皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
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『····························もう誰も逃がせない!! 誰も生かせないっ!! クラネル、私とともに死んでくれぇえええええ────ッ!!』
全てを黒く染め上げる漆黒の雷光。横溢する、止まらない、止められない殺意。その力はまさに絶大。
人型の竜体と化したエインの全身から漆黒の瘴気が立ち昇る。アルはエインの姿を見て、目を細める。
─────これは、全力だしても
最強の英雄であるアルですら、今のエインに勝つことは叶わない。だが、それでもアルに焦燥はない。アルの口許に笑みが浮かぶ。
立ち昇る聖火の柱。アルは纏う赫焔を更に燃やし、神殿を思わせる火の聖域を作り出す。神域の熱量を誇る灼焔の領域。
そこに佇むアルは、エインを真っ直ぐに見据える。そして、エインとアルの視線が交差する。
『覇者』の風格を以てアルが告げる。さあ来いよ、と。
アルの言葉が届いたのか定かではない。しかし、エインが動いた。刹那、エインの姿が消失する。否、超加速でエインが疾駆する。
音速を超えたエインの動きに反応したのは奇跡に近い。漆黒の死線。それがアルを襲う。アルは黒刃でそれを弾き返す。
黒刃に阻まれたエインの病刃を伝って黒風が吹き荒れるが、アルは臆することなく踏み込む。
衝撃と轟音が響き渡る。一閃、二閃、三閃、四閃。アルとエインの剣戟が繰り広げられる。両者一歩も譲らず、苛烈にぶつかり合う。エインの猛攻にアルが喰らいつく。
黒刃が、黒風が広間を埋め尽くし、超硬金属の石畳や石壁が撓み、亀裂を走らせる。両者の激突によって、二人の足場が崩壊し始める。石畳が割れ、石柱が折れ、瓦礫が崩れ落ちる。
千年の妄執により広間自体の崩壊は免れているが、それも時間の問題だろう。
たった二人の超越者の戦い。死と生の混雑する凄絶なる調べ。詩吟のように、それは奏でられる。
竜体となったエインの攻撃はより一層激しくなっている。一撃でも当たれば即死。掠っただけでも致命傷となる。
しかし、そんな状況にもかかわらず、アルは笑ってみせる。雷が奏でる交響曲が鳴り響く。剣戟が織りなす協奏曲。火花と衝撃波が舞い踊る調べ。
『クラ、ネルッッッッッ!!』
激情のままにエインが叫ぶ。魂の絶叫と共に振り下ろされたエインの病刃。対するアルは渾身の力を込めてエインの病刃を押し返し、反撃の一太刀を浴びせる。
閃撃に次ぐ閃撃。アルはエインの攻撃をいなし、弾き、受け流し、回避する。しかし、避けきれずにその度にアルの身体に刻まれる裂創。鮮血が舞う。
人型の竜体と化したエインの撒き散らす魔力そのものにそなわった物理的破壊力。
魔法ですらない魔力放出だけで、アルは防戦一方に追い込まれていた。帯電する漆黒の魔力が大気を震わせ、広間を揺らし続ける。
魔力炉が臨界寸前まで稼働しているエインの病刃から放たれ続ける病風。
エインの病刃から噴き出す病風に触れた途端、病刃の魔力が伝播して病刃が触れている場所から壊死していく。
「俺の耐性を貫くか······」
アルは病刃から噴き出した病風を黒炎で焼き尽くすが、完治には至らない。病刃の魔力に侵されて、アルの身体が少しずつ蝕まれていく。
『アァアアアッッ!!!!』
ベヒーモスの毒。【ゼウス・ファミリア】の英雄を冒し、59階層での死闘においてはアルを死の一歩手前にまで追い込んだ大魔獣の呪い。
獲得したはずの耐性を、不死鳥の加護を、貫くエインの病刃。レヴィスが振るっていたときとは比べものにならないほど強化されている。
エインの身体を覆う精霊の呪いで形作られた黒い鱗、黒い翼膜、黒い爪牙、黒い尾。そして、黒い雷光を放つ漆黒の双角。その姿はまさに『黒い竜』そのもの。
対して赫焔と天雷を纏い聖火の聖域を展開するアルはまるで御伽話の『英雄』そのもの。
かつて、英雄神聖譚の再演を望む神々が望んだ光景。英雄と怪物による神話の再現。
その衝突は、もはや人の手では止められない交わりとなってこの世界に刻み込まれた。
「あれ、は────」
アレは、あの怪物はなんだ?
黒い、黒い化け物。黒一色の怪物。
激しい感情の発露によってアイズの視界が明滅する。意識が飛びそうになるのを必死に堪える。
脳髄が悲鳴を上げる。心が軋む。
重なる、重なってしまう。赫焔を纏い、自分達を護るために戦うアルの姿と『あの時』、黒き終焉を退けるために自分の元を去った父の姿が。
重なる、重なってしまう。黒き竜の姿になったエインの姿と、全てを終わらせる終焉の黒き災厄が。
アレはなんだ。なんなのだ。いったい、何が起こっているのだ。わからない。何も理解できない。
アイズにわかるのはアレが『竜』であるということだけ。
体力は底を突き、精神力は涸れ果てたというのに殺意という薪がくべられ、燃え上がる憎悪の炎がアイズを奮い立たせる。
憎い、にくい、ニクイ、ニクイ、殺す、コロス、コロスコロス。
全て殺す。
アイズの中で何かが撃鉄を起こす。鼓動が脈打ち、血流が加速する。瞳孔が開き、呼吸が乱れる。
奪われる。
奪われてしまう。
父と母がそうだったようにこのままではあの『黒き竜』に全てを奪われてしまう。
許さない、絶対に。
そんなことだけは、それだけは絶対に許容出来ない。
だから、殺す。
その想いに呼応して、アイズは最後の力を振り絞って立ち上がる。限界を超えて練り上げられる魔力に全身から血が流れ落ちる。
器を超えた魔力は暴走し、身体を内側から破壊していく。それでも構わない。アルを救えるなら、アルを護れるならば、それでいい。
身体の内側から破裂しそうな痛みを無視して、アイズが詠唱を開始する。
誰にも邪魔はさせない。これ以上、アルを傷つけさせるわけにはいかない。
アイズを中心に空間が歪曲する。世界の法則が書き換えられる。
「【─────黒き風よ】」
『奪われた者』の至域の咆哮が全てを塗り潰す。世界を侵食する暗黒の風が今ここに解き放たれた。
「『─────?!』」
アルもエインにも一様に『そちら』に目を向けた。轟音、衝撃、そして圧、全てが同時に押し寄せる。直後、凄まじい衝撃波がエインを襲う。
黒き風の嘶きがエインの肉体を激しく揺さぶる。それは、この場にいる全ての者の視線を引き寄せる。
そこにいたのは一人の少女。しかし、その身に纏う気配は常軌を逸していた。少女の身体から噴き出す可視化するほど高密度で圧縮された魔力が暴風となり荒れ狂う。
『·········『剣姫』、か?』
怪訝な顔を浮かべながらエインは呟く。返答は言葉ではなく、代わりに黒き風が応えるように吹き荒ぶ。
アイズの身体から溢れる魔力は止まらない。制御を失った魔力はアイズの身体を破壊していく。
しかし、今のアイズにとってそれすらも些細なことだった。今はただ、目の前の『竜』を殺す。
アイズの身体が撓む。黒き風が、黒き嵐が、アイズの身体を喰らい尽くしていく。漆黒の風がアイズの姿を覆い隠した瞬間、風が割れる。
「──────もう、なにも奪わせない」
だから殺す、とアイズは宣言する。
そして、アイズは駆け出した。黒き風を纏ったままエインに向かって一直線に突き進む。
天害の災禍の如き黒き風を従え、アイズはエインに迫る。その動きはもはや人のものではない。
『消え────ッッッッ!!』
エインは咄嵯に病刃を振るうが、アイズはその一撃を掻い潜りエインの懐に飛び込む。
そして、その勢いのまま神風が零距離で炸裂する。黒き風が周囲の石畳を削り取りながらエインを吹き飛ばす。
エインは空中で体勢を整え、地面に着地するが、その表情は険しい。アイズの動きはあまりにも異常だった。
『(·······なんだ、今のは)』
深手ではない。いかに神風といえども最強へと至ったエインの肉体を破壊することは出来ない。
アルですら打ち勝てぬ最強の怪物にLv.6止まりの少女が抗うことなど不可能だ。
だが、今のアイズは間違いなく何らかの方法でエインにダメージを与えた。それも、下手をすれば致命打になり得るほどのものを。
ほんの少し手前まで死に体だったはずのアイズの身体からは想像もつかないほど濃密な魔力が溢れている。先程まではまるで感じられなかった脅威が今でははっきりと感じられる。
なぜ、立てる。
なんだ、その力は。
気合か、覚悟か、それとも信念か、そんなもので覆せるような生易しい傷ではなかったはずだ。
いや、それは良い。窮地においての冒険者の底力はエインとて良く知っている。
『立てた』のはいい。いかなる理由であろうとそれは大した問題ではない。問題は、アイズが纏っている魔力の質、そして目に見えて激上した身体能力。
あれはいったいなんだ?
アイズに纏わりつくように渦巻いているあの黒い風は何だ?
先ほどまで纏っていたものとはモノが違う。あれもレベルの差を覆しかねない恐るべき力を持っていた。
だが、比べ物にならない。
風を纏ってなお、レヴィスの魔石を喰らう前のエインに手も足も出ない程度の実力しかなかったはずなのに今は明らかに違う。
魔石を喰らい、さらなる魔の高みに至ったエインにくらいつけるだけの力を持っている。
いったい何があった? どうしてそこまでの力を手に入れた? 疑問は尽きないが、それを悠長に考えている時間はない。
─────エインは知る由もないことだがその黒き風こそ『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインの根幹。
『黒き竜』に奪われた両親への愛情が生み出した復讐の風。愛ゆえに憎悪に堕ちた少女が解き放った黒き風。
確かにLv.6止まりのアイズでは今のエインに及ぶべくもない。
だが、スキル
その効力は怪物に対する攻撃の高域強化、加えて竜種に対する超域強化。
そして、その効力はアイズの黒き竜への憎悪の丈によって上昇する。愛する者を奪われた少女の憎しみが、悲しみが、絶望が、殺意となってアイズの力と変わる。
七年前、正邪の大抗争において原初の幽冥たる地下世界の邪神によって生み出された大最悪の名を持った漆黒のモンスター。
第一級冒険者複数の手にも余る圧倒的な破壊の化身を相手にして当時、Lv.3の身でありながら拮抗するほどの力をアイズは得た。
それを今の、
その力は今やアルにも───。
『─────届くわけがないだろうがぁぁあああ!!』
怒りに満ちた叫び声と共にエインは地面を踏み砕く。先程よりも速く、鋭い斬撃がエインに襲いかかる。
だが。
『────舐めるな!!』
「──────ッッ!!」
黒き風を纏い、神速の連撃を放つアイズだが初見でなければエインに防げぬ攻撃ではない。
理屈は不明、理由も不可解。急激なパワーアップを果たしたアイズに戸惑いこそあれど今のエインならば対処出来る。
漆黒の雷霆が漆黒の風を喰い破る。
エインの黒き爪牙がアイズを切り裂かんと迫る。
竜を殺すための風が竜体に阻まれる。
「くっ、うぅ─────」
『もう一度、言う』
─それは
暴虐の力ではなく、冒険者の特権であるはずの技術がアイズを苦しめる。風をエインの技が逸し、透かし、捌く。
対怪物に特化したアイズには真似出来ない高度な対人戦闘術がアイズに反撃の機会を与えない。アイズは必死に黒き風を操るが、エインはその全てを見切って見せる。
『舐めるな!! 貴様程度が私に────クラネルに届くと思うなッッ!!!!』
激情に任せてエインは叫ぶ。今のアイズは器に見合わぬ歪な力で無理矢理に立っているに過ぎない。そんなものは、所詮はただの火事場の馬鹿力だ。
そんなものでアル・クラネルに、本物の英雄に届くはずもない。
そんなものを認めてたまるものか。
認めてしまえば、今までの自分の全てが否定されてしまう。
こんな小娘如きに、クラネルの隣を───────
「【─────
風の鎧を砕き、アイズの首を斬り飛ばさんとするエインを聖雷が斬り裂いた。
·········うーん、ちょっとびっくりしたけど。
このままじゃどのみちアイズ死ぬな。
ちょうどいいからもうちょっと盛り上げるか。
『クラネルゥゥウウッッ!!!!』
エインがアイズの相手をしていたのは僅か数秒。しかし、既に『全快』したアルの姿がそこにはあった。
凄まじき攻防の間隙を縫って唱えられた『聖女』の奇跡がアルの身体を冒していた病毒を消し去ったのだ。
アイズは図らずもこれ以上無いほどにアルの戦いに貢献したことになる。
凄まじきは損傷も、呪詛も、死毒も、体力すらもその尽くをたった一度の魔法行使で全快させる聖女の御業。
「────悪いが、誰を隣に立たせるかは俺の決めることだ」
だが、そんなことはどうでも良かった。
その言葉だけがエインの耳に届いていた。脳髄が理解を拒み、心に罅が入ったような感覚を覚える。
─────何を言っている?
誰が、なんの話をしている? 『剣姫』のことなど知らない。自分と『英雄』に比べれば『剣姫』など取るに足らない存在だ。
アル・クラネルが認めるはずがない。
そんな矮小な存在を『隣に立つ相棒』などと認めるはずがないだろう。
だから、これは違う。
これは、幻聴だ。
そうだ、そうに違いない。
エインは混乱する思考の中でそれだけは確信を持って言える。
だが、その考えを否定するようにアルはアイズの傍に立ち、エインに対峙している。
そして、アイズもまた、そんなアルの背に守られるように立っていた。
なぜ、その背中に守られている。
なぜ、その剣をその男に預けている。
先ほどまでの暴走が嘘だったように落ち着いたアイズの顔つきはまるで別人のようだ。
先ほどまでの、憎悪に染まった『同類』の表情はどこにもない。
その顔は、その目は、その『場所』は──────
「─────お前じゃない」
ピシリ、となにかに亀裂が入る音が聞こえた気がした。
憎悪に染まって淀んでいた視界が晴れていく。身体の奥底から力が湧いてくる。心は不思議なくらい落ち着いている。
暖かい、あんなに冷たくなっていたさっきまでの自分の心が嘘のように溶かされ、解されていく。
たった一言、アルのたった一言が私の心を溶かしてくれた。これまでと同じように当たり前のこととして、私を守ってくれた。
違うのは今の私。
今の私ならただ守られるだけでなくアルの隣で戦える。
目の前の黒い竜は恐ろしく強大だ。
だけど、不思議と負ける気はしない。アルがいる。アルが私を信じてくれてる。それが嬉しかった。
たったそれだけのことがどうしてこんなにも嬉しいんだろう? わからない。
けど、今はそれでいい。
私はアルの隣に立って戦う。ただそれだけだ。
もう、間違わない。
恐れない。
怯えたりなんかしない。
私が今すべきことを見誤ったりはしない。
アルの隣なら私はどんな怪物にも立ち向かえるとそう信じられる。
「あー、こりゃしくじったな、まさか俺としたことが相手の力量を見誤るとは」
「······アイズ」
「?」
「死なないことだけに全力を注─────」
──────え?
アルが何かをいい終わる前に『何か』が宙を舞った。それを認識した瞬間、私の視界が真っ赤に染め上げられる。
なにが起こったのか全く分からない。
赤い雫をまき散らしながら後方に飛んでいく『何か』の姿が目に映る。
赤い剣を握った『何か』は円を描いて地面に転がっていく。私には、何が起きたのかわからなかった。
アルの身体にいくつもの切り傷がある。アルの服に血が滲んでいる。
アルの『左』腕が変な方向に曲がっている。アルの額が割れて血が出ている。
アルが、私を突き飛ばして、代わりに、斬られて、吹き飛ばされて、怪我をして──────── 頭が理解を拒む。
理解出来ない。
意味が分からない。
一瞬遅れて理解が追いつく。
数秒遅れて意味がわかってしまう。
私を庇ってアルが、アルの右腕が─────
───────肩から引きちぎれていた。
────────────────────────────────────────────────────────────────
this is 自業自得
【誰でもできるアル・クラネル殺害チャート】
一応の確認ですが、貴方はLv9以上の実力者ですよね?
①まず、周囲にアミッド・テアサナーレがいないか、確認してください、いるなら先にアミッドを殺害しなければアルの殺害は不可能です。とはいえ、アルの守りを通り抜けてアミッドを殺害するのは隻狼を目隠ししながらノーデスクリアするようなもんなので無理&仮に殺せたら殺せたでガチのアルにこちらが殺されるのでアミッドがいたら再走です。
②周囲にアミッド以外のアル陣営の者はいますか? いなければ再走です。【誰もいないところで死ぬとか馬鹿なの?】モードのアルは基本、不死身なので最低でもアイズあたりがいないと話になりません。
③アルの恩恵をなくしましょう
恩恵ありのアルと戦うとかバカのやることです。なんとかしてロキとの繋がりを断ちましょう、送還はこちらが殺されるのでやめましょう。古代モードは考慮しません。
④神器級の武器を用意しましょう
そこらの武器でアルと戦うとかマゾのやることです。なんとかして神器級、ヘビーモスの大剣やアンタレスの窮弓などの武器を用意しましょう。
⑤エルフになりましょう
ボーナス入ります。
⑥アルの仲間に即死攻撃を向けましょう
勝手に庇ってくれます。なお、貴方がLv8以下ですと普通に防がれます。
⑦運要素をなくしましょう
基本、あちらが勝つように世界ができているので運要素が入った時点で負けます。