皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
一旦、非公開にするか迷ってます。詳しくは活動報告を
『──────そうか、壊れたか』
『なに、カサンドラのせいじゃない、気にするな』
なぜ、貴方はそこまで優しくあれるのか。どうして、そんなに簡単に私を許せるのか。
『いや、いい。どちらにせよ、形見と知っていて放置していた俺になにかを想う資格はない』
なら、なんでそんなに儚げな表情をするの? 繕ったかのような笑みを浮かべてまるで、己の罪を受け入れているかのように。
『········それに
私は【ロキ・ファミリア】のホームに行って貴方に謝るのが怖かった。
貴方に嫌われたくなかった。この世で唯一の理解者を失いたくはなかった。拒絶されるのが嫌だった。
けれど、今は違う。
今は初めて見る儚げな貴方に図々しいとわかっていても寄り添ってあげたいと、心の底から思う。
よくわからないけどとりあえずそれっぽいこと言って哀しげな雰囲気作っとこ。
「ちゅーわけで、ウチからは戦争遊戯を提案するわ」
『戦争遊戯』。
何かしらの諍いの抱えたファミリアとファミリアが互いに公平なルールの元、ファミリアの眷属同士による決闘を行う事である。
神会で事前に取り決めを行い、勝負方法を決定する。勝負方法は様々なものがあり、例えば攻城戦であれば、相手側の城に攻め入り、相手のボスを討ち取れば勝ちとなる。
戦争遊戯に敗北したファミリアは勝ったファミリアの要求を絶対に呑まなければならない。
今回の【アポロン・ファミリア】と【ヘスティア・ファミリア】の騒動も例にもれず、この戦争遊戯によって決着をつける事をロキは提案した。
ロキはいつもの飄々とした笑みを浮かべているものの、その眼光は鋭く、有無を言わさぬ迫力がある。
「ロキ、それは───」
「じゃあ、どうする云うんや?まさか、このまま抗争を続けろっちゅうんか?」
ヘルメスの言葉を遮り、ロキが言い放つ。確かに、抗争を続けさせることはありえない。
だが、この提案には問題がある。ロキの提案する戦争遊戯では【ヘスティア・ファミリア】が負けかねず、ベルをアポロンに奪われる可能性が高いのだ。
それをまさかロキの方から提示してくるとは思わなかったヘルメス達は驚嘆していた。
「ちょ、ちょっとなんのつもりだい!!これはボクとベル君の問題でロキには関係ないだろう!!」
「悪いようにはせいへんから黙っとけ、
「───ッ」
天界きってのトリックスター、万物の終焉たる『黄昏』を運び込む悪神ロキが珍しく真剣な表情を見せる。
ロキはいつもふざけているが、決して根からの道化ではない。時には真剣に物事に取り組み、時にはかつてのような凶行に及ぶ事もある。
ロキの吹きすさぶ嵐のような神々しさと禍々しさが同居する神威にゼウスやヘラにも一目置かれている大神格であるヘスティアですら思わず息を飲み、同郷のフレイヤもそんなロキの姿に目を丸くしている。
「ええか、ドチビ。この件はお前だけの問題やない。ウチらにとっても他人事ちゃうねん」
「どういうことだい!?」
「新参のお前は知らんくてもしゃーないが、前にこのクソボケがウチのアルに手ぇ出そうとしよった時があったんや」
ロキが視線を向けた先にはもうどうにでもなれといった感じで投げやりになっている月桂樹の冠が特徴的な金髪の男神がいた。
男の名はアポロン。【アポロン・ファミリア】の主神である彼はバツが悪そうに、しかしどこか開き直っているような顔つきだ。
アポロンは以前、今回のベルのようにアルに目をつけて自分の派閥に取り込もうと画策した事がある。
最初、素直に勧誘した際は当然のように断られたのだが、それでも諦めの悪いアポロンは何度も手を変え品を変えてアプローチを掛けてきた。
そして、ついに強硬手段に出たアポロンは強引な勧誘でロキ達の怒りを買ったがロキ側も最大派閥としてのしがらみも有ったため、最終的にはアポロン側に多額の賠償金を支払わせるだけに留まった。
その時の事を思い出して不機嫌になったのか、ロキは不愉快そうな顔をして鼻を鳴らす。
一回目ならば許そう。だが、二度目はしがらみなんて知ったことか。そんなロキの気持ちを汲んだのか、ロキの隣にいるフレイヤが珍しく苦笑いを浮かべていた。
だが、ロキがキレているのは身内に二度も手を出されたメンツの問題ではなく、アポロンの眷属が【ヘスティア・ファミリア】のホームを壊したことが原因である。
【ヘスティア・ファミリア】の壊されたホームがアルの母の形見のようなものであることはロキの他には不本意ながらもヘラとの関わりがあったフレイヤとゼウスと繋がっているヘルメスくらいしか知らない事実であり、他の者達にとってはロキがここまで怒る理由がよくわからなかった。
とはいえ、その怒りようは相当なものであり、もしここでアポロンが下手なことを言った場合、今度は確実に道理などすっ飛ばして実力に物を言わせた報復に出るだろう事は容易に想像できる。
「アポロン、今回のことがお前の命令か、アホが勝手にやったことかは知らんし、どっちゃでもええ。重要なんはお前がウチらに喧嘩売ったちゅうことや」
ぴりぴりとした緊張感の中、ロキはアポロンを睨みつける。アポロンとしては命令した覚えはないのだが、今更何を言っても無駄なのは理解しているようで、観念したように肩をすくめる。
それがロキの言う通り、アポロンの意思なのかはわからないが、少なくとも今回の一件に関して眷属の独断専行だったとしてもそれは眷属の手綱を握れなかったアポロンの責任だ。
「子供のやったことは親の責任、そんくらい言わんでもわかるやろ」
「……ああ、それはそうだね。確かにその通りだ」
アポロンほど眷属への愛が深い神であれば、眷属が起こした不祥事は自分の責任だと言われずとも自覚しているしどうあれアポロンは自分のために動いた眷属達を咎めようとは思っていない。
今回は完全に自分に落ち度がある。だから、こうして大人しくロキの提案に異議を申し立てずに受け入れようとしているのだ。
しかし、それはそれで解せない。
なぜ、戦争遊戯なのだろうか。
それではアポロン側に
そもそもの話、今回のように完全にアポロン側に非がある以上はアポロン側に手を引かせた上で相応の賠償金をヘスティアへ支払わせれば済む話なのだ。
なのに、どうしてわざわざ戦争遊戯などを行わせてアポロン側が勝てる条件を提示してくるのだろうか。
ヘルメスがロキの狙いを考えていると、ロキは先程までとは打って変わって悪戯っぽい笑みを浮かべる。
まるでいつものヘルメスのような笑みだ。
「ウチも可笑しいとは思うわ。··········けど、他でもないアルの提案やからなぁ。」
「「「…………!!」」」
神々がこの件で慎重になっている原因であるナチュラルボーンバーサーカーにしてベルの兄のアルの名が挙がったことにヘスティア達は驚愕する。
「まぁ、それこそアルは『俺の決めることじゃない』って前置きしてたけどな────ドチビ」
「?」
「当然、今回みたいな場合は戦争遊戯なんざしないでアポロンに頭下げさせるのが普通や。ウチはアルに免じてこれ以上は口を挟まん」
「結局、決めるのはお前や、ここまで好き勝手言っとったが当事者はウチやなくお前達やからな」
けどな、とロキは続ける。そう、ここからが本題だとでも言いたいかのように。ロキの口元が裂けるように吊り上がる。
ヘルメスやヘスティアですら見たことのないような悪辣な表情だ。そんな表情のまま、ロキはこう続けた。
「抗争を止めに入ろうとしたリヴェリアへ言ったアルの言葉をそのまま伝えるで、これを眷属に言うかはお前の好きにせえ」
「『ベルが【アポロン・ファミリア】程度にやられる玉なわけあるか。アイツらなんざベルの経験値にしかならないんだからベルの成長の邪魔すんなよ』」
リヴェリア・リヨス・アールヴにとってアル・クラネルは手のかかりそうでかからない困った子供だった。
初めて会ったのは四年前、アルが12歳だった時のことだ。
まるで拾ってきた猫であるかのようにロキに抱えられてホームにやってきた少年を、リヴェリアは困惑しながら迎えたものだ。
アルへの第一印象は『危うい』だった。
色素の薄い肌に雪のような頭髪、そして何より目を引いたのはまるで世界全てを拒絶しているかのような、全てを憎んでいるかのような輝きを湛えた紅い瞳。
精巧な人形のような美しさと儚さを持ったその容姿から滲み出る雰囲気は、触れれば壊れてしまいそうなほど脆く感じられた。
リヴェリアがかつてのアイズを想起してしまったのも無理はないと言えるだろう。だが、そんな第一印象に反して、アルという少年には異常なまでの芯の強さがあった。
それは折れることを知らない不屈の精神であり、それを支える強固な意志でもあった。
所作の一つ一つに感じられる言語を絶する才覚は間違いなく天才と呼ぶに相応しいものであり、同時に、何か大きなものを抱え込んでしまっているように思えてならなかったのだ。
アイズと同じように、或いはアイズ以上に強さを求道し続けるその姿は、どこか痛々しくもあった。
ダンジョンに潜らない日はなく、寝る間も惜しんで剣を振り続ける姿を見た時は流石に見過ごせず、半ば無理やり休ませたこともある。
いくらリヴェリアやロキが制止しても構わず、一歩間違えば死ぬような目に遭っても些かも揺らぐことのない強さへの渇望はアイズが霞むほどだった。
折れてしまいそうな細い身体を狂気にも迫る強い想いで支えて、ただひたすらに突き進む。
決して弱音を吐かず、涙を見せず、ただひたすらに上だけを見据えて進み続けた少年の姿は、尊敬を通り越してある種の畏怖すら覚えた程だ。
そんなアルを見て、リヴェリアはこの子供がいつか壊れてしまうのではないかと思ったものだ。だからといって放っておくわけにもいかない。
ファミリアは家族なのだ。ならば助け合うのが当然である。そんな思いもあって、いつしかリヴェリアはフィン達に言われるまでもなく自らアルの教育係を買って出ていた。
········上手くはいかなかった。
リヴェリアはかつてのアイズ以上に厳しく接したつもりだったのだが、アルにとってはそれでもまだ甘かったらしい。
そしてアルは異様なまでに物覚えが良く、一度教えたことは二度と忘れなかった。
その異常な学習能力の高さは、ある意味でモンスターじみた才能と言ってもいいかもしれない。
狂気さと勤勉さが同居しているかの如き異常性は、最早恐怖を覚えるレベルであった。しかし一方で、アルの感情表現は非常に乏しかった。
表情の変化が乏しく、言葉数も少ないため何を考えているのか分かりにくい上に、喜怒哀楽の表現も乏しい。
アイズのように自己表現が苦手なわけではなく、そもそもの感情表現の仕方が分からないようだった。そのせいだろうか、時折見せる悲しげな表情が余計に痛々しいものに見えたのは。
誰にも寄らず、誰にも頼ろうとしない孤独な少年。それが当時のアルに対する評価だった。
だからこそ、あの時はとても驚いたものだった。
アルがファミリアに入って三週間ほどたったある日。あまりに過ぎる単独行動に業を煮やしたリヴェリアがむりやり組ませたパーティーが上層に現れた強化種のインファント・ドラゴンに襲われた。
その時リヴェリア達は不在だったため詳細は知らないが、なんでもアルはその戦いで殿となってパーティーの仲間を逃そうとしたらしい。
逃げ出した仲間の武器を使い捨てながら圧倒的格上であるはずのインファント・ドラゴンを相手に奮戦し、最後には相打ちに近い形でインファント・ドラゴンを討伐したという。
その話を聞いた時には耳を疑ったものだ。恩恵を受けたばかりの少年がLv2の上級冒険者ですら逃げ帰るドラゴンを相手取って勝利できるなど到底信じられない話だったからだ。
無論、勝利の代償にアルは瀕死の重傷を負って血に塗れたボロ雑巾のような姿で地上へと戻ってきた。
即座に【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院に担ぎ込まれたため、大事には至っていなかったものの、下手をすれば死んでいた可能性だってあっただろう。
その後、アルはロキによって強制的に休まされ、治療を終えた後は暫くの間療養することになった。
自分の身よりも仲間の命を優先し、結果として命を落とすことになったとしても厭わない。
それは正に英雄の生き様と呼ぶに相応しいものではあるが、同時にとても危うい生き方でもあるとリヴェリアは知っている。
光と闇、どちらに転んでもおかしくない危うさと紛れもない英雄の器を兼ね備えた少年。この子にはきっと何かがある。何か大きなものを秘めている。そう確信していた。
史上最速でランクアップを果たしたアルはそれから数年、瞬く間にいくつもの偉業を成し遂げ、ついにはオラリオ最強の片割れにまで上り詰めた。
どこかあどけなさを残しながらも凛とした雰囲気を纏い、英雄の風格さえ漂わせるようになったアルに誰もが羨望と憧憬を向ける。
だが、リヴェリアはフィンやアイズのようにアルを英雄視することはできなかった。
リヴェリアは知っている。
アルが孤独な子供だったことを。
アルの痛ましいまでに強さを求める姿を。
·······アルがまだ、16歳の子供だということを。
「私はお前が弱音を吐いたところを見たことがないな」
命を削るかのような戦いの日々、アルがその五体を血に染めぬ日はなかった。私の頭をアイズですらここまで苛烈ではなかったと悩ませる剣の申し子。
かつてのアイズと違うところがあるとすれば学習意欲の高さと暴力的なまでの才能。
戦いばかりを求めて机へ向かうことに強い忌避感を持っていたアイズとは違い、私が言えば特に抵抗もせずに筆をもった。そして、その学習速度はあらかじめ知っていたかのように早かった。
そして、才能。『恩恵』を刻まれた瞬間から魔法とスキルを複数発現させ、そのステイタスの伸びは成長ではなく跳躍の域だ。世界最速記録を持つアイズを遥かに上回る成長速度と急進するステイタスに振り回されない戦いの技巧。
何よりも違うのはその、『理由』の無さ。
モンスターを何より恨み、それだけの過去と理由を持つアイズとは違い、アルにはそれらしい強くなるための理由がない。無論、かつてのアイズ以上の苛烈さに理由がないなど、ありえない。
それだけの熱意がありながらそれを表に悟らせない理性。いずれをとっても幾百、幾千の冒険者を見てきた私ですら測れない『異端』。
しかし、それでも、それでも、アルはまだ16歳なのだ。その年齢で背負わなくていい重荷を背負っている。そんなアルの姿を見る度に胸が締め付けられるような思いになる。
どうして、自分を犠牲にしてでも強くなろうとするのか。その答えはアルにしか分からない。
「··············私はお前からすれば頼りない、のだろうな」
年長者として、家族として、もっと頼って欲しいと思うのは我がままだろうか? いや、きっとそうなのだろう。
心のなかではどう思っていたとしても先日の59階層での戦いのように守られているのはこちらの方であり、アルにはいつも助けてもらってばかりで、頼りっぱなしなのはこちら側なのだ。
英雄譚に登場する英傑とは、常に孤高の存在だった。しかし、それは必ずしも孤独と同義なわけではない。
········アルにもいつか、誰かを頼れる時が来るのだろうか。
だが、そうだとしてもその相手は─────
「私ではないだろう」
現に自分は母親の形見を壊されたことよりも『英雄』としての立場を優先している『子供』に何もしてやれていないのだから。
・白髪のバカ
習慣の勝利(気づいてない)
ベートショックのせいで無気力になって曇らせセンサーの精度が落ちてる。
・ロキ
白髪のバカ、そこまで考えてないと思うよ
・ベル
画面外で憧憬ブーストエンジンにガゾリン
・リヴェリア
ママ
・カサンドラ
ママみ
・ダフネ
巻き添え。ターゲティングされたかもしれない。
・アポロン
* + 巛 ヽ
〒 ! + 。 + 。 * 。
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* + / / アルぎゅんサイコォォォォオオオオオオオオオ!!!
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