皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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ダンまちのキャラデザで一番好きなのはダフネです


五十九話 ▼会心の曇らせチャンス空回り

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン深層、未開拓領域。そこには本来、ダンジョンには入れぬはずの神とその()()·······仮面の怪人がいた。

 

その怪人は、全身を真っ黒なローブで包み込み、顔には不気味さ漂う黒い仮面を着けている。そして、その隣にいる神もまた、不気味さを漂わせる漆黒のローブに身を包んでいた。

 

『なぜ、魔石を喰らわない? 今更何を厭う』

 

 神威を完全に遮断する外套と仮面を被った神は悪魔のように囁く。仮面の下で不吉に口角を上げるその表情が、神威から漏れる邪気によって黒く塗り潰されていた。

 

全身を脈打つ緑肉に覆われ、その緑肉を通して強制的に魔石を取り込ませられている怪人は神の問いに答えず、ただ俯いていた。

 

腐敗した血の臭気が鼻腔を刺激する。まるで地獄だ。この光景を見て、そう思わない者などいないだろう。

 

胎盤のような肉塊に飲み込まれていく怪人。その様子を、神は愉悦に浸った笑みを浮かべながら見つめていた。

 

神にとって、人の死や苦痛は娯楽に過ぎない。望むのは狂乱という名の楽土のみ。

 

その神が求めるものは人の絶望と恐怖による愛しき狂乱の宴。それが神の目的だった。

 

秩序とはまるで無縁の無理解で冒涜的な狂気の世界こそ、神にとっては楽園であり理想郷なのだ。

 

故に神はその『世界のため』に行動し、邪魔をする者は誰であろうと排除する。神にとってそれは必然であり当然のこと。

 

神としての力は使えない。『神の力』を使ってオラリオを滅ぼしたとしても他の神によって全てなかったことにされてしまうからだ。だからと言って、全ての神を殺すことなどできるはずもない。

 

だからこそ神はこの迷宮都市を利用し、この下界の要素のみで世界を改変しようとしていたのだ。

 

だが、そんな神の思惑も一人の男の登場により打ち砕かれつつあった。それは───────

 

『あぁ、『剣聖』か』

 

 最強にして最恐の存在。万夫不当、一騎当千、不撓不屈、無双の英雄。人類最高峰であるLv.7に到達し、数々の偉業を成し遂げた最強の剣士。

 

彼の偉業は数知れないほど存在し、誰もがその名を知っている。そしてその存在に憧れを抱く者もまた多い。

 

『英雄譚』の主人公として相応しい存在、それが彼だ。下界の可能性を煮詰めたかのような存在でもある。

 

しかし、そんな存在がよりにもよってまさかこんなタイミングで現れるとは神にとっても予想外であった。

 

【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】という千年にも渡って目の上のたんこぶであった二大勢力が消され、その後釜となった道化師と美神の派閥は力不足。

 

神の計画は着実に進行していた。あと少し、もう少しで神の願いは叶うはずだった。なのに、それだというのにあの男は現れた。

 

最初はその瞳に宿る狂気こそ気に入ってはいたが、彼はただの子供に過ぎなかった。

 

その成長速度、その才能は紛れもなく天才の域を超えていた。いずれ神の領域に到達するであろう素質を持っていた。

 

それでも所詮は子供。その精神はまだ未熟で脆いものだと思っていた。だが違った。あの少年の魂には途方もない闇があった。

 

あれだけの負の感情を持ちながら何故、ああも真っ直ぐに生きられるのか。それは神の興味を引いた。だからこそ試練じみたことをして彼を試した。

 

彼はそのいずれもを容易く乗り越えた。あの時、アル・クラネルは確かに神の期待に応えてくれたのだ。それならばもっと面白いものを見せてくれるのではないか? そう思った結果が有様だ。

 

『(本当に忌々しい……)』

 

 神は舌打ちをしたくなる衝動を抑え込む。

 

たったの一年。

 

恩恵を受けたばかり12歳の子供はたったの一年で神をして警戒せざるをえない戦力、第一級冒険者の仲間入りを果たした。

 

そこで、Lv.5で止まるのであればまだよかったものをその翌年にはさらに悪いことに、そのLv.6の中でも上位に位置する怪物が生まれた。

 

真の意味での神殺しを成し、『三大冒険者依頼』にも並ぶ漆黒のモンスターを屠りし者。

 

そして極めつけに、その事件の解決によって、このオラリオに生きる全ての民に希望を与える結果となってしまった。

 

神ですら予測不可能な未知なる進化を遂げた新星。神でさえ予想できない未来を切り開く可能性。

 

そんな怪物がLv.6で止まるはずもなくそのまた翌年には英雄の領域たるLv.7に到達した。

 

これで終わりではない。オラリオに新たな風を呼び込んだだけに留まらず、更にその先へと進むかもしれない。

 

もはやこの都市は、ただのダンジョンの蓋ではなく、新たな時代を創るための舞台へと変貌しつつある。

 

彼はその台風の目になりうる存在だと、神は直感的に感じ取っていた。

 

『心配せずとも、お前は既に身も心も穢れきっている。何度、私の命で仲間を殺している? 今更取り繕ったところで『剣聖』の、お前の『憧憬』の隣になど立てるものか』

 

 そして、その危機感を上回る愉悦が神を包んでいた。神の巫女を利用して作り出す、この世に顕現してからずっと求め続けた狂宴。

 

その狂宴を彩るのは、愛の狂乱。巫女と英雄による愛憎の宴だ。その仮面の奥から滲み出る殺気と邪気は、既に狂気そのもの。神はその狂気を心地よく思いながらも、同時に英雄に対する恐怖を感じていた。その恐怖を振り払うように、神は声高らかに叫ぶ。

 

『『剣姫』が、【ロキ・ファミリア】が妬ましいか? 我が()()よ』

    

 『剣姫』、真っ当な闇の住民ならその名前を聞いただけで恐れおののくだろう。しかし、今の彼女は違う。彼女の心はとうに壊れており、その瞳には神への信仰と英雄への執着しか映っていない。

 

英雄の隣に立てる『剣姫』達への嫉妬と憎悪、それを糧として少女は精霊の力を受け入れ続けているのだ。それはまさに、悪循環の輪廻。

 

もうすでに、少女の心は限界を迎えていた。だがそれでも、彼女は壊れきらない。だって、彼女の手は彼女が求めるものにはもう届かない。

 

その事実こそが彼女にとっての唯一の救いであり、全てなのだ。だから、 だから、 だから、 だからこそ、 ──────

 

『目障りならば『剣姫』を、『勇者』を、『九魔姫』を、『豪傑』を、『凶狼』を、『大切断』を、『怒蛇』を───『千の妖精』を、他ならぬお前の手で殺すがいい』

 

 『諦めるな』、と神が毒を吐く。少女はもう笑うことさえ忘れてしまったかのように、表情を動かさない。

 

「·······そんな、私は、ただ」

 

『お前が望むのならば、あの男もお前と同じ『有様』にしてやろう』

 

 その言葉にピクリ、と仮面のように茨に覆われた怪人の相貌が歪む、それは嫌悪からか、それとも歓喜からなのかはわからない。

 

だが、その反応を見て神は満足げに嗤う。そして、少女は己の心に芽生えた小さな感情を自覚する。それはきっと、ほんの少しの、本当に些細なもの。

 

それでも、確かに少女の中でそれは生まれたのだ。少女は願ってしまった。

 

あの少年の心を自分の手で壊したい、その心に自分という存在を刻み込んで終わりたい。

 

あるいは、あの英雄に自分と同じような存在になって欲しい。そんな醜い願望を抱いてしまったのだ。

 

ああ、なんて浅ましく愚かしい願い。自分はこんなにも醜い人間だったのか、そう思ってしまうほどに少女は自分の心が汚く、黒く染まっていくのを感じた。

 

神はそんな彼女を嘲笑いながら、最後にこう言い残す。

 

『地が出たな。それでいい、繕うな』

 

『お前の『ソレ』は愛でも、恋でもない。ただの、呪いだ』

 

『────『剣聖』と共に果てろ。それであの者の魂は永遠にお前のものだ』

 

 

 

 

 

 

 

「─────あ、は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アル・クラネル

『Lv8』 

 力:I0→H103

 耐久:I0→I46

 器用:I0→G246

 敏捷:I0→H127

 魔力∶I0→I0

 

幸運︰D

直感︰F

耐異常︰D

疾走︰E

精癒︰F

剣聖︰I

神秘︰I

 

《魔法》

【サンダーボルト】

・速攻魔法

・雷属性

【レァ・ポイニクス】

・付与魔法

・火属性

・損傷回復

・毒、呪詛焼却

【リーヴ・ユグドラシル】

・広域攻撃魔法

・雷、火属性

・竜種及び漆黒のモンスターへ特攻

 

《スキル》

憧憬追想(メモリアフレーゼ)

・早熟する。

・目的を達成するまで効果持続。

・想いの丈に比例して効果向上。

天授才禍(サタナス・エフティーア)

・あらゆる技能の習熟が早まる。

・潜在能力(ステイタス)を限界まで引き出せる。

・戦闘時、発展アビリティ『剣士』の一時発現。

・戦闘時、発展アビリティ『魔導』の一時発現。

加護精霊(スピリット・エウロギア)

・対精霊で特殊な補正。

・精霊への特攻及び特防の獲得。

・各属性攻撃及び呪詛に対する耐性。

英雄覇道(アルケイデス)

・能動的行動に対するチャージ実行権。

・解放時における全アビリティ能力補正。

・能力補正はチャージ時間に比例。

・チャージ中、味方の戦意を向上させる鐘の音が響く。

闘争本能(スレイヤー)

・自動迎撃

・疲労に対する高耐性

・体力と精神力の急速回復

・逆境時、全アビリティ能力高域補正

 

 

 

「格下相手じゃこんなもんか」

 

「(めっちゃ上がっとる·······)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズは知っていた。

 

ベルがオラリオに来るずっと前からアルがそれとなくあの古教会に足を運んでいた事を。

 

最初にそれを目にした時、まだアイズはその教会がアルの母親の形見のようなものであるとは知らなかった。けれど、その背中を見た時に、何故かアイズの胸の奥はざわついていたのだ。

 

この教会になにかあるのか、とアイズが聞いても、アルは言葉を濁して答えなかった。だからきっと、それは何か特別なものなのだろうと、アイズはそう思っていた。

 

母親の形見だと知ったのはいつだったか、フィン達しかいない場で業を煮やしたティオナがアルに尋ねたのだ。

 

その時アルは、呟くようにオラリオにくる少し前に死んだ母親の形見のようなものだと教えてくれた。どうしてなのかはわからないけど、とても大切そうな顔をしていたのを覚えている

 

「(……私は)」

 

 自分の周りにはティオナやレフィーヤのように自分と違って明るくて元気な子達がいて、自分の周りはとても賑やかだ。でも、自分自身はどうだろうか?

 

確かにアイズは強い。剣技においてはオラリオの中でも五指に入るだろう。だが、それだけだ。ティオナのような明るさやフィンのようなカリスマのように人を惹き付ける力はない。

 

言いしれぬ孤独感、自分だけが周りから取り残されたような気がしてならなかった。

 

「(私だって……お母さんに……)」

 

 自分とアルは似ている、そう考えていた。境遇が似ていて、強さを追い求める姿勢も同じ、そしてお互い一人ぼっちだと思っていたからこそ、アルに自分を重ねて見ていたところもあったと思う。

 

あの教会が形見だと聞いてアイズは少しだけ複雑な気持ちになった。両親がいないのは自分もアルも同じだが、形見も何もない自分とちがってアルには形見がある。その事がどうしても羨ましいと思ってしまっていた。

 

今以上に幼かったアイズにはそれがなんでそんな感情になるのか理解できなかったし、その気持ちの正体はよくわかっていなかった。

 

だからそれを確かめるようにアイズはその教会を訪れてみた。それを何度か繰り返すうちにアイズはほんの少しだけその教会自体に複雑な想いを抱くようになった。

 

アイズは自分の心に昏い炎が灯るのを感じていた。その教会はどこか寂しくて、物悲しい雰囲気があってアイズが知らない誰かをアルが悼む場所を、自分ではない誰かのために存在するその場所を見て、ほんの少しだけ嫉妬してしまったのだ。

 

だからだろうか、【アポロン・ファミリア】によってあの教会が壊されたと聞いた時。

 

アイズは静かに昏い歓びを感じてしまった。仲間の大事なものを踏み躙った者達への憤りよりも先に、心の奥底では喜びの声を上げてしまっていたのだ。

 

その事に気づいた瞬間、アイズは自分に対して愕然とした。

 

自分はアルの事が大切だったはずなのに、こんな事を考えるなんておかしいと思った。

 

だけど、一度芽生えた黒い気持ちを抑える事はできなくて。

 

「········私」

 

 自分が醜くて嫌になってしまう。アルの事を大切に思っているはずなのに、それとは別のところで黒い感情を抱いてしまう自分が許せない。

 

そんな自分に嫌悪を抱きながら、それでもアイズはアルと一緒にいたいと願ってしまう。

 

アルといる時間は心地よくて楽しくて、もっと一緒に居たいと思える時間だ。それは他の仲間達も同じで、かけがえのない大切なものだ。

 

でも、それ以上にアイズはアルの隣にいたいと望んでしまった。

 

自分と同じ境遇にあるはずの彼が、自分と同じように家族を失って一人で苦しんでいる筈の彼の隣に、少しでも長く寄り添っていたいと感じてしまった。

 

けれど、その願いは叶わないかもしれない。そう考えるだけでアイズの胸の奥に痛みが生じる。

 

「(私は、どうすればいいんだろ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【アポロン・ファミリア】が【ヘスティア・ファミリア】にベル・クラネルを奪うために抗争を仕掛けたというニュースは瞬く間にオラリオ中に広まった。

 

アポロンの悪癖は誰しも知るところであるし、ベル自体あらゆる神が目をつけている。そのためか今回の件を聞いても驚いた神は少ない。むしろ納得する神々が多かったくらいだ。

 

アポロンの派閥は曲がりなりにも上級冒険者を複数抱えた中堅ファミリアであり、派閥としての規模も大きい。

 

それに対し【ヘスティア・ファミリア】は零細ファミリアで構成員もベルのみだ。普通に考えれば、どちらが勝つかなど火を見るより明らかだろう。

 

弱肉強食。強者に狙われては弱者は泣き寝入りするしかない。

 

通常、今回のように街中で抗争が起きた時点で野次馬根性逞しい神々は我先にと喜び勇んで観戦に向かうのだが、今回は少し事情が異なる。

 

本来ならば娯楽好きの神々は。

 

『アポロンがやらかしたァ!!』

 

『すっっげーイジメ!!』

 

『逆に見てみたい』

 

 などと好き勝手に囃し立てるはずなのだが、今回の一件ではそんな声はあまり聞かれなかった。

 

理由は簡単で、今回の件の中核たるベルの兄であるあの怪物の逆鱗に触れることを恐れた神がそれなりにいたためである。

 

ベル自体は確かに善良で無垢で、真っ直ぐな無害そのものといった少年だが、兄のほうは違う。

 

彼につけられた非公式二つ名は多い。

 

曰く───

 

『頭のおかしい白髪チーター』

 

『帰ってくる鉄砲玉EX』

 

『一人ワルプルギス』

 

『アフロさんが見たらハゲそうな方』

 

『屍山血河スターターキット』

 

などなど。

 

そのどれもが意味不明かつ物騒なものばかりであるが、一部には主神であるロキですら納得できるものもあったりする。

 

必要とあらば神殺しも辞さないと公言している───或いは邪神以上に───頭のネジが外れたような狂人だ。加えて、彼はアポロンに恨みがある。

 

一度目は派閥のしがらみもあって穏便に済ませたが、二度目ともなれば話は別だろう。

 

今回は相手が相手だけに何が起こるかわからない。下手をすればオラリオごと吹き飛ぶ可能性すらある。

それ故に、今回に限っては誰も彼もが遠巻きに様子見を決め込んでいた。

 

中には好奇心から見物に行く者もいないわけではないが、大半の者は我が身が可愛いため見送るのだった。

 

娯楽に飢えてはいても、流石に相手が相手なだけに迂闊な行動はできない。下手に介入すれば巻き添えで眷属もろとも消し炭になるかもしれないからだ。

 

しかし、それはあくまでも外野の話。当事者達は違った。まず、当事者の一人であるヘスティアは今頃になって怒りが湧き上がってきたのか顔を真っ赤にして震えていた。

 

ホームを壊されて黙っていることなどできないし、当然ながらかわいい眷属であるベルをアポロンなんぞに奪われるなど論外。

 

加えてヘスティアはアルのヤバさや今回のアポロン派閥の地雷原タップダンスのヤバさを理解できていない。

 

ここで誰から言い出すまでもなくデメテルやミアハなどを筆頭とした善なる神々の方針は決定した。

 

一つ、アポロンにベル・クラネルは渡さない。

 

二つ、静かにぶち切れてるロキとフレイヤはガネーシャを生贄にしてでも鎮める。

 

三つ、アルのことは極力刺激しない。

 

四つ、もしアルが暴れた場合はアポロン派閥だけでどうにか巻き添えを出さないようにしてもらう。

 

というわけで、その日のうちに緊急で神会が開廷された。場所はいつもの如くバベルの第三十階で議題はもちろんベルのこと。

 

「(どうしたらベルきゅんを守れますかね?)」

 

「(もういっそうちの子にしちゃえば?)」

 

「お前ら、一旦黙れや」

 

 コソコソと囁く神々に睨みを利かせつつ、ロキは言う。ちなみにヘスティアは最初から臨戦態勢であり、フーフーと息を荒げながら会議が始まるのを待っていた。

 

対してアポロンはというと、もうなるようになれといった感じに開き直っており、今回の件について全く気にしていない様子だ。

 

不幸にも司会役を押し付けられたヘルメスはきりきり痛む胃を押さえながらも会議を進める。

 

いかにしてロキとフレイヤを抑えつつ、綺麗に後腐れなくこの一件を終わらせるか。

 

それが今の彼の命題であった。

 

「(頼むからアルくんは冷静でいてくれよ······!!)」

 

 でも彼、ヘラの系譜なんだよなあ、と遠い目になりつつもヘルメスは思考を続ける。

 

ロキがキレているということは、アルもまたキレているということ。そして、今回の件で前科のあるアポロンに恨みを持つ彼が暴走しない保証はないのだ。

 

しかもアポロン派閥が壊した【ヘスティア・ファミリア】のホームは他でもないヘラ最弱の眷属であったアルとベルの母親、メーテリアが愛した古教会だ。

 

彼が既にブチギレていたとしても何らおかしくはない。

 

彼がその気になって暴れればそれを止められる者はいない。最悪の場合、同調したロキの眷属やフレイヤに命じられたエインヘリヤルが動くことも十分にあり得る。

 

そうなった場合は、間違いなく【アポロン・ファミリア】自体が消滅する。それだけで済めばいいが確実に巻き添えを食らって都市そのものにダメージがいく。

 

時に建前や立場よりもメンツを優先することのある冒険者は一度本気で怒らせると洒落にならないことを彼は知っていた。

 

最悪、本当に最悪だが、アルのご機嫌取りに誰かが犠牲になることも覚悟しなければならない。

 

それを防ぐにはヘルメス達外野の神々が上手く立ち回る必要があるのだが、そう簡単にはいかないのが世の常である。

 

しかし、だからといって喧嘩両成敗というのも如何なものか。そもそも、今回の一件では【アポロン・ファミリア】が全面的に悪い。

 

ここは大人らしく、穏便に、かつ完璧に、何事もなかったかのように収めるのが最善手。

 

ぶっちゃけ後々アポロン達が干されようとも知ったことではないし、自業自得だとすら思う。

 

ヘルメスがそんなふうに考え込んでいる間にも会議は進み、結論が出た。

 

それは──────。

 

 

 

 

 

おっ、ダフネにカサンドラじゃん。

 

ん?謝罪?

 

あーいや、別に俺がやられたわけじゃないし、ベル自体が大怪我したわけでもないんなら俺からとやかく言うことはないよ。

 

·······え?教会?

 

いや、別にどうでもいいかな········。母親への情がないわけじゃないけど別れはちゃんと済ませてるから未練はないしな。

 

まあ、思うところが完全にないわけじゃないけど、あの教会ははなから壊れる前提だったから気にしてないよ。

 

········落とし所?

 

戦争遊戯でもやれば?

 

 

 

 

 

 

──────【アポロン・ファミリア】VS【ヘスティア・ファミリア】の戦争遊戯まであと一週間。

 

 

 

 




地の文が暴走して2万文字近く行ってしまったので削りました。
 
・アル
なお、教会行ってたのは聖地巡礼な模様

これまでにないほどにあらゆる方面から気を使われているくせにそれに気づかないアホ

はぁーーーっ、辞めたらその仕事(曇らせ)?

・アイズ
1.アルだけ形見あってずるい!!
2.アルが私の知らないモノに入れ込んでるのヤダな
3.壊れた!!やったぁ~
4.·····なんてことを思ってしまったんだ、私は

・ヘスティア&ベル
一番健全

・ロキ
勘違い。立場を優先して気持ちを押し殺してると思ってキレてる。

・リヴェリア
16歳の子供が親の形見を弟を狙う相手に壊されたのに立場を優先して我慢してる、だと?!

スーーーーーーーーー(深呼吸)、キレそう(キレてる)

・ヘルメス
ヘラの系譜だしな·······やべーよやべーよ 

・クサレ葡萄酒神
2つの意味で笑いが止まらない








・アポロン
  *'``・* 。
  |     `*。
 ,。∩      *    もうどうにでもな~れ
+ (´・ω・`) *。+゚
`*。 ヽ、  つ *゚*
 `・+。*・' ゚⊃ +゚
 ☆   ∪~ 。*゚
  `・+。*・ ゚


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