皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている   作:マタタビネガー

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七十八話 最強の怪物①

 

 

 

 

 

 

 

『────』

 

「よこせ、精霊共」

 

 パキリ、とレヴィスの上半身を魔力が練り固まって物質化したような肉色の植物が覆う。それはまるで鎧のようで、その植物の隙間からはギチギチと何かが擦れ合う音が聞こえてくる。

 

そして、その変化と同時に膨れ上がる魔力。禍々しい植物の根を鎧の隙間や至る所から生やすその姿はもはや人ではない。いや、もはや人の姿すら保っていない。

 

穢れた精霊の魔力そのものである緑肉の鎧を身に纏い、肥大化した魔力を垂れ流す怪物と成り果てたレヴィス。

 

葉脈がまるで血管の如く張り巡らされた植物が全身を覆う姿は、最早人のそれではなかった。緑から紅に染まった肉の怪物、それが今のレヴィスだった。

 

その肢体には今までのような妖艶さはなく、ただひたすらにおぞましい。硬質化した植毛の所々は鋭利な刃物と化し、触れれば簡単に切り裂かれるだろう。

 

それでもなお、その魔性の美しさは損なわれていない。より、一層増した淫靡さと背徳感に彩られた魅惑的な肉体美。

 

「っ、く」

 

 度重なる魔石の摂食によってLv.7上位相当にまで強化されたレヴィスの器にも余る膨大な魔力が暴れ狂い、身体中を駆け巡り、神経を蝕んでいく。

 

肌を巡る血管がぱん、と弾け飛び熱を帯びていく感覚とともに煮え滾った鮮血が噴き出す。

 

『「─────いくぞ」』

 

「来な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────何か御用かい?イシュタル」

 

「タナトス、私がもらい受ける予定の『天の雄牛』。フレイヤのガキと一戦やる前に、アレがどれほどのものか確かめておきたい」

 

「えーっと、あんなラスボス引っ張って来なくても間に合っているっていうか、レヴィスちゃん達に『剣聖』相手には使うなって言われてるし···········」

 

「知ったことかよ。私が五年前から一体いくらの投資を落としたと思っているんだ?」

 

「────わかった。やるよ、やるさ。出資者様のお願いを叶えよう」

 

「それでいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティオナさん!!」

 

 劇毒の津波が一挙押し寄せようとした刹那────。

 

「【ヴェルグス】────!!」

 

 アマゾネス特有の、主張が激しい戦闘衣に身を包んだ妙齢のアマゾネスが黒紫に染まった魔力の宿った拳で躊躇なくポイズン・ウェルミスを叩き潰し、ティオナたちのもとへ迫っていた毒液の濁流を吹き飛ばす。

 

「バーチェ!!」

 

 姉貴分の登場に喜色を浮かべたティオナは即座に踵を返してアークスを背に逆方向からも迫るポイズン・ウェルミスの大群へと向き直る。

 

毒をもって毒を制す、毒の付与魔法を、ポイズン・ウェルミス以上の劇毒をまとうバーチェならばいくらポイズン・ウェルミスの劇毒といえど無効化すらできるのだろう。

 

「みんな、詠唱お願い!!」

 

 大双刀を器用に振り回してポイズン・ウェルミスの群れを蹴散らしながらティオナが叫ぶ。

 

ティオナとバーチェが無尽蔵に湧き出るポイズン・ウェルミスの群れを抑さえている間に団員達が魔法を詠唱する。

 

練り上げられる魔力。そして紡がれていく詠唱。先程まで毒によって苦悶の声を上げていた団員も苦しみながら、それでもなお魔力を高めて魔法を構築してゆく。

 

そして。

 

「ティオナさん!!」

 

「撃って!!」

 

 ティオナの合図と同時に放たれた膨大な熱量。三種の火炎魔法がポイズン・ウェルミスの群れを焼き尽くす。烈火の勢いで燃え盛る炎が一瞬にしてポイズン・ウェルミスの群れを灰に変えた。

 

「───ッ!! ティオナさん、その腕········」

 

 だが、安堵したのも束の間。団員達はティオナの腕が毒液によって焼かれていることに気付き、顔を青ざめさせる。ぐずぐずと腐り爛れ、肉の焦げる匂いが鼻をつく。

 

「全然大丈夫!! バーチェの猛毒のがよっぽどキツいから!!」

 

 だが、ティオナは気丈にも笑みを浮かべて見せて隣で微妙な表情を浮かべる姉貴分や心配そうにする団員達を鼓舞するように声を上げる。

 

「みんな。あたしじゃあ、アルみたいにみんなを助けられない」

 

 ティオナは痛みに顔を歪めながらも再び大双刀を構え直す。いつも通りの明るい笑顔を浮かべながら、その瞳の奥には強い決意の色を滲ませていた。

 

戦士でしかない自分では傷ついた仲間を助けることはできない。自分ではフィンのように仲間を率いることはできない。自分ではアルのようには戦えない。

 

救えない、助けられない。

 

ティオナは自らの限界を素直に認めた。

 

ゆえにこそ─────

 

「だから、みんな···········あたしを助けてくれない?」

 

 太陽のような笑顔でティオナは言った。その言葉を聞いた団員達は互いに顔を見合わせ、やがて小さく微笑んで見せた。

 

「「「はい!!」」」

 

 そこに先程までの悲壮感はない。ティオナの言葉に励まされた団員達は自らの胸の内に秘めた闘志を再燃させてティオナと共に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「········え?」

 

「ぐぎゃあああぁあっ?!」

 

 ティオネに振り降ろされんとするメイス。だがそれは彼女の頭を打ち砕くことなく、代わりに悲鳴が上がる。

 

ニメートル近い巨漢が崩れ落ちる。顔に叩き込まれた褐色の鉄拳によって昏倒したのだ。

 

そして連続して周囲の暗殺者達に叩き込まれる拳撃の嵐。瞬く間に十数人が倒れ伏し、最後の一人が逃げようとするが、その顔面に強烈な回し蹴りが突き刺さる。

 

「なんだコイツラは!! ひどく脆いな!!」

 

「アルガナ·········!!」

 

 闘国の狂戦士アルガナ。血塗れになりながらも興奮気味に叫ぶその姿に、ティオネは信じられないものを見る目を向けた。

 

毒蛇の如き拳打の連打はティオネに襲いかからんとした暗殺者を確実に仕留め、鮮血の華を咲かせている。

 

事実上、【ロキ・ファミリア】の傘下となったアルガナ達だがティオネとは別のグループでクノッソスには突入していた。まさか······自分を助けに?

 

師でありながら憎しみの対象であった姉貴分の姿にティオネは困惑と僅かな喜色を────

 

「フィンは? フィンはどこだ、ティオネ!! いきなり此処が崩落して逸れてしまった!!」

 

「·············あ゛ぁん?」

 

 赤気を立ち上らせて修羅から雌の顔へと変わったアルガナ。その言葉にティオネの表情から怒り以外の一切の感情が抜け落ちた。

 

アマゾネスはその特性上、自らを倒した男に惚れることがままある。そしてこの女戦士もまた、自らを下したフィンに恋慕の情を抱いていた。

 

一瞬でティオネの瞳に殺意が宿る。

 

ブチブチブチィッ!!

 

それはティオネに絡まる呪いの縄が千切れる音か、それともティオネの血管が千切れる音か。

 

憤怒の炎を撒き散らしながらティオネは立ち上がる。そして、まるで猛獣のような凶貌を浮かべて叫んだ。

 

「────団長は私のもんだァアアッ!!テメェなんぞに渡すもんかよォオッ!!」

 

 ────【憤化招乱】。

 

怒りを力に変換させるレアスキル。煮え滾るような激情に身を任せたティオネの身体から紅い蒸気が噴き上がる。

 

ティオネの全身を覆っていた呪いの拘束が弾け飛び、熱気が渦巻いてティオネの身体に活力を与える。

 

「違うな、違うぞティオネ。フィンは私の雄だ!!」

 

「ふざけんなクソ野郎ォオッ!! 団長は私にベタぼれなんだよ!!」

 

「「えぇ······」」

 

 状況も忘れて激情のまま言い合う女戦士の姿に男性団員二人はドン引きする。しかもティオネに至ってはごく自然に嘘をついているのだが、それを指摘できる者は誰もいない。

 

眼前で繰り広げられる稚拙な言い合いに暗殺者たちは今がチャンスだと暗器を振るうが────。

 

「────っていうかよォ!! さっきから、ごちゃごちゃごちゃごちゃと·········」

 

「うざってえんだよ、てめえ等ァ!!」

 

 拳と湾短刀が同時に振るわれ、聞くに堪えない肉と骨が潰れる音が響く。たった二人の女戦士によって繰り広げられる蹂躙劇に暗殺者の群れは為す術もなく駆逐されていく。

 

「どうなってる?! 弱体化の呪詛が効かないのか?!」

 

「そ、そんなはずはない!! 奴のステータスは軒並み低下しているは───ギャア!?」

 

「うるせえんだよっ!!」

 

 混乱する暗殺者にティオネの湾短刀が突き立てられ、アルガナの拳が叩きつけられる。悲鳴を上げる間もなく絶命していく暗殺者達。

 

蹂躙に次ぐ蹂躙、まさに地獄絵図。弱体化のカースやアンチステイタスの効果など関係ないとばかりにティオネは暴れ回る。

 

「オラ死ねゴラァッ!!」

 

「ハッハァーッ!!いいぞティオネッ!!コイツラ全員を先に倒した方がフィンの雌という事でどうだ!!」

 

「上等だゴラァ!!テメェごと全員ぶっ殺してやる!!」

 

 二人の色ボケアマゾネス(Lv.6)による蹂躙劇。その凄惨極まりない光景を眺めながら男性団員達は震えていた。あの二人を敵に回すのだけは絶対に止めよう、そう心に刻み込む。

 

拳と刃の暴風に曝された暗殺者の末路は悲惨なものだった。全身のあらゆる箇所に致命傷を負い、血の海に沈んでいく。

 

「おいっ、鍵は? ブッ殺されたくなかったらさっさとよこせ!!」

 

「ひぃっ?! 持っていないい·········と、扉を閉めたのは俺じゃな────「使えねぇ!!」

───んだぁああっ?!」

 

 ティオネの放った蹴りによって暗殺者が壁に激突し、そのまま動かなくなる。返り血で全身を赤く染め上げるティオネの姿は味方から見ても悪鬼のそれだった。

 

アルガナの方もティオネに負けじと奮戦し、次々と敵を屠っているが、こちらもこちらで修羅の表情で暴れ回っていた。

 

「クソッ、なんなんだお前等は······!! こいつらは一体何なんだぁあああぁあぁあぁあぁあぁあッ!!」

 

「知るかボケェエエッ!! テメェらがうちを狙うからだろうがぁあぁあぁあ!!」

 

 ベキッ、グチャァアッ!! アルガナの拳が暗殺者の顔面を打ち砕き、その勢いのまま壁へとめり込ませた。

 

「オイてめえ等!! 勝手にくたばった奴はあたしがブチ殺す!! いいかァ!!」

 

「「はいぃぃ」」

 

 妹とは似ても似つかない方法で団員達の士気を高めるティオネに団員達は震え上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

神速の踏み込み、ただそれだけで石畳が砕け、張り巡らされた緑肉の蔓が爆ぜる。人知を超えた魔性である二人の怪人が一挙にアル一人に対して攻め立てる。

 

そのどちらもがLv.7を超える正真正銘の怪物であり、神時代においてなお比類ない『個』としての強さを誇る存在。

 

地上の最高戦力である第一級冒険者であっても死ぬしか道がない絶望の権化たる二人。  

 

───しかし、相対するは神時代始まって以来の、千年来の才禍。

 

全知たる神々のあらゆる予想を嘲笑い、打ち破ってきた天災。

 

穢れた精霊の加護によって形作られた最強の防具が容易く引き剥がされる攻防。アルによって無造作に繰り出される一撃一撃がレヴィスの鎧を容易く削り取ってゆく。

 

その度に石畳に張り巡らされた緑肉が補填し、修復していくが、それもすぐに追いつかなくなる。再生する端から切り刻まれ、削ぎ落とされ、燃やされ、溶かされ、穿たれ、穿ち返される。

 

純粋なステイタスではアルとレヴィスにさしたる開きはない。だが、圧倒的な経験と技術、そしてスキルと魔法でもってレヴィスを凌駕してくる。

 

精霊の加護によって更に強化された身体能力でもって絶対死の黒剣を振るうものの、アルの動きに対応できていない。

 

『【一掃せよ、破邪の聖杖───ディオ・テュルソス】』

 

 アルが脅威とするのは自分以上のステイタスでもって自分以上の砲撃を連射する仮面の怪人、エイン。

 

漆黒の魔力が凝縮し、雷光の槍となってアルへ殺到する。先程の追撃よりもさらに苛烈な破壊の雷霆がアルを容赦なく襲い掛かる。

 

「────【サンダーボルト】」

 

 対するアルの溢れかえるほどの精神力が装填された幾束もの白雷は神速で以って放たれた。

 

収束された魔力の奔流は雷光の雨となって迫り来る極太の破壊の黒雷とぶつかるが、僅かに黒雷の勢いを減退させただけで相殺しきれない。

 

だが、そんなことは想定通りだとアルの周囲に浮き上がった純白の魔法円に白雷が即座に装填されていく。

 

単射魔法であるはずの【サンダーボルト】の瞬間多連砲。それはもはや魔法の条理から外れた異能の領域。

 

一射同士で敵わぬのはなら二本、十本、百本、千本と束ねて撃ち続けるのみと言わんばかりに次々と発射される白雷の矢。

 

そのすべてが収束されて一つとなり、さらに強力な雷光へと変わっていく。

 

「ヘディンの真似事だがな」

 

 即席ながら魔()剣士ヘディン・セルランドの雷の砲撃群にも勝る雷の陣形、まさに殲滅の白雷(ケラウノス)。その一射一射の威力はエインの黒雷には遠く及ばないが、数と質を両立させれば話は別だ。

 

凄絶極まる漆黒の大雷霆と白雷の応酬は拮抗を産み出し、互いに互いを消し飛ばしていく。そして、その隙に距離を詰めてきたレヴィスの攻撃を紙一重で避けながら反撃の一矢を見舞う。

 

超短文詠唱以上に連射の利く速攻魔法による砲撃の雨。ランクアップによってより高められたそれは深層の怪物を一撃でボロ炭にしてしまえるほどの火力を秘している。

 

しかし、それをレヴィスは瞬時に復元してみせる。怪物との異種混成、人間でありながら不死身の怪物を思わせる怪人の肉体。

 

レヴィス、エイン、アルの攻撃が衝突する度に空間そのものが悲鳴を上げるように軋む。その衝撃の余波だけでも、地上ならば都市が丸ごと滅ぶほどの災害を巻き起こすだろう。

 

防いだとして感電現象を引き起こす白雷の弾丸の嵐による損傷をレヴィスの、エインの肉体は一瞬で復元する。それでもアルは攻撃の手を止めない。

 

雷速の砲撃、爆撃。迅烈たる魔弾の嵐が、レヴィスとエインの肉を削ぎ落とし、焼き尽くし、蹂躙していく。

 

迅速の斬撃、神速の刺突が二人を同時に捉えるが両者一歩も引かず、アルの猛撃を受けきる。そして、アルの戦技とレヴィスの魔性の美技、そしてエインの魔導の技巧が千を超える交わりとなってぶつかり合う。

 

二対一。拮抗なぞするはずもない戦い。

 

なのに、なぜ。

 

「(────なぜ、こうまで手こずる?!)」

 

 レヴィスの脳裏に過るのはそんな疑問だった。今、自分が対峙しているこの英雄は紛れもなく強者。今まで出会したどの怪物よりも遥かに強く、そして恐ろしい。

 

だが、()()()()()()()()

 

力も耐久も魔力も、最強の怪物たるエインは全てにおいてアル・クラネルという英雄を凌駕している。

 

しかし、アルの背後を取るレヴィスの神速にも、エインの破壊にも神がかった勘の冴えで視界外の攻撃にも対応してくる。

 

その全てがエインよりも遅く、その全てに反応できるほどアルの反応速度は速い。

 

レヴィスの顔が驚愕に染まる。自分を圧倒するのは良い、自分は肉の鎧を加味してもLv.7上位止まり、アルはLv.8、そこに不思議はない。

 

しかし、エインは違う、精霊の寵愛を一身に受けたエインの力はLv.8すらも凌駕している。

 

それも自分との二対一であるにもかからず何故戦えている────?!

 

怪物種との混成という怪人のアドバンテージ、ステイタスの差を覆すほどの技の冴え、そして何よりもアル自身が持つ底知れぬポテンシャルが怪物たるレヴィスをして理解できないほどに高い。

 

レヴィスの身体を覆う緑肉が削られ、引き裂かれ、焼かれてもなお再生するが、その度にレヴィスの思考にノイズが走る。

 

こちらの攻撃は掠りはするが肝心なところで『芯』を逸らされている。

 

『絶対防御』とも違えば、魔法でもない巧妙なる体術。まるで自分の動きが全て見透かされ、先読みされて動いているような感覚。

 

『技と駆け引き』。

 

冒険者としてあるいはレベルの高さ以上に重要とされる力。それを極めたアルの実力が、怪物としてのレヴィスを凌駕していた。

 

『─────』

 

 畏怖に支配されるレヴィスとは対照的にエインは至極平静であった。エインは知っている、目前の男が正真正銘の英雄、生きた伝説であることを。

 

あまりにも強くなりすぎたがゆえにレヴィスは誤解しているが、『英雄』とは挑まれる者ではなく、挑む者。苦境は常であり、逆境にこそ真価を発揮する。

 

アル・クラネルの真骨頂は『格上殺し』なのだ。

 

そして──────。

 

ゴォン······ゴォン·····。

 

鐘の音が鳴る。聖厳にして荘厳な音色。耳朶を打つのではなく、魂を直接揺さぶるような音波が広間全体に響き渡る。

 

音とともにアルを包み始める黒い光の粒子。弟のそれとは似て非なるもの。

 

「【──────妖精の葬歌(うた)】」

 

 光の粒子とともに紡がれる唄。【英雄覇道(スキル)】と【サンダーボルト(魔法)】を使いながらの『並行詠唱』。

 

本来であればありえないはずの魔法の同時行使。それを実現させるアルの超絶技巧にレヴィスとエインが戦慄を覚える中、黒光はアルを包んでいく。

 

その埒外の魔法行使にさしものエインも仮面の奥で瞳を見開く。先程、アイズにくれてやった火の付与魔法の再展開。

 

詠唱に並行してアルの周囲に展開される幾つもの白雷の砲台。牽制用の速射魔法がエインへ、そしてレヴィスへと殺到する。容易く打ち落とすエインだが、同時にアルの詠唱は進む。

 

レヴィスの呪いの大剣、エインの雷霆、第一級冒険者を容易く仕留めうる殺意の雨を掻い潜りながらもアルの高速詠唱は止まらない。

 

疾走に次ぐ疾走。砲弾の如き速度で駆け抜けるアルの背を護るように白雷の矢が追随する。雷矢の結界に守られ、アルは更に加速する。

 

エインが舌を巻き、レヴィスが戦慄を覚えざるを得ないほどにアルの速度は疾駆を超えていた。

 

攻撃、疾走、回避、詠唱の四種行動に加えて防御。そして、スキルと速攻魔法を含めればその並行行動は『七つ』、それはもはや人間の限界を超えた神業。

 

魔法剣士として一つの極みに至ったアルだからこそ出来る芸当。驚くべきは詠唱中でありながらその立ち回りや戦闘能力に一切の衰えを見せないこと。

 

「【遺灰(しかばね)の残り火よ】」

 

 並行詠唱ならぬ並列詠唱。雷の魔法円がエインとレヴィスを阻むように雷壁を造り上げる。

 

「【宿れ、焔の権能、天空(そら)覇者(おう)】」

 

 『白妖の魔杖』の二つ名を持ち、最凶の魔()剣士と呼ばれているヘディン・セルランドであっても不可能であろう砲撃の嵐。

 

『詠唱を行わなければ発動できない』という全ての魔法に共通する前提、神の恩恵のルールとも言うべき概念を根底から覆す前代未聞の魔法行使。

 

技術の域を超えた、埒外の魔導。

 

エイン自身、二つ以上の魔法を持つ並行詠唱の使い手だからこそわかる規格外。

 

前衛とも、後衛とも、魔法剣士とも違う完全なる『個』。

 

「【我が身を燃ゆる(はね)と成せ────────】」

 

 『静寂』の魔女ですら成し得ない魔法の同時発動。才でも技でもない下界のルール違反とも言える奇跡。

 

その奇跡を一切の詠唱を不要と断じる速攻魔法が可能とする。条理から外れたイレギュラーであり、下界の可能性の一つ。

 

その異次元の戦闘技術の根本はおそらくはかつて受けた『疾風』からの薫陶。その師を超えた魔法行使技術は魔力暴発など犯すはずもなく魔法を完成させる。

 

「【────レァ・ポイニクス】」

  

 同時に解放された鐘の音とともに『聖火の一撃』がレヴィスを斬り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

『アルを倒す方法』

レベルを上げて物理で殴る。魔法でもいいが物理のが効く。数で押すのは逆効果。毒・呪い・奇襲・病などは意味ない。レベルを上げると言っても格上だとそれはそれでジャイアントキリングスイッチが入るのである程度劣る程度のやつがアルの周りやつを狙って庇わせるのが効果的(3章のレヴィスは割と最適解選んでた)

 

『アミッドとかが死んだらどうなるか?』

根は善性、というか曇らせ除けば割と真っ当なのでブチギレる。遊び抜き、容赦なしでノータイム首刈りモードになる、相手は死ぬ。

 

 

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