皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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ダンメモ再開したけどファミリア所属しないとなあ、ランク100行ってないけどいいとこないかな


六十七話 あ、そういうのは求めてないです

 

 

 

「よし、これで最後か?」

 

「ぐっ、ぐうっ······!!」

 

 一人、また一人と()()で自分のもとを離れていき、しまいには全員アルの方へ向かった美姫達に歯噛みするテッドだったが今のテッドにこの状況を打開するすべはない。

 

そうこうしている間にも、最後の一人の美女がアルのもとへ行き、テッドの周りには気を失った用心棒と青い顔で震える給仕の男のみとなっていた。

 

もはや、勝負にすらなっていない賭け事の結果と倒れ伏す用心棒の姿に、テッドは怒りを通り越して恐怖を抱いていた。

 

倒れ伏す用心棒の中にはランクアップを果たした猛者もいる。それがひとりでに気を失うが如く倒れるなど、普通では考えられない。

 

かの『黒猫』と『黒拳』という奥の手もわけがわからないまま無力化されてしまったし、そもそもこの男は一体なにをしたのだ?

 

業腹だが、ここは頷くほかはない。

これで美姫は全ていなくなり、賭博もやっと終わりだ。

 

アル達の周りで嬉色を浮かべる美女達を忌々しく睨みつける。アルにも女達にも必ず報いを受けさせてやる、と屈辱と憤怒に顔を歪ませながら心に誓う。

 

しかし、そんなテッドは次のアルの言葉に絶望に叩き落とされる。

 

「じゃあ、()は──」

 

 「次だと?!」と、テッドは口角泡を飛ばして叫ぶ。これ以上何をするつもりなのだと、アルを問い詰めるがアルは気にした様子もなく、眼前に積もった賭札の山を崩す。

 

「女共は全てくれてやったろうがッ!! 他に何を奪うと言うんだ?!」

 

 テッドが長年かけて集めた『収集品』である美女達全てを差し出したにもかかわらず、まだ奪おうとしているアルにとうとう我慢の限界を超えたテッドは声を荒らげる。

 

だが、そんなテッドをアルは冷めた目つきで見つめる。

 

「女を奪ったんだ、あとは金、地位、権力だな」

 

 テッドの築き上げてきたもの全てを奪おうとするアルについにテッドの中で最後の一線がちぎれ飛んだ。

 

「ふ、ざけるなああああああああああ────ッ!!」

 

 激昂したテッドは貴賓室に備えつけられていた魔石製品の赤水晶を叩き割るとカジノ全体につんざくような警報音が鳴り響いた。

 

魔石製品による警報装置が作動したことにより、慌ただしくなる貴賓室の外の従業員たち。

 

各国の要人や大富豪が集うこの場所でなにかあったとなれば、国際問題になりかねない。そのため有事の際、迅速に部屋外の精鋭たちが駆けつけられるように、貴賓室には緊急用の通信設備が備え付けられていたのだ。

 

事が終わったあとならば金とコネを使って揉み消せばいいが大事にしてギルドからの不要な疑心を招くことはテッドとしても避けたい。 

 

ただの護衛などであれば金を握らせて黙らせるが、相手はギルドからの信も厚く高潔な上級冒険者だ。下手なことをすれば自分の破滅に繋がる。

 

しかし、今この場においては【ガネーシャ・ファミリア】を呼び出してアル達を下手人として捕えさせることでとりあえずは難を逃れることができる。

 

新参の若造よりも娯楽都市の重鎮、ということになっているテッドの言葉のほうが信憑性は高いだろう。

 

この場にいる他のVIP客はすべてテッド側の人間だ、口裏を合わせてしまえば問題はない。

 

そうでなくともこの場さえなあなあにしてしまえればいいのだ。

 

「ふ、ふははははッ!! もう知ったことかッ!!【ガネーシャ・ファミリア】が来るぞ!! オラリオの第一級冒険者がなぁ!!」

 

 第一級冒険者は人界の怪物であり、単騎にして万軍にも等しい力を持つと言われている。

 

いくら目前の若造が『黒拳』と『黒猫』以上の強者であったとしても、第一級冒険者の力には到底敵うまい。

 

勝ち誇った笑みを浮かべたテッドはアル達のほうへ向き直り、狂気に満ちた瞳でアルを睨みつける。

 

鳴り響くサイレンの音を聞きながら、アルは肩をすくめる。そして、アルは目の前で笑い続けるテッドを見据える。

 

その平静な態度にテッドは言いしれない恐怖を感じ、後ずさる。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ、来い!!」

 

「きゃあっ!!」

 

 客たちの混乱とけたたましく鳴り響くアラーム、向かってくる【ガネーシャ・ファミリア】に騒然となる中、テッドは近くに居たアンナの腕を掴み、強引に引き寄せる。

 

突然の出来事に悲鳴を上げるアンナに構わず、ドワーフという種族特有の怪力で腕を引き寄せるとそのまま引きずるように貴賓室の奥の通路へと逃げ出す。

 

「······追うか?」

 

「いいや、俺が行く。バーチェ、お前は【ガネーシャ・ファミリア】の足止めしとけ、怪我させんなよ」

 

 慌てるカサンドラとベルに反するようにLv6の強者は欠片も動揺することなく、従者のようにアルの指示に従う。

 

アルは、床に転がる用心棒と給仕の男を一べつすると、いまだに騒ぎ立てる客たちを尻目に貴賓室を後にする。崩れ落ちた用心棒の持っていた剣の一つを拾い上げたアルはテッド達を追い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このサイレンの音は······」

 

「どうやらなにかトラブルがあったようです、ね」

 

 アンナの母から冒険者崩れ達によって脅された賭博癖のある夫によって賭けの質に入れられて売られたアンナの話を聞いたリューはシルと共に賭博場へと来ていた。

 

シルが【フレイヤ・ファミリア】の伝手で得た招待券を使い、賭博場に入場した二人。

 

男装したリューとその妻に扮したシルは響き渡るアラーム音に眉をひそめていた。

 

これからアンナを助けに行こうとしている矢先に聞こえてきた警報は、事態の悪化を予感させるものだった。

 

しかし、そんな二人の不安を打ち消すかのように、遠くの廊下の向こう側で貴賓室に向かって駆けてくる集団が見えた。

 

ディーラーのような格好をした短髪の麗人を先頭にした一団は、遠目から見てもただならぬ雰囲気を放っていた。

 

つんざくようなアラームの音に慌てふためく客達を団員に任せて現れた彼女は、鋭い視線で周囲を見渡すとすぐに状況を察したのか、残りの団員を率いて貴賓室がある方向へと走り出した。

 

「あれは·····シャクティ?」

 

 都市の憲兵たる大派閥【ガネーシャ・ファミリア】最強の女、『象神の杖』シャクティ・ヴァルマの姿にリューが驚きの声を上げる。

 

「シル、どうやら私達よりも先に事を起こした者がいるみたいですがこれは········」

   

 第二級冒険者としての、エルフとしての鋭い魔力感知能力で貴賓室の方から強大な力を感じ取ったリューは隣に立つシルに声をかける。

 

しかし、その声に対する答えは返ってこない。それどころか、銀髪を揺らす友人の顔には呆然とした表情が張り付いていた。

 

何かあったのだろうか、とリューは心配そうにシルを見つめるが、次の瞬間、 ザンッ!! と硬い何かが裂かれるような音が響いた。

 

「───ッ?!な、なんですか今のは!?」

 

 爆発音とも魔法の炸裂音とも違う、まるで雷が落ちるかのような轟音を耳にしてリューは思わず声を上げる。

 

「········あー、もしかしなくても無駄足だったかなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どたどたと腹に溜まった贅肉を揺らしながら質のいい赤い絨毯の上を走るテッドははあはあと息を切らしていた。

 

大粒の汗を額に浮かべ、必死の形相で走るその姿は見る者に哀れを誘うほどに滑稽だった。アンナの腕を掴んで力任せに引きずる姿は恐怖から逃げ惑う豚そのものにしか見えない。

 

「何が『黒拳』だ、何が『黒猫』だ!! 役立たず共め!!」 

 

 そんな醜態を晒すテッドはもはや、グランカジノの支配人としての化けの皮を完全に脱ぎ捨てて行き場のない激情を罵倒として吐き出し続ける。

 

あの若造が現れなければ全て上手くいったものを、とテッドは忌々しげに呪言を吐き散らかす。

 

テッドにとって、このカジノはまさに楽園であった。金も女も酒も思うがまま、そんな夢のような生活の毎日。

 

 

だが、それもあの若造が現れたせいで全てが狂った。自分が築き上げてきたものがすべて奪われようとしていることに、テッドは激しい怒りを覚える。

 

「う、ううっ······」

 

 激情にかられるテッドの怪力に引っ張られ、苦痛に顔を歪ませるアンナ。無理矢理走らされている彼女の顔色は悪く、呼吸も荒くなっていた。

 

ドワーフの怪力によって無理やり動かされている彼女にとっては体力的にも精神的にも限界が近かった。

 

すると恐ろしいなにかが背後より急速に迫ってくる予感がテッドを襲った。それは生物としての本能が告げる警鐘だ。

 

─────追いつかれれば死ぬ。

 

そんな根拠もない、それでいて絶対的な予感。それがテッドの足をさらに加速させる。アンナを引きずってでも前へ、もっと先へ。

 

『黒猫』達を無力化した『なにか』が追ってきている。そう直感したテッドは焦燥感に駆られる。

 

「クソッ! なんなんだ、一体!?」

 

 死の鎌が首に掛かってるような錯覚を覚えたテッドは脂汗を流しながら、ただひたすらに走る。

 

後ろを振り向かずともわかる。今、自分に迫ってきているのは、人の領域を超えた怪物だと理解してしまう。

 

「どうしたのですか?」

 

「今からやって来る奴を足止めしろッ!!」

 

 状況を飲み込めていない道中の給仕や用心棒に怒鳴りつけ、走り続ける。恐怖がテッドの思考を埋め尽くす。

 

テッドは、アンナの腕を掴む手に力を入れ、最後の力を込めて駆け抜ける。地下金庫へ向けて。そして、ついに辿り着いた。

 

そうしてようやく目的の場所、地下金庫の扉までやって来たテッドは、最後の力を振り絞るように扉を開く。

 

そして、中に飛び込むと同時に扉を閉めて鍵をかける。ガチャリと音を立てて施錠された部屋の中で、テッドはぜえはあと肩で息をしながら安堵する。

 

「はぁ、はぁ、ここまで来れば········」

 

 顔を真っ赤にして、汗まみれになりながらテッドは、地下金庫の床に倒れこむ。もはや立ち上がる気力すら湧かない。

 

大量の金貨が積み上げられた金山や宝石類が詰まった箱。黄金郷を思わせる光景の中、テッドは床に寝転んだまま、大きく深呼吸をする。

 

そして、ふぅーっと長く息を吐いた後、テッドは口角を吊り上げて笑う。

 

その笑みには、隠しきれない歓喜が滲み出ていた。

 

ぎりぎりだったが逃げきったぞ、とテッドはほくそ笑む。そして息を整えるとへたり込むアンナに向けて言い放つ。

 

「この扉を自由に開けられるのはオレだけだ。そして、この金庫はアダマンタイトで作られている!!」

 

 ダンジョンで発掘される特殊な金属類。その中でも最高の硬度を誇るアダマンタイトで作られたこの部屋の扉を破壊できる者など存在するはずがない。

 

たとえ、あの青年がどれだけ強くても、だ。テッドは勝利を確信し、再び笑い出す。

 

地下城塞とすら言えるほどに広く、堅牢な造りの地下金庫。ここならどんな敵が襲いこようとも大丈夫だろうと

 

「ここに降りさえすれば、誰であろうと手出しはできない。あとは【ガネーシャファミリア】が『下手人』を捕まえるのを待つだけだ。·····あのガキが破滅するのはお前のせいだぞ、アンナァ!」

 

「それまで、お前には憂さ晴らしに付き合ってもらうとしよう」

  

 顔を赤黒させ、興奮気味に語るテッドは、アンナの腕を掴んで引き寄せると、乱暴に抱き寄せる。

 

「コケにされた分まで可愛がってやる·······奴にお前の泣き叫ぶ声を聞かせてやれないのが残念だがなぁ」

 

「い、いや······こ、来ないで········!!」

  

 恐怖に震え、涙を流すアンナの姿を見たテッドは嗜虐的な表情を浮かべた。それはまるで獲物を前に舌なめずりする獣のような顔だった。

 

「たすけ───」

 

 テッドは、怯えた様子を見せるアンナの服に手を掛けようとした瞬間、 ゾクリッ、 と背筋に氷柱を突き刺すような悪寒にテッドは思わず動きを止める。

 

ザンッッ────。

 

何者にも破壊できぬはずのアダマンタイト製の扉が、縦に両断され、崩れ落ちる。

 

そして、ゆっくりと開かれる扉の向こう側から現れたのは、一人の青年。

 

魔導具によって色を変えた水色の髪と瞳を持つ、まだあどけなさが残る顔立ちをした青年。

 

「クソっ、クソおおおお───!! 何だ、何なんだ、お前は?!」

 

「········こういうもんだ」

 

 手に持つのは用心棒の一人が持っていた片手剣であり、只のありふれた量産品の筈だ。

 

そのなまくらは彼が持つことによっていかなる名剣よりも鋭く、いかなる聖剣よりも荘厳な輝きを放っていた。 

 

刃が通るはずもない超硬金属の分厚い扉がその量産品によって両断されたのだ。

 

恐怖も忘れ、食いかかるテッドにアルは、変装の魔道具を外した。水色の髪は白く、空色の瞳は紅く染まり、顔が少しずつ元に戻っていっていく。

 

その顔を見て、テッドは今日何度目かもわからぬ驚嘆の声を上げて驚愕する。

 

「ロ、【ロキ・ファミリア】?!」

 

 ここにきて漸くテッドは悟った、はなから自分は詰んでいたのだと。

 

 

─────·······

 

泡吹いて気絶したテッドを縄でぐるぐる巻きにした後、テッドに力ずくで引っ張られた際についたアンナの手足の傷を治療し終えたアルはアンナを背負って来た道を戻る。

 

先程に比べて騒がしさは落ち着いている。どうやら【ガネーシャ・ファミリア】がうまく騒ぎを終息させたようだ。

 

「あの········、ありがとうございます。見ず知らずの私を、皆さんを助けてくださって、本当にありがとうございます」

 

「いや、無事で良かったよ」

 

 震えながら瞳を潤わしてお礼を言うアンナに、気にすることはないと首を振る。

 

「兄さん!!」

 

「······アル?」

 

「『剣聖』か······」

 

 アンナに肩を貸して貴賓室まで戻ると貴賓室にはベル達に加えて男装をしたリュー、騒ぎを聞きつけてきたのであろう【ガネーシャ・ファミリア】団長のシャクティ・ヴァルマがいた。

 

「その女性は·······まさか、アンナ・クレーズ?」

 

「あらら、やっぱり出遅れちゃったみたいですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あーー、つまんなかった。勝ちを確信した上での賭け事とか時間の無駄だわな。それもこれも曇らせ候補増やすためだけど、これ本来はリューがやることだったよなぁ·······。

 

『いや、無事で良かったよ』

 

 ほんとにな、ここまでやってダメだったら無駄足がすぎるわ。まあ、コレで好感度上げられたろ。リュー達には悪いことしたな。あとの処理はガネーシャのとこに任せて俺らは帰るか······。

 

『あのっ!! 貴方に奥様がいるのは解っています!!』

 

『これから言うことは、貴方を困らせてしまうことも······でも、それでも私は貴方のことが!!』

 

『私は、貴方に恋を───』

 

 あ、そういうのは求めてないです。

 

 

 

 

 

『·······ところでアル、『悲観者(ミラビリス)』が貴方の妻とはどういうことでしょうか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────んじゃあ、やっぱり怪しいところはダイダロス通りってことやな」  

  

 オラリオ北部の片隅にある高級酒場。密談にはもってこいのその店の奥まった個室で幾人の神が酒を酌み交わしながら情報交換をしていた。

 

そして今話題に上がっているのはここ最近、都市を騒がせている闇派閥残党が利用しているであろうダンジョンの入口の存在だ。

 

「というより、あとはもうあそこ以外、残っていないというのが正しい」

 

「アスフィやディオニュソスの子に都市中のきな臭そうなところを片っ端から探らせたけど、全部ハズレ。目ぼしいものは見つからなかったよ」

 

 遮音性に優れた個室では、酒杯を傾けながら会話を続ける神々の声がよく響いた。

 

ヘルメスとディオニュソスが言うように、既にオラリオに存在する全てのめぼしい場所を捜索済みだった。しかし結局、件の闇派閥が潜んでいるであろう場所は見つからなかったのだ。

 

「木を隠すなら森の中、ダンジョンの入り口を隠すのも迷宮の中ってことか。まぁ、最初から目星は付けとったけどなぁ。 ちゅうか、今日まであそこを手え付けてなかったんか?」

 

「いや、一応は調べてはいたんだよ。ただ成果が上がらなかった。広いオラリオの中でも、ダイダロス通りはちょっと特殊に過ぎる」

 

 ダイダロス通りとはオラリオでも一二を争うほどの複雑怪奇さを誇る裏路地の名前である。大通りのように区画整理されているわけではないので、迷子になる者も少なくない。

 

また道が入り組んでいて隠れる場所も多いため、探索するだけでもかなり骨が折れるのだ。

 

地上の迷宮とすら言われるダイダロス通りはかつてバベルの建築を為した『名工』ダイダロスが手掛けたものである。

 

他の路地と比べて異常なほど入り組み、道が複雑化している。その複雑さたるや日夜ダンジョンに潜っている冒険者ですら迷いかねないほどである。

 

さらに複雑な迷路のような道の先々には、無許可の違法建築物が立ち並び、時には行き止まりになっているところもある。

 

ダンジョン第二の出入り口があるとすれば、このダイダロス通りのどこかだろう。消去法ではあるが、ヘルメス達はそう予想していた。

 

「決まりやな。 次の目標はダイダロス通りに決定や。明日にでもうちらがあの辺りを調べるわ」

 

「いいのかい、ロキ?」

 

「なに抜け抜けと言っとるんや。いつも通り、全部押し付けんねんやろ? ま、今回ばかりはしゃーないわ」

 

 ディオニュソスの確認するような問い掛けに対し、ロキは呆れたように返した。

 

HAHAHAと笑い声を上げる二人に溜息を吐くロキだったが、今回の件に関しては文句を言うつもりはなかった。

 

「ま、なんだかんだ日が経ってフィン達も体を休めることができたしな。ちょうど良い頃合いなんちゃうか?」

 

 ロキの言葉に、二人は同意するように軽く頷く。焦っても意味はないが、時間はかけていられない。既に都市内のあらゆる場所での捜索を終わらせている以上、消去法として怪しい場所など限られている。

 

「迷宮都市をどうこうなんてアホな目論見を企む奴らはぶっ潰して落とし前をつけさせたらええ」

 

 細い目つきをさらに細めて、ニヤリとした笑みを浮かべる。そんな凄絶な表情を見せるロキの姿に、二人の神はゴクリと喉を鳴らした。

 

「─────あ、そういや、デュオニュソスんとこのエルフっ子、ランクアップしたんやって? おめっとさん」

 

「·······ああ、フィルヴィスも随分、舞い上がっているよ」

 

 

 

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