呪霊廻戦 〜呪霊で教師になります〜   作:れもんぷりん

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 教師編始まるぜ!



教師編
就職


 

 桜が舞う季節。

 心地いい風に吹かれながら一人の呪霊が呪術高専の地を踏んだ。

 

 呪霊が侵入した際に鳴り響くはずのアラートが聞こえない。

 これは彼女が正式に存在を認められ、高専に入る許可を得た呪霊であることを表していた。

 

「うーん良い朝だね!」

 

──綺麗だね〜ママ!

 

 そう。

 

 そんな特別な呪霊こそ、この私。

 亜鬼さんである。

 

 遂に就職活動を始める時が来た。

 私は先生になって友達をいっぱい作るんだ!

 

 だがそれには余りにも大きな障害が二つある。

 

 一つは私が呪霊だから受け入れられにくいこと。

 これは時間が解決してくれるだろうし、それなりに窓や呪術師を助けてきた私は意外と人気らしいので大丈夫だろう。

 

 

 

 もう一つが厳しい。

 どうやら呪術界上層部、腐ったみかん共に私の存在を認めさせなければいけないらしい。

 

 これ無理じゃない?

 そう思って五条先生に聞いたところ、どうやら秘策があるようだ。

 今はそれを信じるしかない。

 

 

 校門を抜けて、景色を楽しみつつ校庭へと辿り着いた。

 すっごく感動である。原作でも多く使われる場所、いわば聖地だ。

 

 そこに立つ一人の怪しい男。

 

「やあ、待ってたよ」

 

 すっかり仲良くなった五条先生である。

 もう付き合いも8年ほどになるか?

 

「すみません。遅かったですか?」

「いいや、時間ぴったりさ」

 

 少し話しながら近くに停めてある車へと向かう。

 これから私が先生になれるのか決まる。

 

「早速行こうか」

 

 上層部連中のところへ・・・

 

 

 

 

 

 

 上層部の人間が円状に座る。

 

 数多くの防御呪符や結界が張られ、並の呪霊では動くどころか立つことさえできないだろう。

 

 

 だがそこを闊歩する一人の呪霊。

 

 結界など彼女には関係ない。

 その程度の結界で縛れるような生温い存在ではないのだ。

 

 彼女の姿をみて騒めきが広がる。

 そうして亜鬼は円の中心に立った。

 

 

「これから、特級呪霊“死風”の処遇を決定する」

 

 進行役の男がそう述べると同時に誰もが喚き始める。

 

「さっさと祓え!」

「呪霊など存在するだけで不愉快だ!」

「なぜこんなことを議論する必要がある!」

 

 もはや議論の余地すらなし。

 

 受肉体ですら存在を許さない上層部の連中が呪霊の存在を許すわけがない。

 そんなことは始まる前から分かりきっていることだった。

 

 満場一致で亜鬼の処分は決定。誰もが予想した結果通りになった。

 

 

 

 

 筈だった。

 

 

 

 

 

 

 亜鬼は不安に思いながら五条に言われた策を実行することにした。

 

──じゃあ変わるよ明希?

 

──うん!任せて!

 

 

 その策とは明希にお願いすること。

 

 五条は長い付き合いの中で亜鬼の性格も明希の性格も大体把握している。

 亜鬼は責められると弱いし、優しすぎて高圧的にはなれない。

 

 

 だが明希は?

 

 自分の母親の為ならなんでも出来る。

 

 

 

 

 

 その場にいる誰もが空気が変わるのを感じていた。

 

 目の前にいる呪霊が何かしたのか?

 いや、姿形は変わっていない。

 

 俯いていた白い鬼が顔を上げる。

 その瞳は底が見えないほど深い紅に彩られていた。

 

 

 張られていた結界が、数えるのも億劫なほど敷き詰められた防御呪符が、どれひとつ残すことなく焼き切れた。

 

 空気が鉛のように重くなり、誰一人として身動きが取れない。

 

 護衛として付いていた一級術師達ですら指一本動かせなかった。

 

 自分の心臓が掌の上で弄ばれているような寒気を覚えたのだ。

 

 

 場は完全にその呪霊が掌握していた。

 上位者は間違いなく彼女。

 

 他は皆等しく塵芥。

 

 

 

「騒がしいぞ」

 

 

 

──有象無象の分際で囀るな

 

 

 

 美しい声が響き、重圧が増していく。

 

 気絶する者がいないのは偏に呪霊の気まぐれ。

 もはや誰もが口を開くことすらできなかった。

 

 

 

「ぴよぴよと五月蝿いゴミ共に最後のチャンスをくれてやる」

 

 

 

 その場に呪力で創り出された精巧な玉座に座り、絶対者は述べる。

 

 

 

「精々、選択を間違えないことだ」

 

 

 

──いつお前らを縊り殺してしまうか分からんぞ?

 

 

 

 誰も逆らえない。

 

 誰も歯向かえない。

 

 自分の首にあてがわれた死神の鎌が見えるようだった。

 

 

 

 そうして下された結論。

 特級呪霊「死風」の存在を認め、呪術高専の教師になることも認める。

 

 当初予想されていた結論の真逆。

 亜鬼の存在は呪術師の間で周知され、絶対に機嫌を損ねないようにとお触れが出された。

 

 

 亜鬼が帰った後五条に祓除依頼を出し、祓えないと言われた時の彼らの顔は滑稽だったという。

 

 

 

 

 

 

 

 明希のおかげで成歩堂龍一ばりの大逆転勝利を手に入れた私はまだ用があるらしい五条先生をその場に残して呪術高専に帰ってきていた。

 

 

 学長への挨拶が必要である。

 

 窓の方に教えられた道順を辿り、なんとか学長室前に着いた。広いし、入り組んでるしでまるで迷路のようだ。

 

 軽くドアを3回ノックした。

 

「入れ」

「失礼します」

 

 そうして入った部屋は図書館のような匂いがした。いくつか設置された棚には数多くの書物が敷き詰められている。

 それ以外は大きな机と椅子、あとは少しの小物と人形しか置いていない殺風景な部屋だ。

 

「今日到着だったか。よろしく頼む」

「はい!」

 

 事前に事情は全て夜蛾さんに伝えられており、色々と面倒な根回しや手続きを全てしても貰った。まさに恩人というやつだ。

 

「人手が足りないのでな。初めから担任を持ってもらうことになる」

「分かりました」

 

 これも事前に聞いていた話だ。

 この春から新しく入学してくる三人の一年生を持つことになる。

 

 名前はそれぞれ禪院真希、狗巻棘、そしてパンダ。

 この特徴的すぎる顔ぶれ・・・

 

 いや二年生組じゃん!

 

 あの子たちの担任とか責任重大すぎる・・・

 

 でも遂に夢が叶ったんだ!

 しかも推しの担任。

 

 二年生組は乙骨くんも入れて全員最高に推しだが、特に推しなのは真希ちゃんだ。

 勿論先生だから皆等しく愛すよ。

 

 全員最強の特級呪術師にしてあげるからね!

 私が放出術式によって使えるようになった術式の中には教師にピッタリな物も数多くあるのだ。

 

「彼らが入学してくるのは10日後になる。準備をしておいてくれ」

「はい!お任せください!」

 

 なんかもう楽しみすぎて興奮が止まらない!

 

 今なら星すら割れそうだぜ!

 

 

 その後、夜蛾さんが付けてくれた“窓”の人に部屋まで案内してもらう。すっごくクールで仕事ができるって感じの女性だ。

 

 部屋に着いたのでお礼を言い、中に入った。

 

 中は結構広く、今まで住んできた部屋の中では最高級だ。

 これで推しと触れ合えて給料まで貰えるなんて最高すぎる〜

 

 これから頑張るぞ〜!

 

──おー!

 

 

 

 

 

 呪術高専には二つ職員室が存在する。

 

 一つは夜蛾や教師達、呪術師達が利用する部屋。

 もう一つは裏方担当。その中でも特に「窓」がよく利用する一室だ。

 

 その部屋の中は今、一つの噂で持ちきりだった。

 新しく教師になる「白い鬼」の話だ。

 

「ねえ聞いた?“姫”が教師として来てくれるんだって!」

「それほんと!?」

「ほんとだよ。だって私実際に“姫”を部屋に案内したんだよ?」

「ど、どうだったの?」

「めっちゃちょこちょこ歩いてて可愛かった〜ちゃんとお礼も言ってくれたし!」

「ほんといい子だよね〜」

 

 そこかしこで“姫”の目撃情報や自慢話が飛び交う。

 

 ここまで来れば分かるだろう。

 

 

 亜鬼は“窓”達に大人気だった。

 男女問わず高い人気を集めている。

 

 高専内の誰よりも人気で、みんなのアイドル的な存在だ。

 理由はその芸術品のような容姿、優しさの塊のような性格、丁寧な物腰、そして愛嬌。それらの特徴から“姫”と呼ばれて親しまれている。

 

 また、呪術師から引退して窓になる人間も多い中で呪術師時代に命を助けられた人も多い。

 死の間際で助けられ、反転術式で治療され、恐怖で震える体を優しく抱きしめられて頭を撫でられる。

 

 そのあまりの人気に構築術式の持ち主が亜鬼のフィギュアを作り、絵の心得がある者が亜鬼のポスターを描き、職員室に飾られている。

 ファンクラブも結成され、メンバーは今も増え続けている。

 

 そんな彼ら彼女らにとって今回の件は朗報も朗報。

 誰もが喜びを噛み締める。

 

 月に一度行われる日本各地の窓がオンラインで“姫”の情報交換を行う定例議会。

 そこでこの事実を話せば羨ましがる人で溢れかえることだろう。

 

 そんな興奮の中、彼らの夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 呪術高専に来てから十日。

 今日が遂に初出勤の日だ。

 

 呪力で構成した黒いワンピースに身を通し、胸元をきゅっと赤いリボンで結ぶ。髪を水色のヘアピンで止め、鏡に向き直った。

 

「よし。いくぞ!」

 

 そうして部屋を後にした。

 

 さあ教師生活のスタートだ!

 





 次回!
 三人組との対面!
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