アンチ・ヘイトタグは付けないの?と聞かれました。
付けません。
私は呪術廻戦が大好きで、全てのキャラに違った魅力があると考えています。
その魅力を損なわせることはしないつもりです。
賛否両論あると思いますが、じっくり考えて決めたことなのでご了承下さい。
勝敗は決したが明希はまだママに体を返すつもりは無かった。
ここは危険だ。
絶対に安全な場所まで移動してから体を返したい。
そこらの雑魚には負けないだろうが、少なくとも五条悟と夏油傑の二人は今の彼女には荷が重いだろう。
吸収したところで何も得るものがない。
そう判断して、明希は胸から右半身が大きく消しとばされ、息も絶え絶えで殆ど瀕死な伏黒をその場に横たえた。
というか何故生きているのだろうか?
殺してもいいが、ママはそれを望まないだろう。死なない程度に反転術式で治し、その場に放置だ。
彼にはまだ、伏黒恵の存在を五条に伝えるという役目がある。
明希は確かに呪術廻戦という作品に救われた。
キャラも皆魅力的で大好きだ。
だが、明希の判断基準は母親一択。
彼女はママに救われた。
心から愛している。
ママを傷つけたこの男を殺したい気持ちはある。
しかし、ママの意思は全てにおいて優先され、ママが殺したいと思うなら殺す。生かしたいなら生かす。
それが明希の行動理念。
さて、そろそろか。
時間を計算するにまず間違いないだろう。
今頃、夏油傑の手で同化から逃れた星漿体の天内理子が世話係の黒井と共に安全な場所への退避を始めている頃だ。
原作においてこの時天内は既に殺害されており、夏油は地に伏していた。
つまり、あの男の復活もそろそろだというわけだ。
ほら、近づいてくるじゃないか。
名実共に最強の呪術師となったあの男が。
「アンタ誰?」
◆
五条悟は伏黒甚爾に何度も体を刺され、息を引き取る寸前だった。
だが死の間際に呪力の核心を掴み、反転術式を習得。自らの体を治して伏黒を追いかけてきたという訳だ。
反転術式とは、習得できる呪術師がほんの一握りしかいない高等技術。
負 のエネルギー同士を掛け合わせて正のエネルギーを作り出し、肉体の再生を行う。
これにより術式順転「蒼」を反転し、術式反転「赫」を扱えるようになった。
今の五条は覚醒している。まだ進化の余地を残しているというのに現時点で既に頂点。
最強だ。
彼は今、完全にノっていた。
さて、伏黒を潰しに行くかと立ち上がり、追いかけ......
そこら一帯に嵐が吹き荒れたかのように荒れ果て、壁も石畳もバキバキに割れている。
気分が高揚しすぎて気がついていなかったが、呪霊警戒のアラートがなっているじゃないか。
誰かが佇んでおり、その足元には血まみれの伏黒甚爾が......
そして出逢った。
これが二人の初対面。
呪術師と呪霊
敗者と勝者
最強と神才
「アンタ誰?」
明希はその質問に対して少しだけ思考し、そして答えた。
「勝者だ」
悟と明希。
この二人が出会えば、衝突することは避けられなかったのかもしれない。
◆
さて、どうしようか
なんて五条は一切考えていなかった。
ハイになっていたのだ。
伏黒の脅威は目の前の呪霊が排除した。
そして呪霊は祓うべき。
伏黒に勝利したということは間違いなく特級。今の自分を試すのに丁度いい。
他に戦う理由がいるか?
放つ。
──術式反転「赫」
呪力が赤く光り、目に見えぬほどの速度で発射された。
無下限呪術の術式反転は弾く力。
五条の才能と六眼の力を存分に使い、莫大な呪力と緻密な呪力操作によって放たれたそれは白い鬼に寸分違わず命中した。
そこで五条は驚愕する。
受け止められている!
明希は軽く右腕を上げ、ほんの少しの身体強化と硬化術式、掌に薄く呪力の膜を張った。
後は体勢と重心を調整。
真正面から五条の一撃を受け止め、そのまま握り潰す。
それを見た五条は相手への評価を上方修正。
術式反転「赫」は凄まじい威力を持つ。
それを簡単に受け止めるということは、あの呪霊は耐久力も膂力も化け物じみているという訳だ。
その情報を頭に入れ、それでもなお術式反転「赫」を放った。二発目のそれは軽やかなステップで避けられたが、それは想定内。
既に追撃の「赫」を放っている。
連撃だ。
赤い呪力が明希に牙を剥く。
明希は第六感以外にも一つ、感覚を有している。
識覚と名づけたそれは、未知を既知とする神才の片鱗。
自分の周囲に存在するあらゆるものを手にとるように理解し、未来予知じみた予測が可能となる。
白き鬼姫が踊る。
「赫」は呪術高専の壁を幾度も貫き、森を破壊し、地面を抉り、石畳を捲る。
だが肝心の明希にはカスリもしない。放たれる方向と速度、術式範囲が分かっていれば避けるのは容易い。
それでも五条は「赫」を放つのをやめなかった。
これは攻撃であると同時に囮でもあったからだ。
乱れる環境。巻き起こる破壊。
それらを全て囮にして、明希の後ろに術式順転「蒼」が作り出される。
発動される引力。五条は瞬間移動じみた速さで移動すると共に右脚を使った蹴りを繰り出す。
五条は体術も一流である。
術式も、呪力感知も、呪力量も、身体能力も、戦闘センスも、体術だって、彼は全て一流である。
それに加えて相手の術式を看破し、緻密な呪力操作を可能とする六眼を持っているのだ。
強くて当然。なるべくしてなった最強。
そんな彼の蹴りを簡単に掴み取り、そのまま地面に叩きつけたこの鬼もまた絶対強者。
大地が砕け散り、砂埃が舞っても彼は無傷。
何故なら、五条の周りには常に無限があるから。
どんな攻撃も、衝撃も、彼には届かない。
しかし何だ?
五条は違和感を感じていた。相手に全く攻撃する意思が感じられない。降りかかる火の粉を祓う程度にしか反撃してこない。
冷静になればそこで戦いは終わっていたかもしれない。だが彼は青年期。若気の至り。
「舐めてんのかよ?"ブス"が」
挑発が好きなお年頃。
彼は意図せず、明希の地雷を踏み抜いた。
前世で明希は自分の顔が不細工だと言われたことなど何度もある。子供が簡単に思いつく悪口の一種。
もっと酷いこともされてきたし、言われてきた。
正直ほとんど気にならなかった。
だがそれは前世ならの話。
今、明希が動かしているのは誰の体だ?
彼女が愛する母親の体。明希はママが好きだ。顔も体も心も温かさも健気さも欠点だって。
全て愛している。
明希に五条を傷つけるつもりなんて全くなかった。
後々高専にお世話になる際、過去のいざこざは邪魔になると分かっていたからだ。
激情が体を突き動かす。
「なんだこの悪寒は」
次期学長と噂される男も。
「やばっ。あいつら大丈夫なの?」
他人に反転術式を施せる天才も。
「この呪力は?」
最強のライバルも。
この時、東京都内に存在する全ての生物は震え上がった。
それは対峙する最強も同じこと。
「嘘だろ...おい」
湧き上がる呪力。
ひび割れる大地。
大気を軋ませ、木々は重圧に耐えきれずにへし折られていく。
特級呪霊とは、様々な人間の負の感情が一つに集まってできる呪霊だ。膨大な数の人間の感情の集まり。
それをただ一人、"寂しさ"だけで特級呪霊を創り出した。
それってどんなだ?
一人間が持ちうる感情の量を超えていないか?
そんな存在が今。
憤怒している。
周りに解き放たれた呪力が全て白い鬼に凝縮していく。
五条は瞠目した。
かの黒閃のような濃度の黒が、白い鬼を染め上げていく。
その威容は伝説に語られる黒鬼だ。
そんな五条の視界から、黒鬼は突然消えた。
(見えない!)
五条の天才的な呪力感知を持ってしてなお、存在が捉えられないほどの速度。
背後から死を感じた。咄嗟に身を捻り、前方に「蒼」を作ることで瞬間移動。
全方位に「赫」を放った。
撒き散らされる破壊を細事だと抜けてくる黒鬼。
明希は試しと言わんばかりに軽く右腕を振るった。五条の無限はその一撃を受け止めたが、周りは違う。
文字通り、建物が抉り取られた。建材の違いなど関係なく、張ってある結界など薄壁一枚。
理を超えた膂力をここに発揮した。
そして再び対峙する。
お互いの攻撃は通らず、周りへの被害だけが増していく。
実を言うと、明希側に五条への攻撃を通す手段はある。領域展開だ。
だがこれを使うと相手は即死。
呪術廻戦の世界でこの男を殺すほど愚かなことはない。完全な手詰まりというやつだ。
単純な膂力で押し切れる相手なら相性がいいのだが、五条の無限に力の違いは関係ない。
相手の呪力が切れるまでひたすら吸収してもいいが、六眼でこちらの術式を看破している五条はそれを何よりも警戒するだろう。
警戒されてそれをできるほど、この最強は甘くない。
五条は今、生きてきた中で最強の敵と戦っていた。もはや彼には奥の手しか残されておらず、それが当たる相手かと聞かれれば、否と答えるだろう。
体術は相手の方が上。呪力量も、速度も、身体能力も相手の方が上だ。
看破した術式も凶悪極まりない。
逃亡を考えるべきだと、理性では考えている。
己が最強というプライドは、それを遥かに上回った。
最強は退かない。最強は逃げない。
そして・・・
最強は負けない。
だから最強なんだ。
「埒が明かねーな」
「そのようだ」
五条は賭けに出た。
「お互いに、最後の一撃で締めだ」
俺は、無限を解く。
お前は避けない。
いい提案だろ?
これは自分が相手に攻撃を当てられないと暗に認めることになるが、無限を抜けないのは相手も同じ。歯が砕けそうなほど噛み締めたいのを我慢して、悔しさを見せずに飄々と提案した。
「乗った」
明希にとってもこれは好都合。無限がないならやり方はいくらでもある。
「じゃあ縛るか?」
これは縛りがあるから成り立つもの。五条は当然のように聞いた。
だが...
「お互いの矜持に懸けて」
明希にも矜持があり、五条にもまた矜持がある。
五条は笑った。
心底楽しそうに。
「そりゃあいい」
──決着の時。
無下限呪術は五条家相伝の術式。
その存在は有名で、術式順転「蒼」や術式反転「赫」は五条家の者でなくとも知る機会がある。
だがこの技は。
この技だけは秘伝も秘伝。
──術式順転「蒼」
五条の掌には引き付ける無限が。
──術式反転「赫」
そしてもう一つ、弾き合う無限が。
二つの無限が衝突し、反発することによって生まれた仮想の質量。
◆
心臓に呪力を。血管を通して巡らせる。
廻れ。廻れ。
この一撃は五条への怒り。
ママを侮辱したあの男への贈り物だ。
たかがそれだけでと思われるかもしれない。
だが、明希にとっては大切な物を、人を、傷つけられる痛みは変わらない。
握り込んだ拳に硬化術式をかけ、構える。
打撃と呪力の誤差0秒。
神才だけが成せる神なる御業。
拳が闇を凝縮したかのように黒く、光り輝く。
──虚式「茈」
──終閃
紫色に輝く莫大な呪力。
黒く瞬く理外の一撃。
二つの矜持が今。
衝突した。
友人にこの小説を見せたところ、明希の部分が分からないと言われたのでめちゃくちゃ分かりやすく説明します。
簡単にいうと、明希は虎杖の中に棲む宿儺と同じような状態と考えて貰って大丈夫です。
主人公は明希が吸収術式として転生したと考えていますが、どちらかというと明希の本体は人間です。
原作で五条はいずれ虎杖に宿儺の術式が焼き付くだろうと考えていましたが、それと同じようなことが起こっている訳です。
虎杖は人間に呪霊が受肉した形ですが、主人公は呪霊に人間の魂が宿った形になります。
また、質問が多い何故正のエネルギーが扱えるの?という問題ですが、これは明希が人間の体と性質を持つことが理由な訳ですね。
呪霊と人間の性質を併せ持つ主人公は、反転術式を扱うことが出来るということです。
ではでは〜
呪霊廻戦の読者の世界線の掲示板回欲しいですか?
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欲しい!書いて!
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どっちでもいいっすわ
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要らねえ!それより次話早く!
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早く掲示板も書いて次話も書くんだよおお!
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あったら嬉しいな。