皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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四章完結記念五十話 槍天哄笑・前

 

 

 

 

爆炎が激音とともに立ち昇る。上級冒険者すらも殺しきる灼熱の奔流が石畳を嘗め、周囲の者たちの肌を焼いていく。深層のドロップアイテムから作られたその爆弾は小規模ながら人一人を焼き殺すには十分過ぎる威力を持っていた。

 

爆炎を孕んだ閃光と熱風の中、爆熱と衝撃に空気が揺れ、石畳の破片が飛び散り、黒煙が周囲に満ちていく。

 

「え、あ、うそ。私、を庇って···········?」 

 

 突き飛ばされたアーディの視線の先、先程まで自分が立っていた場所には、灼熱の奔流の中心には自身を突き飛ばしたまま、灼熱に焼かれる少年の姿が────。

 

 

「──────ヒャハ、ァ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハァッ!!」

 

 

「見てるかァ、タナトスのクソ野郎!! てめーがたぶらかしたガキが、第一級冒険者を道連れにしたぞォ!!あひゃ、ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははぁ───!!!!」

 

 それを見ていたヴァレッタがたまらず剣を肩にのせながら哄笑を響かせる。

 

毒々しい薄紅の頭髪を掻きむしるようにしながら高らかに笑う彼女は、まるで勝ち誇ったかのように歓喜の声を上げていた。

 

その笑い声は戦場中に響き渡り、またたく間に冒険者たちに混乱を撒き散らす。

 

「···········うそだ」

 

「────ッッ!! アリーゼ、輝夜ァ!! 倒れてる連中から離れろぉ!!」

  

 自分たちの最強が、【アストレア・ファミリア】の仲間が、自分よりも年下の少年が焼かれる様に近くで戦っていたリューは我を失い、アルヘ駆け寄ろうとする。

 

焦げた鮮血の臭いが立ち込める中、爆発の中心部は漂う黒煙りでよく見えないがその竜の顎で齧り取られたかのように抉り取られた床や壁からまともに『残骸』が残っているかも怪しい。

 

そんな光景を前にしてリューの思考が真っ白に染まる。

 

誰よりも早く、自身を弱者だと自覚しているがゆえにもっとも早く正気に戻った小人族のライラは駆け寄ろうとするリューの腕を掴み止めながら仲間に叫ぶ。

 

【量より質】の神時代においてなお、雑兵、中には恩恵を受けてすらいない者が混じっていたりもしたのは自決装置を身に着けた死兵とするため。

 

─────『冒険者を道連れに死んだ暁には死んだ家族や愛する者と再会させてあげよう』

 

そんな邪神の言葉に魅入られた信者達。

 

「「───────ッ?!」」

 

「主よ············この命、どうか愛しき者のもとへ────!!」

 

 始まりの一発としたのかアリーゼたちのもとに限らず、戦場のあらゆるところで()()が弾け、巻き込まれた冒険者たちの悲鳴が広がり始める。

 

『殺帝』の呵々大笑が響く中、戦場全体が混沌へと突き落とされる。

 

闇派閥の雑兵たちは質はともかく、単純な数では冒険者たちを遥かに上回っている。まさに火がついたかのように各地で爆音が多重に響き渡り始まればもはや戦況などあってないようなもの。

 

それは弟分の少年が死んでしまったという事実の前に呆然としていた【アストレア・ファミリア】にも容赦なく襲いかかってくる。

 

自爆兵による殺意の花火と炸裂する爆流により次々と巻き起こされる爆風に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

茫然自失とするアーディを庇う【ガネーシャ・ファミリア】も例外ではなく、衝撃と爆熱の炸裂に四方八方から襲い来る破片が彼らを打ち据える。

 

誘爆に重なる誘爆によって倉庫の壁が次々と砕かれていき、降り注ぐ瓦礫とともに土煙が舞い上がる。

 

「(全敵兵一斉起爆────施設が持たない────建物ごと、私達を押し潰して────!!)シャクティ、ライラ、脱出!!」

 

「わかってる!! けどっ·············リオン、アーディ、よせ!! やめろ!!」

 

 火がついた爆竹のように連続して鳴り響き、未だ途絶えない爆炎の嵐に敵の目的が読めた幾人かは建物からの脱出を試み始める。

 

爆弾は連鎖的に爆発を起こし続け、建物が崩壊を始める。既に出口はヴァレッタによって塞がれている。このままでは生き埋めにされてしまう。

 

未だ仲間を失ったことに呆然としている【アストレア・ファミリア】の中で最も早くそれに気がついたアリーゼとライラは未だ、アルのもとへ行こうとするリューと、シャクティによってその場から無理やり引き剥がされたアーディへ叫ぶ。

 

アリーゼも、ライラも、そして唯一のLv4であるシャクティですら最高戦力であったアルを失ってしまった今、もはや自分達にできることは被害を最小限に逃走することだけだと理解出来ていた。

 

「───アルッ!!」

 

「うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそッッッ?!なんで私を庇ったの?!?!」

 

「あのクソガキを()()()()()()()? それは───」

 

 普段は冷徹な輝夜が珍しく感情を露わに葛藤に瞳を揺らす。

 

「〜~~ッ わぁってるよ!! けど、行くな、行けるかよっ!! アタシ等まで生き埋めになるぞ!!」

 

 鳴り響く爆炎のコンサートに紛れて響く悲痛なる叫び声。

 

崩れ落ちる建物の中、頭をかきむしりながら血を吐いて非情な指示を下す参謀役の姿にアリーゼが、輝夜が歯を食いしばりながら動き出し、リューを、アーディを連れて建物から脱出する。

 

─────────倒れ伏すアルをその場に置き去りにして。

 

「いやぁああああああああああああああああッ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「────い〜い合唱じゃあねぇか!! 最高だァ!! ずぅっとこれがやりたかったんだァ!!」

 

「さぁ、宴の始まりだ!! いい声で哭け!! そして死ね!! ハハハハハハハハハハッ!!」

 

「一人たりとも逃がすかよ。民衆も、冒険者も、神々さえも、全員皆殺しだ!! なんてったって、これは悪と正義の『大抗争』だからなあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────フィルヴィス!!お前はもう、休んでろ!! さっき精神疲弊を起こしかけただろう!!」

 

「っ·············いいえっ!! 私も戦います!! 戦ってみせます!!」

 

 戦場の一角、闇派閥を相手に塹壕戦でもあるかのように煤にまみれながら戦う中規模の一団があった。

 

彼等は【デュオニュソス・ファミリア】。主神であるデュオニュソスを敬愛し、彼のためなら命をも投げ出すという覚悟を持った団員達の集まり。

 

その士気は極めて高く、オラリオを守るため、ここで負けるわけにはいかないと誰もが全力を尽くして奮闘していた。

 

そんなファミリアの団長に首を横に振ったのは幼いとすら言える若さのエルフの少女だった。

 

フィルヴィスと呼ばれた少女は、この場にいる誰よりも若い。

 

『穢れ』とは無縁な美しい濡羽色の髪をたなびかせ、妖精を思わせる美貌を煤に汚しながらも、その赤緋色の瞳は爛々と燃え盛っている。

 

成長すれば高潔で怜麗な妖精となるであろう容姿。年若いながらにファミリアの戦力を担う彼女は魔導士としての実力を遺憾なく発揮してみせる。

 

「このオラリオを闇派閥から護る戦いに、私だけ休んでいるわけにはいかない!! あの方も!!ディオニュソス様もこの凄惨な戦いに胸を痛められているに違いありません!! 支援でも、防御でも、攻撃でも、何でもやってみせます!!」

 

 彼女の名はフィルヴィス・シャリア。白い巫女服を思わせる戦闘衣に身を包み、大聖樹のワンドを構えると、迫り来る闇派閥の雑兵たちを見据えて詠唱を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「都市の北部には【フレイヤ・ファミリア】の予備隊、第一級冒険者達が布陣している!! ギルド及び工業区の防衛はすべて任せる!! 援軍は送らない!! もしものときは『白妖の魔杖』の指示を仰げ!! 北の指揮の全権を彼に委ねる!!」

 

 都市の最終防衛ラインであり、本拠地とも言えるバベルの直前のセントラルパーク。そこでは数少ない第一級冒険者であり、この戦いの最高指揮官である【ロキ・ファミリア】団長、フィン・ディムナが戦場の状況伝令に来るあらゆる派閥者たちに指令を下していた。

 

「都市南方の攻勢が激しい!! 【イシュタル・ファミリア】の戦闘娼婦、【ヘファイストス・ファミリア】の椿たちも向かわせろ!! 南から南西にかけて戦力を集中させる!!」

 

「(こちらの被害はすでに甚大。が、()()()()()。第一級冒険者を中心に展開すれば、彼我の戦力差ならば覆せる。ここは迷宮都市オラリオだ。都市全体を巻き込もうと総力戦になれば敵う勢力は存在しない。闇派閥もそれはわかっているはず)」

 

 撃鉄装置と火炎石による雑兵の自決自爆。上級冒険者をも殺し得るその威力は相手が一切躊躇わずに使ってくることも考えれば極めて脅威だ。すでに多くの被害者が出ている。

 

しかし、ここは未知を敵とする冒険者たちの都。爆発の威力こそ高いがそれを身に着けているのは一般人に毛が生えた程度の雑兵。

 

自決装置をつけた死兵への対策法はすぐに確立され、方々では魔剣や魔法、弓矢などの遠距離攻撃で死兵を刈っている。自爆の恐怖と脅威が通用するのは最初だけ、このまま戦いが続けばそれなりの被害こそ出るだろうが、この戦いはフィンたちの勝利で終わる。

 

結局のところ神時代の戦いは『量より質』。

 

【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の二大派閥が抱える第一級冒険者や【ガネーシャ・ファミリア】や【イシュタル・ファミリア】などの有力派閥のLv4の第二級冒険者を突き崩す戦力があちらになければ、いくらでも対処できる。

 

だからこそ、今この場で最も重要なことは敵の主力である第一級冒険者級の信徒の動きを把握して封じること。そして都市全体の防衛線を維持することなのだ。

 

都市全体で防衛戦を行うならともかく、一点突破で都市攻略を狙う敵を各個撃破するのは容易い。故に、まずは都市の南方から攻め入る敵を抑え込む必要がある。そうすれば、北方と東方にも十分な余裕ができるはずだからだ。

 

注視すべきは第一級冒険者級の戦力。

 

闇派閥の頭脳であり、殺戮を何より愛する凶女、ヴァレッタ。

 

そして闇派閥の中であってなお、過激派と畏怖される二大派閥の団長。

 

闇派閥屈指の実力者を有する不正を司る闇派閥の蹂躙専門派閥、【アパテー・ファミリア】の事実上の団長である醜悪な老獣人、バスラム。

 

最低最悪の妖魔を抱える不止を司る闇派閥の超武闘派、【アレクト・ファミリア】の団長と副団長、ディース姉妹。

 

どちらもヴァレッタと並んで罪なき人々を殺めている狂人たちであり、ここで潰しておくべき相手だ。

 

「(指の疼きは強くなる一方········ここから一体何を仕掛けてくる?)」

 

 それが故にそれをフィンと同じように理解しているはずの敵の指揮官である闇派閥幹部、ヴァレッタの考えが読めない。そして、フィンの勘はまだ、『これから』だと囁いている。

 

「だ、団長ぉ!! 南西で持ちこたえたファミリアが壊滅!! 上級冒険者が············全員、やられたっすッ!!」

 

「······!! ヴァレッタか?」

 

「·······違うっす!!」

 

 そのフィンの勘が的中したのか泡をくいながら駆け寄ってきたラウルの報告に目をむく。少なくない数の上級冒険者の壊滅、それは間違いなく自決装置によるものではなく、強大な個。

 

恐らくは敵の第一級冒険者相当の幹部たちの仕業だと当たりをつけたフィンだったが、今回ばかりはその神がかった予見も外れる。

 

「大剣を持った戦士と············女の魔導士に············一瞬でたった二人に、やられたっす···········」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには惨状が広がっていた。闇派閥の自爆兵達は、冒険者達を道連れにすべく、自らが持つ武器の導火線に着火し、次々に爆散していく。

 

それは戦場に咲いた血華の如く、美しくも残酷な光景だった。その死の火は冒険者だけでなく、街を、民衆を、焼き尽くさんと広がっていく。

 

都市は燃え上がり、建物は崩れ落ちていく。火の手は瞬く間に広がり、人々は逃げ惑う。

 

その様はまるで地獄絵図。ある者は自らの命を燃やして、家族の元へ逝こうとし、またある者は自らの命を犠牲に、愛する者を守ろうとする。

 

闇派閥の雑兵はただひたすらに、死を恐れず、死ぬことこそが救いだと言わんばかりに、その身を賭して死んでいく。

 

そんな彼らの最期を見届けるかのように爆音が轟き、人々の恐怖を掻き立てて無辜の命を摘む。

 

だが、そんな混乱の最中でも、冒険者たちは懸命に戦っていた。

 

爆音、爆煙、血煙が舞い踊る中、彼らは果敢に戦い続ける。自爆兵が放つ閃光と、爆発。そして悲鳴と怒号が飛び交う中で、彼らは決死の覚悟で戦い続けた。

 

しかし、実力差を覆すほどの数の差が、冒険者と自爆兵の間にはあった。

 

やがて限界を迎えて力尽きて倒れる冒険者、それを好機と見た闇派閥の雑兵が無慈悲に刃を突き立て、その命を奪う。

 

阿鼻叫喚の地獄絵図。

 

「················」

 

 そんな中でただ一人、まるで無関係だと言わんばかりの静寂を保ちながら佇んでいた。

 

ローブの隙間から覗く瞳には感情の色はなく、目の前に広がる戦場の光景になんら興味を示すこともなく、ただ立ち尽くすのみ。

 

耳を澄ませれば、あちこちで爆音が聞こえる。遠くからは悲鳴や、剣戟の音、魔法による戦闘の気配。それでも彼女は微動だにしない。

 

惨状の只中にあって『静寂』を体現するかのように、ただ静かにそこにいるだけ。

 

「何を、している」

 

 その『静寂』を破るように響く冷涼な声。それが自分に向けられていることを察した女は、ようやく反応を見せる。

 

ゆっくりと振り返った彼女の視線の先には翡翠の髪を持つ【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者。女神が嫉妬するほどの美貌を誇るハイエルフ、リヴェリア・リヨス・アールヴの姿があった。

 

彼女の背後には同じく【ロキ・ファミリア】の主力であるドワーフの戦士、ガレス・ランドロックが戦斧を手に険しい表情を浮かべている。

 

二人共、この戦場の中で唯一、この女だけが異質であることに気づいていた。そして、この戦場において何よりも優先すべきことがあることも。

 

「忌むべき雑音、だが、二度と聞くことのない旋律。それに耳を傾けている。私なりの拝聴にして黙祷だ」

 

 リヴェリアの纏う暴風のような魔力にも、ガレスの殺気にも、女の態度は変わらない。

 

感情の乗らない平坦で無機質な声で、淡々と言葉を紡ぐ。それは二人の問いに対する答えとしてはあまりにも要領を得ないもの。

 

「いくら煩わしくとも、いざ失われるとなれば惜しむ。それが人だろう───?」

 

 凪いだ湖面のように静かな声が、周囲の喧騒の中で奇妙なほどに響いて聞こえた。その言葉は、どこか自分自身に対して言い聞かせるような響きを含んでいる。

 

「───貴様の所業は、人のそれではない。貴様の足元に広がっているもの、それは何だ?」

 

 怒気を孕んだ声が、女の胸を刺す。しかし、女は動揺すら見せない。リヴェリアの怒りなど意に介さず、彼女は淡々と語る。

 

「────沢山の死骸(ガラクタ)

 

 女の足元には竜の顎に咀嚼でもされたかのように『ぐしゃぐしゃ』となった男女の死体。

 

さらに、その周囲には手足を吹き飛ばされ、胴体に大穴を空けられ、内臓を撒き散らしながら絶命している冒険者の姿がある。

 

そのいずれもが、つい先程まで生きていた者達。それをまるで路傍の石ころを見るような冷たい眼差しで見下ろし、 女は無感情に、まるで当たり前のことを口にするように。

 

「────もういい、己の命をもってその非道を償え!! 【吹雪け、三度の厳冬────我が名はアールヴ】!! 【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 怒りをそのまま詠唱に乗せ、翡翠色の魔法円を展開するリヴェリア。その手に持つ杖の先端に宿る氷結の魔力は瞬時に発動し、女に向けて絶対零度の凍気が放たれる。

 

吹き荒れる豪雪と凍てつく猛風。絶対零度の嵐が女を呑み込もうと襲いかかるが、 女は手を掲げると、静かに一言、呟いた。

 

────────────【魂の平静(アタラクシア)

 

瞬間、女に迫りくる極寒の嵐を全てが静止した。いや、正確には違う。

リヴェリアの放った魔法が、冷気が消失したのだ。

 

不可視の壁にでもぶつかったかのように掻き消えるリヴェリアの魔法。

 

「相殺ッ?! ────いや、無効化?!」

 

 リヴェリアの翡翠の瞳が驚愕に染まり、限界まで開かれる。ありえない。ありえるはずがない。あの威力の魔法が、超短文詠唱としても短すぎる一言で打ち消されるなど。

 

そう、これは単純な魔法攻撃の相克による消滅ではなく、純粋なる『無効化』。

 

だが、そんな魔法効果そのものを打ち消すというあり得ない現象にリヴェリアは『既視感』を覚える。遥か昔に、似たような光景を見たことがあると。

 

そんなリヴェリアの思考を遮るように女は手をかざす。凄まじい速さで収束する魔力。

 

「お、おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお───ッ!!」

 

 その魔力の励起を察知したガレスが雄叫びを上げながら戦斧を振りかぶり突進する。

 

しかし、動じることなく女は腕を振るう。その動作に合わせてこれまた、たったの一言で完成した魔力が振るわれる。

 

────────────【福音(ゴスペル)

 

「ぐああああああああああああああ?!」

 

「ガレス?!」

 

 次の瞬間、世界から音が消えた。否、音が炸裂した。音という概念そのものが破裂して消滅した。

 

音の衝撃波による轟雷が戦場を駆け抜けていく。それはドワーフの大戦士を容易く弾き飛ばし、決河の勢いで砲弾のように壁へ叩きつける。

 

耐久にステイタスを割り振った前衛特化の第一級冒険者ですら一撃でのしてしまう圧倒的な破壊力。

 

かろうじて斧を杖代わりに倒れず堪えたガレスだったが、その体は小刻みに震えている。そして、その衝撃波は余波でありながらもリヴェリアの全身を襲う。

 

「相変わらず、喧しい連中だ。8()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 破滅の喇叭をかき鳴らしたとは思えぬ静謐な声。戦慄するリヴェリア達を前に、女は淡々と言葉を紡ぐ。

 

魔法の『無効化』に破滅の喇叭、そのどちらもが恐るべきことにたったの一言で完成されていた。

 

「この魔法の破壊力·····まさか·······!!」

 

「この唯一無二の異能········貴様は!!」

 

 ローブに端から除く灰色の頭髪に、奥に光るヘテロクロミア。それはかつてオラリオに君臨していた最強の魔導士と同じ特徴。

 

「「────『静寂』のアルフィア!!」」

 

 二人の戦慄と畏怖に満ちた声が重なる。『絶望』の象徴たる女の名を叫ぶ。

 

返されるのは無言の肯定。その絶望に、リヴェリアとガレスは表情を大きく歪める。

 

「神時代以降、眷族の中で最も 『才能』 に愛された女。才能の権化にして、『才禍』の怪物!!」

 

 当時、弱冠十六歳で今のオラリオにはいない英雄の階梯、Lv.7に到達した元都市最強の魔導士。史高、にすら届き得たかもしれぬ天上の神才。

 

「生きていたのか、最強の女神の眷属(ヘラ・ファミリア)··········!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スーーーーーーーーーーーッ(深呼吸)

 

────さいっこう!!

 

うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!

 

ああその顔だ、その声が、欲しかったんだ!!

 

ああ、最高────────ッ!!

 

たまらねぇなぁ、あのアーディたちの顔はよぉ!!

 

ニヤケが止まらねぇ······。油断したら大笑いしちまいそうだ······。

 

このまま生き埋めになって死ぬのもいいんだけどォ。

 

『妖魔』でも、『精霊兵』でも、『暴食』でも───『静寂』でも。今のオラリオには()()はいくらでもある。

 

せっかくならもっと『盛大』に死んでやる!!

 

 





加筆が一万超えてちょっと長くなったので50話記念も兼ねて二話に分けました、次話もアストレアレコードです。ザルドおじさんは後編。




【シリアスとシリアル】
アーディ・リュー「いやああああああ──ッ」
フィルヴィス(12歳)「都市の安寧ために!!」
フィン「何が起きてるんだ?!」
リヴェ・ガレス「お、お前はッ?!」


アル「スーーーーーーーーッ(深呼吸)」

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