転校生たちの会談    作:ロクナナエイト

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転校生たちの会談 起

「転校生さん!」

「ん、智花?・・何?」

「あ、その・・お元気でしたか?」

「うん、元気だよ。それじゃ」

「あ・・」

 

 そういって転校生さんは行ってしまいました。今日も転校生さんは素っ気なかったです。

 

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3月15日

 

 私が復興から二週間ぶりに帰ってきた時にはすでに変わってしまっていました。何を聞いても淡白な返答。みんなが心配しても「大丈夫だよ」で会話が終わってしまいます。ベヒモスを倒してから1年が経って、クリスマスもみんなで一緒に楽しく過ごしました。それがどうしてこんなことに・・

 

「はぁ、転校生さんどうしちゃったんだろう・・」

 

 私は途方に暮れて噴水前のベンチで考え込んでいました。もうすぐ学園は卒業式の準備に取り掛かる時期です。ですが、卒業する皆さんも転校生さんの様子が気になって、どこか緊張している様子です。せめて卒業式には笑顔でいてほしいけど・・

 

「・・はぁぁ」 

 

 そうして私が考え込んでいると、

 

「・・転校生の事?」

「あ、夏海ちゃん・・」

「転校生・・あいつどうしちゃったのよ。何もかもどうでもいいみたいな顔しちゃってさ。」

 

 今では卒業式よりも転校生さんの話題だらけで、新聞部も新しい話題が無いから新聞が作れないと嘆いていました。

 

「・・どうしたらいいんだろう。」 

 

 そう言うと夏海ちゃんがニヤっとして

 

「どうにかしたい?」

「え?」

「あいつが何でああなったのか、どうすれば元通りになるのか、私たちが力になれるのか、知りたい?知りたいなら、いい話があるわよ!まあ発案者は部長なんだけど。」 

 

 そう話す夏海ちゃんの顔は自信にあふれていました。間髪いれずに「どんな話?」と切り出すと、夏海ちゃんは少し苦い顔をして・・

 

「・・いい?、今から言う事は、絶対に関係ないヤツに言っちゃダメだからね。実は・・」

 

 夏海ちゃんの作戦を聞いて、最初はびっくりしました。まさか”あの事”が関係しているとは思いませんでしたが、でも今回の事はいつかは起こる事だったと納得できました。ただ私も含めて学園生のみんなの心構えが、当日まで完璧にはできないと思う事と、これから行う作戦内容がちょっと運任せという感じでしたが、

 

「・・・うん、分かった。じゃあ私はグリモア軍の人達から話をしてみるね。」

「OK!あたしと部長は始祖十家から当たってみるから、一通りすんだらMore@で連絡よろしく!」

 

 そう言って夏海ちゃんは駆けていきました。見送った私は、まず学園長に会いに行きました。

 

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3月22日 生徒会室

 

 

「全員そろったね。」

 

目の前の女性・・遊佐が音頭をとる。今この場に集まったのは、鳴子遊佐、服部梓、野薔薇姫、水無月風子、武田虎千代・・そして

 

「俺と彼(第7次侵攻時の転校生)はこの場にいても構わないのですか?」

 

 そう、この世界の俺から情報を引き出すために呼ばれた・・裏世界の転校生こと俺達。

 第8次侵攻から一年、俺は今年の1月に目覚めた。長い夢から覚め、起きて状況を確認するためにすぐ近くの保健委員の人に挨拶したら叫ばれ、風紀委員を呼ばれたのには驚いた。たぶん俺の中で一生記憶に残ると思う。ムサシに変身したのだから警戒されるのは分かるが、叫ばれるとは思って無かったので驚いた。すぐに風紀委員の神凪さん・・(だったはず)が来て、風紀委員の拷問部屋みたいな所で危険物のような扱いを受けた。

 取り調べに対して俺自身は人類に対する憎悪は残っていたが、「これからは復興の為に頑張ります。」と従順な態度で”愛想笑い”をしていたら、色んな人と面接して1週間ぐらい経ってからやっと問題無いと判断された。

 この”愛想笑い”は地下施設の研究所で暴力を振るってくる研究員によく使った。まぁ、この愛想笑いを覚えたのは”もっと前”なのだが・・とにかくその後はグリモアに入学する事になり、魔法の適正検査は最低ランクだったので転校生と体質は同じと判断された。

 それから1ヶ月は瘦せまくった体を元に戻すために運動して、悪い奴ではないと信頼を得るために奔走し、学園生のみんなと信頼を築いた。そんな折、転校生の態度が急変したという報を聞きつけて「そういえば、他の俺はどうしてるんだろう?」と思い、今回の会談を提案して今にいたる。

 

 今回の作戦は目の前の彼女等が中心になって動くので、俺たちはその指示に従って行動すればいいらしい。

 

「ああ、頼むよ。君たちが今回の作戦の要だ。」

 

 この遊佐さんと呼ばれる人は俺から見てもかなりおっかない。同時に2つの事を考えていそうな顔をしている。(ド偏見)

 

「遊佐、実行する前に確認しておくが本当に大丈夫なのか?この二人が私達に協力するのは良いが何故こうも協力的なんだ?こっちの転校生と話す事がそんなに二人にとってメリットなのか?」

 

 今喋ったこの武田さん、裏世界で途中から俺と一緒に地下に閉じ込められた被害者。顔を合わせる事は無かったが、研究員達の会話から存在を知ってはいた。・・・あと、研究員の中には俺達2人を物理的に繋げて破壊兵器に転用出来ないか考えている奴もいた。

 

「それは彼ら自身が説明してくれるよ。僕は夏海達の指示で忙しいからさ・・・じゃ、説明よろしく!”ハチ”君それから”ナナ”君」 

 

 そう言ってデバイスに顔を向けて黙ってしまった。

 

「ハチ?ナナ?・・ああ、第8次侵攻時の転校生さんだからハチ、第七次の転校生さんでナナですか。まぁ、分かりやすくていいと思いますよ。この場合は。」

(風子会長・・確かこっちの世界でも、もう卒業して警察官になってんだっけ。立派な人だなぁ。)

 

 そう、俺はハチという新しいNo.をもらった。数字は正直言ってあの地下施設を思い出して嫌だったが、今回の作戦ではその嫌な記憶が大事になってくるだろうし、まぁいい。

 それより先程の武田さんの質問だが、まぁ当然の疑問だ。まず最初にこの作戦の最終目的は転校生の精神ケアだ。それができる可能性があるのが俺達だけだと遊佐さんから聞いたから、俺たち自身が志願した。・・はたから見たら俺たちが心を入れ替えて人類の為に頑張って社会奉仕する、という風に見えなくもない。

 しかしこの人達は魔物が消えたからといって平和ボケなどしない。当然、俺らが転校生に危害を加えるのではないか、最悪殺害するのでは、と警戒しているのだろう。まぁ、今回に限ってはそんな事はしないのだが・・さて、どう説明すれば・・

 

「俺らが転校生と話す事で何を得られるのか、説明すればいいんすか?」 

 

 俺の横で立っているナナが腕組みをしながら言った。

 

「そうですけど・・先輩に比べて随分チャラいっすねぇ言葉使い。」

 

 忍者の服部さん、この人はホントに嫌いだ。目覚めたばかりの俺を常に監視して、変な動きをしようものなら容赦なく拘束してきた。顔を見るだけでストレスである。

 

「俺はこの世界の俺がどこまで違った人生を歩んできたのか知りたい。こいつ・・あー、ハチはこれからの身の振り方を決めるための参考にしたい・・でいいんだよな。」

「ええ、それであってますよ。」

 

 この場は敬語で丁寧に接する。ナナが”わざと”ナメた態度をとったので、こちらは対照的に丁寧な態度をとり相手の出方を伺う。・・という事を事前に打ち合わせしておいたのだ。

 

「本当にそれだけですか?」

 

 水無月風子さん、俺の中では生徒会長のイメージが強いが、こちらでは風紀委員長のイメージが強いらしいな。

 

「どういう意味です?」

 

 そう言うと風子さんはハァ~~~、と大きなため息を吐いて、

 

「あんたさん方が事前に指定してきた条件が多すぎる上に、全部守らなければ人類の敵になる!なんて脅されて言葉通りに信用しろっていうのは無理があるんですよ。」

 

 にっこりと顔は笑っているが殺気が半端ない。それもそうだ、俺達が要求した(俺が条件を提示しナナも同意した)条件は3つ。

 

1.転校生との会話は放送室で行う。

2.俺達の会話は全て校内放送され、学園中の全ての生徒が聞こえるようにする事。

3.転校生にそれなりに関わった全ての者を裏世界も含めて集めさせる事。・・断れば人類の敵になるかもしれない。

 

 という事を言ったのだが、この条件は俺達が本気だという事を伝えたかっただけで、まさか全部の条件を飲んでくるとはこちらも予想外だった・・それだけ向こうも本気という事か。 

 とりあえずここは・・

 

「その事につきましては”あなた方”にも今回の問題を作った責任があると思ったため、その責任をしっかりと自覚するために提案させて頂きました。」

 

 少し強気で返してみる。すると

 

「それは、私達が転校生さんを追い込んだ。と言っているのですか?」

 

 即座に反応したのは野薔薇姫さん。裏世界でもこちらの世界でも民の為に戦った勇敢な戦士の1人、なのだが俺の中では余り活躍した印象はない。

 

「当たり前だろ馬鹿」

 

 ナナの一言で皆の視線が一斉に刺さる。俺から見ても挑発のし過ぎだとは思うが、俺自身こいつ等が転校生を追い詰めたんだろうなぁ、とも思っているためフォローはしない。

 

「な!、あ、当たり前とはどういう事ですか!?私達は転校生さんと一緒に沢山の死地を乗り越えて確かな絆を築いてきたんです!それがたった一年の内に瓦解したと言うんですか!?」

「それはこの後の俺達と転校生の会話で分かる事だよ。他に質問は?」

 

 いきなり話の流れをぶった斬るナナ。その理由として、俺達はこの後の転校生との会話で自分達の事を一から説明するつもりでいる。後々分かる事だから今は話さない、という事だが些か言葉足らずになってしまっている。・・・何かフォローしようか迷っていると、

 

「君たち二人は今日初めて会うんだよね?」

 

 遊佐さんが話の流れを変えた。

 

「そうですね、さっきそこの廊下で初めて会いました。それが何か?」

「いや、初対面にしては随分と息が合っているなぁと。最初に転校生君と面会したいと言ってきたタイミングは一緒だったし、君達二人が目覚めた時期も1日違うだけだった。なによりとても”落ち着いている”。他の学園生が裏世界の自分に会った時はそれなりの動揺や反応を見せた。朝比奈君に至っては攻撃される事態にまで発展した。それぐらいショックな事だと思うんだけど・・もしかして以前にも会ったりしてる?」

 

 この部屋の皆からの視線がさらに冷たくなる。取り合えずあらかじめ用意しておいた返答を言ってみる。

 

「それはナナの行動が予測しやすかったからですよ。ナナは約1年前の俺と全く一緒なんですから、あの時の俺ならこう思うだろうなぁと予想して行動しているだけです。息が合っているのはそう見えるだけで、実際は俺が彼の勝手に合わせているんですよ。彼が今何を考えているのかまでは、流石に分かりません。」

 

 最後にニッコリ笑顔を見せる事で会話を締めくくる。これらの言い分は半分嘘である。確かに出会ったのはさっきが初めてだが、

 

   ”俺達は特殊な魔法を使い、今現在も互いの情報を交換しあっている” 

 

 息が合っているのはそのおかげだ。そして、この魔法は『俺達の目的』を達成させるための切り札でもある。だから絶対に他人に知られるわけにはいかない。

 

「・・・よく分かったよ。ありがとう。」

 

 俺のニッコリ笑顔に同じようなニッコリ笑顔で返してきた。遊佐さん、やはり侮れない。

 この遊佐さんとの会話の後、俺たち二人は他の人達と何度か押し問答を繰り返した。

 

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「転校生さんと話し終わった後、転校生さんと一緒にしたい事はお有りで?」

「プレジャータウンという場所で一緒に遊んでみたいですね。」

「ハチと同じく。(何でそんな事を野薔薇が聞くんだよ。)」

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「ハチ先輩とナナ先輩は、好きな女性のタイプとかあるんですか?」

「うーん・・あまり・・はっきりとは・・」

「俺は人自体あまり信用しないタチなんで。(忍者に情報タダでくれてやるのは何かヤダな。)」

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「お前たちはこの平和な世界を見てどう思う?思った事は何でも言ってくれ。」

「前提としてこの世界が平和だというのは貴女の主観に過ぎませんよ。(虎千代さん、平和と決めつけるのは早いのでは?)」

「世界情勢にはあまり興味が湧きません。(平和が音を立てて壊れる瞬間は、新しい時代の幕開けを感じてワクワクしますねぇ。)」

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「グリモア内の空気(雰囲気的な意味)についてどう思われます?」

「やっぱり元風紀委員長としてその質問はしますよねー。当たり前の事ですが、女性が多くて男子は色んな意味で辛い環境でしょうね。(・・転校生にとっても、ね。)」

「いいんじゃないんすか?みんな一見良い人に見えますね。(嫌味)」

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「今の君たちに生きる目標はあるかい?」

「「あります。」」

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 終わった時に丁度お昼の時間となった。

 

「ちょうどお昼っすね。計画通りにやるなら午後二時から放送室で作戦実行っすけど、どうします?このまま解散して二時に放送室でハチ先輩とナナ先輩が現地入りって感じにします?」

「そうだね、先に転校生君に入ってもらって後から二人が入室する形でいこう。ちなみに転校生君は君たちが来ることを知っているからね。話が早く済む事を祈っているよ。」

 

 出会って短時間でもう砕けた態度をとる遊佐さん。その姿に俄然俺は警戒心を強めた。この人と一緒だと足元を掬われかねない。

 

「なら俺は時間まで適当にぶらつくか。ハチはどうする?」

「俺は食堂で待つよ。みなさんも、何か予定に変更があればお知らせください。」

 

 そう言って二人は生徒会室を後にした。二人が去った後にわずかな沈黙が流れた。

 それからぽつぽつと、皆がそれぞれの思いを吐露し始める。

 

「なんか普通って感じっすね。どこにでもいる学生って感じっす。」

「でも間違いなく裏世界の転校生君であり、ムサシでもある。」

「私は今でも不安でいっぱいです!本当に転校生さんと3人だけにするおつもりですか!?」

「それはウチも同感です。ですが転校生さん自身が許可された事ですので、ウチは転校生さんの意思を尊重しますよ。」

「大丈夫だ。ナナの方は多少ひねくれてはいるが、二人とも我々の話を真面目に聞いてくれていた。少なくとも最悪な事にはならんさ。」

 

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二時間後 放送室前

 

 予定の時刻、放送室の前には二人の影があった。

 

「ハチ、マイクはちゃんと付いたか?俺はちょっと手こずってる。」 

 

 俺達は遊佐さんからもらったマイク?を付けていた。このマイクは戦闘中に指示を出すために作られたらしく、小型軽量でとても頑丈らしい。それを耳に付けたのだが、ナナは結構手こずっていた。

 

「大丈夫そうかな?うん、OK。」 

 

 準備を終えて入ろうとした時、マイクから連絡が入る。

 

「二人とも聞こえるかな?」 

 

 マイクから聞こえたのは遊佐さんの声だった。

 

「そのインカムは魔物との闘いに備えてJGJが作った特注品です。絶対に壊さないで下さいよ。」

「風子さん、了解しました。(これマイクって言わないのか・・・)」

「よし、入るぞ。」 

 

 そう言って扉に手を掛けるナナの横に立ち、

 

「ふふふ、楽しみだ。」

 

 ついついニヤケながら放送室に勢いよく入っていった。

 

 

続く

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