別作品の連載が終わったので、こっちの連載を再開します。
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転校生視点 放送室
「まず、俺達の親は間違いなく毒親だった。この過去はみんな同じでいいかな?」
「異議なし!間違いなく糞親で馬鹿親だった!もうな、嫌悪感が半端ねぇわ!さっさと死ねって感じ。」
実の親の悪口を喜々として話すナナに、僕は共感を覚えた。確かに僕の両親は世間一般で言う毒親だった。
「・・まぁ、その通りだとは思うよ。」
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その言葉を聞いた学園生は三者三様の反応をする。特に焔がいる精鋭部隊では、メアリーが大きく声を上げていた。
「はっ!じゃあ何か、アイツが不機嫌なのはアイツの馬鹿親が原因だったのか!?」
「無論それだけではないのだろうが、よりにもよって一番最初に上げた原因が家族間の不和か。・・先が思いやられるな。」
「・・?ちょっと!ツク達にも分かるように言いなさいよ!」
「あいつらの中で一番軽い問題が、実の両親を殺したい程憎んでるって事だろ。一番軽くてこれだ。後から出てくる不満が何なのか予想が付かねぇ。・・特にアタシはな。」
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「親父もお袋も、自分の事しか考えない糞野郎だった。俺らがガキの頃はよく虐待されたもんだ。そうだろ?転校生?」
「うん、ちょっとでも気に障るような事を言うとビンタされた。それから表情も制限されたね、大声で笑ったりしたら五月蝿いって理由でビンタ、映画に感動して泣いたりしたら男が泣くなって怒鳴ってビンタ。・・幼稚園児だったあの頃が、なんだかんだ一番大変だったよ。」
「何より金銭への執着が酷かったですねー。・・まあ、親の問題はこの辺にして、次にいくとしますか。」
最低限の事実が当人達の間だけで確認できたので、先にいこうとすると、
「ちょっと待って下さい!今の話は全部本当なんですか?何かの間違いでは・・」
あまりに早すぎる話の流れについていけず、思わず声を上げる野薔薇。2人のインカムから聞こえる質問に答えたのはハチの方だった。
「ごめん転校生、グリモア中から『今の話は本当なのか?』って言う声が凄いらしいから君の口から肯定してくれ、とお達しが来てる、悪いけど何か皆に言ってくれない?」
そう言うハチの顔は悪戯小僧のような無邪気な笑顔だった。ニヤついてるハチにつられて苦笑いしながら、僕は恐る恐る口を開いた。
「・・みんな、黙っていてごめん。僕はみんなが思っているほど、綺麗な人生は歩んできてないんだ。」
その言葉でグリモア中が静まり返る。同時に聞いている全員が納得した、彼らは嘘や冗談は言っていないと。同時に身構えた、彼らが自力で解決出来なかった更なる問題が待ち受けているのだと。
「・・よし、次行こう次!」
手をパンと鳴らしてナナが話題を切り替える。
「次は小学生編、かな?」
「小学生だった頃なぁ、あの頃の俺らは泣き虫だったなあ。」
「そうでしたね。まぁ、家で泣けないから学校で泣いてただけなんですが。それを同年代の悪ガキ達が見逃すはずが無かった・・」
「結果として、僕達はイジメの対象になって6年間イジメられた。それを先生に言っても何もしてくれなかったけど。」
「俺はこの頃が一番辛く感じましたね。」
そんな感じで暗い話で盛り上がっていると、
「あー、ちょっといいかな?」
「遊佐さん?、どうされました?」
突然の遊佐の割り込みにハチが驚く。ハチ自身は遊佐が積極的に喋る性格では無いと思っている為、余計に驚いている。
「いや、こっちの方はそこまで困ってないんだけど、グリモアのみんなが結構参っちゃってて・・少し明るい話題を挟んで欲しいかな。」
「はぁ!?なんだよ根性ねぇなぁ。」
「遊佐さんはなんて?」
「俺らの会話が暗いから明るくしろだと。」
「あはは、そうだね。じゃあ中学時代で楽しかった事を言っていこうよ。」
それを聞いてハチはまたニヤニヤし出した。
「ふふふ、転校生・・俺の記憶が正しければ、中学生時代が肉体的に一番キツかったはずですが?」
「そうは言ってもよぉ、所詮小学校の延長だろ?俺は高校の方がキツかったと思うぞ。」
「うーん、確かに記憶が同じならそうかもね。でもアレが小学校の延長なら、9年間イジメられていたって事になるけど。」
「その通りですよ実際。俺達は結局のところ、魔法使いに覚醒するまで毎日が地獄でした。」
「まぁな。じゃあ魔法使いに覚醒するまでにあった幸せな出来事、それぞれ上げてこうぜ。」
そう言ったナナが一番言いたそうな顔をしているが、それより先にハチが割り込んだ。
「では俺から。俺が一番幸せだったのは一人で寝ている時でしたね。周りに誰もいない状態で気を失えるのがどれほど幸せな事か。」
「あはは・・でもその通りかもね。一人ってなんだかんだ楽だし。」
「俺は一人でメシ食ってる時だな。誰にも邪魔されずに食うメシは最高だぜ!」
ナナがグッ!と握りこぶしを上げる。
「ナナは単純ですね。でもまぁ、幸せなのは否定しません。」
小馬鹿にしたように言ってはいるが、その顔には確かに協調の笑みが見て取れた。
「最後は僕か。僕はね・・・一人で”笑える”のが一番楽しかったよ。」
その言葉を聞いた2人から笑みが消える。またその言葉を放った転校生の顔にも笑みは無い。
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一方その頃、黙って聞いていた茶道部の冷泉とソフィアは、今にも暴れ出しそうな白藤を抑えるのに必死でいた。
「うぐぐぐぐ・・許せへん!絶対に許せんへんイジメッ子共!追っかけ政宗で何処までも追っかけたる!一人も逃がさへん覚悟せぇや!」
「お、落ち着いてください白藤さん!お顔が般若のように歪んでいます!」
「オオゥ、私も怒っていたはずなんですが、香ノ葉さんには勝てませんねー。」
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「それではそろそろ本題に入りましょうか?本当はもっとお互いの過去を色々聞きたかったのですが、グリモアの皆さんも忙しいでしょうし。」
ハチが優しい声で話題を変える。しかしグリモアのみんなを間接的にけなしているような言い回しに、思わず僕は眉を潜めた。
「本題っていうのは僕の事?」
「お前が最近元気が無いから、その理由をお前本人から聞き出したいってグリモアが困ってたもんでな。そこで俺らが立候補したって訳よ!」
「ええ、ナナの言う通りです。転校生、かつての君は皆を纏める素晴らしいリーダーだったそうじゃありませんか。しかし、今の君からはそのような強さやカリスマを一切感じません。グリモアの皆さんはそんな今の君に大変困惑しているそうなのです。一体なぜ?君の顔を曇らせたのは何なのか?皆それを知りたくてたまらないのですよ。」
まるで演劇の台本でも朗読しているかのような言い回し。思わずフフッと自然な笑みが零れれば、ナナがすかさず指摘した。
「でも話に聞いていた様子と若干違うな。俺らは転校生が一切笑わなくなったって聞いたんだが・・お前、俺たちの前ではよく笑うよな。」
「ふふふ、もしかして・・出会ってすぐの俺達の方が、5年近く苦楽を共にしてきたグルモアの皆さん達よりも・・信頼出来ると?」
その発言でグリモア中が一気に静まり返る。ハチはわざと、グリモア全員の虎の尾を踏んだのだ。
そして転校生の返答は・・
「・・・当たり前じゃん。たかだか5年程度の付き合いと、生まれた頃からの記憶を共有している自分自身とじゃあ・・絶対的な差があって当然じゃん。」
俯きながら無気力に放った言葉。その内容は、ズバッ!と・・グリモアの皆を切り捨てるものであった。
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それを聞いた如月、宍戸、楯野の3人は、
「う~わ、ハッキリ言ったわね。ま、気持ちは分からないでもないけど。」
「・・正直に言えば、私も初めてゲネシスタワーにいた私と専門的な話が出来て・・心が躍ったわ。」
「僕だって裏世界の自分とゲーム出来て楽しかったけどさ・・そういう体験をしてこなかった連中には大ダメージじゃないかコレ?他の連中大丈夫か?」
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「ははははは!ハッキリ言ったなぁオイ!これなら話が早い!」
「ええ全く・・ではこちらもハッキリ言いましょうか転校生!君が笑わなくなった原因、それは自分が犯してしまった過ちに責任を感じているからでしょう!」
生徒達がショックから立ち直れていないにも拘らず話の核心をぶちまけたハチ。その後に十数秒の沈黙が流れたが、転校生は口を開かない・・・その間に立ち直った者達が急いで頭をフル回転させ、状況を把握しようと頑張り始めた、その時!
「・・・具体的には?」
肯定はしない、代わりに求めたのは深掘り。それをナナとハチが交互に請け負った。
「お前はこの世界でムサシにならず、霧の魔物に寄り添わなかった。それどころか霧の魔物にとどめを刺した。」
「その結果、リゼット・オーデュラーがベヒモスを呼び寄せ、人類は再び団結して立ち向かわなければいけなくなった。」
「でもお前らは勝った。それもグリモアからの死傷者はゼロ、紛れもないハッピーエンドだ。グリモアにとっては、な。」
「死傷者が出なかったのはグリモアだけだった。軍人はもちろんの事、民間人にも多少の死傷者が出た。」
「それをお前は気にしているんだ。自分が歴史を変えてしまった!自分がムサシになって人類を皆殺しにしていれば、霧の魔物との戦いで生き残ったと、人類をぬか喜びさせる事も無かった!ベヒモスと戦って死んでいった人達に申し訳無いって、そう思ってるんだろ?」
「もちろんそれだけじゃない!君は歴史を変えた!並行世界がいくつあるのかは知りませんが、おそらくほとんどの世界の人類は俺たちムサシの手によって滅んだはず!」
「でもそれが普通なんだよ!人類は300年後に滅びを迎え、地球の支配者を別の生き物にバトンタッチする事でその役目を終えたんだ!そして人類は!俺たちはもう・・誰も苦しまなくてよくなった。」
「しかし!この世界を含めたいくつかの世界は人類の生存を許してしまった。だからこれからも人類の歴史は続いていく。そしてその過程で大勢の・・俺たちと同じようないじめられっ子が、生まれなければ良かったと思うような人生を・・送り続ける事になる。」
「お前はそれにも責任を感じているんだ。お前は目の前の少数の命を救う代わりに、未来の大勢の命を不幸のどん底に叩き落したんだ。きっと未来に生きるいじめられっ子達はお前を恨むだろうなぁ。」
「どうして世界を救ったんだ?俺達は生きたいだなんて言ってない!人類というこんなに醜い生き物の繁栄を選ぶだなんて、頭がおかしい!・・・みたいにね。君はそれをずっと気にしているんだ。だって”俺達がそうだった”からね?そうだろう?」
勢いで捲し立てた二人。それらを一字一句ちゃんと聞いていた転校生は・・・
「・・・うん。」
子供のように、力なく頷くだけだった。
続く