ソシャゲに出てきそうな組織の一般職員(女)の話 作:暗黒技士
「さくらさん、遅いですね…」
なつきは同僚のさくらを心配していた。
「心配そうだな、伊能」
そう声を掛けたのはさくらとなつきの先輩である、『斉藤りょう』だった。
「そりゃ心配ですよ!・・・先輩も分かってますよね?
「伊能」
なつきに声を掛けて話を止めたりょうの目線には、監視カメラがあった。
「気持ちは分かるが、それが仕事だ。というか、明石はそういうの鈍感だろ」
「確かに、そうですけど…そういえば、さくらさんいまなんの仕事してるんですか?」
なつきにそう聞かれたりょうの目は泳いでいた。
「あー…聞いても怒らないか?」
「?怒りませんけど」
りょうは恐る恐る言った。
「新人のウェポナー用の家具をその子と買いに行った」
「は?」
「・・・そんな目で俺を見るな…俺が指示したわけじゃない」
◆
世間的にイージスは好待遇と言われている。だが、実態を知っている人達は皆口をそろえてこう言う。
『半分はそうだ』と。
異界獣と戦うウェポナーやそれをサポートするオペレーターはイージス内にある専用の部屋を与えられ、自由に改装してもよいとされる。
休日には渡された給料で食事に行くもよし、本、ゲームなど趣味に使うもよし、トレーニングに励むもよし。
しかしさくら達職員は違う。
個室ではあるがウェポナー達よりもかなり小さく、職場から離れた寮に住む。
寮はベッド、コンロ、電子レンジ、本棚が備え付けられているがそれ以外はない。買うことも禁じられている。
休日は本を買うか、(安い)食事に行くか、仕事をやるかぐらいしかないのである。
「なんで私達はこんなにも格差があるんですかね」
「あー…」
怒った口調で言ったなつきに対してりょうは答えた。
「ウェポナー達に回しすぎて我々の分は残らないんだと」
「は?」
◆
そんな会話も知らず、さくら達は(というか剣崎が)家具を選んでいた。
「うーんと、どれにしようかな…明石さんはどう思いますか?」
「・・・これはどうでしょう。使いやすそうですが」
そんな風に会話していると、剣崎はふと思った。
「買った家具って私達だけで持っていくんですか?それだと、大変そう…」
「購入するとイージスに情報が届き、専用の配達員が届けてくれます。家具も自動的に配置されるので気に入らなければ室内のタッチパネルで連絡してください」
へぇ…と剣崎は感心していた。
そしてすべて選び終わり、イージスに戻ろうとすると、男の子二人、女の子一人がやってきた。
「ねえねえ、おねえさん!」
「ど、どうしたの?」
「おねえさんって、もしかしてウェポナー!?」
「えっと、一応そうなるかな?」
「すっげー!じゃあ、イカイジューってどんな感じ!?」
「え!?えっと…」
男の子二人は剣崎に夢中のようだ。
「じゃあ、そっちのおねえさんはオペレーターさん?」
女の子がさくらに聞いた。
「いえ、私は「馬鹿だなー、服を見れば分かるだろ?ショクインだよ!」そうです」
「おれしってるぜ!ショクインはイカイジューと戦わないし、ウェポナーも助けないやつなんだぜ!父ちゃんはキュウリョウドロボーって言ってたぞ!」
「キョウリュウロボー?」
「ちがう!キュウリョウドロボー!」
剣崎は怒った顔で何か言おうとするが
「気にしないでください」
と、さくらに言われ、しぶしぶやめた。
その後、すぐ親が来て子ども達は連れていかれた。
◆
「・・・」
「・・・」
イージスに帰っている最中、黙っていた剣崎は何か決心した表情でさくらに話しかけた。
「あ、あの!明石さんって、いつもあんなことを?」
「あんなこと、とは」
「給料泥棒、とか」
剣崎より前を歩いていたさくらは振り向き言った。
「さあ?」
「さ、さあって」
「私はよく分かりませんが、この職業は言われやすいらしいです」
同僚がそう言っていました、と無表情で言った。
「・・・あ、明石さん!」
「どうしたんですか?」
「今度、部屋に遊びに来ませんか!ほら、家具の配置とか一緒に「すいません、それはできません」え…?」
「我々職員はウェポナーの方には行けないんです」
「ど、どうし「やあ、君が焔ちゃんだね」!、だれですか?」
いつの間にかイージスに着いていたようで、目の前には金本がいた。
「キミの先輩だよ。さくらちゃんはもう戻っていいよ。お疲れ~」
「お疲れさまです。剣崎さん」
「は、はい!」
「また」
そう言って歩いていった。
「っ、はい!また!」
戻ったら凄く心配されたさくらだった。
◆
仕事が終わり、寮に戻ろうとしたさくらはなんとなく散歩をしようと思い、遠回りに帰っていた。
珍しくさくらは今日あったことを思い返していた。
色々なことがあったな…そんなことを考えていると大きな壁に当たった。
その壁は人々の生活圏を守るために作られた。
誰がつけたか『ウォールイージス』(なお壊されそうということですぐその名前は無くなった)
それを見てぼー、としていると
きゃあー!
と、子どもの叫び声が聞こえた。
「・・・」
さくらは少し迷い、その声の方へ走っていった。
声の方には昼に会った子ども三人と異界獣がいた。
その異界獣の見た目は狼に似た、しかし『宇宙』が混ざっているような不気味な生物だった。
異界獣は女の子を狙っているようで、女の子は腰が抜け泣いているようだった。男の子二人も少し離れたところで腰が抜けて動けず怖がっている。
さくらは持っているカバンを異界獣に投げつけると女の子を庇うように近づいた。
「大丈夫ですか?」
「おねえさん…?」
さくらはポケットから携帯を取り出すと
「これで、誰でもいいから掛けてください」
といい、渡した。
異界獣はさくらに釘付けのようだ。
「さて…」
さくらは基本的に書類の整頓をよくしている。
つまり、目の前の異界獣がなにをしてくるか分からないということだ。
《グガァ!》
「っ…」
異界獣はものすごい速さで突進してきた。
さくらは避けれるわけもなく、横に吹っ飛ばされた。
異界獣の眼は再び女の子に向けられ、口を大きく開けはじめた。
嫌な予感がしたさくらは痛む身体に鞭をうち、女の子と異界獣の間に走った。
異界獣の口はあり得ないぐらい開けられ、いかにも飛ばしますと言わんばかりの杭のような物が口から見えていた。
ばしゅん
ぐしゃっ
飛ばされた杭はさくらの横腹を貫き、消えた。
「けふっ…」
「おねえさん!」
「けが、ないです、か?」
「おねえさんが!」
足音が聞こえる。
もう感覚がほとんど無い身体を動かし、足音の方を見ると
美しい『炎』が見えた。
さくらはそこで意識が途絶えた。