ソシャゲに出てきそうな組織の一般職員(女)の話 作:暗黒技士
明石さくらの朝は早い。大体朝6時くらい。
彼女が起きてからやることは一つ、眼鏡を掛ける。
別に目が悪いわけではなく、ブルーライトをカットするためだけの眼鏡。
一々つけたり外したりが面倒なのでつけているだけ。
眼鏡を付けた後はトースターに食パンを二枚入れ、焼いている間に制服を着る。
着終わると、丁度よく食パンが焼ける。食パンを手に取り、マーガリンを塗って食べる。
食べ終わった後、カバンを手に取り『イージス職員専用寮』を出て職場に行く。
それが彼女の朝のルーティーン。
◆
「おはようございます」
「「「おはよう(ございます)(ございまーす)」」」
さくら達の主な仕事は事務仕事である。
異界獣によって人類は今までの生活を行えなくなった。生活圏を小さくするしかなくなったのである。
しかし、逆に言えばそれだけで済んだ。(変態国家)日本が早々にAEBWを開発したからだ。
AEBWを扱うウェポナーは、生活圏外や、生活圏内に入り込んだ異界獣を討伐する。
そしてウェポナーを後方から支援するのがオペレーターである。異界獣の弱点や耐性を常にウェポナーに伝え、新たな異界獣や情報を手に入れたり、担当ウェポナーの身体に変化があった場合はそれをまとめる。
で、それを最終的にまとめるのがさくら達職員である。
名前も特にない裏方である。
「明石さんこれ、保管室に持っていってくれない?」
一応デジタルでもデータは残っているが、もしものために紙にも記録して保存し、書類保管室で保管している。
「・・・?」
さくらは書類を持って保管室へ向かっていると、見たこともない顔が横を通りすぎていった。
同僚に聞いてみようと、書類を保管室に置いて元に戻ると、同僚の『伊能なつき』が大慌てで近づいてきた。
「さくらさん!た、大変です!」
「どうしたんですか、なつきさん」
周りを見てみると、なつきだけでなく、他の職員も慌てていた。
慌てたなつきを落ち着かせながら何があったか聞いた。
「新しいウェポナーが、入って来たんです!」
「それがどうしたんですか?」
ウェポナーは誰でもなれるわけではなく、適正がなければAEBWは使えない。しかも命に関わる仕事のため、ウェポナーは多い訳ではない。
しかし、こんなにも大慌てになるほど少ないわけでもない。
そうじゃなくて!となつきは言い、言葉を続けた。
「天然の!ウェポナーなんです!」
AEBWは適正があればすぐ使える訳ではない。適正持ちの身体を改造して扱えるようになるわけである。
もちろん改造しているので、身体は変化が起きる。基本的に悪影響は無く、人それぞれに変化するが、共通して髪の色が漫画やアニメのように色が変わる。
だが、なつきが言う天然は、
ウェポナーの特徴の通り髪の色が普通の日本人とは違う明るい赤。
しかし、イージスには改造したという記録はなく、しかも、目立つ見た目にも関わらず昨日まで発見されていなかった。
そして記憶が、名前以外ない、と。
「そうですか」
びっくりするほど落ち着いてるねキミ。
「驚いてないんですか!?」
「?驚いてますよ」
びっくりするほど無表情。
「それで、私のやるべきことはなんですか?」
「え、えっと…「キミにはやってもらうことがある」えっ、あっあなたは!?」
そうさくらに声を掛けたのは金髪のチャラそうなイケメンの男だった。
彼は、ウェポナーとしてベテランの
『
結構モテる。
「なんでしょうか」
さくらが聞くと、金本は
「そうだね、とりあえずついてきてもらえるかな?話しながら説明するから」
と言った。
さくらは、はいと答え、そのままついていこうした。
が、なつきがさくらの服を引っ張り止め、小声で何かをて伝えた。
「どうした?」
「・・・いえ、今いきます」
さくらは金本についていった。
◆
さくらさん、気を付けてください。ウェポナー、それもベテランの金本さんが
そう言ったなつきの言葉を、さくらはまだよく理解しきれてなかった。
「・・・くらちゃん、さくらちゃん?」
「・・・すいません、考えことをしていました。それで、仕事は何でしょうか?」
「今から説明するね。さくらちゃんにやってもらうのは新人にここの案内をしてもらいたいんだ」
新人。多分さっき話題にあがっていたウェポナーのことだろう。
「名前は何というんですか?」
「名前?焔ちゃん、剣崎焔。実を言うと俺も名前以外分からないんだ」
「案内とはどこまでやればよろしいんですか」
「その子はウェポナーだからね。先に先輩ウェポナーがウェポナー区域を案内したから、君達職員と共通のとこを案内してもらいたい」
ウェポナーということは、噂の子で間違いないだろう。
職員と共通ということは、食堂や資料保管室ぐらいだろう。
特に困ることはないだろう。そう思っていると、
「案内が終わったらね―」
◆
「はじめまして。明石です」
「は、はじめまして。剣崎焔です」
イージスは軍であるため、若い剣崎はこの場所には似合わない、そう感じるであろう。普通は。
「私はウェポナーと職員共通の重要な部屋を案内します。よろしくお願いします」
「お、お願いします…」
ちょっと淡白じゃない?いや仕事人としてはあってるかもしれないけど。ちょっと怖がっているよこの子。
「では、行きましょう」
「は、はい!」
「ここが、食堂です。好きなものを頼めばすぐ出てくるはずです」
「なんでも…」
剣崎はどこか困った様子だった。
「どうかしましたか?」
「わたしはどんな食べ物が好きだったんだろう…って」
「そうですか」
そう答えられた剣崎はおずおずと聞いた。
「・・・明石さんって、喋るの好きじゃないんですか?」
「すいません、不快でしたか」
「そういう訳じゃ…!」
「よく言われます。ただ、自分では分かりませんが、私は話すのが苦手らしいです」
「そうなんですね…すいません、たくさん話しかけてしまって…」
「・・・口下手でもよければ話し相手になりますよ」
「えっでも…」
「私は話すのが嫌いなわけではありません。楽しませれるかは分かりませんが」
「!」
剣崎は嬉しそうに
「じゃあ、好きな食べ物なんですか?」
と聞いた。
「そうですね、鍋でしょうか。簡単に作れて美味しいですから」
「鍋かぁ。どんな味なんだろう…」
そういう剣崎にはよだれが垂れていた。
「気になりますか?」
「えっと、知ってるかもしれませんが、わたしは記憶喪失で、料理がどんなものかは分かるんですが、味は分からなくて…」
そう言われると、さくらは考える素振りをして
「では、いろいろ食べてみればいいと思います。それで好きなものを見つけるといいでしょう」
と言った。
「そうですね…ありがとうございます!そうします!」
意外と二人は仲良く(?)回れたようだった。
◆
「これで、全て回りきれましたね」
「あの、明石さん。ありがとうございました!相談も聞いてくれて…」
剣崎はやはりというか、記憶がないことなどいろいろが重なって心細くなっていたようだ。
「いえ、話を聞くくらいなら私も出来ますから。では行きましょう」
そう言われた剣崎は困惑した顔を見せた。
「行くって、どこに?」
「聞かされていないんですか?」
『案内が終わったらね、一緒に町へいってあげてほしい。彼女の部屋用の家具を買ってあげてほしい』
それがさくらのもう一つの仕事だった。