今世紀で最悪の闇の魔法使いになってしまった ー1 作:シューズ
私はルームメイトを追い出して1人になった孤児院の自室で、ベッドに寝そべりながら紙を持ち上げた。
優・O (大いによろしい)
合格 良・E (期待以上)
可・A (まあまあ)
不可・P (よくない)
不合格 落第・D (どん底)
トロール
トム・マールヴォロ・リドルは次の成績を修めた。
天文学 可
薬草学 良
魔法生物飼育学 良
魔法史 可
呪文学 優
魔法薬学 優
闇の魔術に対する防衛術 優
変身術 優
占い学 良
古代ルーン文字 可
6年生でどの科目を取ろうか?
成績が足らず取れない科目は天文学だけだ(薬草学・魔法史・占い学・古代ルーン文字学は続ける気が無かったから覚えてないのでもしかしたら足切りに引っかかってるかも。先生方がそれについて話した時のメモは結局見付けられらなかった。メモは一応とったはずなんだが)が、天文学は取りたかったな。まあ取れなくても仕方ない。いや、申請書に一応書いておこうかな?…寮監のスラグホーン教授に手間を取らせるだけ、か。やめとこう。
アルバニアかどこかにあるだろう『レイヴンクローの髪飾り』(身に付けた者をより賢くする)を回収できていれば勉強がもっと捗ったんだろうな。頭冴え薬でも煎じればよかったかな…。
占い学はともかく薬草学はせっかく良・Eの『期待以上』が取れてるんだから続けてみようかな。この成績で足切りに引っかかるとは思えないし。でも面倒そうだよなぁ。
申請書には一応書いておいて、ホグワーツ特急で知り合いにN. E. W. Tクラス受講の為の成績条件を確認して条件が高過ぎたら申請書を修正すればいいか。
禁じられた森でけっこう気軽に狩りや採集が出来るからこそ薬草学と魔法薬学は思ったより成績がいいんだろうな。自前で材料が集められなかったら
紙を畳んで枕元におく。しみと汚れの目立つ板張りの天井、汚い──両目を閉じた。孤児院内で恐らく階下から物音がしている。
色々魔法を使いたい。
今年の暮れにようやく17歳になり魔法界で成人と見做され、保護下以外での魔法の使用制限がなくなる。匂い──魔法の痕跡を追われなくなる。
今年のクリスマスは孤児院に帰ってこよう。ホグワーツに入ってからは初めてだ。アリアには去年文句を言われたけど、魔法を使える今年はロマンチックに過ごさせてあげられる。杖なしの開心術もどきで確認しても浮気はしてなかったみたいだし、離れている期間が長いのに意外とミス・ブランクは律儀だ。近くの酒場でウェイトレスを始めたのに体を売ったりもしてない。
自分を顧みると、マグルの彼女が結構好きだ。愛してはいないけど、肉欲込みで私だけが彼女を抱きたいと強く思ってる。まだセックスまでは持ち込めてないけども。
律儀なんじゃなくて貞操観念が高いだけなのだろうか?開心術は杖を使おうが、嘘こそ見抜けるが精神の深い部分は見たい所を自在に見れる訳じゃないし、成人しても謎のままだな。
ふとバジリスクを思い出した。5年生の間はあんまり秘密の部屋から連れ出さなかったけど、あいつにも感謝すべきなんだろうな…。O. W. L試験で闇に対する防衛術の実技の1つで、
あの時のことは今でも思い出せる。毒々しい緑の見上げるような大蛇が瞼を開け始める姿には、えもいわれぬ恐怖を感じて暫く対ボガート用の呪文が唱えられなかった。はっきり脳裏にあの光景を思い浮かべられる。バジリスクの瞳は何色なのだろうか?ボガートと対決させられなければこの疑問にも気付けなかった。瞼を開けきる前に私は『
バジリスクの魔眼と目を合わせても即死しない方法があればいいのに。それを実践できるようになったら、バジリスクの魔眼を見られる。ボガートが私の前で変身する姿もまた変わるのだろうか?
3年生の時に、闇の魔術に対する防衛術の授業でボガートへの対応をガラテア・メリィソート教授の監督下で実践したが、あの時のボガートは、私の死体に変身した。あまり鏡をしっかり見ないし何だか私自身に変身されたという感じはしなかったのははっきり憶えてるが、あの時既に秘密の部屋に入ってバジリスクと会ってるという記憶には自信がない。
自分のトラウマと直面させられるあの体験は記憶に残りやすいだろうし同時に授業を受けていた同学年のスリザリン生なら正確に日付を覚えているかもしれない。日記をつけてる人もいるかもしれない。あのおばさん、メリィソート教授に聞く手もあるかな。勿論誰にも本物のバジリスクのことを話すつもりはないけど、ボガートの変化先が変動したことは話せる。
同じスリザリン生には、寮のシンボルである蛇が最も怖いものということで馬鹿にされるかもしれないか。
そういえばなぜボガートは魔法生物飼育学じゃなく闇の魔術に対する防衛術で習ったんだろう?
ノックの音。
「トム、入っていい?」
アリアの声。
身体を起こし、枕元の成績通知をトランクの中に突っ込む。
「いいよ」
ドアからくすんだ赤毛が覗いた。
「ミセス・コールが呼んでるわよ。行こ?」
他にも幾つか片方の授業でしか習っていない魔法生物がいる。被っている生物もいるしこれから被る生物もいるかもしれないが。
「分かった」
ボガートは飼育するような魔法生物じゃないからだろうか。ヒトよりも優れた開心術と変身術は利用価値があるとは思うけど…。
「何考えてるの?」
「…学校の授業のこと。後2年足らずで卒業で、それから就職して稼ぐ」
「なぁに、あたしがもう働いてるからそういうこというの~?」
後ろに縛った髪を振って彼女は私に振り返った。結構かわいい。
「焦って軍人さんにはならないでね」
真剣な顔で声量を落として言われた。
「ならないよ」
魔法界に軍はないし。
「約束します、ミス・ブランク」
私はお辞儀した。