保健室のきゅうり   作:へびのあし

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3、彩ちゃんの入試

雄英高校の入試日。

受験者にとっては緊張で楽しむどころではないだろうが、教職員のモニタールームは、なんだか期待と熱気がこもった夏祭りのようなムードで盛り上がっていた。

 

それもそのはず。ここでは教師がエリートならば生徒もエリート。

試験会場では毎年多種多様でユニークな受験者が、我こそはと自らの個性を爆発させる。波瀾万丈、何が起こるか全く予測のつかない入試なのだ。

毎年、教師陣も密かに楽しみにしている行事だ。

 

現在は実技試験の真っ最中。

市街地を模した演習場で、ヴィランロボットと受験者の戦いが繰り広げられていた。

教師たちは食い入るようにモニターへ見入る。

 

「今年はなかなか豊作じゃない?」

「いやーまだわからんよ。盛り上がってくるのはこれからだぜィ!

「そうそう。真価が問われるのはこれからさ。ということで、そろそろ行っちゃうのさー」

 

計器類の前に陣取っていた校長が、ポチッと音を立てて、怪しげに赤く発光するボタンを押した。「YARUKI SWITCH」お邪魔ギミックの仕掛け装置だ。

はっはっは〜と軽く笑う校長の前のモニターへ、試験会場の突然の異変が映し出される。

 

地面が揺れ、巨大なロボットが出現。

明らかな規格オーバーの兵器。冗談ではなく、受験者たちは命の危険という恐怖にさらされる。

圧倒的脅威を目の前にした人間の行動は正直。立ち向かってもメリットは一切ない。

 

——しかし。だからこそ色濃く見えてくる大切なものがある。

 

 

「ああ〜やっぱみんな逃げてくよお」

「…いやまあお前、一応…それが普通の反応だからな?」

「並じゃだめなんだったら!ヒーロー志望はもっと自己犠牲の精神溢れる奴じゃねえと!」

 

モニターを見ながら、思い思いに胸の内を語る教師陣。

いくつかの試験会場で、数人の逃げ遅れの受験生が映し出されている。

 

腰を抜かして動けない、緑髪の少年。

瓦礫に足を挟まれて、もがく少女。

 

…そしてある会場では、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「こういう時にほら、あの子とかその子とかを助けに命張れるような子が…子が……あっ普通にいたわ」

 

ある画面の端から突如カエルの舌が伸びてきて、ベレー帽の少女を攫っていった。

慌ててカメラが追いかける。安全圏へと舌を勢いよく引っ込めるカエル形の少女が映った。

 

「おーう。便利な個性だな」

「本当だ…が、惜しいなあ。もちょっと距離伸ばせたら間に合いそうだったが」

 

人ひとり運べるスーパー舌。

なかなか凄いが、この様子では、なんとかベレー帽の少女を離脱させても自分の避難が間に合わない。カエルの少女の黄緑色の私服はアスファルトの中で目立ってしまい、すでにロボットに完全に目をつけられている。受験者へ直接攻撃はしないようプログラミングされているものの、暴れるロボに近づきすぎれば当然瓦礫の倒壊に巻き込まれる。

 

「まあ多少の怪我はリカバリーガールが治すわよ。 それよりこの子なかなかいいじゃない?レスキューポイントいっぱいあげちゃおうかしら。」

 

モニターを眺めながら、少しだけ気の毒そうに教師が言う。

…と、忽然と画面からカエル少女の姿が消えた。

画面上のロボットが一瞬、目を泳がせるようにして動作が鈍る。モニタールームにも戸惑いの声が漏れる。

 

「…あら。あの子の個性は透明化じゃないわよね?」

「カエルだろ。どう見ても。…まさか保護色か?」

「いやいや違いますって!個性届けに書いてなかったし、そもそも服まで変えるとか中学生ができていい制御じゃないって!」

 

全ての受験者の書類に徹夜して目を通したばかりの教師が叫ぶ。

と、かなり離れた場所へ再びカエル少女が姿を現し、『まさかの瞬間移動!?』と教師たちがまたもや色めき立った。

そこで一人の教師がため息を漏らす。

 

「おいお前たち…プロヒーロー何年目だよ?もうちょっと気づけよ。」

 

伸び切った髪に無精髭。

何より時間の無駄を嫌うばかりに、一周まわって怠惰と見られてしまうヒーロー。しかし彼の観察眼は侮れない。

イレイザーヘッドの呆れたような言葉を聞いて、雄英高校の教師たちはもう一度モニターへ向き直った。

 

 

「あーなるほどね」

「…助け合いってわけですか」

 

ベレー帽の少女こと、花冠彩。

彼女が自らの髪の毛を基につくった特性ロープ。三つ編みのかわいらしいそれが、まっすぐのばされた一番先端。そこがカエルの少女の再出現の地点だった。

しかしそのカエルの少女は、先ほどからピクリとも動かない。なぜならそれは、個性で描かれたただの絵だから。

 

彩を助けた少女の本物は、彩の個性で一度背景に完全に擬態してロボットの目を晦ました後、無事に離脱していた。

今は服の色も元へと戻っている。

別の地点に設置されたカメラに、手を繋いで逃げる二人の姿が映っていた。

 

「…いやあ。こっちのベレーの子の方も、あの極限状態でよく気が回ったわね」

「目くらましの個性…?? 何にせよ、なかなかやるな!」

 

教師たちがほうっと笑みをこぼす。

こういう場で正しく動ける子供には期待できる。

 

 

 

——そして。もちろん彼らが見ている会場は一つではない。

 

 

『ワン・フォー・オール!SMAASH!!』

 

ドゴオオオン!

 

「…うーわ。これやばくね?」

「なんつー規格外だ。」

 

B会場で腰を抜かしていた緑髪の少年。誰かを助けるために空を飛んだ彼もまた、今回の試験のMVPとなった。

 




〜彩ちゃんの入試結果〜

ヴィランポイント:13点
レスキューポイント:40点

彩ちゃんの対仮想ヴィラン作戦は、カメラセンサーの色を塗り替えて行動不能にすること。完全に動きを止めることにはならないので、ポイントは(かなり減点されて)低めです。
原作で蛙吹梅雨ちゃんの描写はないですが、きっとレスキューポイント高かっただろうなぁと。梅雨ちゃんかわいくて大好きなので、楽しく書きました♪





雨森修の人物紹介
ヒーロー名:治癒ヒーロー・リカバリー爺さん
誕生日:8月16日
身長:159cm

個性:治癒。
手で触れる、または頭のつる植物の葉っぱを摂取させることで、怪我を治療できる。リカバリーガールの『癒し』とは違い、本人のイメージで細胞まで構築していく術。
よって、新しい臓器をつくること、体を成長させることも出来るが、10分以内に修が個性を解除しないと腐って膿の海に…

コスチュームは白衣風の洋服に、水色の羽織を重ねて(某漫画のぶ◯ックジャックを参考に)医療道具の収納ポケットをたくさん裏地につけている。
戦闘スタイルは、“きゅうり銃” と“メスなどの医療器具” を場面で使いわける中距離汎用タイプ。

好きな食べ物:お茶全般。よもぎ。きゅうり。
嫌いな食べ物:チョコアイス(レンジであっためたら食べられる)
血液型:B型
性格:礼儀正しい不思議くん。

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