 ヴァレッタ率いる闇派閥の者たちによって巻き起こされた惨劇。巻き込まれた市民の数は多く、分担してその救援を行っていた【アストレア・ファミリア】だったが、その中でリューは足を怪我した子供の治療を行っていたエレンと名乗る糸目の神と相対していた。

 

「何、を······」

 

「ごめんよ、君達の行いを『見返りのない奉仕』だなんて言って。確かにこれは無償なんかじゃなかった!!」

 

「ちゃんと『代価』はある! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! ()()()()()()()()()()!! ()()()()()()()()()()()!!」

 

 狂気じみた笑みを浮かべながら、両手を広げて語るエレンにリューは得体の知れない恐怖を感じた。まるで狂人のような発言内容だが、それを本気で言っているようにしか思えないのだ。

 

「それはこんなにも気持ちいい! いやあ、早く教えてくれれば良かったのに〜。君達の献身は全然不健全じゃない。やっぱり、全知だからといって『知ったか』はダメだね。行動も伴って初めて『実感』できる。神ながら学ばせてもらったよ」

 

「·······ください」

 

「ん?」

 

「─────取り消してくださいッ!!」

 

 人ならざる神たる視点で自分達の志を嘲るエレンに対し、敵意すらこもった目を向けるリューはついに激昂する。アストレアが、アリーゼが、皆が掲げる『正義』とはそのような俗らしいものではない。

 

「───なにを」

 

 その言葉とともにスッ、と 神の目が一瞬、開かれたが激昂するリューはその観察するような神の目に気が付かない。

 

「たった今、貴方が吐いた侮辱を!! 私達は自尊心のために『正義』を利用しているのではない!!」

 

「ええぇ? 本当に〜? じゃあ、君達はなんのために戦っているの?」

 

「くどい!! 都市の平和のため、秩序をもたらすためだ。たった今、私達の周囲に広がるこの光景を撲滅せんが故だ!!」

 

「それが『自己満足』なんじゃないの?」

 

「なっ───」

 

「富と名誉だけでなく、一時の感謝すら求めていないというのなら。君達の言う『正義』とは真実、ただの『孤独』じゃないか」

 

「黙れ!!」

 

「怒らないでくれよ、エルフの子供。ただの神の酔狂さ。だから、心して自分に問うて、答えてくれよ。────君達の『正義』とは一体何なんだ?」

 

「もし、答えられないというのなら、君の言う『正義』とは悪以上に歪で悍ましいものだ」

 

「───貴方はぁああああああああああああッ!!」

 

「簡単に乗せられすぎだ、だからお前はポンコツなんだよ」

 

 周囲の救護を終えたアルがエレンへ掴みかかろうとしたリューの首根っこを後ろからつかんで止めた。いきなり素肌を触られたことに頬を染めるリューだったがポンコツ扱いに怒る。そんなリューの事を忘れたのかのように視界から外した神エレンは先程までのおちゃらけた態度を一変させ、信者へ信託をくだすかのような神らしい荘厳さをもってアルヘ語りかける。

 

「やあ、アル君。ちょうどいい、最新の『英雄』たる君にこそ聞いてみたかったんだ。君の『正義』って何かな? どうして君は人を助けるんだい?」

 

「アホか。そんな面倒なこと、俺がいちいち考えてるわけねぇだろ。······あえて言うなら、───からだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナイフを捨てて!! 戦っちゃダメだ!! 君みたいな子に武器をもたせる大人の言うことなんか、聞いちゃいけない!!」

 

「私は君を傷つけたりしないよ? さあ、こっちへ───」

 

 アーディは闇派閥との戦いの中、信者特有の白いローブを着た少女を保護しようとする。いくら闇派閥に属しているとはいえ、こんな年端もいかない小さな子供を、利用されているだけであろう子供を敵として扱うことはできない。

 

そう思い少女へ駆け寄るアーディだったが、戦場の端から凄まじい速さで飛んできた白い影によって突き飛ばされる。そして────。

 

 

 

 カチッ─────

 

 

 

「───ア、ルくん?」

 

「え、あ、うそ。私、を庇って·····?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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