ロクでなし魔術講師とスタンド使いの暗殺者   作:nightマンサー

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ロクでなし魔術講師、到来

ーーー1年前

 

 

「…護衛だと?」

 

以前の世界での記憶を持ったまま、この魔法の世界に生まれ落ちた暗殺者チームのリーダーであるリゾット。

彼はとある理由から幼少期に家族から捨てられた。

普通の子供であればそのまま死んでしまうのだろうが、そこは元裏の世界に身を置いていた者。

ただ以前とは違い犯罪者のみをターゲットとし暗殺して過ごしていた所をスカウトされ、

現在はアルザーノ帝国宮廷魔導士団特務分室に席を置いている。

そんな彼に仕事が舞い込んできたのだが、今回は何時もの仕事と違う様だ。

 

「あぁ、どうやら彼女が学院に入ってから例の組織が前よりも動きが活発化している」

 

同じ特務分室に席を置くアルベルト=フレイザーがそう告げる。

 

「事情は理解した、引き受けよう。ただ1つ聞きたい…何故俺が選ばれた?」

 

「観察眼に優れており、影で守るのなら暗殺者が適任というのもある。それに1度助けた実績があるからだろう」

 

そう言われてリゾットは2年前の出来事を思い出す。

あれは仕事を終えた帰り、偶然誘拐グループと接触し殲滅した時に誘拐グループが攫ったと思われる金髪の少女を助けた。

まぁ姿は見られていないから少女は誰が救ってくれたかは知らないだろう。

 

「あれは偶然だが…まぁいい。何時から始める?」

 

「3日後からだ。彼女が通っているアルザーノ帝国魔術学院に生徒として入ることになる」

 

 

護衛任務はリゾット・ネエロ、人生2度目の学校生活の始まりでもあった。

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リゾット君、どうかした?」

 

この護衛任務を受けてから1年、現在まで特に何事もなく経過していた。

あるとすれば、この女に好意を持った男が過剰に接触しようとする程度だ。まぁ何故か此方が見ると逃げていくが。

 

「…いや、何でもない。今日はいつもより遅かったが、何があった?」

 

「それは、私が忘れ物しちゃって…」

 

そう言うシスティーナはいつもより覇気がない。

どうやら先日自分達を担当していたヒューイ教師が辞めたことが原因らしい。

 

(あの教師、ただの教師と言うには僅かだが違和感があったが…)

 

辞めたのなら問題ないと結論づける。

そうして2人と学院に向かって噴水広場を通りかかった時ーーー

 

「ど、どいてくれぇぇ!!」

 

突如男が全速力で自分に突っ込んできた。

突然の出来事に2人は驚愕で動けないでいた為、咄嗟に男の前に躍り出て男を左側に受け流す。

 

「えっ、ちょおおおぉっ!?」

 

受け流された男はその勢いのまま、激しい音を立てながら噴水に着水した。

 

「行くぞ」

 

「え、え!?い、いいの…かな?」

 

ルミアが心配そうに噴水の方を見て俺に問いかけてくる。

同意見なのかシスティーナも俺を見てくる。

 

「問題ない。それに、こんな人通りの多い場所で全速力で走ってきた奴に非がある」

 

そうして俺は歩き出す。

2人も暫し視線を噴水に向け立ち尽くしていたが、此方に着いてくる。

ルミアにいたっては「ごめんなさい」と一言、いまだに噴水で倒れたまの男に向かって告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

 

「……遅い」

 

システィの不機嫌そうな声が静かな教室に響く。

噴水広場で男の人が突っ込んできたこと以外は何事もなく学院に到着し、現在は授業時間。

辞職したヒューイ先生の代わりに今日から暫くの間、非常勤講師が来る予定なのだが、

授業時間が半分以上経過してもいまだにその非常勤講師は姿を表さないでいた。

 

「生徒は勿論のこと、この学院の講師が遅刻だなんて前代未聞ですわ」

 

「ある意味大物だな」

 

「ただのロクでなしだろ」

 

クラスメイトがそれぞれ意見を口にする。

そんな中でいつもと変わらず教科書ではない本を読むリゾット君。

初めの頃は、というより今でもシスティが辞めるよう注意しているけど、

我関せずといった感じでやめる様子はない。

 

「今日はなんの本を読んでるの?」

 

私がそう聞くとリゾット君はちらりと私を見た後、「…医学書だ」と一言だけ告げた。

 

「この前は格闘技術の本だったよね。もしかして今朝のってその技?」

 

「…知っていると知らないとでは圧倒的な差となる。今朝は受け流しの方法を知っていたから対処出来た。

情報とは何よりも大事だ。知っていることを実践できなければその力は半減するがな」

 

そこまで言ってリゾット君は再び本を読み始めた。

純粋に知識を深めるその姿に、私はリゾット君の底知れない覚悟を垣間見た気がした。

 

「わりぃわりぃ、遅れたわ〜」

 

そんな気怠げな声と共に教室のドアが開かれた。

 

「やっと来たわね。あなた、この学院の教師としての自覚、を…」

 

システィが入ってきた人に向けて叱責するが、その言葉は最後まで紡がれなかった。

何故なら入ってきた人が、今朝ぶつかりそうになり結果噴水に突っ込んでしまった男の人だったからだ。

 

「んぁ?って、お前ら今朝の…!

おいおい、俺はお前らのせいで朝からびしょ濡れなんだが、何か俺に言うことないのか?ん?」

 

入ってきた講師の人は、私達が今朝ぶつかりそうになった人と分かると途端に強気になった。

確かにあの人が濡れているのは此方に非があると思い謝ろうと口を開きかけーーー

 

「っ、リゾット君?」

 

突然私の目の前にリゾット君の手が出てきて私の言葉を遮られてしまった。

手が口に当たりそうで少しドキドキしてしまう。

 

「言いがかりは止せ。原因は人の多い通りを走っていた貴様にある」

 

毅然とした態度でリゾット君が答える。

 

「それでも謝罪の一言あっても…ん?お前……」

 

リゾット君の言葉に反論しかけた先生だったが、何故かリゾット君の顔を見ると何か考えるように顎に手を当てた。

 

「あ、あの!もう授業時間を大幅に過ぎてます。早く授業を始めて下さい!」

 

「……はぁ、そりゃそうだな。仕事だしな」

 

何か異様な雰囲気になりかけていた場を、システィが声をかけたことで霧散した。

リゾット君に何か言いたそうな先生だったが、一旦置いておくみたい。

 

「非常勤講師としてこれから1ヶ月、皆さんの授業を担当するグレン=レーダスです」

 

そうして非常勤の先生ーーーグレン=レーダス先生の初授業が始まった、のだけどーーー

 

「今日の授業は自習にしまーす……眠いから」

 

黒板にデカデカと『自習』と書いたかと思うと、グレン先生はそのまま顔を伏せて寝息をたてて寝始めた。

これには流石に私も含めたクラスのみんなーーー正確にはリゾット君以外は唖然としてしまっていた。

ふと視線を右側に向けると、システィが凄い顔を真っ赤にしてプルプル震えており、そしてーーー

 

 

「ちょっと待てぇぇ!!」

 

 

システィの絶叫と共に、グレン先生の頭に教科書がクリーンヒットした。

 

 

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