生とか死とか。 作:あい
才能なんてない。そのことに気づいたのはいつだろうか。自分が主人公じゃないとわかったのはいつだっただろうか。
高校に入ってしばらくすれば、自然とそれが分かってきたと思う。
才能にあふれてるやつ。人柄が馬鹿みたいにいいやつ。努力して天才どもに喰らいついてるやつ。ゲームセンスがあるやつ。運動神経がいいやつ。自分なんかより家庭環境が悪く、それでも必死に今を生きているやつ。
そんな奴らを見ていると、それまで心のどっかで自分を特別だと思っていたのが崩れていった。
もしもこの世界が物語なら、一人一人が主人公なんてほざいたやつをぶち殺してやりたい。主人公は存在するしヒロインもいる。
おれはそうじゃない。友人はいるがそいつらも平凡の域を出ない。特別なやつらとは話はするけど仲は良くない。いわばモブ。
ベッドに倒れこむ。ああ、このままどこまでも沈んでゆきたい。地の底まで沈んで、落ちて、落ちていけたら、なんて考える。
陰鬱な空気を纏ってるおれかっけえ、なんてどこかで思っているのかもしれない。まだ自分が主人公だと思いたいのかもしれない。
バカなことを言ってんじゃねえよ。
努力の一つもできねえやつが、才能一つないやつが主人公になんてなれるもんかよ。
そんなことを思いながら、一人ベッドで眠る。──ああ、このまま目が覚めなければいいのに。
そんな風に祈ってみても朝日は昇るし目は覚める。
顔洗って飯作って食べて登校。別になんてことない普通の日常。馬鹿な奴らとバカな話して、主人公らを横目で眺めて、部活でまあまあ頑張って家に帰る。
多分、おれは恵まれているんだろう。地球のどっかではちっちゃい子供が労働させられたり、親にぶたれてたりするんだろう。そういうやつらに比べりゃ恵まれている。
家族関係は冷え切ってはいるが高校には通えてるし大学にも通わせてもらえる。夕飯は作ってくれてるし衣類も洗ってくれてる。だからもっと苦しいやつらはいるはずなんだ。
じゃあなんだよ、この空虚な感じは。
生に価値を見出せない。死にたくはないが生きたくもない。だから生きてる。
なんで生きてんだろうかってすげえ思う。毎日同じように生きてる。botみたいな生活。
笑ってるけど漠然と死にてえって思うこともある。漠然と死にてえって思ってるけど笑うこともある。
人生に生きる意味をくれ。本当のおれを欲してる。この世のどこにもいないおれを欲しながら、逃げてばっかりなおれに消えてくれと祈ってる。
生きろしか歌わねえpopソングに嫌気がさして、無性に腹が立って、スマホからイヤホンを引っこ抜いた。たまには死ねよと歌ってくれよ。悪徳を肯定しろ。世界に反旗を翻せ。
何かが、プツリと切れた。
遠のいていく星空が、この人生で一番美しかった。
よくもなかった。