ソシャゲに出てきそうな組織の一般職員(女)の話 作:暗黒技士
「あの、さくらさん」
さくらがいつも通り仕事をしていると、そこになつきが話しかけてきた。
「なつきさん。どうかしましたか?」
「あの、お客さんというか…」
そう話すなつきの顔は険しかった。
ふと周りを見ていると、少し騒がしい。どうしたのだろうと考えていると
「明石さん!」
と声がした。
声の方を見ると、そこには剣崎がいた。なるほどと、さくらは心の中で頷いた。
「なつきさん、お客さんというのは」
「ええ、あの人です。なんでも話がしたいと…」
「分かりました。少し席を離します」
そう言うとさくらは剣崎の方に近づいた。
「剣崎さん、なにかご用ですか?」
さくらがそう言うと、ここで話すのもあれなので、と近くの自動販売機まで歩いた。
◆
ピ、ガコン、ピ、ガコン
「はい、明石さん」
「ありがとうございます」
さくらは剣崎から渡された缶コーヒーをひとくち飲むと、話しかけた。
「それで、話というのは」
剣崎は、恥ずかしそうに
「えっと…わたしの部屋に、遊びに来てくれませんか?」
と言った。
「・・・あの」
「先輩から聞いたんですけど!」
「はい」
「偉い人が許可を出せばいいって言われて、水野さん―私の先輩が許可を出すって言ってくれて」
「剣崎さん」
「それで、ってすいません!明石さんの気持ち考えてませんでしたね…嫌、ですか?」
さくらは少し考えて
「今日でもよろしいでしょうか?」
と聞いた。剣崎はとても嬉しそうな顔で喜び、
「はい!もちろん!」
と元気よく答えた。
◆
時は進み夕方、さくらは扉の前にたっていた。
こんこんとノックをすると、中から『はーい』と言う声が聞こえ、扉から剣崎が出てきた。
「明石さん!」
「こんばんは剣崎さん。昼ぶりですね」
「こんばんは!どうぞ、中に入ってください!」
中はさくらの部屋の二倍、いや三倍はある大きな部屋だった。
「最初に見せるのは明石さんがよかったんです。わたしの、最初の友達だったから…」
「そうですか」
「そうですか、って…ホントに恥ずかしがったりしませんね、明石さん」
そう言われたさくらは真顔で
「いえ、とても驚きと、喜びが発生しています」
と答えた。
「友達と思ってくれていたとは、とても思っていませんでした。すぐに別の人と仲良くなると思っていましたが」
「う…実は、明石さん以外とはほとんど喋れていなくて…」
そう語る剣崎の顔は暗かった。
さくらも剣崎の噂をよく聞いていた。
記憶喪失で、イージスの記録の無いウェポナー。
本来なら一年の訓練でやっと使えるようになるAEBWをすぐに使いこなし、最弱とはいえ一体異界獣を討伐したため、最速で前線に立った特殊な例。
一部のウェポナーやオペレーター以外、腫れ物扱いしているらしいと。
さくらはなにかを決めた様子で剣崎に話しかけた。
「・・・剣崎さん」
「は、はい、どうしましたか?」
「よければ、名前で読んでくれませんか?」
「・・・へ?」
「友達なら名前で呼びあうものかと思い、提案いたのですが…やはりやめておき「いやいやいや、呼びます!呼ばせてください!」そうですか」
ものすごい速さで首を振った剣崎は首を痛めていた。
「だったら、あか、さくらさんも名前で呼んでください!」
「分かりました。茜さん」
剣崎――茜は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「これからも、よろしくお願いしますね、さくらさん」
「はい。茜さん」
◆
一通り喋り終わったさくらは茜に別れを告げ、寮に帰宅していた。
ズルズル…ズルズル…
さくらはなにかを引きずるような音が後ろから聞こえてきた。
後ろを振り向くとそこには、
「・・・ふふふ」
紫の体液を頭から被り(異界獣の血だろう)、つるはしのようなものを引きずった長い紅色の髪の美少女がいた。
「・・・貴女、お姉ちゃん?」
少女はさくらにそう訪ねた。
「(年齢差的な意味なら)そうですね」
そう言われた少女は顔を輝かせ、
「ほんと!?貴女、わたしのお姉ちゃんなのね!」
そう言って抱きついてきた。
「お姉ちゃん、頭撫でて!」
「はい」
「んふふ…」
さくらに撫でられた少女は気持ち良さそうに目を細めた。
「・・・」
(何か、間違えたのでしょうか)
さくらは久しぶりに少し後悔した。
◆
このまま放っておくわけにもいかず、寮に連れて帰ったさくらはひとまずお風呂に入れようとした。
そこで名前を聞くのを忘れていたのを思いだし、聞くことにした。
「あなたの名前はなんですか?」
「変なこというわね?お姉ちゃんなら、分かるでしょ?」
流れで連れてきてしまったが、さくらは知らない子で名前なんて分かるはずもなく…
「・・・あんじゅ、杏樹です」
思いついた名前を言うしかなかった。
「そっか…お姉ちゃんがいうなら、そうなのね!」
しかし、目の前の少女はそれでよかったらしい。
「わたし、キオクソーシツ、ってやつなの。名前も分かんなかったのよ。でもね、お姉ちゃんがいたのは覚えていたの!」
そういえば最近同じように記憶喪失のウェポナーの知り合いができたな、とさくらは思い出していた。
(・・・ウェポナー?)
さくらは少女―杏樹をお風呂に連れていき、一緒にお風呂に入った。
「体、洗いますね」
「洗ってくれるの?やったー!」
「ついでに、質問いいですか?」
「しつもん?なにが聞きたいの?」
「AEBW…あの武器、どこで手に入れたのですか?」
「えっとね、へんな化け物に襲われたときにね、助けて!って念じたら出てきたの。そうしたら、自由に出せるようになったのよ!ほら!」
ガンッ!
そう言うと杏樹は、つるはし型AEBWを召喚した。
「・・・危ないのでしまいましょうか」
(そういえば茜さんも持っていたとかなんとか聞いたような)
杏樹と自分の体を洗い、お風呂場から出て体を拭くとさくらは菓子パンを取り出し、杏樹に一つ渡した。
「お腹、空いてるでしょう?」
「ありがとう、お姉ちゃん」
そうさくらにお礼をいい、杏樹は食べ始めた。
どうしようかとさくらは悩んでいたが、
(まあ、明日考えましょう)
と考えた。
来客用の布団なんてあるわけもないので、さくらと杏樹は一緒のベッドて寝た。
◆
朝起きると、横に入るはずの杏樹が見当たらなかった。
昨日の出来事は夢かと思い、起きようとするとなにか掴んでいることに気づいた。
それは一枚の紙で、
『お姉ちゃん、また夜ね』
と書かれていた。
夢ではなかったのだなと考えながら仕事の服に着替え、玄関を開けると
《カチャ》《カチャ》《カチャ》
「明石さくらだな。出頭命令が出ている。イージスまでご同行願おう」
そう銃を構えられながら黒服達に言われた。