呪霊廻戦 〜呪霊で教師になります〜   作:れもんぷりん

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 正直やっちまったと思ってます。
 後悔はしていない。



黝天

 

──吸収術式「鐵」

 

 亜鬼の放った刃は五条悟に確かに噛み付いた。

 

「そう簡単にはいきませんよね」

 

 無限だ。

 吸収術式に術式の強制解除を乗せて放つことは出来ない。当然だ。乗せた瞬間に吸収術式の方が霧散する。

 

 つまりこの一撃は無限で防げる。それを瞬時に見抜いて体の周りに無限を張り直した五条は流石である。

 

 だが隙は出来た。

 攻撃の手は緩めない。

 

 呪力を廻し、更に身体強化を上乗せする。

 

 明希があの時静止した世界で動いた様に・・・

 そう、それは確かこんな踏み込みだったか。

 

 地面が陥没する。

 

 そして走る黒い稲妻。

 

──黒閃

 

 その踏み込みは大地を揺らした。

 

 踏み込む際に足に呪力を纏わせ、黒閃による爆発的な反動で移動する。

 ずっと昔に考えついたが終ぞ成功することは無かった技術。

 

 見事に意表を突き、五条の後ろに回り込むことに成功した。

 廻せ、廻せ、身体中を強化しろ。

 

 体に流れる血液も、この身に波打つ鼓動も。

 

 

 全て支配しろ。

 

 

 全て掌握しろ。

 

 

 この体は私の物。

 私に掌握できない道理はない。

 

 引き絞られる筋肉、軋む骨。

 渾身の右ストレートを突き出す。

 

──放出術式「天逆鉾」

 

 術式の強制解除が拳に乗る。

 

 乗せられた術式は無限を喰い破り、拳をその身へと届かせた。

 直感で受け止めてはいけないことを察した五条はこれを受け流す。

 

 流されるまま右足を軸に回転。左脚で回し蹴りを放つ。

 五条は当然のように無限を抜けてくるその一撃を身を屈めて回避し、下段蹴りで足を払わんとする。

 

 だが空中に呪力で板を作り、回避された左脚でそれを蹴ることで反転。

 地に着いた右足で飛びつつ体重を乗せた一撃を放つ。

 

 下段蹴りと共に手を地面に着いていた五条は地面に向かって零距離で「赫」を打ち込み、足場を崩して回避する。

 

 一進一退の攻防。

 お互いにその場を離れ、また遠距離で対峙する。

 

「厄介だな」

 

「そちらこそ」

 

 少し言葉を交わし、また接近。

 だが今度は五条が仕掛けた。

 

 右手に術式順転「蒼」、左手に術式反転「赫」を纏わせる。

 

 そうして亜鬼に肉薄。

 右腕から繰り出されるとんでもない威力を秘めた突きを「蒼」によって拳ではなく腕を対象にすることで逸らす。そして出来た隙に左手の「赫」で弾き飛ばさんとする。

 

 しかし亜鬼は残った左腕に強制解除を纏って「赫」を無効化し、そのまま拳を掴んで握り潰した。

 

 ぐちゃり、という嫌な音と共に飛び散る血と砕ける骨。咄嗟に後方へ瞬間移動し、反転術式で怪我を治す。

 

 その隙を逃す亜鬼ではない。

 

 黒い稲妻を奔らせ、追撃する。

 作り出された手刀。

 

 無限を抜かれると判断した五条は右手で受け流そうとする。

 

 

 

 

()った

 

 

 

 

 

──吸収術式「纏・鬼牙」

 

 

 

 五条の右腕が削り取られる。

 

 流すことなどできるはずもない。空間ごと抉り裂く必殺の一撃。

 

 無限を纏っていたなら回避できた一撃だ。

 だが近接で、それも腕に術式を纏わせることによる不意打ちのようなもの。術式の強制解除が乗せられていると考えていた五条が対応できる筈もない。

 

 

 亜鬼の攻撃はそんな物では終わらない。

 

 千載一遇のチャンス。

 

 

──吸収術式「鐵」

 

 

 だが五条は慌てない。

 左拳の再生は終わっている。

 

 印を結んで瞬間移動。

 亜鬼の真後ろに現れて踵落としを繰り出した。

 

 距離を取るかと思いきや反撃を放つ五条に意表をつかれながらも防御。

 とても生身の人間が放つとは思えない強力な蹴りは大地に蜘蛛の巣状の罅を入れた。

 

 舗装された道路は見るも無残なほどボロボロになり、もはや原型を留めていなかった。

 沈み込む体。

 

 五条は亜鬼の防御力を正しく理解している。

 適当な一撃では足止めにもならないこと位把握している。

 

 だが地面は耐えられない。地面に埋まり込んだ亜鬼に向かって放つ。

 

 

──術式反転「赫」

 

 

 大地を抉り、破滅の閃光が亜鬼に襲い掛かる。

 その間に右腕を反転術式で治療。

 

 追撃に入る。

 

 

──術式反転「赫」

 

 

──術式順転「蒼」

 

 

 現れるのは二つのぶつかり合いによって生まれた仮想の質量。

 

 

──虚式「茈」

 

 

 だがこれでは足りない。

 

 まだ必殺には程遠い。

 

 

──術式反転「赫」

 

 

──術式順転「蒼」

 

 

 右手に「茈」を保ったまま左手の上で二つをぶつけ合わせる。

 もう一つの虚式「茈」が生み出された。

 

 これが五条が考えた亜鬼への対抗策。

 どんなに硬い防御も、どんなに素早い動きも・・・

 

 関係なく消し飛ばす!

 

 

──虚式「茈」

 

──虚式「茈」

 

 二つの「茈」を融合する。ただでさえはち切れんばかりのエネルギーが二つ、圧縮されていく。

 

 圧倒的な呪力操作の技術だけが可能にする奇跡。

 

 紫色が黒く、黝く、輝きを放つ。

 

 

 

 

 

 

──黝天「ℵ0(アレフ・ゼロ)

 

 

 

 

 

 

 手のひらに浮かぶのは直径10センチほどの大きさまで縮小した黝き球体。

 その中では行き場のない力が渦巻き、暴れ、荒れ狂う。

 

 未だに砕けた大地の中を抜け出せずにいる亜鬼に向け、その暴虐が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 そして着弾。

 

 

 

 

 

 

 開かれた掌が強く握りしめられる。

 

 

 

 同時に瞬く閃光。

 

 

 

 

 寂れたマンションも。

 

 色の燻んだ遊具も。

 

 安いことで有名なスーパーだって。

 

 

 周囲の全てを塵の一つも残さんと言わんばかりに消し飛ばした。

 

 





 今日の解説!

 放出術式「天逆鉾」

 まじでそのまんま。硬化術式とは違って習得してすぐなので技も何もできていない。
 術式強制解除の力を扱うことができるようになる。


 吸収術式「纏・鬼牙」

 読み方は“まとい・きが”腕に凝縮した吸収の力を纏わせ、触れた部分から吸収して切断する。これの恐ろしいところは術式を纏っているところが全く見えないところ。
 普通に殴られると思って受け止めたら削り取られて死ぬ。


 黝天「ℵ0」

 読み方は“ゆうてん、アレフゼロ”

 正直やっちまったと思ってる。
 呪術廻戦の技名の基本を弾き飛ばすようなカタカナ読み。
 二つの虚式「茈」をぶつけて圧縮することによって完成。破壊力、破壊範囲共に虚式「茈」とは別物。
 めちゃくちゃ頑張って名前考えたので褒めてくれると作者が喜ぶ。気になる人は意味を調べてみて欲しい。

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