文才の無さに押しつぶされそうになりながら頑張りました。
戦闘シーンの難しさは異常。
楽しんでもらえると嬉しいです。
伏黒甚爾の気分は高揚していた。
神童、最強、とその名を恣にする五条悟をこの手で殺った。
後は乳臭いガキ一人殺すだけで大金が転がり込んでくる。
簡単な仕事じゃないか。
今日はこのまま打ちにいくか?
いや、まずは煙草で一服か。
しかし、思考とは裏腹にその身は全く警戒を解いていない。
彼は決して油断しない。
死ぬからだ。
呪術師とは違い、彼には体を回復する手段もなく、呪力もない。
持っているのは多少の呪具と身体能力だけ。
この呪術界をそれだけで生き抜いてきた。
それでもそこらの有象無象には負ける気がしないが、五条悟だけは別だ。だからこそ何重にも作戦を用意し、真っ先に仕留めに掛かったのだから。
それに先ほどから嫌な寒気がするのだ。
ジャリジャリと音を鳴らしながら天元の元へ向かう。
彼は呪霊が見えない。
呪力が全くないからだ。
さて・・・
では彼でも存在をくっきりと認識できるほど濃密な呪力を放っている目の前の存在はなんだ?
ジャリジャリと音を鳴らしながら真正面から歩いてくる、こいつは。
けたたましいアラートが鳴り響く中、伏黒甚爾は臨戦態勢を取った。
特級だ
◆
すごい威圧感だと、素直にそう感じた。
隆起する筋肉。
確かな足取り。
ブレることのない体幹。
そして狼を幻視させるような眼光。
あぁ強い。
今まで戦ってきた何よりも強い。
本当に彼は人間なのだろうか?
そう思った。
先ほどから鳴っているアラートが全く気にならない。
恐らくは呪霊が高専内に入り込んだ際に鳴るものだろう。
そんなものを気にしている暇はない。
目を離せば死ぬ。
「高専は随分と物騒なものを飼ってんだなあ」
彼が話し始めた。反応したいところだが、先ほどから足が前に進まないのだ。
死が見える。進めば死ぬと本能が言っている。
「無視かぁ?まあ、何言っても聞こえねえんだけどな」
体が震えるんだ。歯がカチカチと鳴っている。
強くなっても、怖いことは変わらない。
私はずっと臆病で。
それでも前に進むって決めたから・・・!
「俺は今忙しいんだ・・・」
殺すぞ
恐怖を振り払え。
心臓に呪力を。血管を通して巡らせる。
廻す呪力量を更に増やし、爆発的な身体強化を施す。
呪力の青い筋が白い肌に浮き上がる。
吸収術式を反転させ、放出術式へ。
それと同時に硬化術式をかける。
前へ、ただ前へ!
踏み込め!
繰り出した右足は敷かれた石畳を砕き、爆風を吹き荒らす。
身体中が熱い。呪力の巡りをこれ以上なく感じる。
絶好調だ。
右手を握りしめ、呪力を籠める。
この一撃だけでもいい。
もう一段階引き上げたい。
今のステージからもう一歩上へ!
迸れ、黒い稲妻!
──黒閃
◆
開戦の一撃は黒い稲妻だった。
白い鬼の姿が見えていないはずの伏黒はこの一撃を勘を頼りに持っていた呪具でガードした・・・
はずだった。
伏黒が生きてきて今まで、感じたこともないほどの力の波動。圧倒的膂力。ガードの上から無理やりこじ開けられる感覚。
呪具にヒビが入り、粉々に砕け散った。それと同時にいまだ勢い衰えぬ拳が伏黒の右肩に突き刺さる。
(冗談だろ!)
今伏黒が手に持っていたのは1級呪具の中でも上位に位置する物だ。
固く、鋭いだけの呪具ではあるが、そう簡単に砕けるような物ではない。
なんとか攻撃の芯をずらすことが出来たが、もう少し遅ければ今頃右肩は残っていなかったかもしれない。
強い。呪力しか取り柄のない名前だけの特級ではない。
伏黒はその事実を深く受け止め、勝利への道筋を組み立て始める。
彼の強みは身体能力だけにあらず。
生まれ持った戦闘センス、そして優秀な頭脳。
それら全てを駆使し、相手の喉元に喰らいつく。
この呪霊の攻撃は一撃受けるだけでも致命傷だということを脳裏に刻み込み、大きく距離を取る。
当然のように反応し、追随してくる呪霊に向かってニヤリと笑った。
伏黒の首にマフラーのように掛かった収納呪霊の口から呪具が取り出される。
一閃。
伏黒の手から放たれた一撃は容易く亜鬼を吹き飛ばした。
「さてと...」
殺るか。
その手に握られるのは三節棍。
持ち主の膂力によって打撃の威力が大きく変化するという特性を持ったその呪具。
名は・・・
特級呪具 “遊雲”
伏黒の体の周りを覆うように振り回される暴虐の嵐。
これ以上ない暴力の体現。
白い鬼は臆することなく嵐に向かう。
神域の直感によって振り下ろされる遊雲を紙一重で避けた。地鳴りのような衝撃が地面を襲い、砂埃が立ち上る。
そして飛び出す一つの白い影。
空中で身動きが取れないであろうそれに対し、伏黒は容赦無く遊雲を振るった。
だが、確実に当たるかに思われたその一撃を空を蹴ることで回避し、勢いそのままに肉薄。
攻撃を放った後の隙がある伏黒へ右のアッパーカット。
それを空いていた左手をそっと当てることで逸らし、亜鬼の鳩尾へと膝蹴りを繰り出した。
硬い!
金属でも蹴ったかのような感覚を感じたあと、追撃に入る。
浮き上がる亜鬼を野球の要領で打ち据えた。
吹き飛ぶ亜鬼。
さらに追撃。
人間とは思えない速度で空中の亜鬼に追いつき、遊雲で連撃を叩き込む。
地面に叩きつけられ、動かなくなる亜鬼に対しても止めることなく叩き込み続ける。
一瞬だけ違うものを殴ったような感覚を感じた瞬間、呪霊が体勢を立て直して大きく後退したのを感じた。
(まだ動けんのかよ・・・)
都合百発以上は叩き込めたはずだが、それでもなお仕留めきれない。
はっきり言って異常すぎる硬さだ。
もしや打撃は効果が薄いのか?
これ以上立ち上がるようなら獲物を刀に変えてもいいかもしれない。
だが、伏黒が持つ最も切れ味が良い呪具は先ほど破壊された物であり、遊雲以上の効果を期待できるとは思えない。
まあ、相手の攻撃は当たらなければ脅威に感じる程のものではなく、反撃の隙を与えなければ問題ない。
伏黒は全く油断しない。
相手の術式を見ていない。それだけで脅威に値するからだ。
獅子は兎を撃つに全力を用う
相手が兎より手強いならなおさらの事だろう。
蹴った際に感じた硬さから考えると、相手の術式は硬化だろうか?
そうだとすると天逆鉾が決め手になるかもしれない。
戦略とは組み立て、実行して、成果を出してこそ意味がある。まだ相手が死んでいないのであれば、戦いは終わっていない。
伏黒の頭の中ではいくつもの勝利への道筋が立てられ、その中から臨機応変に一つを選び取る。
戦闘の天才。
その言葉が彼ほど似合う男はいない。
追撃をかけなかったのは相手の術式がいまだに明らかになっていないからだ。
満身創痍は罠かもしれない。そう思わせる不思議な威圧感が呪霊にはあった。
呪霊がむくりと起き上がるのを感じ、その動きを観察せんとじっと見つめる。
次の瞬間、彼の目の前に白い鬼が立っていた。
背筋が凍るのを感じ、伏黒は後退しつつ遊雲を振るう。
白い鬼はそれを見て。
まるで止まっている棒でも掴むかのように。
遊雲を掴みとった。
反撃開始
怒れる娘が目を覚ます。
どうやら伏黒は呪霊が見えるらしいですが、書いてしまったのでこのまま進めます。
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早く掲示板も書いて次話も書くんだよおお!
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