呪霊廻戦 〜呪霊で教師になります〜   作:れもんぷりん

1 / 55
 シリアスは(そんなに)無いです。


誕生編
生誕


 

 暗い。

 

 

 

 

 何も見えない。

 

 

 

 

 寂しい。

 

 

 

 

 だれか......

 

 

 

 

 私を抱きしめて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ......」

 

 暗闇の中から意識が覚醒していく。ゆっくりと瞼を開くと暖かな太陽の光が目に映る。

 

 どうやら此処は屋外のようだった。というかさっきからザワザワとなっている森の木々の音から薄々勘づいていたんだけど。

 体を起こして周りを見渡す。絹のようにさらさらな銀髪が肌に当たって心地いい。

 

 一体ここは何処なんだろうか?というか目覚める前まで何をしていたのかが全く思い出せない。これは俗にいう記憶喪失というやつか?

 

 頑張って思い出そうと頭に両手をやってうんうんと唸る。自分の名前、過去、親や友人などの情報が全く思い出せない。というかまるで元々そんなものは無かったかというようにぽっかり記憶に空洞が開いているような感覚に陥った。こんな馬鹿な話があるか。いや、まさに今の私がそうだった。

 

「くぅぅぅぅ!どうすればいいんだぁ」

 

 あまりの事態に途方に暮れていると頭にやっていた手に硬質なものが触れた。

 ん?なんか頭に変な突起物がついているんだが。

 

 突起物はおでこの少し上のあたりから突き出ているようで、左右対称になっているようだった。

 ふにふにと触って確かめてみたが鍾乳石のような滑らかな触り心地でずっと触っていられる。

 そのまま何も考えずに触り続けていたが、超が4つほどつく天才鬼才神才の私は気がついてしまった。

 

 重大な事実に。

 

 

「これ私、人間じゃなくね?」

 

 そう声に出して認識すると脳にガツンと衝撃がきたような感覚を覚えた。

 

 動悸が早まる。頭が痛い。胸が重い。

 

 もう私は人間ではないのだろう。何よりも自分の本能が自分は“呪霊”だと叫んでいる。

 自分が呪霊だと言うことを認識すると、胸にぽっかりと大きな穴が空いたような気がした。

 これは自分が人間ではないと認識した故のショックではない。もっと心の奥底から感情が溢れ出てきて止まらない。

 

 

 この感情を私は知っている。

 

 

 

 この感情を私は覚えている。

 

 

 

 この感情に私は慣れ親しんでいる。

 

 

 

 「さみしい」

 

 無意識にぽつりと零れ落ちた。

 ただひたすらに寂しい。理由もなく涙が溢れ出てきて、何度も何度も手で拭った。

 

 同時に理解した。私は人が寂しいと思う感情から生まれた存在だと言うことを。

 

 自分の根幹にその寂しさがあることを何よりも理解した。

 

 

 

 

 

 

 ひとしきり泣いた後、これからのことを考える。これは俗に言う転生というものだろう。私はこの世界に覚えがあった。

 

「呪術廻戦」

 

 人間を害する呪霊と呪力という特別な力を扱う呪術師という存在が戦う大人気コミックスだ。呪霊は人間の負の感情から生まれ、呪力もまた、人間の負の感情から生まれる。

 

 先ほどから記憶を引っ張り出そうとしたら呪術廻戦に関する記憶しか出てこない。まるでこの記憶しか必要ないと言わんばかりだ。

 

 まだ確証はないが、漠然とした確信がある。

 

 そうなってくると私が選ぶことが出来る選択肢は二つあると言える。

 

 一つは一般的な呪霊として人間を害し、呪術師と敵対するという道。

 もう一つは一般的な呪霊から逸脱し、全く人間と関らずに暮らすという選択肢。

 

 正直、人間を害するつもりは全くない。私は加虐趣味ではないし、どちらかというと人の喜ぶことをしてあげたい。では二つ目の選択肢かと聞かれると、それも違うと答えるだろう。

 

 さみしい。ひとりきりで暮らすなんて耐えられない。

 

 この身を焦がすような激情。胸を穿つ空虚。

人間で表すなら空腹が一番近いだろうか。それもただの空腹ではない。お腹を抑えてその場で蹲り、嗚咽を漏らして神を恨む。そのような苦い空虚がこの身を支配している。

 

 恐らく私が人間の理性と自制心を持っていないただの呪霊だったのなら、すぐに走り出して人間の一人や二人さらってくるのではないだろうか?

 

 よって、私がとる選択肢に孤独になる道はない。そんな道は選べない。だが呪霊の姿は一般人には見えないのだ。

 多少の呪力を持つ人間しか私を視認することは叶わない。つまり、一般社会では私はひとりぼっちだ。

 

 しかしうってつけの場所がある。

 

 

 呪術高専である。

 

 呪術高専とは日本に東京と京都の2校しかない呪術師専門の学校のことで、先生も生徒も皆呪力を持っている。つまり皆私が視える。

 そこに行けば私は一人ではなくなるという訳だ。

 そう考えると何だか人肌が恋しい。私は前世で触れ合った筈の人の肌の温かさなど欠片も覚えていないくせに。

 

 だが私は呪霊。例え私の心は人間だったとしても、私が呪霊であるということは疑いようのない事実である。

 

 では此処で問題。今の私が呪術高専に行くとどうなるのか?

 

 一瞬で祓われるだろう。全く聞く耳も持たずに殺意を向けられ、そして抵抗虚しく散るという訳だ。

 

 とにかく力が必要だ。何よりも生き抜く力が。この世界では呪霊に見つかっても呪術師に見つかっても皆、襲いかかってくることだろう。

 

 呪術高専に行っても敵対ではなく和平を選ばざるを得ないような怪物に成長してしまえばいい。そこから信頼を得ていくのが手っ取り早いだろう。

 

 そうと決まれば修行である。

 

 

 

 私は絶対友達をつくるぞ!

 

 

 




 人生初投稿なので誤字があったらすみません。
 楽しんでくれると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。