少し忙しかったです。
これにて星漿体編完結。
呪術高専は今、喧騒に包まれていた。
「早く運べ!」
一級術師であり、五条達の担任でもある夜蛾の言葉と共に担架が運ばれていく。
その上には傷だらけの五条の姿。
最強である彼が意識を失ったという事実は要らぬ問題を起こすと考えた夜蛾はその情報を公開しないことに決め、秘密裏に担架を治療室へ運んだ。
だが先程まで呪霊警戒のアラートが鳴り響き、特級同士の戦いによる地響きが起きていた中で異常事態を察する者は多く、皆どこか落ち着きがない。
またそれを裏付けるかのように、呪術高専の一角は荒れ果て、ある地点には大きなクレーターが出来ていた。
何が起きたのか?
夜蛾も全てを把握している訳ではないが、五条が何かと戦っていることは察していた。それも、全力で。
他の呪術師とは格が違う五条に助力することは却って邪魔になると判断し、人払いと状況確認を済ませる。
担任として生徒が心配ではあるが、強さという面では五条を何よりも信頼している。
少し経った後、戦いの音が止んだ。
夜蛾は急いで戦いの中心地であろう場所へと向かった。いまだに砂埃が舞うその場所では濃密な呪力の残穢が渦巻いている。
夜蛾は生涯、その時のことを忘れないだろう。
砂埃の中に人影を見つけた。
だが駆け寄ることはせず、臨戦態勢をとる。
見知った呪力ではない。
つまり、敵。
砂埃から現れたのは呪霊だった。
新雪のように白い肌。黒一色のワンピースをその身に纏い、一対のツノが生えている。
白銀の髪を靡かせ、ゆっくりと歩む彼女が持つ呪力は間違いなく特級。
伝承に聞く鬼そのものの姿。
その紅い瞳が自分を写した時、夜蛾は生きた心地がしなかった。
「教師か」
そう問われた時、すぐに返答できなかったのもそのせいだ。少し考え、ここは正直に答えるべきだと判断した。
「そうだ」
短く答え、相手の観察を再開する。こんな呪霊が登録されていた覚えはない。だとすると未登録の特級か?
「これをやる」
そう言って、砂埃で見えなかった左腕に持っていた何かをこちらへ投げ渡した。
人だ。
慌てて受け止め、顔を確認する。間違いない、伏黒甚爾だ。禪院家が出した汚点とも呼ばれるこの男は確か、今は裏で稼ぎをしているんじゃなかったか?
「五条はどこだ?」
何よりも今は五条の無事を確認したい。
そう聞くと白い鬼は少し考え、遠くに見える山の中腹あたりを指差した。
「恐らくあの辺りだ。かなり飛んだからな、早く回収してやるといい」
でないとあの男...
死んでしまうかもしれんぞ?
そう聞いた時、真っ先にその言葉を疑った夜蛾を責める者はいないだろう。
五条は最強。負けることは有り得ない。
それが常識で、それが摂理だと思っていた。
それだけ言うと、彼女は夜蛾の横を通り抜けて歩いていく。この高専の出口の方向だった。
「何が目的だ?」
そう聞いてしまうのも無理はないだろう。
夜蛾からすれば理由もわからず瀕死状態の伏黒を渡され、星漿体護衛依頼の途中のはずの五条が謎の特級呪霊に敗北し、姿を消している。
この呪霊の目的も分からないままで、このまま素直に帰るとは到底思えない状況だった。
「そうだな」
彼女はまた少し考え、そして言った。
「就職活動の一環だ。」
教師になろうと思ってな
そう嘯く呪霊を前にして、夜蛾の頭は混乱でおかしくなりそうだった。
「だが今はやめておくことにする。また今度、出直すとしよう」
考えることは色々あれど、そうして悠々と歩む呪霊に向かって言いたいことは一つだった。
──頼むからもう来ないでくれ......
そうして呪霊が指した山を捜索し、傷だらけで意識不明の五条が発見された。
◆
夏油は天内を安全な場所まで送り、多くのいざこざが終わるまでの待機場所としてホテルの一室に泊まってもらうことにした。
そこまでして一息ついた時、携帯が鳴る。担任の夜蛾だった。
「どうしました先生?」
天内を勝手に保護したことについて何か言われるのだろうか?そう思いつつ問いかけた。
『悟が重体だ』
そう聞いた時には既に走り出していたかもしれない。
治療室に着き、始めに見たのは親友の姿。
「これうめー、センセー!もう一個」
饅頭を美味そうに頬張るいつも通りの姿だった。
思わず息を吐く。
「先生。聞いていた話と違いますが」
「急に起きたと思ったら反転術式で元気いっぱいだ」
そう呆れたように言う夜蛾を尻目に五条を観察する。
まるで違う。
纏っている呪力が。
生物としての格が。
「本当に悟なのか?」
思わずそう、小さく呟いた。
◆
深夜になり、夜蛾は大きくため息を吐いた。
星漿体の顛末と伏黒甚爾との戦いのこと。
反転術式に目覚めたこと。
天内を保護したこと。
そして白い鬼のこと。
「あれは別格だ」
五条はそう呟いた。
「相手はまだ全力じゃなかった」
六眼を持つ故の履き違えることのない自分と呪霊の戦力分析。
「相手がその気なら死んでたかもな」
そう話す五条の言葉を疑ったのは夏油と家入だ。五条の強さをよく知る二人だからこそ、その言葉を信じ難いのだ。
だが夜蛾は信じた。あの呪霊はそれほどの存在感を放っていた。
「だけど...」
”次会ったらボコす”
そう言い放つ五条は最強としてふさわしい圧を放っていた。
そうして職員室に戻ってきた夜蛾だが、直後に窓から有り得ないことを聞いたのだ。
曰く、人を助ける呪霊がいる。
曰く、その呪霊は死の間際にいた呪術師を何度も救っている。
曰く、なんなら私が助けられたこともある。
曰く、曰く、曰く.......
曰く、それは美しい白い鬼だった。
慌てて聞き出した見た目の情報から、あの呪霊と合致することが分かった。
本当に?あの呪霊が?
というか呪霊が人助け?
だが見方を変えると、あの呪霊は伏黒を倒すことで夏油や天内を救ったと見ることも出来るか。この柔軟な考え方も夜蛾の持つ力の一つだ。
そして登録されている特級呪霊の情報を確認している時、五条の言葉を思い出した。
「ああ、あいつの術式ね。」
...たしか吸収だったかな
登録されている。
姿形が書いている訳ではないが、3年ほど前に大きな怪我で引退した成瀬という鑑定術式の持ち主が”吸収術式を持つ特級呪霊”として記している。
特級呪霊「
間違いなく、あの呪霊のことだろう。
それに発見された際も人的被害は無いようだった。
あの呪霊が善悪どちらの存在なのかを決めかねている。
聞いた話では五条から勝負を仕掛けたそうなので、今回の件で判断するのは間違っているだろう。
そこまで考えて、夜蛾は思考を放棄した。
ここでうだうだ考えていても意味はない。今はすべきことをしよう。
星漿体関係の書類が嫌になる程残っている。
今日は徹夜か。そう考えながら仕事に手をつけた。
◆
「ああー!やっちゃったー!」
明希に体を返してもらってから、私はそう叫んだ。明希が体の主導権を握っていた時のことはもちろん覚えている。
伏黒をボコボコにし、原作でも最強とあの名高い五条悟と戦った。
戦いの最後、お互いの技が衝突した時。
明希の終閃は五条の「茈」を貫き、大幅に威力を落としながらも無限を解除していた五条の体へと突き刺さった。
だが流石はあの五条悟というべきか、終閃が当たると同時に反転術式を展開。
体を治しながらも終閃をその身に受けて吹き飛び、遠くに見える山の辺りに激突して見えなくなった。
というか明希強すぎない?
あの公式チートの五条悟相手に無傷で勝利って......
でも私は何もできなかった。ボコボコにされてただ寝てただけ。
私自身はまだ領域展開すらできないし。
そう、なぜか私は領域展開をすることが出来ない。明希はできるのに。
間違いなく呪力操作力の問題ではない。今日見て確信したが、私の呪力操作は現時点の五条先生を超えている。
原作開始まで後10年あるのでその間に抜かされるかもしれないが、それでも六眼持ちの技術を既に超えているのだ。
後必要なのは術式への理解か...
とりあえず今できることをしよう!
そう考えて腰のベルトに挿していた呪具を取り出した。これは今回、明希が手に入れてくれた戦利品だ。
呪具についている術式も放出術式で使えるようになるのかは謎だけど、もし使えたら私はもっと強くなれるだろう。
恐らく、対呪術師では敵無しと呼べるほどに。
問題は吸収できるかどうかだが。
この呪具の名は...
さて、これから主人公はもっと強くなっていけるのか?
まだ色々と謎が残されていますね。
さて、次編において、今まで以上にえ?そんなことできる?という設定が一つ出てきますが、これが私の考える呪術廻戦において最強になる方法です。
人物紹介を一話挟んで次編開始です。
ここで質問したいのですが、この呪霊廻戦を呪術廻戦とする世界線の読者の反応掲示板回を見たいよって人は、アンケートするので答えてくれると嬉しいです。
次編!
特級”番外”編
呪霊廻戦の読者の世界線の掲示板回欲しいですか?
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欲しい!書いて!
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どっちでもいいっすわ
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要らねえ!それより次話早く!
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早く掲示板も書いて次話も書くんだよおお!
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あったら嬉しいな。