皆の傷になって死にたい転生者がベルの兄で才禍の怪物なのは間違っている 作:マタタビネガー
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途中に挿絵がありますが脳内イメージを崩したくない方は飛ばして下さい。
黒の閃光と白銀の流星。目で追うことも困難な速度で激突を繰り返す二つの影。大気の嘶き、空間を切り裂く音、剣戟の音だけが響き渡る。
力と力。エインの剣撃にアルが追いつき始めている。無論、全快したとはいえ力も、耐久も、魔力も、敏捷すらもエインに届いてはおらず、戦況は依然劣勢のままだ。
一合ごとに血を流し、骨を軋ませ、筋肉は悲鳴を上げる。エインが振るう剣の一振り、その一つが必殺の威力を秘めている。直撃すれば即死、掠っただけでも重傷は免れない。
────聖女の奇跡がなければ。
頬が裂かれる───
指が折れる────
耳が千切れる───
眼球が潰れる───
臓腑が破裂する──
治る、癒やされる、復元する、修復する、完治する、完全となる、元に戻る。
アミッドの唄が響く度に、アルの傷は癒えていく。欠損さえも即座に復元し、何度でも立ち上がる。故に、アルは限界を超えて戦い続けることができる。
先ほどまでの徹底的なまでの防御形態から防御を顧みない攻めへ。血反吐を撒き散らしながら、アルはエインの攻撃を捌き続け、エインへと反撃の機会を窺う。
無力化とまでは言わずとも団員達がクノッソスから撤退するための、再起するまでの時間を稼ぐためにアルは攻勢に出る。
一撃ごとに血肉を撒き散らしながらもアルは攻撃の手を止めない。エインの攻撃に怯むことなく、一歩を踏み出す。
死闘の調べは鳴り止むことを知らず、雷鳴と雷轟が木霊し続ける。雷光の如き斬撃をアルが繰り出し、それを黒刃が迎え撃つ。火花が散り、鋼が擦れ合い、鋼が裂ける音が響く。
「────ッッ!!」
『······ッッ』
戦風が吹き荒れ、剣風が吹き荒れる。アルの身体が、エインの身体が宙を舞い、互いの視線が交錯する。
限界は掻き消え、極限を超え、更にその先の領域へと至る。死線を幾度となく超えてきた二人だからこそ分かる、互いの底。既に肉体の限界などとうの昔に超越している。
戦風が血風に、血風が嵐風へと姿を変える。エインの細剣がアルの喉笛を切り裂こうと放たれ、アルの大剣がエインの剣を砕こうと放たれる。
一閃、二閃、三閃。四閃、五閃。
迅速、爆速、超絶。
言葉に表すことさえおこがましい剣戟の応酬。人界最速の英雄と、怪物殺しの怪物が繰り広げる、文字通りの頂上決戦。もはや常人に視認することも叶わない速度域での攻防。
英雄の頂と最強の怪物。
至上の域に近い剣撃と仮借のない死線が飛び交い、互いに譲らない攻防が続く。
両者共に体力、魔力、気力、集中力はとうに限界を超えている。それでもなお剣を振るい続けているのは偏に精神の昂り故。
無限に続くかと思われた剣戟の果たし合いは
『ァ、アァアアアアアアッッ!! 』
『死んでくれっ、私とともに死んでくれ、アル・クラネルゥウウウゥゥゥゥ!!』
広間に罅割れたかのような《鐘の音色》が鳴り響く────アルから、ではない。発動するのは『
心胆を寒からしめる絶叫と共に放たれた漆黒の波動が大空洞を揺るがす。絶音と衝撃破が波濤のように押し寄せる。
エインにとっても発現して以来、初めて行使した【スキル】。そのトリガーはエインにとっての『憧憬』の英雄。誰よりも強く、誰よりも焦がれた真なる英雄。
たった一年、たったの一年間だったが、その英雄の隣に立つことでエインは自身が怪物であることを忘れられた昔日の、幸せの日々。その魂を割るほどの情念を炉に焚べて力へと変える。
『大鐘楼』とは似ても似つかない破滅の旋律。しかし、それは確かにエインの願望を具現化したものだ。アルが妨害する暇もなく、破壊の権能が収斂を始める。
『【一掃せよ、破邪の聖杖】』
そして、『二重蓄力』開始。
奇しくもそれは先ほどアルがやって見せたスキルと並行詠唱の同時展開。
黒き魔力が臨界を迎え、禍々しい渦となって収束していく。理性なき獣のような荒々しさで周囲の空間を喰らい尽くす。
アルが放った雷霆が瞬く間に飲み込まれていく。エインが生んだ闇色の魔力が聖女の光輝を飲み込んでいく。
臨界を迎えた魔力が人造迷宮全体を押し潰さんと猛威を振るう。大地が揺れ、大気が震え、空間そのものが軋む。
これより放たれるは『魔法』でも『斬撃』でもない、防御も迎撃も許さずにありとあらゆるものを無に還す『滅界の一撃』。
──────これは全員死ぬ。
アルの【直感】が叫びを上げる、二年ぶりの予感。神殺しの死蠍の弓を空に仰いだ時と同じ感覚がアルを襲う。
回避は不可能、防御不能、広範囲。
この場にいる全員が助からない。
瞬間、アルの
「─────【未踏の世界よ、禁忌の空よ。今日この日、我が身は天の法典を破却する。仰ぎ見る月女神の矢、約定の槍を携える我が身は偽りの英雄】」
それは英雄の『第三の詠唱』。速攻魔法でも付与魔法でもない、超長文詠唱。アルの身体から魔力が溢れ出し、周囲を呑み込むように吹き荒れる。
天の法典に背く、下界の存在には許されぬ真なる意味での
そうでなくてはエインの放つ階層崩壊級の一撃を防ぐには至れない。
「【
魔力の高まりに呼応し、世界が震動する。アルの周囲に紫電が走り、雷光が集束する。同時にエインの《鐘の音色》が臨界を迎える。
滅音を奏でろ、世界を穿ち貫けと言わんばかりに闇と光が全てを塗りつぶす。
「【ここに、願いは崩れ去った】」
詠唱は終わらない、アルの周囲に浮かび上がる九の魔法陣。魔法円はそれぞれが黄金に輝き、異なる音色を響かせる。
エインとアル。異種混成と才禍、真逆の方向に下界の可能性を突き詰めた両者による交叉は超硬金属の壁の爆発によって妨げられた。
前触れもなく突如として超硬金属の石壁が『爆散』し、白灰の瓦礫が宙に舞う。一瞬遅れて、爆風が大空洞内に暴風の如く吹き抜けた。
舞い上がった石片が降り注ぎ、未だ病風の呪いから復帰できぬ団員達の悲痛な声が響く中、なにか巨大なモノの『足音』が響く。
超硬金属の壁を突き破って現れたのはダンジョンの階層主にも匹敵しうる巨体を誇る異形の怪物だった。
全身は剛毛で覆われ、腰からは山羊の角のような捻じくれた『枝』が生え、手脚は丸太のように太く、邪悪に歪んだ牛のような偉容を誇る。
四肢を備えた四足歩行の怪物の下半身に明らかに人とかけ離れた姿をしながらも美しい女の上半身が生えている。
どこか神秘的な美しさを漂わせた微笑みを浮かべる女の顔は妖艶であり、また清楚でもある。
怪物の上半身は裸体の美女だが、下半身はまるで地獄の獄卒を思わせるような獣の姿。
「········精霊の分身」
【ロキ・ファミリア】のいずれかが戦慄とともに呟く。天女の姿を象ったかのような緑色に輝く肉体を持つモンスター。
24階層や59階層で度々【ロキ・ファミリア】と相対し、死闘を繰り広げた存在。その力は間違いなく深層の階層主と同等かそれ以上の怪物。
『アリア···········アリア!!』
歓喜の矯声を上げながら精霊の分身が駆け出す。向かい合っていたアルとエインをよそに精霊の血を継ぐアイズへとその双眼を向ける。
エイン達を無視して突進してくる怪物を見て、アルが舌打ちする。エインの放とうとしている
アイズの魔力は先ほどの攻防で枯渇寸前、他の団員達は未だベヒーモスの毒で動けず、アルも全力の魔法を行使している最中だ。
しかし、そんなことは関係なしに精霊の分身は巨体を揺らしながら爆進する。
そして、精霊の分身の進路上にいるのはアイズ。アイズは魔力切れで反応が間に合わない。
このままではアイズが踏み潰される、誰もがそう思った瞬間─────これまでの攻防で散々破壊された広間の天井が崩れ落ちた。
『忌々しい······』
崩落した瓦礫によって塞がれ、分断された通路の奥でエインは苛立たしげに呟いた。
眼前では超硬金属と特殊石材の瓦礫の山が積み上がり、魔法の残滓である雷光がまだバチバチと火花を散らしている。
無論、この程度の障害、『砲撃』を一発打てば拓ける。しかし、今放てば『精霊の分身』にも死雷の一撃が当たるだろう。
穢れた精霊によって呪われきった身体は未だ、エインの反目を許さず、この身に宿る魔石は今もエインを蝕んでいる。
エインの胸中で怒りと憎しみが燃え上がる。あの汚らわしい精霊さえ現れなければ、こんなことにはならなかった。エインはあのままアルと共に死ぬことが出来たのだ。
だが、そんな激情よりも
未だ『怪物』になりきれていないエインはその救いに飛びついてしまった。
『················【───────。───────。────────。─────エインセル】』
二つに分かれた妖精と仮面、仮面は名残惜しげにアルがいるであろう瓦礫の方を向いてからそこから立ち去り、妖精も顔を伏せながら歩き始めた。
「·········次は、殺してくれ」
願わくば『英雄』に最期を看取ってほしい、そう思いながらエインは瓦礫に背を向けた。
「はぁ〜。敵の本拠地がわかっとるのに攻め込めんとはなぁ·······」
燃える焔のような赤銅色の本拠を構える建物、【ロキ・ファミリア】本拠地である『黄昏の館』。
最上階にあるファミリアの主神であるロキの自室ではロキが寝転びながらため息を吐いていた。
雑多な部屋の中には所狭しと酒瓶やらつまみやらが散らかっている。乱雑に積まれた書類の中から真新しい
羊皮紙を取り出して眺めると、再びため息を吐いた。
【ロキ・ファミリア】は無事、人造迷宮から
だが、かの迷宮で得た情報はそのいずれもが致命的なまでに大きなものだった。
複雑怪奇且つ悪辣な人造迷宮の存在、アイズの発見した精霊の分身が入っていたであろういくつもの巨大フラスコ、そして仮面の怪人エイン。
「まずいなぁ······」
特に仮面の怪人エイン。たった一人で【ロキ・ファミリア】の幹部を圧倒してみせたその実力は計り知れない。
Lv.5やLv.6の範疇には到底収まらない圧倒的な力、その強さはLv.8かLv.9、あるいは······。
「まずは人造迷宮の鍵を手に入れんと話にならへん······イシュタルのとこを抗争覚悟で探るしかあらへんか」
このオラリオにおいて有数の戦力と財力を持つ大派閥の一つ【イシュタル・ファミリア】。
第一級冒険者を擁し、オラリオの娯楽を司っている歓楽街を支配する派閥ゆえ莫大な財力と影響力を持っている。
彼女らと戦うことは避けたいところではあるが、こちらも譲れないものがある以上は致し方がない。
イシュタルには前々から闇派閥との繋がりが疑われていた。それが事実ならばイシュタルから鍵を奪うために戦争を起こすことも辞さないつもりだ。
そうなれば最悪、オラリオ中を巻き込んだ大戦となるだろう。しかし、それでもあの忌々しい迷宮を攻略するためには必要なことなのだ。
そう結論付けたロキは気怠げに立ち上がって、窓辺へと足を進めた。黄昏色に染まった街並みを見下ろしながらロキは呟く。
「せめてあのエインっちゅう奴の情報だけでも欲しいところやな」
疑う余地のない最強であるアルすらも凌駕しうる謎の怪人。対策もなしに戦うには危険すぎる相手だ。
最悪、その怪人一人の存在が闇派閥との戦線を、オラリオを崩壊させかねないほどに危険な存在。だからこそ、その情報が喉から手が出るほど欲しい。
「·········なんや?」
そう考えながら窓の外を覗くとなにやら騒ぎ声のようなものが聞こえてきた。
目を凝らすとどうやらそれは都市の南東にある歓楽街の方角からだった。何事かと思い窓から身を乗り出して見てみると日の落日で薄暗い歓楽街に赤々とした輝きが灯っていた。
「まさか、歓楽街が燃やされとんのか!?」
事故ではない。明らかに故意的に行われている放火。物々しい雰囲気を察したロキはそれが歓楽街を拠点としているイシュタルを何者かが攻めている『抗争』だと悟った。
【イシュタル・ファミリア】の戦闘娼婦は探索系ファミリアでも上位の実力者揃いだ。
歓楽街に詰める団員の多さは実質的な傘下ファミリアの団員も含めれば相当な数になるはず。
そんな派閥の本拠地に攻め入るなんて【ロキ・ファミリア】や【ガネーシャ・ファミリア】のような最上位ファミリアか、先のことを考えないイカレた馬鹿くらいのものだろう。
その両方に当てはまるのは───
「フレイヤの奴が動いたんか·····!!」
イシュタルは酷く混乱していた。突如として火に包まれる歓楽街。そして、その混乱に乗じて襲撃を仕掛けてくる者達。
戦闘娼婦の悲鳴と怒号が飛び交い、それに応じるように火の勢いが増していく。もはや完全に取り返しのつかない事態となってしまったことにイシュタルは唇を噛んだ。
【イシュタル・ファミリア】はオラリオの中でも屈指の規模を誇る大派閥。その構成員の数も多く、オラリオの治安維持を担っている衛兵達にも顔が利くのが今回ばかりは逆効果となっている。
闇派閥との繋がりを隠すためにも今の歓楽街には【イシュタル・ファミリア】とその息のかかった冒険者以外の防衛戦力はいない。
都市中心部などであれば【ガネーシャ・ファミリア】の実力者がすぐに飛んでくるだろうがとうのイシュタルが他勢力からの干渉を拒んでいた歓楽街ではやってくるまでに時間がかかる。
そして、この『敵』はそんな時間を待ってくれるような甘い相手ではない。
「フレイヤぁあああああ──っ!!」
都市最強派閥【フレイヤ・ファミリア】。かねてからイシュタルが打倒せんと策謀を巡らせていた美神の派閥。
予告もなしに歓楽街を襲ってきたその目的は考えるまでもなく自分の首だろう。
無理だ、勝てない、勝てるはずもない。
短気で酷く嫉妬深いイシュタルがそれでも雌伏し、緻密な計画を立てていたのは正面からではどうやってもフレイヤの眷属には勝てないということがわかっていたからだ。
「街にまだいるカーリー達に援軍を·········!! 駄目だっ、あそこはもうロキの配下だ!!」
「なら、今からクノッソスに······あ、ああっ、ああああああああああああっ?! 今からなど間に合わうわけないだろうがぁッ!!!」
前提が覆る。強さでも影響力でも劣っているとわかっていたからこそ策を練った上での奇襲作戦。だが、それは自分が攻め入れられる側になっては何の意味も持たない。
イシュタルの頭の中でぐるぐると同じ言葉が回る。
詰み、敗北、破滅。
フレイヤは間違いなく自分を殺しに来る。この歓楽街を焼き払ってイシュタルが築き上げたもの全てを灰にして、その上でイシュタルの全てを奪う。
都市最強戦力による電撃作戦、そんなものを止める手段も防ぐ手段もあるはずがなく、イシュタルはただ迫り来る終わりの恐怖に怯えることしか出来ない。
「クソがぁぁぁああッ!!!!」
悠然と銀の女神は微笑む。並みならぬ怒りを瞳に宿しながらもそれをおくびにも出さずにフレイヤは微笑み、イシュタルの城へと足を進める。
火の手に包まれた悲鳴と雄叫びの惨状の中にあっても震えるほどに美しいその笑みは見る者を魅了し、虜にする。その美貌はまさに女神の威厳そのもの。
イシュタルの自分への嫉妬なぞ知ったことか、闇派閥との繋がりや策謀なぞ知ったことか、その他一切も全てどうでもいい。
だが─────
「イシュタル、貴女は私のモノに手を出した」
これまでのことは笑って済ませてあげたけれど今度ばかりは絶対に許さない、と。その冷たく鋭い眼差しが物語っている。
都市最強の派閥であるフレイヤの眷属達は無言のままに主神の指示に従い、歓楽街を蹂躙していく。
戦闘娼婦達の抵抗は一切無意味。数多の強者がひしめいているはずの歓楽街は既に壊滅状態に陥る。
フレイヤの眷属達の先頭に立つのは八人の傑物。冒険者の都、オラリオの頂天に立つ第一級冒険者。
神速を誇る銀槍の闘猫、『女神の戦車』アレン・フローメル。
怜悧たる軍師にして魔砲剣士、『白妖の魔杖』ヘディン・セルランド。
奇怪にして凶業なる呪剣使い、『黒妖の魔剣』ヘグニ・ラグナール。
都市最優の連携を誇る四兄弟、『炎金の四戦士』ガリバー兄弟。
────そして、都市最強の冒険者、『猛者』オッタル。
「邪魔する子は全て散らしなさい」
女神の言葉を受け、フレイヤの眷属達が動き出す。抗争でも、殲滅でもない蹂躙が始まろうとしていた。
絶対の神意のもと、フレイヤの眷属達はその力を存分に振るう。
そして、イシュタルは知る。
自らが踏まなくていい虎の尾を踏み抜いてしまったことを。
「済まない神イシュタル、そしてその眷属達」
燃え上がる歓楽街、闇夜を照らす赤々とした輝きを見つめながら呟く男神が一人。
歓楽街の騒動は当然のことながら
だが、間に合わない。神イシュタルとその眷属達を助けられる者は誰もいない。
しかし、燃え上がる歓楽街の様子を俯瞰する男神はまるで動じた様子もなく、ただ申し訳なさそうに謝罪の言葉を漏らすだけ。
普段の芝居がかった軽薄さはなく、真摯な態度で頭を下げる姿はどこか人間味を帯びているようにも見えた。
「······ヘルメス様、今回の件いったい何処までが貴方の筋書き通りだったんですか?」
男神、ヘルメスの側に立つ青髪の麗人が静かに問いかける。訝しげな眷属の問にヘルメスは頭を掻きつつ、困ったように苦笑いを浮かべる。
ヘルメスはイシュタルの派閥とは対立していない。むしろ友好的と言っても過言ではない関係を築いていた。
中立を、調停者を気取るヘルメスがイシュタルの派閥と事を構える理由はない·····ないはずだった。
「はは、人聞きの悪いことを言うなよアスフィ。俺だって予想外だよこんな事態は。まさかフレイヤ様がここまで怒るとは思わなかったからね」
「·········」
「本当だぜ? 俺はただフレイヤ様がベル君に目を掛けているとイシュタルにこぼしただけさ」
イシュタルに尋問され、追い詰められたヘルメスが不本意にも口走ってしまった情報。
それが今回の事件の発端であり、元凶。ヘルメスからすればほんの小話。確かにイシュタルの嫉妬深さは相当なものと考えていたがまさかここまでするとはへルメスも思ってはいなかった。
「それに、まさかフレイヤ様がここまでベル君に執着しているとも思っていなかったしね」
だが、女神の嫉妬も、美神の執着もあの少年が見せた輝きに比べれば塵芥のようなもの。
「何よりオレが思っていた以上に、ずっとベル君はお人好しで真っ直ぐだった」
たった一人の娼婦を助けるために全てを投げ出しながらも失わない確固たる覚悟で大派閥に立ち向かった愚かにも真っ直ぐな英雄の卵。
神の策謀も、女神も奸計も、その全てを打ち砕いてみせた小さな兎の雄々しき跳躍。
あれを見てしまえば誰だって惹かれてしまう、惚れ込んでしまう。それは神々も例外ではなく、ヘルメスでさえ心奪われてしまった。
「神も、人も、全てのものが遥か昔から求め続けてきた輝き······」
「──────世界は『英雄』を欲している」
神時代が始まる遥か昔にこの地に穿たれた全ての悲劇の元凶である『大穴』の攻略。
そして、いずれ来たる黒い終末────『隻眼の黒竜』の討伐。
ゼウスとヘラの眷属ですら成し得なかった下界の悲願。終わりの時は刻一刻と迫っている
だからこそ、人々は焦燥する。
故に、神達は渇望する。
『救世』を成し遂げる真の英雄の誕生を。三千年もの間、積み重なった悲劇の精算を。世界が、人々が待ち望むのは英雄の降臨。
この世界には嘆きが、悲劇が多すぎる。
今あるのは仮初の平和、いつか崩れる砂上の楼閣に過ぎない。
「世界の明日のため、悲願の達成のためにオレはあの兄弟を選ぶ」
大神の系譜であり、現代最強の頂に至った、史上最強にも届きうる才禍の再来と自らが英雄の器であると証明したその弟。
大神が遺した『英雄候補』。
彼らだけではない、約束の地たる今のオラリオには『猛者』、『勇者』、『剣姫』、『九魔姫』·····オラリオ1000年の歴史を見ても稀有な英雄の器達が集い始めている。
それこそ、この地に『船頭』が現れ、『蹄跡』を刻んだ古の時代にさえ匹敵するほどの。
そんな彼らならば、あるいは─────── ヘルメスは遠くを見据える。
「ゼウス、貴方とヘラが成し遂げられなかった『救世』。それはこの地が成し遂げる」
「必ずやオレ達が、彼等を『最後の英雄』へと導こう」
「··········ゼウス、オレはあの兄弟に全てを賭けるぞ」
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アイズ『··········えっ、私は?』
春姫『画面外で救われてました』
【ヘビーモスの黒剣/黒獣の呪剣→黒の細剣】
下界において十とない■■■■■■=エインの全力に耐えうる剣。レヴィスからエインに遺された最凶の武器。純前衛のレヴィスにはあまり使えていなかったが呪いの放射能力があり、第二級以下ならそれで即死可能。エインは、魔力にものを言わせて物理的破壊力を持った飛ぶ斬撃とした。
【英雄■■】
・能動的行動にチャージ権を得る
・■■■■■発動時は使用不可
・■■■■は■■・■■■■。
【リーヴ・ユグドラシル/■■■■■・■■■】
・広域攻撃魔法/滅神魔法
・竜種及び漆黒のモンスターへの特攻。
・天授物に依らぬ神殺しが可能。
Lv.5最後の更新で発現。
古代編書きてぇ……