ソシャゲに出てきそうな組織の一般職員(女)の話 作:暗黒技士
「・・・」
目を開けたさくらの目の前には白い壁があった。
自分が横になっていることに気付くとそれは天井だと分かった。
体を持ち上げようとすると、右手に何か触れていることに気付く。その方向に体を向けると、今日昼に別れた(寝ていたようなので正確な時間は分からない)剣崎が寝ていた。
周りを見てみるとそこは病室のようだった。外の光が眩しい。どうやら一日たっていたようだ。
そういえば、と異界獣に抉られた横腹を見てみると完全に治っていた。痛みも感じない。
「ん…」
どうやら剣崎が起きたようだ。
「あかし、さん・・・・・・!明石さん!!」
剣崎がさくらに抱きついた。
ぎし…
「・・・あの」
「よかった…ホントによかった…」
ぎしぎし…
「あの」
「ひゃい!?ど、どうしました!?」
剣崎はさくらから飛び離れた。
『体、痛いのですが』さくらはそう言おうとしたが、たった今問題が解決したので別の質問をした。
「知っているか分かりませんが、私は異界獣に襲われたのです」
「知っていますよ!私が助けましたから!」
「・・・」
無表情。
「・・・あ、あれ?驚くかと思ったんですけど…」
「いえ、今とても驚いています」
にしては顔に変化が無さすぎる。
この人笑うのかな、と剣崎は疑問に思った。
「質問の続きです。その場には私の他に子どもが三人いたはずです。剣崎さんも知っているはずですが」
「ああ、あの子達ですね!怪我一つ無く無事ですよ。明石さんが寝ている三日間毎日お見舞いに来てくれたんですよ」
「そうですか」
さくらは安心した。
「・・・三日間」
「はい、三日間」
どうやら、一日以上に、時間がたっていたようだった。
「どうやら本物の異界獣が見たくて壁に近づいたようなんです。そこでたまたま入り込んでいた異界獣に見つかって、という訳らしいです」
「・・・」
「あ、明石さん?」
さくらは剣崎の身体を隅々まで見ていた。
「貴女も怪我、無かったですか?」
「は、はい!無傷です!一撃で倒しましたから!ってそうだ!わたし、先生呼んできますね!」
そう言うと剣崎はあわただしく部屋から出ていった。
静かになった部屋で一人になったさくらは
(仕事、どうなっているでしょうか)
なんてことを考えていた。
◆
先生からは様子を見てあと三日は休みましょう、と言われた。
剣崎はこの後用事があるとイージスに戻っていった。
特にやることもなく、そういえば眼鏡、吹っ飛ばされたときに壊れてどこかにいったな、新しく買わなきゃ、など横になって考え事をしていた。
コンコン
扉を叩く音がした。
はい、と声を掛けると扉が開いて、見たことのある子ども三人とその三人の母親らしき人物が入ってきた。
「!おねえさん!」
「おねえさん、からだだいじょうぶ?」
「りんごもってきたよ!たべる!?」
「あの…」
「こらっ!病院では静かにする、でしょ?おねえさんも困ってるわよ」
「「はーい」」「はい…」
「あなたが、この子達を守ってくれたんでしょう?ありがとう。おっとと、いい忘れてたわね。私、この子達の母親なの。りんご、食べる?もう剥いてあるわよ」
では、いただきます。そう言ったさくらがりんごを受け取ろうとすると、三つの視線がさくらに、いや二つはりんごに刺さっていた。
さくらは一つ食べると
「もう、おなかいっぱいです。よければ、食べてくれませんか?」
と子ども達に渡した。
「でも…」
「いいんです、お母さん。そこまでお腹空いていませんでしたから」
「・・・」
「どうかしましたか?」
「あなた、無表情だけど優しいのね」
そうでしょうか。さくらは心の中で首をかしげた。
ふとまだ自分にまだ視線が刺さっていることに気づいた。あの時庇った女の子のようだ。
「あの、おねえさん」
「どうしました?」
女の子は恥ずかしがりながら、言った。
「すごくかっこよかったよ…」
「・・・ありがとう」
そう言って『微笑みながら』さくらは頭を撫でた。
「あなた…」
「?」
「笑ったら結構綺麗じゃない!」
◆
「さくらさあぁぁん!」
退院して職場に戻ると、さくらはおもいっきり強くなつきに抱き締められた。ちょっとしたデジャブである。ぎしぎし…
「・・・あの」
「心配してたんですよ!お見舞いに行きたくても仕事が忙しくて行けそうにないし!」
ぎしぎしぎし…
「そうですか…」
そろそろさくらが再入院になるか、なんて考えているときになつきに声が掛けられた。
「伊能、そこまでにしておいてやれ。顔に出てないが、多分苦しがってる」
「は!すいませんさくらさん!痛かったですか!?」
「ええ、少し」
「すいませぇえん!」
「うるせえよ。なつき、仕事に戻れ」
「はい…」
なつきはとぼとぼ自分の席に戻っていった。
「さてと、さくら、元気か?」
「はい、問題ありません」
りょうは安心した顔で
「そりゃよかった」
と言った。なんだかんだりょうもかなり心配していたのだろう。
「仕事できるか?」
「はい、問題ありません」
「じゃ、はじめるぞ!」
こうして、さくらはいつも通りの日常が戻ってきた。
はずだった。
◆
ズルズル…ズルズル…
「お姉ちゃん…どこ…?」