ソシャゲに出てきそうな組織の一般職員(女)の話 作:暗黒技士
「さて、教えてもらおうか。あのウェポナーのことを」
さくらは、イージスの取調室で両手に手錠をかけられた状態で取り調べを受けていた。
「すいません、昨日あったばかりでよく知りません」
「出会ったばかりにしては仲が良さそうだったが?」
「姉と勘違いされました」
「は?」
「姉と勘違いされました」
「は?」
「姉とかん「いや聞こえたから。もう言わなくていいから」分かりました」
取り調べの男はため息をついた。
「まあいい。なんでもいい、知っていることを話せ」
「分かりました。杏樹―彼女は、記憶喪失らしく、自分の名前も分からないようでした」
男は何かに気づいた様子だったが
「続けてくれ」
と促した。
「名前は私がつけたものです。後は知っていることは…AEBWは大型の鎌…いえ、つるはしのようなものでした」
「AEBWは何色だった?」
「色…黒色のようでしたが、一部赤みがかっていました」
「そうか…活性はまだか…」
「?今なんと…」
「気にするな、独り言だ」
そう言うと男は席を立ち
「立て、少しの間、お前を留置する」
と言ってさくらを立たせた。
◆ベッドとトイレだけの小さな部屋にさくらを連れていった男は
「後で昼メシを持ってくる」
といい、さくらの手錠をはずし何処かへ去った。
さくらは特にやることもなく、困ることもなかったので寝ることにした。
目を閉じ、数分、数十分と時間が過ぎていき、そろそろさくらが眠りに落ちるとなった時に、『音』が聞こえた。
ガァン、ガァン
その『音』は何かにぶつかる、というより叩くような音だった。
ガァン、ガァン
さくらはその音に耳を傾けると、音は近づいてきていることに気がついた。
誰かに伝えようか、さくらが迷っていると、
「お姉ちゃん!」
と、後ろから声がした。
後ろを振り向くと、そこにはAEBWを持った杏樹がいた。
杏樹の後ろには大きな穴があり、そこからAEBWを使って侵入したのだろうとさくらは考えた。
杏樹は焦った顔で
「お姉ちゃん、逃げよう!」
とさくらを穴の方に押した。
「どうしたんですか?そんなに焦って。逃げると言ってもここは安全のはずで「いいから早く!」分かりました」
さくらは杏樹に押されながら穴には入っていった。
「おい、昼メシもってきて――いねえ!?」
◆
「ふんふ~ん♪わたしとさくらさんはな~かよしトゥナイ♪」
剣崎焔は、鼻歌を歌いながらウェポナー達が訓練するVRルームでVR上の異界獣と戦っていた。
(そういえば今日、まださくらさんと会ってないな…どうしたんだろ?)
「焔ちゃん、後ろ!」
「え?っ、きゃあ!」
焔は後ろにいた異界獣に気づかず、吹っ飛ばされた。
「止めてくれ…ありがとう。焔ちゃん、戦闘中は集中しないとダメだよ」
そう言って近づいてきたのは金本だった。焔にとって良くしてくれる数少ないウェポナーの一人だ。
「うぅ…すいません」
「これが本番なら死んでるかもしれないんだ。AEBWで身体能力が上がっているとはいえ、無敵じゃないんだ。いいね?」
金本は見た目通りのチャラい行動が有名だが、同時にウェポナーとして活動しているときには真面目に取り組むことでも有名で、幅広い人からの信頼が厚い男だった。
焔が金本からお叱りの言葉を受けている時に放送がなった。
『全ウェポナー並びにオペレーターにつぐ、緊急会議を開く。至急総司令室に集合せよ。繰り返す…』
「どうしたんでしょうか?」
「とりあえず、行こう」
二人は総司令室につくと、既に会議は始まっていた。
金本が近くのオペレーターに話を聞くと、謎のウェポナーにイージスが侵入されたらしいということだった。
謎のウェポナー―アルファは、イージスに何らかで不満、憎悪を持ち、復讐しようとしたウェポナーではないかとイージス上層は推測したという。
「どうして誰も侵入されたことに気づかなかったのでしょうか?」
イージスにいるウェポナーは、指示があるまで待機という指示がでた後、会議が終わった。
足早に総司令室から出た焔は、一緒に部屋を出た金本に疑問を投げ掛けた。
「どうやら警備が薄い留置所が襲われたみたいだ。他のところよりも警備が薄く、警報も少ない」
「留置所?」
「そういえば言ってなかったね。今回みたいに敵対することになったウェポナーを入れるところがあるんだ。それが留置所」
そこで金本は首をかしげた。
「しかし、なぜそこを襲ったんだ?仲間を増やすつもりだったか?…幸い今留置所にはウェポナー『は』いなかったが…」
焔は猛烈に嫌な予感がした。
「ウェポナーは?もしかして、他に入れられている人が…」
「ああ、いるというよりいたといった方が正しいか。アルファに連れていかれたらしい。よく知らないけど、『職員』が入れられていたとか、って焔ちゃん!?」
職員という単語が聞こえた瞬間焔は走り出した。
◆
さくらは杏樹に連れられて、穴から見たことの無い景色に出た。
そこには人の気配がなく、大きかったであろう建物があちらこちらで倒壊しており、ここは壁の外かと、さくらは気づいた。
「聞きたいことがあります」
さくらは溜めていた疑問を杏樹にぶつけた。
なぜ連れ出したのか、なぜそんなに焦っているのか、なぜ壁の内側ではなく外なのか。
杏樹は答えた。
「連れ出したのは、お姉ちゃんに危険が迫っていたから。少し用事があったから
「なるほど、ではわざわざ外にした理由は?」
「内側にはたくさんあいつらの仲間がいたから、外の方が安全だと思ったの。確かに、外は化け物がたくさんいるけど、あいつらより戦いやすい。だから安心して、お姉ちゃんは私が守るから」
(・・・やはり、見れば見るほど
「お姉ちゃん、どうかした?」
「いえ、なんでもありません。…そういえば、どこにいくか、決まっているんですか?」
そう聞かれると、杏樹は微笑んで
「わたしの、わたし達のお家よ」
と答えた。