❅月◎日
既に数日が経ったが誰も来ない。妖精メイドに周辺を調べてくるように要請した。……妖精メイドに要請。ちょっと笑った。
❅月△日
妖精メイドの一人が妖怪の賢者やらに遭遇したらしい。後日改めて向かうと言伝されたので、客を歓待する用意をしなくては。
❅月☽日
妖怪の賢者、スキマ妖怪『八雲 紫』が来た。顔を見たら、かなり前に金ダライの餌食になった胡散臭い妖怪だった。
目的を聞かれたので、幻想郷で過ごすこと。そして、紅魔館を探していることを伝えたら、異変とやらを起こすことを提案された。
異変を起こして、博麗の巫女に一度退治されることで、幻想郷に受け入れてもらうとのことだ。
「つまり祭りか!?」と聞くと、似たようなものと返された。
安全で平和的に異変を起こすことに決めたので、案を募集しよう。
❆月♁日
起こす異変が決まった。ミレジア発案その名も『不吉な黒い鳥異変』だ!!
概要は、俺の忍術『影絵鳥』を幻想郷中にばら撒いて、影絵鳥を基点に別の忍術を発動して不幸を演出すれば、それも異変になるだろう。
❆月・日
今日が異変決行の日。暫くは忍術の使用に集中するため、日記は付けられないだろう。分身の術も併用して、大規模なしょうもない異変を巻き起こしてやる!!
¿¿月△!日
異変を分身に任せて久しぶりに日記をつける。
……まだ解決してねぇ!?妖怪の賢者のところに殴り込んで文句を言うと、「え、あれってあなたの仕業だったの!?」と驚かれた。妖怪の賢者も気付いてなかったらしい。これはもう妖怪の賢者じゃなくて、妖怪の賢者(笑)だ。
勿論、ここ最近の不幸の餌食にもなった紫は襲いかかってきたが、魔法と忍術、後ついでに魔道具を駆使して全力でおちょくりながら逃げていると、途中でガチ泣きした。かわいそうはかわいい。
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月光館が幻想郷に突如出現して数カ月が経った。既に天狗たちも興味を失せ、新聞にとりあげることもなくなっていた。
「はわっ!?」
そんな頃、博麗神社の敷地内に建っている霊夢の家から、可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。
「どうしたのー?」
「い、いえ。歩いてたら思いっきりコケちゃって」
畳の上で横になっていた霊夢が気怠そうに尋ねると、両手を振って少しばかり気恥ずかしそうにしながら針妙丸はテヘヘと頭を掻く。
霊夢は「ふーん」と興味を失ったのか、ごろりと寝返りをうとうとすると、
ゴツンッ!
「イッダァ!?」
ちゃぶ台の足に脛を打ちつけ、悲鳴を上げた。
「だ、大丈夫ですか……?」
「大丈夫じゃないわよ……っ!!」
霊夢はぶつけた脛を摩りながら愚痴を言うと、宙を見て声を出した。
「紫、出てきなさいよ」
「……あら、気付いていたのね。霊夢」
すると、宙にパックリとスキマが現れ、その中からヒョイッと紫が上半身を出した。
「気付いてないわ。ただの感よ」
ふんっ、と鼻を鳴らすと霊夢は紫を睨みつけた。
「それで?一体何の用よ」
「あら、やっぱり霊夢も気付いてなかったのね。この『凶鳥異変』に」
紫の言葉を聞き、霊夢は目を見開いた。
「ここ最近の運のなさって、異変なの!?」
「ええ。ほら、外を見てご覧なさいな」
そう紫が閉じた扇で指し示した先を見ると、神社の敷地に立つ木の上に、『影』のように真っ黒な鳥が瞬きもせずにこちらをじっと見つめていた。
「……成程。あれが異変の原因ね」
「正確には、あの鳥を介して不運をばら撒いてる奴が居るのよ」
紫の言葉にフルフルと怒りに震える霊夢。おどろおどろしい声で紫へと尋ねた。
「……それで?そいつはどこの誰よ」
「数ヶ月前に突如として出現したあの館。そこに犯人がいるわ」
「分かったわ。……嫌な目に合わされた恨み、たっぷりと晴らしてくるわ」
怒りの形相でそう言うと、霊夢はお祓い棒を片手に持って、空へと浮かび、神社を飛び出していったのだった。