面倒臭がりな提督   作:にんじん元帥

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彼女の眼帯 ~弐~

軽巡洋艦『龍田』は酷く狼狽していた。

こんな事は初めてだと、心の奥がザワザワと騒ぎ出す。

艦娘として生を受けて数年は経つが、今までに感じたことの無い感情が龍田を襲った。

 

「…え?今、なんて…」

 

ただただ訳も分からず、その場に立ち尽くす龍田を横目に天龍が一言。

 

「だから、もうついてくるんじゃねぇって言ってんだ!」

 

実の姉である天龍から放たれたその一言は、龍田を突き放すのには十分すぎるものであった。その言われた張本人はというと、一瞬で頭が真っ白になると何も言葉を発することが出来ない状態に陥っていた。

 

(て、天龍ちゃんはなんて…?どうして…?天龍ちゃんに私、何か悪い事でもしてしまったかしら…)

 

「あっ……ま、待って!天龍ちゃん!」

 

先程の発言に対して理解が追いついていない様子である龍田は、天龍が踵を返して一目散にその場から離れようとする姿を確認すると、急いで天龍を引き留めようとする。が、しかし天龍は立ち止まる素振りすら見せずにその場を去ろうと早歩きで廊下を進む。

何度も「待って!」と声を掛けるが、天龍は耳を傾ける事なく早々と艦娘寮を出ていった。

 

「…」

 

取り残された龍田は、茫然と天龍が歩いて行った方向を見つめる。

これまでは少しの食い違いはあれど直ぐに双方が納得の行く形となっていたはずだが、今回はどうしてか事態がさらに悪化しているようだった。

 

(…どうして、どうしてなの?…天龍ちゃんにとって私は、もう…)

 

 

時は遡り、マルロクマルマル。

龍田はいつも通りの時間に起床し、そそくさと支度を済ましていく。

部屋の換気をする為に窓を開けると「…んぅ」と背伸びをしてゆっくりと息を吐き出す。

季節は初冬と言ったところ、秋の気配が徐々に遠ざかって行くのを感じるに連れ冬の寒さが増し、近頃は息を吐く度に気霜が目立つようになった。

龍田は両手を擦り合わせるともう一度息を吐き、氷のように冷たくなった指先を暖める。

人間同様、艦娘にも暑さが苦手な者や寒さが苦手な者が存在する。

 

「今日は一段と寒いわねぇ〜…」

 

ふと沈むような気持ちを感じて、気分転換に散歩でもしようかと部屋を出る準備をする。

総員起こしはマルナナマルマル。残り30分程だが、この沈んだ気持ちをどうにかしたいと若干の焦燥感を抱きながら扉へ向かう。

 

「…あら」

 

龍田が部屋の扉を開けると、隣の部屋からも開く音がした。

 

「…」

 

そちらの方を確認すると、無言のまま此方を見つめる1人の人物が確認できた。

それは紛れもなく自分の実の姉である『天龍』だった。

 

見ると既に制服に着替えており、龍田は珍しいこともあるものだと思い声を掛けてみる。

 

「おはよう天龍ちゃん、今日はどうしたのかしら〜?珍しく早起きじゃない」

 

普段の天龍と言えば、我が佐伯湾泊地の寝坊助さんこと提督のようにダラダラと過ごすことが多い。その度に、私や大淀に叱られては弱々しく反発してくる。

 

(まぁ、そんな所が可愛らしいのだけれど)

 

と、このように声を掛けてみたのだが、向こう側からの返答は無かった。

龍田は声が小さかったのかと思い、もう一度「おはよう〜」と挨拶をしてみるが、相変わらず天龍からの返事は無い。

 

不審に思い「どうしたの〜?天龍ちゃん〜?」と少し心配しながら近づいてみる。

 

(何かあったのかしら?…いつもは元気一杯な天龍ちゃんが今日は何処か暗い顔ね…)

 

「大丈夫…?天龍ちゃん?」

 

心配そうに声を掛けると同時に手を差し伸べようとするが、次の瞬間、唐突に天龍が此方を睨むと『パシンっ!』と手の甲で龍田の右手を払う。

龍田は突然の事に驚いて「ひっ…」と小さく悲鳴を上げてしまった。

払われた右手がジンジンと痛む感覚に顔を歪めながら、恐る恐る天龍の顔を見る。

すると、「…ふんっ」と鼻息を立てそのままその場を去ろうとする天龍。

そんな態度に龍田は戸惑いながらも、制服の袖を引っ張り何があったのかを聞き出す。

 

「天龍ちゃん!一体どうしたの?…何か辛い事でもあったのかしら?」

 

龍田の一言で歩みを止める天龍であったが、振り返ると不服そうな顔をして返事を返してきた。

 

「…うるせぇな、別に何もねぇよ」

 

明らかに様子がおかしい天龍に龍田は困惑しながら、これは何かあったのだと確信し、さらに詮索を試みる。

 

「何かあったのでしょ?…天龍ちゃんのことだから私、心配なのよ?」

 

「だから!何も無いって言ってんだろ?」

「嘘よ!」

 

思わず大声を出してしまう龍田であったが、ここは艦娘寮。他の艦娘の子達も生活している場所だ。大声を出せば、当然誰かしら気になって部屋から出てくるだろう。

 

「…どうしたの〜?朝っぱらから」

 

出てきたのは同じ軽巡寮に住む重雷装巡洋艦『北上』。

扉の隙間から少し顔を出して、気だるそうに欠伸をしながら此方を見てくる。

 

「…っち」

 

天龍はバツが悪そうにして舌打ちをすると、掴まれていた袖を引っ張り返し、不機嫌そうに足音を立てて玄関の方へと向かう。

 

「ちょっと!天龍ちゃん、待ってよ!」

 

「うるせぇ!もうついてくんなよ!龍田!」

 

天龍を止める為、離さないとばかりに腰を掴む龍田であったが、その行為が天龍を怒らせてしまった。

額に血管を浮かび上がらせながら声を荒らげる天龍は、其のままの勢いで龍田を突き飛ばす。

 

「…はぁ、はぁ」

「…っ」

 

怒鳴り声と共に強い衝撃を受けて倒れた龍田は、突然の出来事に驚きを隠せないでいた。

 

それもそのはず。天龍のこんな姿は今まで一度も見たことが無かったからである。これまで共に戦場を駆け回り助け合ってきたからこそ。死の淵で互いに励まし合いながら、幾つもの窮地を脱してきたからこそ。この現状を信じられずに居た。

 

突き飛ばされた事は勿論のことだが、「ついてくるな」龍田にとって初めて言われたこの言葉は、ナイフのように鋭く、そして心を抉るものであった。

 

「待って!…待ってよ天龍ちゃん!」

 

「…げっ、なにこれ、姉妹喧嘩?」

 

北上はただならぬ雰囲気を感じ、これは介入しない方が妥当だと判断したのか「…ご、ごゆっくり〜」と一言言って扉を閉めてしまった。

 

一人残された龍田は玄関の方へと向かう天龍を見つめたまま俯き、一粒の涙を流すのだった。

 

 

「なるほどなぁ…」

 

そして現在。

龍田は提督に連れられ、執務室の横に隣接してある給湯室にてこれ迄の経緯を話していた。

聞いていた提督はと言うと、腕を組んで何か思い悩むような表情を見せていた。

 

「う〜ん、天龍がそこまでするとはなぁ…。龍田、何か思い当たる節とかはないか?」

 

「えぇ、そうねぇ…」

 

今回のきっかけとなる原因が一体何なのか。何故天龍はあそこまで龍田の事を避けていたのか。考えれば考える程、謎は深まるばかりであった。

 

(…天龍ちゃんがどうして私を避けたがるのかはまだ分からないわ。…でも、一つだけ心当たりが…)

 

「まぁ、アイツも少し気難しい所があるからなぁ。日々のストレスが一気に爆発したって感じか?…それにしても、怪我とかは大丈夫なのか?痛い所があれば今すぐにでも入渠を許可するが…」

 

「ふふっ、提督は優しいのね…。でも、大丈夫。…これくらいなんて事ないわ〜」

 

少し痛むが提督に余計な心配はさせたくない。右手をヒラヒラと振りながら笑顔で答える。そして、素早く提督の死角となる机の下へと隠そうとしたが、それを提督は見逃さなかった。

 

「龍田、その右手…どうしたんだ?」

 

「…っ!」

 

完全に隠せていたと確信していた龍田であったが、目の前に居る提督には全てお見通しであった。普段はやる気のない雰囲気で鈍感な所もあるが、本当にこういう所はしっかりしている。それが神永隼人という男である。

 

(ふふっ流石は提督ね…。あの天龍ちゃんが認めた男と言うだけあるわね〜♪)

 

一転、諦めた表情をした龍田は、その赤く腫れ上がった右手の甲を机の上へと持っていく。実の所、あの時に受けた力は想像以上に強かった。故に龍田は悲鳴をあげていたのである。

突然の出来事も重なって悲鳴をあげたのもあるが、天龍から受けたあの力は躊躇なんてものは無く、本気で龍田を遠ざけようとしていた。理由はまだ分からない。でも、一つだけあるのだと、龍田は語った。

 

「実はね、一つだけ心当たりがあるのよ」

 

「…心当たり。なるほど、よし聞こう」

 

提督から氷の入ったアイスバッグを貰い、腫れ上がった手の甲に優しく宛てがいながら龍田は語り始めた。

 

******

これは私がまだ、この佐伯湾泊地に移される前の話。

提督は既に知っているはずだけど、私と天龍ちゃんは元々佐世保鎮守府所属の艦だった。

当時は今以上に深海棲艦の数が多く、世界は絶望の渦中にあった。

艦娘の数もそこまでなく、十分に戦える装備も開発されていない状況。

そんな中、私達は毎日を必死に生きていた。

 

『右舷!岩陰から敵の深海棲艦を補足!ヲ級一体に、…あれは!』

 

『なんなの!…あの白い深海棲艦は…?』

 

『分からねぇ!…だがよぉ、ヤツからは嫌な感じがするぜ…』

 

当時と比較して深海棲艦についての研究が進み、種類やどの程度の強さなのかが判別出来るようになった現代。今でも存在自体が特異と呼ばれるモノが確認されている。

他の深海棲艦とは見た目も、強さも、知能も桁外れに違う。

そのモノタチを私達はこう呼ぶ。

 

『深海棲姫』と

 

 

『なんなんだコイツっ!!っうお!!危ねぇ!…龍田!大丈夫か!!』

 

『え、えぇ!…なんとか生きてるわ』

 

『へっ、生きてて貰わなきゃ困るぜ!!行くぞオラァ!!』

 

その後、私達は深海棲姫との戦闘を開始した。

その判断が正しいのか、はたまた間違っていたのか…。

…分からないままに。

 

 

「それで、結果的には倒せたのか?深海棲姫を…」

 

「いえ、あの時の私達では逃げるだけでも精一杯…と言ったところだったの。…私含め天龍ちゃんも、他の娘達も皆、あの深海棲姫を前に傷一つさえ付けられなかったわ〜」

 

「なるほど。…ちなみに、その深海棲姫の名前は分かるか?」

 

「そうね〜。…今では少なからず確認されているみたいだけど、間違いないわ。…あれは『戦艦棲姫』ね」

 

ー戦艦棲姫

他の深海棲艦とは格段に違う容姿とその強さ。

ほぼ人型と言っていいその姿は、余りにも美しいものだった。長く伸びた艶のある黒髪。白い肌に着たその黒のワンピースは、敵でありながら見蕩れてしまう程。

そんな姿とは裏腹に、後ろで異質な存在を放つモノ。

あれは私達で言う艤装なのだろう。圧倒的存在感。肥大化した上半身に無数の副砲を備えたまるで飢えた野獣。

 

「今思い出しただけでも恐ろしいわね〜♪」

 

微笑みながらそんな事を言う龍田に対して、提督は真剣な眼差しで聞いてきた。

 

「…そこで、何かあったんだろ?お前と天龍との間で」

 

「…っ。…そうね。先程の心当たりというものについては、この話が関係してくるの」

 

そう言って龍田は再び語り始めた。

 

******

 

ー今思い出すだけでも、感じるの。

『怒り』『憎しみ』『恨み』『妬み』『悲しみ』『苦しみ』。情を持つ者ならば誰しもが抱いているであろう負の感情。

深海棲艦の原動力はそこから来るのだと、ある研究者は語る。

 

『ナンドデモ…シズメテ…アゲル…。ナンド、デモ…ナン、ドデモ』

 

その声を聞いた時、心の奥底から湧き上がってくるナニかを私達は感じた。この世の全てが憎い、みんな壊したい。負とはまた違う、ドロドロとしたドス黒いモノ。そんな殺伐とした雰囲気を身に纏い、彼女は壊れたレコーダーのように何度も、何度も私達に語り掛けてくる。

 

『…っく!なんだこれ!…っこのオレが負けちまいそうだ!!』

 

『…くっ、苦しいよ。胸が、痛い…ぃ』

 

『耐えるのよ!望月ちゃん!…っう…なんておどろおどろしいの…』

 

『天龍!!前に出過ぎるな!!…陣形を保て!!』

 

『っ分かってるよ那智!!…っち!!これじゃあヤツの懐にも飛び込めねぇ!!』

 

『…望月ちゃん頑張って!睦月も負けないにゃしぃ!!』

 

『こ、これ…勝てる相手じゃー…って!!…っうぉ!!っやばい!!』

 

当時、第二艦隊は旗艦を重巡洋艦『那智』とし、軽巡洋艦『天龍』『龍田』、駆逐艦『睦月』『望月』『深雪』の六隻編成で佐世保鎮守府から南下し、ソロモン諸島近海へと進行していた。作戦概要としてはソロモン諸島周辺に新種の深海棲艦が現れたとの情報が入り、その調査として私達第二艦隊は空母を主力とした第一艦隊の前衛部隊として作戦に従事していた。

 

『はぁ、はぁ…何なのだ、アイツは…』

 

『シズメテ…ナンド、デモ』

 

『き、傷一つも付かないなんて…』

 

『硬すぎるだろ!?…那智の20.3cm連装砲がまるで効いてないぜ!!』

 

『…うぅ、痛いよ〜』

 

『…にゃしぃ〜』

 

『そろ、そろ…限界、かも』

 

戦闘を開始して数十分が経過した。

 

私達は戦艦棲姫から放たれる無数の砲弾を間一髪で避けつつ、隙あらば周りの空母ヲ級やホ級、イ級に対して反撃を行っていた。

 

『龍田!!無線でっ…!…伝えてくれ!!…現在、謎の深海棲艦出現により第二艦隊はソロモン諸島周辺から少し北の海路で行く手を阻まれた。救援求む…と』

 

『えぇ、分かったわ!!…でも、先程から無線の調子が悪いのよね〜』

 

龍田が無線を使おうとするが、砂嵐のような音が聞こえるばかりで向こう側からの応答も何もなかった。

 

『これって…まさか』

 

『っく!!…まずいな』

 

那智を始め、天龍や龍田は薄々気づいていたのだ。

我ら第二艦隊を囲むように発生している『赤い靄』のようなものに…。

 

 

「赤い靄…ね、それに関しては俺もよく知っているよ。強い深海棲艦の周辺には何処までも続くような謎の赤い靄が発生する…と」

 

「えぇ、提督の言う通り…その靄は戦艦棲姫を取り巻くような形で発生していたの。無線も何故か使えないし、視界も靄で遮断されたわ。…そして、一番厄介なのが…」

 

「幻覚、幻聴の類い」

 

その靄にはある特有の作用があった。

負の感情が多ければ多い程、その者は幻覚や幻聴といった症状に襲われる。

仲間の囁き声であったり、何者かが此方を誘うように手招きをしていたり。艦娘によって個人差があったようだが。

その幻は、これ迄に数多くの艦娘が報告していた事案であった。

 

これらの話は初め、誰も信じていなかった。

上層部は艦娘の勘違いであり、戦場において稀にある事だと。そう勝手に決め付けていた。

 

「まぁ、それが事実であったと研究結果が出た時は、上層部も何食わぬ顔で納得してたんだけどな」

 

「…あら、提督はやけに詳しいのね〜。確か、この泊地に着任する前は大本営に居たらしいじゃない?」

 

「ごっほん…ま、まぁなんだ…少し小耳に挟んだだけだ」

 

わざとらしく咳き込む提督に対して少しニヤつく龍田であったが、あまり詮索しない方が良さそうだと判断し、引き続き話を続けた。

 

「ふふっ…それでね、私達はその赤い靄の中、誰1人離されないように気を配りながら進んでいたのだけれど、天龍ちゃんが…ね」

 

******

 

第二艦隊が赤い靄に囲まれてからどれくらいの時間が経ったのだろうか。

那智の判断の元、単縦陣から警戒陣に移行し、密集した形を取って突き進んでいた。目の前が霞んでしまい敵の位置が分からなくなってしまった手前、私達が一体、どの方向に進んでいるのかも分からなくなっていた。そんな中でも、何とかこの靄から脱しようと必死で試みた。

 

『っくそ!!何時まで続くんだこの靄は!!』

 

『にゃ、にゃしぃ!!い、今!!っ何か聞こえたよ!!』

 

『睦月ちゃん!!それに耳を貸しちゃダメよ!!私の背中に着いてきて!!』

 

『うぅ…頭がっ!!これ、いつ抜けられるのさ…』

 

『分かんねぇけどよ!…深雪達には突き進む以外、選択肢が無いみたいだぜ!!』

 

『…っ』

 

(無線も繋がらない以上、助けが来ることはまず無いわね…。話には聞いていたけれど、この靄は私達に幻を見せるみたいだわ)

 

『…って、おい!!天龍!!貴様何処を走っているんだ!!陣形を崩すな!!』

 

『て、天龍ちゃん!?そっちは敵が居た方向よ!!こっちに戻ってきて!!』

 

突然那智の怒鳴り声が聞こえたかと思えば、隣に居た筈の天龍が陣形を崩し、ブツブツと囁きながら艦隊から徐々に離れていく。

 

『っ帰らナキャ…海ノ…底へ…』

 

『ッチ!!…おい!!龍田!!少しコイツらの事を頼んだぞ!!』

 

『…っ!!わ、分かったわ!!』

 

代わりに先行を任された龍田は、海を彷徨うように航行する天龍、そしてそれを追いかける為に全速前進で移動を始めた那智の姿を心配しながらも、後ろの駆逐艦達を安心させるために大きな声で鼓舞する。

 

『大丈夫よ!!…天龍ちゃんは必ず戻ってくるから!!』

 

『…にゃしぃ〜』

『…っく…頼んだよ』

 

『そうだな!天龍は、…アイツは負けないぜ!』

 

突き進むごとにその背中の影が薄れていく天龍と那智の姿を見つめたまま、龍田は赤く濃い靄の中を走り続ける。

 

——脅威が迫っている事に気づかぬまま…。

 

 

『アイアン…ボトム…サウンドニ…シズミナサイ…』

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