今世紀で最悪の闇の魔法使いになってしまった ー1   作:シューズ

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4年生

 ホグワーツでの4年目が始まった去年の秋は、孤児院に戻ってドイツ軍の空襲が万一来たらどうしようと不安にならないでもなかった夏休み中と同じく、それなりに不快だった。

 スリザリン寮で女王みたいな扱いのヴァルプルガ・ブラック嬢がかなり不機嫌で寮生以外にも当たり散らしていたのだ。

 どうも七年生になったのに首席に選ばれなかったかららしい。寮で同室の4人に聞いた。

 私は必要の部屋が空いていればその時の気分によって部屋の中身を変えながら入り浸り、偶に空いてないと秘密の部屋まで下りていって寮にはあまりよりつかなかったのだが、マグルの孤児院出身者の私は、高貴なブラック家からすれば『血筋が定かならずスリザリンに相応しからぬ者』だとブラック嬢に今までよりも絡まれたりした。

 

 寮対抗クィディッチ杯が始まる頃には絡まれることもなくなった。

 そういえば古い箒を必要の部屋から持ち出せたのでクィディッチ杯に向けたスリザリン寮のクィディッチチームに参加するためのテストを受けてみたが、落ちた。かなり悔しかった。箒の性能だけじゃなく身体能力でも劣っていたと認めざるを得なかった。チェイサーのポジションで受けてみたが、多分ビーター・キーパー・シーカーのどれでも駄目だったろう。マグルの孤児院出身の私がどうやって箒を持ってきたか詮索されて誤魔化すのが面倒だったし、受かっても問題だったんだろうけど、体を鍛えようかと思っている。

 

 バジリスクの狩りについて行くのはそれも動機の1つだ。

 必要の部屋で魔法能力だけではない肉体的なトレーニングを望む方が効率的だったろうが、必要だろうが楽しくなかったので続けられない。必要の部屋を秘密にし続けるために、箒についての誤魔化しとして検知不能拡大呪文を習得したのは、我ながら楽しくもないのによくやったと思ってるが。誤魔化しとしてぜんぜん賢い手段じゃないけど。検知不能拡大呪文自体だって、私の強い魔力で無理やり発動させて、小さい鞄の中身を少し広くするぐらいまでしか出来ないし。それでも私物は大体持ち運べるようになったが、少なさを感じるので利点だと思いにくい。

 

 授業のない休日や冬の長期休暇の間、偶にバジリスクを禁じられた森に連れ出している。

 

 バジリスクは城中に張り巡らされた水道管だかの中を通って移動できるから教授達にも見付からず、意外と楽だった。妙な弱点として鶏の鳴き声があるのでそこには気を遣うが。

 

 禁じられた森の中でもやはりバジリスクなら頂点捕食者だった。

 森で最も幅を利かせているケンタウロスの複数の群れもバジリスクに気付くと避けて去っていく。気付かれないようにするのもバジリスクなら可能みたいだが、別にケンタウロスが好物だとか言って食べたがったりはしない。

 鹿や猪に馬の類いはユニコーン以外はいい獲物でしかない(殺すと呪われかねないからユニコーンだけは避けている)し、トロールも熊も問題にならず、狼や狐やハリネズミ(ナールが混ざってたかも。どちらにせよ針は私が消失呪文で消した)やウサギはおやつ扱いで、小鬼(多分レッドキャップ)に妖精や虫などは基本無視し気まぐれに殺したりする。鳥もバジリスクは巨体なのに忍び寄れるし魔眼を合わせれば飛び立った鳥も死んで落ちてくる。

 

大型犬と巨大なカエルを混ぜて角を生やし眼を石炭に変えたようなホダッグと、鹿に似てると言えなくもないリュークロコッタ

 

【挿絵表示】

 

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 バジリスクは泳げもするので、森の中で見付けた生気のない霧がかった湖の中か周りで隠れていれば獲物に困りはしないが、広い森の中を動き回るのを好む。私が森の支配者になったみたいで楽しんでいるから気遣ってるのかもしれないが。

 

 私が試しに禁じられた森で魔法生物達と戦わせてもらうと(バジリスクには隠れてもらう)、バイコーンは力強く4足で駆けそこそこ速いし2本の角は鋭く、トロールはやたらタフだし、小鬼は素早過ぎてで、ひやっとさせられたりする。

 ケンタウロスとは戦ったことないしバジリスクにも襲わせたことはないが、賢いという半人半馬の矢を使う集団だから防戦一方になりそうだ。まあ関わらないようにはしているが、彼らが城の教授達にバジリスクについて警告していてもおかしくはない。私は自分に変身術を複数使った上で目くらまし呪文もかけているけど、結構危険かもしれない。やめないが。

 森で本を片手に拾ったり解体して集めた素材は、なんとか容器を用意してそれぞれに適した状態にして中に収め、秘密の部屋に並べておいた。成人して自由にホグワーツ外でも魔法を使ってよくなったら売りさばいて金に換えるつもりなのだ…!魔力の籠った有用な((つまり)高価な)部位はかなりバジリスクに食わせたし、保存状態もやや不安だが。

 

 冬なら蛇だから動きが鈍ると思っていたがバジリスクは別に支障はないと言って狩りに行きたがった。

 バジリスクや禁じられた森の獲物の血の匂いが落とせていなかったのか生徒達の様々なペットや魔法動物飼育の授業で扱う生き物に怯えられることが偶にあるけど、同じスリザリン生やグリフィンドール生にレイブンクロー生に決闘を吹っ掛けられることはなくならない。

 

 クィディッチ杯の試合が進むにつれて学生たちが(一部の教授陣も明らかに)殺気立って自寮のクィディッチ選手の護衛が付くのに今年からは私も駆り出されるようになったから、それが大きいだろう。春になると最終試合に向けて熱が上がっていった。付き合いでクィディッチの試合に自領のチームの応援に行ったつもりでも私も熱くなったりさせられた。スリザリンチームは強かったから応援して自分の事として気分が良くなるのかもしれないな。

 決闘というか喧嘩では、他の学生と違って杖なし呪文をずっと使えるままだから負けたりしないが、無言呪文の練習を秘密の部屋や必要の部屋で始める程度にはひやっとする。杖なし魔法では杖を使うよりも簡単なことしか出来ないから、中位の呪文の魔法効果、例えば盾の呪文の様な効果を出すのにもそれなりに疲労する。指向性を持たせなければかなり強い衝撃は周囲に与えることはそれなりに簡単なんだけども。呪文を唱えずに魔法を使えれば禁じられた森でも便利だし、授業で高学年になれば習う内容だが先取りしてもいいだろうとも思う。

 

 瞬間移動する術として『姿くらまし・姿現し』も習得したいところだが、法律で資格制なのはともかくホグワーツでは姿くらましは不可能にされているらしいし、近くのホグズミード村まで休日に出ても失敗した際に身体が『バラける』のが怖い。付き添い姿くらましとかの経験が豊富なら失敗しないと確信を持てるのかもしれないが、私がいくら魔法能力に自信があっても孤児でマグル世界出身では無謀だ。巻き込めるほどの友人も作れてないし。…年下の学生を狙ってみようかな、いや、情けないかな。

 

 初夏になってもうすぐ各授業の期末試験だが、試験よりもその先の孤児院に戻される夏休みで憂鬱だ。年度間だろうとクリスマス休暇みたいに夏休みもホグワーツに留まる選択肢が欲しい!屋敷しもべ妖精の世話で食事に洗濯に掃除は文句なんてつけられないし、この城なら空襲も問題ないだろうし(強力な闇の魔法使いが襲ってくる可能性は一応あるだろうけどここは強力な拠点だ。先生方は腕が立つし、特に303歳になるディペット校長と変身術のダンブルドア教授はとても力のある魔法使いという)、最近はしてないけど城の探索には終わりがなさそうだ。禁じられた森だけじゃなく城の周りの黒い湖も入ってみたい。大イカや人魚、水中人がいると遠くから見たことしかない。

 

 

 黒い湖の湖畔にやってきたがこのまま潜ろうという気にはなれない。また必要の部屋から箒を持ちだしてきてこの湖の上を飛んでみようかなくらいは思うが、(スペースがまだ足りさせられず)箒を検知不能呪文をかけた鞄に入れっぱなしにはしにくい。鰓昆布でも生えてるのを見つけられれば湖に潜ってもいいんだが…泡頭呪文も使えはするけど。

 

 変身術で部分的に水棲生物に変身する方法も多分できるけど、変身術の教授にアドバイスを求めた方がいいだろうな…(ダンブルドアには苦手意識があるんだよな…)。もし『動物もどき』になったら水棲生物になると分かれば習得を目指してもいいが、何に変身するようになるかは不明だ。

 

 そういえば動物もどきの変身先と『守護霊呪文』で出てくる守護霊の姿は同一である傾向があるんだったか。闇の魔術に対する防衛術の授業で習ったんだっけ、それとも変身術?動物もどきについてのレポートを作るときに記述を見つけたんだったかな。

 

 …高度な変身術と魔法薬学の複合である動物もどきを習得するのを想定した上で、監獄アズカバンで看守をやってるディメンター(吸魂鬼)への対抗以外特に使い途のない守護霊呪文という高位の防衛呪文を習得するのは、迂遠な上で難易度を無駄に上げてる感がすごい…。占い学で自分の隠れた魔法特性、特に動物もどきに関する部分が分かったりしないだろうか?

 占い学って3年生から選択授業で取ってるけど、未だによく分からないんだよなぁ。本物の予言が実在するらしいからとってはみたけど、曖昧な学問って印象だ。役に立つかな?占い学の教授にこんなこと婉曲にだろうが聞きにくいし…やっぱりダンブルドアに聞きに行く?スリザリンの寮監スラグホーン魔法薬学教授に聞いてもわかるかな?ディペット校長に聞きに行く手もあるかな…

 

 ぼんやりと湖畔で風を感じて座っているのは気持ちいい。まだ初夏だから少し肌寒くはあるが、私以外のホグワーツ生も数人いるようだ。真夏にここにいれたらな~…。

 

 小船で湖に漕ぎ出しているのはいないみたいだな。船を魔法で操作するのも面白そうだ…。禁じられた森の木を伐り出して船に使えるかな…?

 

 禁じられた森の傍まで散歩するかな。バジリスクは秘密の部屋から出してこようか?城の近くで外にいる生徒も多そうだし止めておくか。

 

 バジリスクを黒い湖に放してもシーサーペントが紛れ込んだと思われるだけで済むんじゃないか?魔眼を使わせなければ、だが…。鶏も黙らせないといけないしな…

 

 湖畔から城へと繋がる長い階段をのぼる。箒で飛べば楽だろうな、先生たちや監督生には注意されるかもしれないが、寮の獲得点の減点まではされないだろ。

 

 年度末の寮杯獲得に向けた得点の推移って今どうなってたっけ。スリザリンが勝ってるんだったか…寮対抗クィディッチで優勝したら勝てる見込みなんだっけ?私にはあんまり関係ないな…5年生になって寮の監督生にでも選ばれない限りは。

 

 私は選ばれるだろうか?社交的じゃないし、そもそも名家出身じゃないとスリザリン寮では監督生は難しいか。各寮の監督生やクィディッチチームキャプテンと男女の首席の特典である秘密のバスルームの使用権は、私も欲しいな。来年選ばれなかったら秘密の部屋に風呂を作っちゃうか?肌寒いんだよなあの部屋。どうせ暑い夏には行けないんだし。ていうかスコットランドは夏も涼しいんだよな~。イギリスが、とも言えるかな。

 

 エジプトとかアフリカは暑いらしいよな。特殊な魔法を見れるみたいだし成人したら行こう…私なら姿くらましで地中海を渡れるかな、魔力強いし?

 南北アメリカ大陸や、東アジア、中東、オーストラリア大陸、そうそうソ連、そして南極北極。強力な魔法使いになれる私なら、あらゆる所を旅できる。マグルには隠された魔法使いの場所も、それに深海も。宇宙へは自信がないが、月くらいまでならどうにか行けそうな気がする。そういう伝承はあるし。

 

 

 お?あいつ、禁じられた森から出てきた?赤いローブ、グリフィンドール生、か?遠いが、でかく見えるな。高学年?人への変身術は高度だから(私は出来るが)、寮は兎も角、上級生だろうか。

 

 なんかコソコソしてるな。もしかして奥まで入ったのか?

 目くらまし呪文を、無言呪文の技術を練習として試してみるか。少し歩みを早めながら、腰に着けたホルダーから杖を引き抜き、教科書通りに目くらまし呪文を使う際の動きで杖を振るう。

 ──風景に溶け込めているな。透明とまではいかないが、まあ呪文を声に出して唱えてもまだそこまでは無理だしな。

 

 この距離でいいか。呪文を当てる自信があり少し張るだけで声も届く。

 

ちょっと失礼!そこの大きいグリフィンドール生、かな?禁じられた森から出てきたようですが」

 

 ビクッとでかい肩を震わせて私を探して──見つかったか、近いとはいえ観察力が高いのか魔法のまやかしを見抜く才があるのか──丸く黒い目を私に向けてくるが、見返しながら言葉を継ぐ。

 

「先生方の許可などを得ての行動ですか?」

 

 杖先は下げているが私なら十分に対応可能だろう。…杖を抜こうとはせずにワタワタしてるだけだが…

 

「ち、ちげえ、いや、そう、ウン、えっと…」

 

 呪文で拘束してローブの色を変えてないか変身術の反対呪文を唱えなくてもいい気がするな…。教授の誰かかグリフィンドールの監督生につきだせばいいだろ。

 目くらまし呪文解くか。無言呪文で──

 

フィニート・インカンターテム(呪文終了)

 

「許可をもらってないんですね。グリフィンドール生ですよね、あなたの寮の監督生のところまで連れて行きますよ。減点されるかは相手に任せます」

 

 彼のしどろもどろな弁明を遮って言葉をかけた。

 

「ウン、はあ、そうです。スイマセン…」

 

「行きますよ」

 

 城に向かって彼を促した。歩き出す。

 グリフィンドール寮は西の塔の階段の奥の肖像画の裏だったな。監督生のバッジをしてるのがそれまでに見つかれば、一応隠されてる他寮の位置まで行かなくて済むんだが。スリザリン寮とグリフィンドール寮は伝統的に仲が悪いし。こいつがハップルパフ寮ならよかったな、帰りにキッチンによりやすいし。 

 

「私はリドル、トム・マールヴォロ・リドルです。ローブはしまってますがスリザリン寮です」

 

 気付いてたかな?

 

「あ、ああ、そうなんですか。俺は2年のルビウス・ハグリッドっちゅうんで」

 

 …ハグリッド?なんか聞き覚えが…

 というか年下だったか。

 

「そうなのか。私は4年生だ。きみ、体が大きいね。タフそうだしクィディッチのビーターかキーパーに向いてるんじゃないか?」

 

 あっ、物語に出てくるやつか?後でノートのメモを確認するか。杖を手に入れて複雑な呪文が使えるようになってから物語について、私に関係したり利益がありそうな事をメモして他者に見られないように魔法をかけたから、抜けが多そうなんだよなあ…

 

「ウ、ウス、箒は苦手で…」

 

「そうなのか、悪い。クィディッチは好きなんだよな?」

 

 アメリカでは人気じゃないらしいがアメリカに住んでるならイルヴァモーニー校へ通ってるはずだ。

 

「ええ、そりゃもう!」

 

「でなんで禁じられた森に入った?」

 

「えッ、と、その…」

 

「うん」

 

「…魔法生物が、好き、で…」

 

「2年生と言ってたが、もうすぐで3年生だろ。魔法生物飼育学を選択すればいいだろ、待てなかったのか?」

 

「ウッそりゃそうなんですが…」

 

 こいつ私がスリザリンの監督生だとか思っててもおかしくないかもな、ふふっ。

 

「黒い湖にも魔法生物はいるだろ?」

 

「ええ、そうっすね──」

 

 

 こいつ熱意があるな…それにどうも危険な生き物が好きなのか?かわいいと思ってる?こいつどんだけ頑丈なんだ?触れ合った経験もありそうなんだが…?

 

「ふーん、蛇語は喋れたりするのか?言葉が通じる魔法動物が多くなるけど」

 

「あ~先輩は面白そうなことかんがえますねぇ~、闇の魔法使いの(あかし)みてぇに思ってましたけんど、喋れたらよさそうっすね!ルーンスプールだとかシーサーペントとも話せるんですかね、いいなぁ~」

 

 なんか楽しくなってきたな。グリフィンドール生だけど、スリザリン生に言うよりはましかもしれないし言ってみるか?冗談めかして。

 

「私はパーセルタング(蛇語使い)だぞ、ルーンスプールやシーサーペントを君が見付けたら通訳してやろうか?」

 

「へええ!本当ですかい!?いいんですか!?」

 

「アハハ!君は楽しいやつだな。いいとも、見付けて手懐けられたら声をかけてくれ」

 




途中の挿絵はスマホアプリ「ホグワーツの謎」を参照
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